19の春に免許をとって、最初の愛車となったバイク。
こいつを特徴付けるのは、やはりエンジン音と、スマートでいながらグラマラスな流線形のボディだろう。搭載されたGenesis Engineは、水冷4気筒16バルブ前傾角45度という形状であり、当時としては画期的な高回転エンジンであった。1万7500回転まで刻まれたタコメータが、ひときわ異彩を放っていた。
“電気モーターのよう”と言わしめたエンジン音は、はるか彼方からでもそれがフェザーのものとわかるほど、それまでのバイクとは異質なサウンドであった。
トルクピークがかなり高回転域にあったため、とにかくぶん回して乗っていた。低回転では、初期型フェザーの泣き所、回転にばらつきがあるため、少し乗りにくい。シート位置とハンドルとのバランスが、いまいち悪く、コーナーリングではTZRほどの安定姿勢は望めない。フェザーに初めて乗った友人連中は、すべからくこの点を指摘していた。
けれども、最初からフェザーしか知らなければ、「こんなもんか」で支障はなかったのも事実だ。なにより、車体重量が異様に軽いのだ。乾燥重量で138kgしかない。取り回しやすいこと、このうえなかった。
弱点は雨だ。通常なら燃費24km/リットルはいくのに、雨が降ったとたん13km/リットルあたりまで急激に落ちる。最初、こんなに差があるとは思ってなかったので、真夜中降りしきる雨の中、走りに行ってて山奥で痛恨のエンストをくらい、街まで押していったことがある。やっと見つけたどこかの公民館らしき建物で雨をしのぎ、夜明けを待った。・・・・・以来、ロングツーリングの時には、予備のポリタンク2リットルに、ガソリンを積んで走るようになったのである。実際、北海道を旅した時には、この予備タンクに2回ほど助けられたのだった。
YAMAHAからは、その後、後継機種フェザーII型が出たきり、フェザーという名を冠するバイクは現在まで出ていない。FZシリーズは、FZRシリーズにとって代わられてしまった。個人的にはFZRシリーズは、あまりにレーサーレプリカすぎて面白味がないと思っている。フェザーは、ある意味、異質なバイクだったのかもしれない。ネイキッドでもなく、レプリカでもなく・・・。もはや、このようなバイクは造られないのだろうか。もし、現代においてこのようなコンセプトのバイクが造られるとしたら・・・叶わぬ夢かもしれないが、「新型フェザーよ、再び」の気持ちは今も強く心の中にある。
学生の頃乗っていたフェザーは、卒業のとき、弟にあずけてしまった。なぜかといえば、今から考えると自分でも馬鹿らしいのだが、就職先がバイクも造っている重工業だったから、他社製のバイクを持っていってはいけないのではないかと思ったからだ。
配属の事業部はバイク部門じゃなかったし、そもそも某○菱や某ト○タほど厳しくなかったので、他社製バイクでもまったく問題なかったのだが、なんであのとき手放したのかな・・・・・
まぁ、そういうわけで一時フェザーから自社製バイクのエリミネータにはしってしまったわけであるが、1998年、弟がついに大学院を卒業することになってしまった。フェザーをどうしよう?と相談され(弟はすでに他のバイクに乗っていた。フェザーはボロボロになってしまっていたのだ)、ふつふつと昔の想い出が沸き上がり、引き取ろう!!と決心した。・・・が、陸送するにはあまりに遠く、運送代をとてもじゃないが出せなかったのだ。泣く泣く、フェザーは処分することにした。
しかし、それでフェザー熱に再び火が付いてしまった私は、レッドバロンで中古のフェザーを探してもらうことにした。バイク屋のにーちゃんは「え!フェザーですか〜、うーんここ数年は一度も見たことないですねぇ」などと哀しいことを言ってくれる。それでも自慢の全国ネットの検索システムにてフェザーを探索してもらう。結果・・・なし。
だが、諦めるのはまだはやい。もしかすると、誰かがいつ手放すとも限らないのだ。
祈りは通じたか、ついにフェザーが出たのだ。しかも唯一のフェザー後継機種であるフェザーII型、ブラックボディである。電話で知らせてくれたにいちゃんの声が、なんだか上ずってる。「すごいですよ、これは」なんて言ってる。どんなにすごいのかただちに見に行ってみた。そして、ぶったまげた。
1986年製のはずのこいつは、まるでタイムスリップして現代にやってきたかのようにサビひとつないぴかぴかのボディで迎えてくれた。走行距離も、わずか2800km!オドメーターに細工はなしだ。
いったいどうやって保存すればこういう状態で維持できるのか。そもそも、前オーナーは、こいつに乗ったのか?エキゾーストパイプにも、汚れひとつない。ありえない。こんな状態のフェザーが存在するはずがない。・・・・でも、たしかに目の前にあるのだ。信じがたい光景だった。
値段を聞く前から、すっかり買うつもりになっていた。これほどのマシンを見せつけられて、迷う必要があるだろうか?
値段は約30万だった。当時の新車のフェザーが約50万してたので、かなり割高ではあるのだが、それほど保存状態がよいのだ。この値段もいたしかたあるまい。
即決で、ハンコを押した。
ほんとはブルーのボディのやつが欲しかったが、これほど美しい車体はもうおそらく出てこないだろう。ブラックボディでもOKだ。ちなみに、大学時代に乗ってたフェザーは、ホワイトボディにブルーのストライプという、夏にぴったりのカラーリングであった。
さて、フェザーとフェザーII型のどこが違うかというと、外見で目に付くのは後輪がディスクブレーキになったこと。それとマフラーの色(初期型は黒だった)。そのくらいだ。もちろんカラーリングがストライプからツートンカラーになったというのもあるが。
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燃料タンクはカウルの中に埋め込まれている。フェザーのボディを特長づける流線形は、このタンクを隠すことで成功している。 |
後部が II型と初期型を区別するもっとも代表的な部分だ。 |
でも最大の変更点はエンジンにある。こいつは1万8千回転まで回る。500回転の増加。それに初期型で目立ったシリンダごとのバランスの悪さも改良されている。6000回転あたりで急にパワーが立ち上がるという妙な癖も消えている。
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こいつがジェネシスエンジン |
インラインフォゥの排気管 |
このバイクを手に入れてから困ったことが1つだけある。それは、あまりに美しすぎて、雨の日に乗れないことだ。もはやメーカーにも補修部品はなく、汚すにはかなり勇気がいる。まるで、カウンタックやベルリネッタボクサーのオーナーのような感じになってしまった。でも晴れた夏の日には、思いっきりぶん回しているのだ。やはりフェザーは最高のバイクだ。
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