くろ
ある日、行きつけのペットショップに立ち寄ってみると、砂ネズミがわらわら入荷していた。生で砂ネズミを見たのは、その時が初めてである。コミック『動物のお医者さん』で、その魅力に取り憑かれ、欲しい欲しいと思っていた私は、さっそくどの子を連れて帰ろうか悩んだ結果、Licのリクエストでもあるグレーの子を選んだのだった。ここで紹介する“くろ”も、このとき一緒に売られていたのだが、最初はこのように買う対象からは外れていたのである。それがなぜ我が家にやって来ることになったかといえば・・・
グレーの子(おやじと命名してた)を連れ帰ってから、8ヶ月が過ぎたころ、ペットショップでは、あのときの砂ネズミが、いまだ売れ残っていた。黒いのと白いのと、2匹いたが、見るからに痩せ細り、毛並みもぼろぼろ、うちで飼ってるおやじと比べたらあまりにひどい有様に、「あぁ、この子達を連れ帰ってやりたい」と思ったものだ。しかし、1匹3000円という値段がネックとなり、2匹とも連れ帰る決心がつかずにいたのである。
それからしばらくして、ショップではとうとう、白と黒、さらにケージ付きで3000円という捨て値がついた。これを逃す手はなく、黒いのと白いのと、ケージ付きで買って帰ったのだった。
最初、くろとしろは、一緒に買ってきたケージの中で、同居させていた。半年もショップで一緒に過ごしていたのだから、大丈夫だろうと思ったのだ。ところがある日の夜のこと、Licが血まみれの2匹の姿を発見することになる。やはり見えないところで喧嘩していたのだ。傷はそれほど深くなかったので、大事には至らずに済んだが、これ以上同居させるのは無謀と思えたので、新しく2匹にケージを買ってやり、別居させることにした。
別居させてからは、何事もなく平穏な日々が続いている。
ただ、我が家にやってくるまでの間、ショップであまりよい飼い方をされなかったらしく、痩せた姿は戻らない。毛並みも、どことなく弱々しそうで、瞳には憂いさえ感じられるのは気のせいではないと思う。幼児期の成長過程が、その後に大きな影響を与えるのは、どんな動物にも当てはまるのかもしれない。
くろは全身真っ黒だが、鼻の下と喉元に白い飾り毛があるのが特徴だ。下顎には、しろと同居してたときに喧嘩してできた傷が残っていて、めくれあがったようになっているのが痛々しい。
大好物は、きゅうり。いつも真っ先に、きゅうりを両手でつかんでしゃくしゃく食べる。
眠るときは、いつも丸くなっている。ちゃっぴーが、どぁぁぁっとながーく寝そべるのに比べると、ずいぶん用心深い。時々、死んでしまったのではないか?と思うくらい、ぴくりとも動かず寝ているので、心臓に悪い。
最近、木ぎれでテーブルを作って入れてやった。囓るかなと思ったのだが、乗って遊ぶのが楽しいみたい。夜、ひっそりと遊んでるくろの元気な姿を見ると、なんだかほっとする。しろが死んでしまった今、くろにはしろの分まで長生きしてほしいと思っている。
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