U's aquarium.
〜水のある生活〜
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Diary お魚日記くらげ日記
Essay #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7
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− E S S A Y −

I
N
D
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X
第1話  はじまりは突然に
第2話  トロピカル・マリン・アクアリウム
第3話  崩壊
第4話  飽くなき欲望
第5話  再始動
第6話  またもや崩壊
第7話  新型登場

型登場

 フィッシュガーデンは、店舗をそれまでの雑居ビルから、店長自宅1階へと移動した。熱帯魚の販売も止めて、また海水魚専門店となった。ちょっと距離が遠くなったのが痛い。
 1996年5月吉日、彼は結婚した。独り住まいには広すぎた一軒家が、新しい家族を迎えて、ようやく家らしくなった。

 60cm敷砂あり水槽は、ようやく濾過バランスがとれたのか、緑苔がまったく生えなくなってきた。種砂を使っても、年単位の時間がかかることに驚異する。やはりパワーヘッドの能力不足か。
 90cm水槽は、あいかわらずスズメダイ系が群れていたが、喧嘩好きのスズメのこと、着々とその数を減らし、今では縄張りを確保したツワモノだけが残っていた。
 そして2m水槽。昨年暮れに急遽調達した各種機具のため、猛烈な貧乏状態により、魚の数は片手で足りるほどしか入っていない。まぁそれでも濾過は大丈夫そうなので、なによりだ。魚はゆっくり足していけばいい。

 季節は、春、夏、秋とまたたくまに過ぎてゆき、そして再び12月。この月は、もしかしたら彼にとって厄月なのかもしれなかった。
 なにげなく2m水槽を眺めていた。何か違和感があって、椅子から立ち、水槽に近寄ってみる。なにかヘンだ・・・。ん?これは・・・
 水槽左側面のアクリル接合面が、部分的に白濁している。最初は汚れかと思った。しかし、すぐに最悪の事態であることに気付いて確認していた。スポイトで水を、その白濁している部分に注入してみると・・・なんと水が入るではないか!剥離だ。接着面が剥離しかかっている!
 ただちにショップに電話した。予想どおり、最悪の状態らしい。そのまま放置すれば、いずれ水圧で水槽そのものが破壊するだろうとのこと。すぐに水を抜くように言われた。幸いというか、哀しいというか、中に入っていた魚は、ほんの数えるほどしかいなかったので、これは90cm水槽に移ってもらい、さっそく水中ポンプで水槽の水をすべて抜いた。ライブロックは、ショップで預かってくれることになった。
 ここで彼には3つの選択肢があった。1つ目は、このまま水槽を手放し、残りの水槽で我慢すること。2つ目は、別のショップで売りに出されていた180cm水槽に買い換えること。3つ目は、新規に2m水槽を作ってもらうこと、だ。
 180cm水槽ならば、約80万で手に入る。2m水槽を新規に作ればいくらになるのか?フィッシュガーデンの店長に相談する。100万ちょっとくらい、とのことだった。彼は迷った。“水槽を買わない”という選択肢もあったのだが、この時は、完全に“どっちの水槽を買うか?”しか頭になかった。
 80万にしろ、100万にしろ、彼にとっては大金である。とうてい現金一括など不可能だ。となれば、ローンを組むしかない。ローンにするのであれば、今は低金利だし、どうせなら100万にするか・・・・彼は迷った末に、決断した。2m水槽を新規に作ってもらうことにした。
 このクラスの水槽になると、すべてオーダー品になる。したがって自分の好みの水槽システムにできる強みがあった。彼は濾過方式を、フルドライにすることにした。ウェット式では、どうしても濾材の目詰まりがあり、掃除が欠かせない。その点、フルドライならば、濾材そのものの形状が違うため、目詰まりの心配はないに等しい。つまり、濾過槽のメンテナンスが不要なのだ。
 落水パイプは、左右コーナーに1本づつ、2つ立てる。これでかなり水槽内の淀みがなくなるはずだ。揚水ポンプも2台にして、1つは通常の配管に、もう1つは、水槽底面に平行に這わしたパイプからシャワー状に均等に吹き出るようにしてもらう。底面に蓄積しやすい汚れを、これでかなり防げるとともに、複雑な水流を作り出すことにも貢献する。
 あとは、買ったきり使っていなかったプロテインスキマーやら紫外線殺菌灯の配管加工。水槽サイズは、幅2m、奥行き60cm,高さ60cmにグレードアップした。フルドライの濾過槽のため、アングル部が以前より高くなるので、全体的にかなり大きなシステムになりそうだ。
 こうして1996年は暮れていった。

 新年早々、良いことが彼を待っていた。なんと妻が妊娠していることが分かったのだ。出産予定日は8月下旬。1997年は、幸先のよい出だしだ。

 1月中旬、新2m水槽完成。リビングの、同じ位置に設置された。
 アングル部だけで高さ1m10cm、水槽本体で高さ60cm。以前の2m水槽より、ずっと迫力がある。
 フルドライの濾過槽。約7000個のドライボールが入っている。2トンクラスの水量でも大丈夫とのことだった。

 注水。モーター始動。ごぉぉぉぉぉぉ・・・・。さすがにハイパワーの揚水ポンプ2台ともなると、かなりの騒音。プロテインスキマー作動。流量調整。紫外線殺菌灯点灯。こちらも流量調整。すべてOK。あずかってもらっていたライブロックを水槽に戻す。

 新品の水槽は、苔ひとつなく、すべて透明アクリルで加工された水槽本体は、明るく輝いて見えた。
 彼は大いに満足していた。水槽総額120万のローンなど、この水槽を前にすれば安いもんだとさえ思えた。




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