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〜水のある生活〜
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12月 2002 お魚日記
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ひみつ日記読む!

2002.12.1(Sun)

爽やか水景
 ずらりと並んだ蛍光管のパッケージから、慎重に1本を選び出す。“20W”の文字を再度確認し、ようやくカゴに入れた。今度こそ間違いなく60cm水槽用の蛍光管だ。

 帰宅早々、熱帯魚水槽の蛍光管を外し、買ってきたそれと交換する。外した方は、当初の予定通り、タナゴの住む60cm水槽へ。
 まず、新品の蛍光管から発光テストだ。グロー球の接触がいまいち悪いので、何度かぐりぐりしなければならなかったが、やがてちかちかと明滅し、すぱっと点灯した。
 7500Kの色温度に設定されているタイプなので、かなり爽やか系な色調に包まれる。密生したミクロソリウムの緑色が、突然太陽の直射を浴びたかのような鮮やかな黄緑色になっていた。そうそう、こんな感じの光が欲しかったのだ。これにブルー系の光を混ぜれば、さぞや妖しかろうと思ったが、そのためにはランプアイみたいに青っぽく輝く部分を持った魚が入ってないと面白くない。朱色の金魚が幅を利かせてる現状は、いまひとつ盛り上がりに欠ける。
 やはり金魚はどこか別の水槽に移ってもらったほうがいいんじゃないかと、改めて思う。でも、この場所はみこりんが気に入ってるみたいだし、なかなか悩ましい。私の希望では、タナゴを川魚90cm水槽に移動させて、空いた60cmに金魚を移すというプランが最良なのだが、さて、実現するかどうかは微妙である。


2002.12.3(Tue)

設定温度の妙
 海水2m水槽の温度センサは、26度をやや上回る数値を示していた。またしても濾過槽の水位低下で、ヒーターが作動してしまっているのかと思ったが、こんな短期間にそこまで蒸発してしまうはずもない。と、いうことは、考えられることはただ1つ。ヒーターのサーモスタットの設定温度が、そのようになっているのだろう。
 この水槽では、
つい最近クーラーが作動していたので、その設定温度を高めにしたばかり。クーラーとヒーターの、それぞれのサーモスタットの設定温度の微妙な重なり具合が、冬でありながら26度もの水温維持と、クーラーの作動というもったいない状況を生んだに違いない。

 それにしても、だ。ヒーターの設定温度が26度というのは、どうにも解せない。もともと電気代を削減する目的で、設定温度は24度程度に抑えてあったはずなのに…。何かヒーターに変わる熱源が突如出現した、というのもあり得ないだろうし、ますます謎は深まる一方である。
 こんな時にはとっとと濾過槽のパネルを開けて設定温度を確認すればよいのだが、忙しさにかまけて、できていなかったりするのであった。


2002.12.5(Thr)

散発的に活動する陸ヤドカリ
 近頃は冷え込みも一段落したのか、真夜中でも凍えてしまうほどではない。おそらく昼間などは、締め切ったリビングの気温は結構上がっているものと推測される。それが証拠に、寒さにはとことん弱い陸ヤドカリが、動いている形跡があるのだ。
 たいていは、餌であるニンジンの切れっ端の傍でうずくまっていることが多い。通常ならば、木切れの隅や植木鉢の中とか、そういうところに固まっている彼等だが、陽気に誘われ、ついニンジンでも囓りに出てきたのだろう。そしてそのまま夕方を迎え、気温の低下とともに、一夜をそこで過ごすことに決めたのか、あるいはたまたま人影が増えたので、見つからないように動きを止めているのかは定かではないが。

 石油ファンヒーターがフル稼働する真夜中になると、動きが活発になったりするのも微笑ましい。設定温度を高めにしすぎて22度とかになると、金網をよじのぼっていたりする。人間が寝静まる丑三つ時には、もちろん暖房器具はすべて停止してしまうため、その後、陸ヤドカリ達が無事にねぐらに戻っているのかどうかいつも心配になってしまうのだけれど、幸いなことに、気温が下がりきる前にたどりつけているらしい。
 でもあいかわらず水場の下は不評である。去年とはいったい何が違うというのか。謎は深まるばかりであった。


2002.12.7(Sat)

週末の観察
 休日の朝は、ゆっくりと魚達に餌を食べさせてやれる数少ないチャンスだ。平日の朝は、ともすれば観察もそこそこに、ぱぱぱっと餌だけ投入しておしまいになりがちだ。土曜日くらいは、じっくり魚達の様子を見ておかないと、うっかり重大な怪我を見過ごしてしまったり、体調不良の個体を見逃してしまうかもしれない。

 海水2m水槽のカスミチョウとケラマハナダイは、どうやらいつもながら絶好調のようだ。どれもこれも餌食いのすさまじさは半端ではない。体表のスレやら白点の兆しもなく、順調っぽい。ん、合格。
 金魚達も同様。で、今もっとも気になっている川魚達の様子は、と。

 上ばかり気にしてるオイカワは、やっぱり上の餌だけに執着しているようだ。でも一応、餌は食べているようなのでよしとしよう。ウグイの食欲、まったく問題なし。オイカワの分を奪い取るほどにエネルギーに溢れている。あとの小さめのオイカワ達は、ちょっと隅に追いやられているような気もするが、餌を投入すれば、ずばばばっと寄ってくるので、まぁ大丈夫だろう。

 心配なのが産卵ケースの中の3匹だ。腹があまり膨らんでいない。餌をやっても動きが鈍い。水温が低下していて、その影響でそうなっているのならばよいのだが…。
 そろそろ餌をフレーク単独から、クリル片等も混ぜるようにしてみようかと思う。たしか以前、オイカワの稚魚を飼ったときも、フレークに一時期興味をあまり示さなくなった時があったような記憶もある。試す価値有り。


2002.12.8(Sun)

メダカ水槽の行方
 TVの脇に置かれたメダカ水槽は、結局、赤ちゃんメダカがすべて消滅してからも、ずっと空回りを続けてきた。ぽこぽことエアの立ち上る微音は、ほとんどが同室の海水2m水槽が発するダイナミックな水音にかき消されていたが、こうしてエアポンプのコンセントを抜いてみると、それでも微妙な静寂が訪れたことがわかる。
 メダカ水槽を、水の入ったままそぉっと持ち上げ、洗面台に向かった。36cm水槽なので、ここらへんはアバウトにやる。

 軽く苔を落としてから、じゃぶじゃぶと4度ほど砂と一緒に水槽を洗い、さばぁと最後の水を流し終えた。これで水槽の撤去は完了だ。中に入っていた唯一の生物であるミクロソリウムは、タナゴ水槽に移植した。最初に投入したときより2倍は大きくなったような感じだ。あいかわらず生命力の強い植物である。

 きれいになった水槽は、そのまま2階の空き部屋へと運び込み、次の機会が訪れるまで眠ることになる。こうしてTVの脇にできたスペースに、何を置くかといえば、新しいPC用の液晶ディスプレイなのであった。今度メダカ水槽が復活するときには、もうこの場所は使えない。その時には、みこりんの部屋にでも持っていくとしようか。


2002.12.10(Tue)

抜く勇気
 なんだか下の方がすぅすぅしてるなと思ったら、水草がぷかぷかと浮き上がっているのだった。熱帯魚水槽の主、ほどよく育ったフナ金が、その体と口を使って体操でもしたのだろう。よっぽど広さを求めていたのか、あるいはただの偶然か。
 いずれにしても隙間なく植え込んでいるミクロソリウムが、邪魔っぽいのは確からしい。もっとしなやかな葉っぱならばともかく、ミクロソリウムの堅めの葉っぱではかき分けてゆくのも大変そうだ。

 思い切ってばさっと抜く、のも大切なのかも…、と思っている今日この頃。


2002.12.12(Thr)

オイカワ達
 相変わらず産卵ケースで暮らす川魚の稚魚3匹の腹は、さほど膨らんでいるようには見えなかった。クリルも試してみたのだが、あまり事態は改善したようには感じられない。水温が低いので、こういうものなのかもしれないけれど、やはり不安の種は消えそうになかった。
 明日の朝も、彼らと無事に出会えるように、そう思いつつ、毎晩眠る前には水槽を覗く。本水槽の方では、オイカワがじろりとこちらを見つめていた。上ばかり気にしているオイカワだ。その傍らには、ここのところ模様のはっきりしてきたオイカワの若魚が、3匹ほど寄り添っている。オス同士でもさほど闘争しないので助かっている。でも、メスが成熟してくるまでの短い平穏かもしれないけれど…


2002.12.14(Sat)

挙動不審のヤドカリ
 ずっと前に入れておいた貝殻に寄り添って、ヤドカリが何かやってるなと思ったら、どうも間口を計測しているらしい。ハサミで慎重に幅を計り、奥行きを計り、かなり体を乗り出して、熱中している。私が覗き込んでいるのにも気付かないほどに。

 今年の夏に、実家近くの海で拾ってきたヤドカリの1匹だ。海水R360で暮らす2匹のうち、体の大きな方が、今、本気の転居を検討しているのであった。たしかに今の貝殻ではちょっと手狭になったような感があった。

 でも結局、その貝殻は気に入らなかったらしい。となると、この水槽には似合いの貝殻はもはやない。手持ちの貝殻セットは、みこりんのオモチャにもなっているのだが、そこから手ごろなやつを見繕って、投入してやらねばなるまい。でもなかなかちょうどいいのを探すのは、難しいのだけど。ヤドカリの好みは、あれでけっこううるさいのであった。


2002.12.15(Sun)

神隠しのタナゴ稚魚
 気になる産卵ケースの中で、今朝は異変が起こっていた。タナゴの稚魚が、消えてしまったのだ。
 まさか本水槽の方に出てしまったのだろうか。大慌てで隅々まで視線を走らせる。体長1cm弱では、オイカワやらウグイ達の、いい餌になってしまうだろう。岩陰で、ゆるやかに口をぱくつかせているオイカワの腹の中が、妙に気になって仕方がない。ま、まさか……

 稚魚の姿は、結局見付からず、ほとんど諦めかけていた時のことだった。唐突に、タナゴの稚魚の姿が産卵ケースの中にあった。いったいどこにいたのだろう。いや、そんなことよりも、なんだか妙だ。稚魚の泳ぎ方がおかしい。やけにふらついているし、ときおり鋭角的にひゅっと泳ぐ。体調の悪い魚が見せる動作に、よく似ていた。

 もしや産卵ケースの底に溜まった残り餌が、まずかっただろうか。水温が低いのをいいことに、ちょっと放置してしまっていたのだが、それが水質を局所的に悪化させてしまったかもしれない。さっそく水換えを敢行する。
 本水槽の水をバケツに3杯ほど抜くと、ちょうど産卵ケースの底から1cmくらいまで水位が下がる。この状態で稚魚を別のバケツに移動させ、産卵ケースをきれいに洗った。
 水槽に戻すとき、ついでに小さな流木を1つ入れてやった。産卵ケースには、本水槽とは独立したエアが送り込まれていて、稚魚にとっては結構な水流が発生している。そのため、何か寄り添う場所が必要なんじゃないかと、今更ながらに思い付いたのだ。

 はたして稚魚達の運命や如何に。
 夜には、タナゴ稚魚のふらつきは少しばかり改善したような気がしたが、まったく油断はできなかった。


2002.12.17(Tue)

設定温度の妙
 先日の日曜日に、海水2m水槽のヒーターの設定温度を若干下げてみた。サーモスタットの目盛りでは、余裕で25度を切る位置だったが、温度センサの表示を信じる限り、26度を越えている。誤差がたしかコンマ5度程度の温度センサのはずなので、それを考慮しても開きがありすぎるような気がする。そこで、あえて設定温度を下げてみたというわけだった。

 それから二日が経ち、今現在水槽の水温が何度かというと、0.4度ほどしか低下していない。ようやく25.9度いったところだ。これ以上、サーモスタットの設定を下げると、目盛りは確実に24度を切ってしまうだろう。
 サーモスタットが正常に作動していることは、設定温度を上げて確認してあるので、もしかすると温度センサがおかしいのかもしれない。一度、ちゃんとした温度計で計ってみるべきなのかも。


2002.12.19(Thr)

横たわるタナゴ稚魚
 日曜日の水換え以後、産卵ケースのタナゴ稚魚の様子が気になっていたのだが、ついに力尽きてしまったようだ。底に沈んだタナゴ稚魚。もはやぴくりとも動かない。

 手後れだったのか…
 残りの2匹は、流木の陰でたたずんでいる。やはり寄り添うものはあったほうがいいのかもしれない。特に寒い季節には。


2002.12.21(Sat)

輝ける水槽
 外は雨。家の中は、黄昏時よりも薄暗かった。こんなに暗くては、餌をやっても見えないのではないか。そう思って、川魚90cm水槽のライトを、ぱちっと点灯。ちかちかっと明滅した後、すぱっと水槽が銀色の輝きに包まれる。

 一瞬、魚たちがまたパニック状態になるかと怖れたが、幸いにもそういうことはなく、今度は異様な静けさが水槽に満ちていた。魚たちは一斉に岩陰に潜んでしまったのだ。
 狭い岩穴に大きなウグイがぎゅうぎゅう詰め。オイカワも、端っこの方で寄り集まっている。ぱらぱらと餌を散らしてみたが、寄って来る気配なし。し、失敗だったか。

 でも、夕方には水面に浮いていた餌は、皆、きれいさっぱりなくなっていたので食べてはくれたらしい。だいぶ明るさに慣れてきたということだろうか。でも、相変わらず魚たちは岩陰から出て来る様子はない。しかし、これからも徐々にこうしてライトを点灯していってやろう。そのうち、慣れてくれるにちがいない。


2002.12.22(Sun)

稚魚の移動
 ちょいと遅めの朝食を、魚たちに食べさせてやろうと各水槽を巡っていた時に、異変に気付いた。あの産卵ケースに、稚魚が1匹しかいない!またしても神隠しなのか。そう思いかけたが、今回はすぐに見つかった。2匹いたうちの、小さい方がケースの底に体を横たえている。出来上がったばかりの死体のように、目にも輝きが残っていた。

 もはや残された1匹にも、あまり余裕はないかもしれない。この産卵ケースの環境は、たぶんだめだ。となれば、待避先はただ1つ。川魚90cm水槽の下側に置いてある、タナゴ水槽しかない。
 産卵ケースを注意深く本水槽から外し、中の稚魚をそっと手のひらで救い出した。そのまま静かにタナゴ水槽まで移動させ、そろりと水中へと放ってやる。
 稚魚は意外と元気に真ん中付近で流れに逆らいつつ、泳ぎを始めた。気になるのはタナゴの動きだが、しばらく観察しても特につっかかってくる様子もない。というか、まるっきり気付いていないか、無視しているかのような雰囲気だ。体格も、体形も、まったく違っているのが幸いしたようだ。

 時折、流されて来る水草のかけらをつっついてみたり、産卵ケースにいたときよりも、明らかに元気そうに稚魚は泳いでいた。もしやこの水流が必要だったのでは…。この水槽には以前オイカワが暮らしていた時の名残で、かなり強めの水流がある。もともと小川で生まれた魚だから、この程度の水流があった方がよかったのかもしれない。

 *

 夜、稚魚は朝よりも生き生きと水槽を縦横に泳ぎ回っていた。産卵ケースにとどめておくべき時期は、とっくに過ぎていたらしい。


2002.12.23(Mon)

赤系の魚
 なくなりつつあるシュアーを補充するため、APNへと出撃する。
 展示水槽では、フレームエンゼルやらケラマハナダイといった赤系の魚が目に留まった。フレームエンゼルは、いずれまた飼ってみたい魚の1つ。調子が良さそうなら買っていってもいいかなと、じぃっと目を凝らして状態を観察する。
 つんつんと水槽の底をつっつく元気の良さに、かなり惹かれた…、が、大事なことを1つ忘れていた。これを入れるべき海水2m水槽は、まだ水換えをしていないのだ。
水中ポンプの壊れたあの日以来、何ヵ月が経ったことだろう。いくら魚の数が少ないとはいへ、ここで新しい魚を加えるにはあまりにも条件が悪すぎた。

 じつは水中ポンプの新しいヤツは、すでに買ってある。問題なのはホースがないことだった。いつかホームセンター巡りをして探し出さねばと思っているうちに、どんどん月日が過ぎてしまった。出来れば今年中にはなんとかしたいが、さて…

 赤系といえば、ハタタテハゼのペアもなかなか魅力的だ。これを飼うとすれば、玄関に置いてある海水R360が適当か。がしかし、ここには多数のカニが隠れ住んでいる。少々危険、かもしれない。それに蓋を装備していないこの水槽では、きっと投身自殺をされてしまうだろう。

 というわけで、今年中に我が家の水槽に新顔がやってくることは、たぶん、ない。


2002.12.25(Wed)

冷たい水中にて
 いよいよ冷え込みも本格化してきたためか、ここ数日、川魚達の動きが鈍い。あの寒さに強い我が家のタナゴでさへ、近頃ではすぐには出てこなくなってしまった。泳ぎ回っているのは、先日タナゴ水槽に移動させた稚魚1匹くらい。まるで、これまでの鬱憤を、思う存分晴らしているかのようだ。

 でも餌の量はあまり変えていないのに、夜にはきれいになくなっているところを見ると、昼間には他の川魚達も活動を始めているのだろう。今度の週末にでも実態を確認しておかねばなるまい。


2002.12.27(Fri)

おこぼれ頂戴
 カスミチョウ達に、新品のシュアーを食べさせてみる。いつもより食いつきがいいような…、気もしたが、彼らの食欲はいつもすごいのであまり比較にはならない。ぱくぱくとあんまりよく食べるので、ついつい餌もやりすぎになってしまいそう。
 と思ってるそばから、数粒のシュアーが水底に落下してしまった。ちょっと多すぎたか。

 落下してしまった餌は、どうなってしまうのだろうか。運良くカスミチョウ達に発見してもらえればいいのだが、ケラマハナダイは、まず落下した餌は食べてくれないし。

 どうやら今宵はカスミチョウ達、水中を漂ってる餌を食べるのに夢中で水底のおこぼれにはまるっきり気付いていない様子。このままバクテリアに分解されるのを待つのみなのか。そう思いかけた頃、ゆらっと餌が転がった。
 「ん?」と、アクリル面に顔を近づけてみる。何かが、そこにいたような気がしたのだ。

 シュアーMの1粒は、直径1ミリほどしかない。その周囲を取り囲むように、彼らは貼り付いていた。そこには、トビムシが、わらわらと群れていたのだ。
 この水槽で彼らの姿を見掛けたのも、ずいぶんと久しぶりのような気がする。複雑な岩組みの奥底で、かさこそやっていたのだろうけど、こうして前面に出て来ることは、かなりまれだった。なにしろこの水槽、残り餌が滅多に発生しないものだから、彼らもハナからおこぼれは期待していないようだったから。

 今夜は運が良かったのだ。この調子でヤドカリ達にも出会いたいものだが、未だ発見できず。どこで暮らしているのやら。


2002.12.29(Sun)

謎の岩水槽
 自治会費の集金に来た班長さんと、Licの会話を、座敷で神棚の準備をしながら聞き耳をたててみる。どうも玄関に置いてある海水R360水槽のことを話しているらしい。

 班長さんは、その水槽で何を飼っているのだろうという疑問を持っていたらしい。無理もあるまい。なにしろR360には、ぱっと見、水の中に岩しか入っていないのだから。もしかすると、岩の奥にとてつもない生物が潜んでいるのでは…、そういう予感がよけい好奇心を刺激したのかもしれない。

 ヤドカリや貝等が住んでいるのだと、Licが説明している。班長さんが、ようやく合点がいったというような応答を返していた。でも、本当はこの水槽、“岩”を飼っているというのが正しいのだけれど、たぶんそう説明したところでよけい謎を増やしてしまいそうだから、これでいいのだ。

 そろそろ茶苔が目立ってきた。明日には水換えしてやらねば。


2002.12.30(Mon)

丸裸の陸ヤドカリ
 やけに身軽そうに、さかさかと砂の上を歩いてゆく陸ヤドカリの姿に、不審を抱いて近づいてみる。

 「な、なんじゃぁこりゃぁ!」

 すっかり殻から抜け出してしまっていたのだ。重たい貝殻がないので、移動速度も通常の3倍近い。しかしこのままではまずかろう。原因は不明だが、とにかく貝殻に戻ってもらわねば。

 これまでの貝殻に何らかの不満があったのかもしれないので、ストックの貝殻から似合いそうなのを物色して、ケージの中に散りばめてやった。無事に貝殻に入ってくれるだろうか。
 貝殻の1つに接近してくる丸裸の陸ヤドカリ。入り口に手をかける。緊張の一瞬だ。しかし、そのまま貝殻を乗り越えていってしまった。気に入らなかったらしい。
 気を取り直して、残る5つの貝殻にかける。

 けれど、結局、どれにも入ってはくれなかった。まるっきり貝殻が目に入っていないかのような状態だった。イヤな予感が、する。

 *

 夕方、丸裸の陸ヤドカリは、ケージに入れてやっていた植木鉢の中で横たわっていた。死んでしまったのだ。昨日まで一番元気に動き回っていた個体だっただけに、その死はかなりショックである。とりあえず残りの2匹に異常はなさそうだが、ちょっと心配。


2002.12.31(Tue)

陸ヤドカリの住み替え
 昨日死んでしまった陸ヤドカリが、ずっと使ってきた貝殻が、砂の上から忽然と消えていた。き、奇っ怪な…、いや待て、まずここを確かめてみよう。そろっと植木鉢を持ち上げてみた。ここには残った2匹の陸ヤドカリのうち、一番小さな個体がこもっているはずだった。

 やはり。案の定、彼は引っ越しをしていた。これまでの貝殻を捨て、いまや持ち主不在となった新しい物件に、早々に移住したのだ。
 これだけ元気そうならば、大丈夫だろう。昨日の個体の死が、何か伝染性の病気だったらという不安は、まだ完全に消えたわけではないけれど、こうして活発に活動している陸ヤドカリの姿を見ることができるのは心強い。

 *

 海水R360は、結局、水換えのタイミングを逸してしまった。来年だ、来年。


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