2001.8.1(Wed)
デフォルト推論
今夜みこりんに読んで聞かせている絵本は、例のネズミの大家族のお話“14匹シリーズ”である。今日買ってきてもらったばかりの新しい絵本だったので、私も一緒に楽しみながら読んでいる。
その途中に、地上系の鳥(たぶんコジュケイ:夏の朝とか山のほうから“ぴーぽーぴ ぴーぽーぴ”みたいなもの悲しい声をたてる鳥)が親子で並んで山の中を歩いているところが描かれていたのだが、さっそくみこりんが指さして数えはじめた。その列の一部が木の枝で隠れていたので、てっきり私はそこをとばして数えるだろうと思っていた。が、なんとみこりんはその隠された雛鳥も、きちんとカウントするのを忘れなかったのである。「このむこうにも1つおるね」と言いながら。
おそるべき洞察力。まったく姿が見えていないにもかかわらず、連続して並ぶはずという“常識”をもって、推測している。…そうか、4歳目前のヒトというのは、ここまでの推論を行うことが可能なのか。ありのままを受け入れる時代を過ぎ、己の経験や過去の事例を前提に物事を考えるようになったということなんだろう。
しみじみと絵本を読み終えた私は、今夜の即興夜話のネタを思いつくのに、いつもより苦労したのであった。
2001.8.2(Thr)
落ちた果実
まだまだ大丈夫と思っていたプラムの果実が、ほとんど落果してしまっているとの報告をLicから受けてショックを隠しきれない。今年はたくさん実が成ったので楽しみにしていたのに、まだ一個も食べないうちからほとんど落果&虫の餌食とは、あんまりだ。
幸い、落ちた果実の中から、まともそうなのを数個拾ってくれていたので、さっそく味わってみることにする。あぁこの深い赤色に染まった果肉がたまらなく美しい。でもやはり落果して日が経っていたのか、少々みずみずしさに欠けてしまってたのが残念なところ。
それにしても先日の日曜日には全然平気そうだったのに、たった数日の違いが命取りになってしまうとは。最近の猛暑も影響してそうな予感もする…。だいたい暑かった去年の夏だって、今年ほどじゃなかった。今年の夏ときたら、近頃じゃほぼ連日体温よりも高い気温に達してしまう。しかしまぁ暑いのはまだいい。私は寒いよりも暑いほうが得意だし。このまま冬でも雪が降らないくらいの気候に変貌を遂げるっていうのなら、それもまたよし。…でもきっとそんなうまくはいかないのだろうなぁ。
2001.8.3(Fri)
更新日付
当サイトでは、開設当初から日記の更新日付は、最新の日記日付に一致させるようにしてきた。今日の更新で7月31日までをアップロードしたとしたら、Updateは7月31日ということになる。
でも今夜、ふいにそれが奇妙なことのように思えてきたのでさっそく変更してみることにした。Updateは、ファイルを更新した日付。これにプラスして最新の日記日付も併記する。
本来日記とは、毎日その日の分を更新すべきとは思いつつ、なかなか忙しさに押し流されて、そうも言っていられない日が多い(というかほとんどのような)。時間差更新の場合は、いつ更新されたかという情報のほうが重要なんではなかろうか…と。まぁこれは作成者の勝手な思いこみかもしれないけれど。
2001.8.4(Sat)
落果のありさま
落果したプラムの現状確認をする。ウッドデッキを降りたあたりから、甘酸っぱい香りに包まれ、なんだか妖しの小径にでも彷徨いこんだかと思うような雰囲気だ。
枝の下には、そこかしこに甘そうに色づいたプラムが落ちている。こちらから見える部分には外見上の不都合はない。もしかしたらそのまま食べられるかも…と淡い期待とともに手に取ってみると、裏側は何者かに食い散らかされているのだった。何か鋭い突起物で突き刺したような感じに、ざくざくと穴が空いている。虫にやられたというより、これはどうも動物っぽい。想像するに、たぶん小鳥だ。小鳥のクチバシが、こいつの傷跡を説明するのにもっとも適しているような気がする。
想定される小鳥のサイズは、スズメよりも大型で、カラスよりも小さい。冬なら間違いなくヒヨドリかツグミということになるけれど、夏場にこのあたりで果実をつっつくような鳥といえば……うーん、わからん。カラスとスズメ、そしてツバメ以外で最近目撃した鳥といえば、先月あたりにさえずっていたシジュウカラ(あるいは、その近縁種)くらいだ。彼はプラムを食べるんだろうか?(食べなさそうな感じだけど)
しかしまぁ、10個以上の美味そうなプラムが地面に散らばって甘い香りを放っている図というのも、なかなか壮観ではある。もったいなさすぎて目頭が熱くなるほどだ。もう絶対来年は袋かけよう。そう心に誓った午前中であった。
ニセアカシア伐採
みこりんの誕生記念樹“ハリエンジュ(桃色花)”、それの地下茎で増えた“ただのニセアカシア(白花)”、双方の勢力差はもはや明らかだった。ただのニセアカシアが圧倒的に優勢である。その辺り一帯がまるでジャングルのように、ものすごい量の枝葉で覆われてしまっている。
でもハリエンジュも、かなり復活してきていた。春頃にはちょぼちょぼっとしか新芽が伸びてこなくて、もはやこれまでと思いかけていたのだが、それを考えると今の状態は嘘のように勢いがある。
しかしこのままハリエンジュとニセアカシア(白花)を隣接させていたのでは、何かと不安が残るのも事実。それに、地下茎はどんどん他の場所にも進出を始めていて、玄関前のコンクリート板が1cmほど盛り上がりつつあったりもするのだ。なんとかせねば別の問題も発生しそう。
というわけで、午後からさっそく伐採にとりかかった。剪定ではない。伐採だ。ニセアカシア(白花)は切り倒すことに決定した。
上の方の枝をまず落とし、身軽にしておいてから直径10cmほどの幹に臨む。ノコギリはあいかわらず金ノコしかないので、じつに切りにくい。何度も刃先を挟まれ進退窮まる事態に陥ってしまった。しかもすぐ隣には山椒の木が生えていて、鋭いトゲがむき出しの腕にひっかかるひっかかる。じつに痛痒い。汗がしみると、もうしんぼうたまらんほどに痒くなる。これで藪蚊でもいた日には死ぬ思いを味わうことになっただろうが、なぜかここには蚊が出没してこない。なんてラッキーな。
幾多の障害を乗り越え、なんとか無事、伐採に成功した。地下茎も途中で切断。後続を断つ。
伐採した幹、枝、小枝などは、Licとみこりんがずるずると引っ張って、ガレージにまで運んでいってくれた。この“引っ張っていく”という動作が、みこりんには楽しいみたいで、率先してお手伝いしてくれた。
枝打ちをさらに行い、適度な長さに切りつめたのち、積み上げて保存する。いい感じの丸材になりそうだ。来年はこれで雑草置き場でも作るとしよう。
伐採してすっきりとした空間には、いい感じに木漏れ日がかかる木陰のできあがり。さらに、西にゴールドクレスト、東に山椒、月桂樹と、ここは良い香りに恵まれている。今日の猛暑の中でも、ここだけは別世界である。みこりんがレジャーシートを敷いて、さっそくピクニックごっこを始めた。家の中にもこうした天然のクーラーがあるといいなぁ…などと、つい思ってしまうのだった(地下茎で伸びてきたやつが床を突き破ってきたらちょっと怖い…)。
夕方から夜
夕方、みこりんとお散歩に出かける。目的地はいつもの川だ。でもみこりんはドングリを採るのだと意気込んでいる。この季節、ドングリはさすがにないんじゃないかと思ったものの、実際、川辺のドングリの木の下までやってくると、すでにドングリができつつあるのを発見した。まだヘタの中にすっぽり収まるくらいのミニサイズだけど、みこりんにはこれで十分だったようだ。とにかく小さいのがいいらしい。
川に降りてみると、なんだか藻が多くなってるような気がした。水位もかなり低くなっている。ここのところ雨降ってないからなぁ。
河川改修工事で川幅が拡げられているのも痛い。いや、川幅が広がるのはいいのだけれど、均一にならしてしまうんじゃなくて、水位が低くなりすぎないように中央付近をちょっと深くしてくれてれば…と思わずにいられない。
魚達は、改修されてない部分で群れていた。ここは川幅が狭いので水深がそこそこあるのだ。でも、いずれ改修工事の対象となってしまう。どこか逃げ場があればいいのだけれど…
*
夜、地元の花火大会を家族で見物に出かける。クルマを路肩に停めて、会場付近までひたすら歩いた。みこりんがそれを要求したのである。人が多いところに行きたいらしい。その理由はといえば……きっと花火の大きな音が怖いのだろう。
かなり歩いて人もそれなりに多くなってきたところで、歩道の縁石に並んで座り、夜空を見上げる。あの、ミドリの火球が“ひゅんひゅん”奇妙な軌跡で飛び回るヤツが、変わってていいな。
今日も一日、よく歩いた。
2001.8.5(Sun)
夏の朝
ふっと目が覚めて、時計を見る。…6時過ぎ。今日が何曜日だったか思い出せず、不安になる。
寝ているLicに聞いてみると、 「……日曜日………」 という微かな返答があったので、ようやく安心する。よかった。まだ日曜か。それにしてもLicは寝てるときにも、耳は起きてるんだろうか。自動応答装置が内蔵されてるとしか思えない。じつに便利な機能である。
朝顔が満開なうちに、庭を歩くのはなかなか気持ちがいい。いかにも夏休みっぽくて、どこかからラジオ体操第二の音楽が聞こえてきそうだ。
そうこうするうち、みこりんが起きてきた。珍しく自分で着替えも済ませてる。夢見がよかったにちがいあるまい。
午前10時。ビニールプールに水を張り、みこりんを泳がせる。顔付け4秒。片目開け可。ばたあし可。よく水となじんでる。
少し風が出てきたので、プール午前の部、ここで終了。
用水路で魚採り
午後、市民農園にて。例によってこんな暑い時間にやってくるのは、うちの家族だけらしい。
雑草は先週大規模に抜いておいたので、今日はあまりやることはなかった。適当に追肥をやり、脇芽を摘み、結束の弛みを直し…。
用水路方面からLicがなかなか戻ってこない。小魚採れるかな、とか言ってたのでひょっとするとタモ網で魚採りに興じているのかも。しかしまぁ用水路で魚採りができるというのも、なんだか懐かしい。私の故郷では、中学生頃にはもう用水路から小魚の姿が消えてしまってた。あっというまの出来事だったように記憶している…。
一仕事終えた頃、Licとみこりんが戻ってきた。クルマで熟睡していたみこりんもようやく目覚めたらしい。そしてその手に握られているのは、小さなプラケ。中には小魚が数匹と、巻き貝が1匹入っていた。小魚は体長1.5cmほどの稚魚ばかり。種類は特定できず。少なくとも2種類いそうなことはかろうじてわかった。
みこりんが起きてきたので、もうしばらく作業していくことにする。みこりんはといえば、持参してきたレジャーシートにちゃっかり座って、ピクニック気分を満喫しているようす。昨日もニセアカシア伐採跡地でおんなじようにシートを広げてたみこりん。アウトドア志向なところはじつに結構。
夕暮れが近づいてきたので帰り支度を始める。帰り際、用水路でふたたび網をふるうLicとみこりん。ついでに水も新しく換えて、と。
このあと、みこりんを最大の恐怖が襲うとは、いったい誰が予想しえたであろうか……
やってきたもの
家に帰り着き、さっそく小魚達を廊下の水槽に移していると、至近距離で 「にぃ… にぃ…」 いう鳴き声が聞こえてきた。
な、なにやつっ!?
みこりんと共に振り向くと、玄関ドアのすりガラスを通して、小さな黒っぽい生物が動いてるのが見えた。ま、まさか……。嫌な予感。
その間にもその生物が発していると思われる鳴き声は、ますます激しさを増し、もはや放っておける状況ではなくなった。みこりんの表情がだんだんと険しくなってくる。いったい外には何がいるのか。意を決して、玄関を、開けた。
「にーーーーーーーーーーっ!」
突然、そいつは金切り声を上げてすり寄ってきた。もはやここまで。みこりん大絶叫。得体の知れぬ小さな黒い生物に、みこりんは怯えきっている。
そいつの正体は仔猫だった。片手で十分持てるくらいに小さな仔猫。体色はシルバーと黒がまざった濃いグレー。緑色した瞳が、やけにまん丸で、特徴的だった。
「にぃにぃにぃ」と、さらにすり寄ってくる仔猫。めっちゃ人なつっこい。でもみこりんにはそんなこと関係なかった。怖くて怖くてどうにもとまらない状態である。猫だから大丈夫と言っても、効果無し。よほど最初の出会いが悪かったとみえる。
Licにいったんみこりんを預け、私は魚の移し替え作業に戻った。とにかく今は魚をなんとかするのが先決だ。そのうち仔猫もいなくなるだろう。
そろそろ水槽作業も終わろうかと言う頃、表通りで子供の悲鳴が聞こえてきた。みこりんだ。すぐにわかった。Licに連れられて外に出ていたみこりんが、ふたたび仔猫と遭遇したのだろう。それにしてもものすごい泣き声である。ひょっとするとみこりんは、あれが猫だとわかっていないのかもしれない、とさえ思ってしまう。
にゃんちくんが、ぴくっと玄関方面を見つめている。ま、まさか…
「にぃ」
戻ってきた。そろぉっと玄関を開けると、先ほどの仔猫がちょこんと座っていた。すっかりくつろいだふうに、足元に寄ってくると体をすりすりし、そのつぶらな瞳でまっすぐに見上げてくる。う、うくく。なんというおそるべき攻撃だ。この“可愛い光線”を浴びて平気な動物好き人間はいまい。ついに私は手を出してしまった。喉元をさすりさすりしてやる。ごろごろ喉をならして甘える仔猫。こいつ、もしかして飼われてた仔猫なんじゃ…。野良にしてはなつきすぎだ。
そこへみこりんとLicが戻ってきた。あいかわらずみこりんは怯えたままだ。さてどうしたもんか。仔猫は、海老根の葉っぱに猫パンチをくりだし、じゃれている。なんとなく、いつきそうな予感…
こんな小さな仔猫が自立していけるとは思えない。だが、我が家にはすでににゃんちくんがいる。2匹もどうやって家の中で飼うというのだ。ケージの置き場所だって困る。しかもこいつはオスだ。いたずら度数は、おしとやかなにゃんちくんの比ではあるまい(注:にゃんちくんはメス猫である)。
悩みつつも、ドアをいったん閉めた。仔猫は玄関ドアの脇で、寝そべってるらしい。いつくつもりなのか…。そうなのか?
*
夕食の間中、私は迷っていた。これほど迷ったことは、おそらくここ数ヶ月、いや数年来なかったと思う。迷いに迷った。結局、結論は出ぬまま、とりあえず仔猫の様子を見てこようと、玄関を開けた。
そこに、仔猫の姿はなかった。最初からそんなものはいなかったかのように静けさが支配している。仔猫の姿は消えた。しばらく懐中電灯を手に探してみたが、どこにもいない。鳴き声はしないかと耳を澄ましたが、ただ夏の虫が心細げに遠くて鳴いているだけだった。
仔猫は、やってきたときと同じくらい唐突に、我々の前から姿を消したのだった。
2001.8.6(Mon)
夏の食べ物といえば
夏といえば冷やしそうめんに西瓜、焼き茄子あたりがポピュラーかと思うが、このあたりの地方では、“辛子豆腐”と“茹でササゲ”らしい。私もLicも地元人ではないので、その2つとも食べるのは今日が初めてである。
“辛子豆腐”は、丸い球形の豆腐の内部に、辛子が詰まってるという。さっそく箸で割ってみると、たしかに黄色い辛子がたらぁりと垂れてきた。そのままほおばると、じつに辛い。冷や奴に生姜ならいつものコンビだが、豆腐に辛子の組み合わせは、どうしても“おでん”を思い出してしまう。でも辛子豆腐は冷えているので、慣れないうちには妙な感じ。でもどうして内部に辛子が詰まってるんだろう。上から乗せるんじゃだめなんだろうか。謎である。
さて次に茹でササゲだ。ササゲというのは、豆みたいなサヤに入った実なのだが、これがじつに長い。国華園のカタログで見た中には1m以上もの長大な実をつけるササゲも紹介されていた。そのササゲを適当な長さに切り、茹で上げ、それを辛子醤油で食べるのである。茹で時間がポイントらしい。
少々歯ごたえがありすぎるような気もしたが、まずくはない。でもそれほど美味くもないような…。まぁこのへんは好みの問題か。
2001.8.7(Tue)
眠りの向こうで
みこりんが寝るまで、絵本を読んでやったあとに、さらに即興自作お話を語って聞かせるという日々がいつまで続くのかはわからない。が、なかなか頭の体操になってそうな気もするので、ネタが枯渇してしまうまでは続けてみようかと思っている。
ネタをすぱっと閃いたときなんかはじつに爽快な気分で語れるのだが、苦心惨憺の結果、どうもノリの悪いお話になってしまうこともままあり…そんなときには早々にうち切ってしまうに限る。でも、今夜のように先に睡魔がやってきてしまうとどうにも不思議な状況になるらしい。
私の意識はすでに眠りの世界へと入ってしまっていて、軽〜く夢なんかを見てたような気がする。でも、ふっと我に返ったとき、自分の口が勝手に動いていることに気がつくのである。まだお話は終わっていなかったらしい。寝ながらも、お話は続いている。でも本人は夢の世界を彷徨っていた…。いったいお話を語って聞かせていたのは、誰なのか?私か?無意識のうちに?夢を見てる裏側で、別のタスクが動いていたということなのか…
眠りながら語るお話が、いったいどんなものだったのか、ちょっと気になっている。思わぬ傑作を語っていたらもったいないし、あるいは、とんでもない内容だったら心配だ。今度寝そうになったら、録音しておこうかな。
2001.8.8(Wed)
“なし3キロ箱”
“月刊SkyPerfecTV!”は、その名からも想像できるとおり SkyPerfecTV!の番組情報誌である。我が家も定期購読しているのだが、それをトイレの友としてぱらぱらめくっていると、ある一点に目が留まってしまった。
各チャンネルからのプレゼント一覧のページがあるのだが、私もひいきにしているスーパーチャンネル(スタートレック・シリーズとか海外ドラマ主体のチャンネル)のところで、こんなプレゼントを見つけてしまったのである。
旬のくだもの「なし 3キロ箱」10名様
他のチャンネルはといえば、それぞれの番組内容に即したものになってる中で、このスーパーチャンネルの“なし3キロ箱”だけが異彩を放っている。でも安心してほしい。スーパーチャンネルのプレゼントはこの“なし3キロ箱”だけではないのだ。ちゃんとこんなものも用意されている。
- 傑作映画小説「フリッカー、あるいは映画の魔(上下巻)」
- 「スタートレック エンサイクロペディア完全日本語版」
- 「マイケル・J・フォックスのスピン・シティ」よりスピン・シティTシャツとクリア・ホルダーのセット
- 幻のキングコング映画「クイーン・コング」の劇場招待券
ぜんぜん普通だ。ゆえに、よけい目立つ“なし3キロ箱”。やるなぁスーパーチャンネル。私は“なし3キロ箱”は大好きだ。5キロ箱でも10キロ袋でもOKである。この勢いで、また秋には丸ごと24時間スタートレックを希望したい。
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真相は、たぶんスポンサーにくだもの関係が入ってたと記憶してるので、その絡みなんだろうけれど…。
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2001.8.9(Thr)
夏の虫といえば
我が家についに夏の定番「鈴虫」がやってきた。あの真夜中のけたたましい鳴き声(声といいつつ、実際は羽根を擦り合わせて音を立ててるわけだが)は、幼少のころより骨身に沁みているので、自分で買ってきたわけではない。みこりんが保育園でお友達からもらってきたのである。おそらくこの季節、去年の卵から孵化した鈴虫の子供達が“わらわら状態”になってしまったのでクラスメイトにお裾分けということになったんだろう。
オスが二匹。まだ羽根が生えそろっていない子供である。でもサイズはもうほとんど成虫。我が家の夜の静寂が破られるのも、時間の問題かもしれない。……とかいいつつ、すでに庭ではキリギリスの仲間やらコオロギの仲間が大合唱を始めつつあるので、ほとんど影響ないかも。まぁ一度は鈴虫の大音量を体験させておくのも悪くはあるまい。来年、鈴虫を欲しがるかどうかでみこりんの虫好き度数もわかるというものだ。
2001.8.10(Fri)
PCの値段
鈴虫脱皮!ついに羽根が完成したらしい。そしてもう1つ気がついたことがある。オス2匹かと思っていたが、どうやら残り1匹はメスらしい。ペアで配布されていたのか。すると、増える…かもしれない。
今夜も庭の虫たちは、夜通し賑やかだった。
ところで明日から夏休み第二弾である。つまり、夜更かししても大丈夫。というわけで、ようやくサーバ機の組み立てに取り掛かることにした。今週注文しておいたヒートシンクと冷却ファンが届いたので、もはや問題は何もない。
みこりんとLicが寝入った後、着々と部品を組み立て電源を入れる。よしよし無事動いたようだ。でもハードディスクがまっさらなので、何かOSを入れて動作確認しておかねば…と、雑誌にくっついてた RedHat Linux 7.1を入れてみた。こちらも問題ないようす。今回の部品はいずれも新品ではあったが、OEMのメモリに、ノーブランドの電源&ケース(しかも安い)、アウトレット品のマザーボード、それにAMDのTHUNDER BIRDということで、若干不安を感じていたのだが、とりあえず無事に動いたようでホッとする。でもサーバ機として連続稼働させてどうなるかは、まだ未知数。いつまでも扇風機でカバーを外したマシンを冷やしておくわけにもいかないし……(きっとみこりんが触るにきまってる。でもコンピュータ内部を直に見せておくのもいいかもしれない)。
ちなみに今回使用した各パーツの値段を以下に記しておこう(FDDやキーボード、マウス、CRT、CD-ROMドライブは手持ちの部品を流用した)。たぶん来年これを見たら、物価の下落に驚くことになるんだろうなぁ…(インフレしてたら嫌だな)。
種別 | 型番 | メーカー | 価格+(送料) |
---|---|---|---|
ケース(電源) | ATXミドルタワー 300W電源 | ノーブランド | 4,980+(900) |
CPU | THUNDER BIRD 700 SLOT A 200MHz TRAY 1 | AMD | 6,990+(809) |
M/B | ATX GA-7IXE BOX(SlotA) | Gigabyte | 3,480+(1,000) |
メモリ | SDRAM 256MB PC133 CL3 | OEM | 3,280 |
HDD | 20.4GB ATA100 5400rpm MPG3204AT-E | FUJITSU | 8,110 |
ヒートシンク+ファン | P612H35M | アルファ | 3,380+(950) |
合計 | 30,220+(3,659) |
2001.8.11(Sat)
懐かしい夏の午後
朝からみこりんとLicはアイススケートを観に出かけてしまった。例の“ねずみーランド”の御一行様が近くに来ているのだという。
家事や雑事は午前中のうちに全部終わった。さて、あとは何して過ごそう。昨日までの雨模様が幻かと思うほど、今日の天気はまばゆく暑い。あぁ静かだ。蝉時雨が耳に痛い。
だだっぴろい布団に寝ころんで、チューナーのスイッチを入れる。トークの内容がようやくわかるくらいの音量にしぼったところで、目を閉じた。窓からそよそよと流れてくる風が心地よい。こんなのんびりとした夏は、そういえば最近味わったことがなかったような…。この妙に懐かしい気分はどうだ。いまにも襖の向こうから、お祖母ちゃんがよく冷えた西瓜とサイダーをお盆にのっけて登場しそう。……もうじきお盆か。
いつのまにか眠ってしまっていたようだ。電話が鳴っている。お迎えに行く時間だ。
熟れた果実
そろそろ食べ頃だろうと庭で大きく育っていた西瓜を2つ収穫した。いつのまにか葉っぱはおろか茎まですべて黒く枯れていて、かなり焦ってしまった。もしや手遅れになってしまったのではないのか、と。
じつは同じように育っていたメロンが、両手で持ちきれないほどに大きくなっていながら下半分が腐ってしまっていたのを、ついさっき発見したばかりなのであった。こちらはまだ葉っぱも茎も健在だったにもかかわらず、だ。1週間前はこうではなかった。あの時、採ろうかどうしようかと随分迷ったあげく、もう1週間待ってみようと決めたのだった。それがよもやこんな結果になろうとは。
午後、さっそく大きな方に包丁を入れてみることに……って、うわっ!いきなり弾けた。切っ先がわずかに入っただけで、もう2/3ほどまで亀裂が走っている。完熟だ。もうちょっと遅ければ、食べられたものじゃなかったかもしれない。
果肉は鮮やかなレモンイエローで、じつに涼しそうだ。やはり西瓜は二色取りそろえておくのがいい。さっそくみこりんがかぶりついて、「うまい!」と報告してくれた。うん、たしかに瑞々しくてよし。若干熟れすぎてるきらいはあるものの、まぁ許容範囲だろう。これが1週間前ならもっと………いいや言うまい。来年こそは同じ失敗をしなければよいのだ。
明日は畑の赤玉を収穫してこようと思う。消滅してませんように。
2001.8.12(Sun)
“もののけ”
昨日からLicの買ってきた『百鬼夜行抄1〜3巻』(今 市子 朝陽ソノラマ版)を読んでいるが……じつに、いい。こいつはすごい。“もののけ”の描かれ方も、へんにグロっぽくなくてよし。昔の高橋留美子の描く“もののけ”に相通ずるような気もするが、そういうところも私の波長に合うのだろう。文鳥も好きだし。
でも一番良いのは司ちゃんである。そのまま内田美奈子の作品にも登場してきそうなキャラ、というのが私の第一印象であり、読後もそれは変わっていないのだが、内田美奈子作品を知らない人にはなんだかわからないと思うので以下簡単に特長を書いてみると、こうなる。
- 黒髪(しかも長い)
- 思い詰めるタイプ
- 天然ボケ
- 実直
- でもちょっと小悪魔的なところも…
- そしてじつは人並み外れた能力が…
ところで、この作品を読んだあとは、なぜか和室の掃除をしたくなるのもいい。おかげで部屋がキレイになった。めでたしめでたし。
2001.8.13(Mon)
夕暮れの“虹”
渋滞に巻き込まれずに帰省するには、今日と明日のいずれが最適だろうか。“行き”はピークを過ぎているだろうことは明白だったが、問題は帰りである。世間一般の標準的なカレンダーでは、16日がお盆休みの最終日のような気もするし、その翌日の金曜日だと週末にひっかかる。どっちに転んでもそこそこ混みそうな予感…。悩みに悩んだ末、結局今日に決めた。早めに帰って、休暇の残りを多くとっといたほうがよかろうというのが最終的な結論となったのだった。
予想どおり今日の混雑はほとんどないに等しく、いつもより快調なペースで瀬戸大橋へと進んでゆく。時折、ぱらぱらと雨粒が降ってくるが、西に傾く太陽の輝きはまだ衰えることなくぎらついている。一山越えると、目の前に虹が架かっているのが見えた。まるで絵に描いたような巨大なアーチ状の虹である。Licがすかさずみこりんに“虹”の実物を見せようとしたが、透過光ゆえか、みこりんはなかなか“虹”に気付いてはくれなかった。みこりんにとって、初めてのホンモノの虹である。空にそんなものが現れることを知らなければ、なかなか見つけられないのかもしれない。
だいたい、みこりんは“虹”という単語が何を意味しているのかを知らないのである。これを説明するのはなかなかに難しかろう。じっと立ち止まっているのならともかく、高速走行中のクルマの窓越しでは、頻繁に位置が変わってしまって「あのへんに!」と指さした時には、もうあさっての方角にあったりするので大変だ。
それでも、Licの持てるボキャブラリーすべてを用いて“虹”を表現しようという熱意が通じたか、やがてみこりんは“虹”を発見してくれたのだった。ありのままを受け入れたのか、「なぜあのようなものが…」系な質問はなかった。虹の発生原理を説明してやろうと密かに待ちかまえていたのだが、ちょっと残念。
みこりんが“虹”を認識したあとは、Licはひたすら虹の写真撮影にはまっていた。無理もない。私もこれほどはっきりくっきりとアーチ状にかかった虹を見たのはそう多くはない。でも、Licがここぞとシャッターを切った瞬間は、なぜか目の前に突如防音壁が立ち塞がったり、山に隠れたりして、ことごとく妨害されてしまうのだった。どうも“虹”に嫌われているらしい。
それにしても素晴らしい夕暮れである。周囲に高層建築物がないのと、讃岐平野のおかげで空が180度以上開けて見える。遙か彼方まで続く油絵のような雲の断片が、光の陰影をくっきりと空に描き出していて、思わず「じん」としてしまうほどに美しい。子供の頃は、こんな夕暮れをよく見ていたような気がする。瀬戸内独特の風景なのかどうかはわからないが、今の居住地では見たことがないように思う。
太陽が沈みきる前に、実家へと到着。みこりんを抱っこして玄関を開けた瞬間、ものすごい絶叫が轟き渡る。みこりんだ。いったい何事かと廊下の奥を見やれば、ちょうど飼い猫の“ふーた”が、階段のところから、じっとこっちを見つめていたのだった。
黒猫は、みこりんの鬼門らしい。結局、この日から金曜まで、“ふーた”はみこりんの起きてる間中、ケージ生活を余儀なくされることとなる。
*
昨日、畑から収穫し、持参してきた赤玉西瓜を皆で食す。まずまず。
2001.8.14(Tue)
魚影
ふと思い立って、小さい頃よく遊んだ川まで家族3人で散歩に行くことにする。一山越えたら到着だ。といっても20分も歩けば着いてしまうほどの近場である。
山の中まで家が建ち並ぶほどに風景は変貌していたが、変わったといえば川の中もすごかった。川辺から覗き込んだ水中は、ものすごい魚影で水底がよく見えない。魚が七分で水が三分…といっても過言ではないほどに。
子供時代よりも魚の数が増えている。高校を卒業するころには、汚い苔に覆われて、まるでどぶ川のような有様になっていたというのに、この回復ぶりはどうしたことか。下水処理施設が完備された、のかな……。あるいは河川周辺の零細工場が多数廃業してしまったから、かな…
ところでこの魚達には、あんまり見覚えのない特徴がある。どうも全身緑っぽく見えるのだ。赤い色彩でも混じってないかと目を凝らしたが、それっぽいものは確認できず。……まさかこれみんなブラックバス、なんてことは…ないだろうけど、群の中にはブルーギル&ブラックバスらしき姿がはっきりと見える場合も二度三度四度。でもこの大群の中にあっては、ほとんど影響なさそうな感じだ。
来年は久しぶりにこの川で釣りでもしてみようかと思う。いったい何が釣れるのやら。
波に揺られてちゃぷちゃぷ
海無し県に住まうものとしては、瀬戸内に戻ってきたときにはやはり海水に浸かっておかねばなるまい。みこりんに海と川の違いを体感させる絶好のチャンスでもあるし。
というわけで、一昨年と同じく遠浅の浜辺へとやってきた。前回は貸し切り状態に近いほどのガラ隙だったが、今回は結構な人出である。とはいえ、芋洗い状態にはほど遠いので、問題なし。
あいかわらずぬるい海水だ。ゆーらゆらと漂ってみる。青空だが入道雲がない。なんというかどことなく秋の気配漂う感じ。
みこりんを浮き輪ごと沖まで連れ出し(でも遠浅なのでみこりんの足はまだ着いてる)、岸まで一緒に泳いでゆく。これを数回繰り返してみたが、みこりん、海はぜんぜん平気らしい。たまーに着地に失敗して足が空を切ると泣きそうになるが、海水そのものはまったく意に介していないようだ。目に入っても大丈夫そうなのには少々驚いてしまう。
砂地の上で、足の裏にときたま“ごつ”っとしたものに触れるのは、たぶんガザミの子供が潜んでいるのだろう。ついさっき一匹捕獲して、持参したバケツに入れてみた。飼ってみても面白そうだが、さすがに遠路持ち帰るには装備が不足している。帰りには逃がしてやろう。代わりに留守番中のヤドカリ達の住処でも持って帰ってやろうと思ったものの、巻き貝はほとんど見あたらなかった。というかヤドカリそのものがあんまりいないようだ。ちょいと残念。
しかし今回のトピックはなんといっても、異様にセクシーな子連れの若奥様を拝見できたことに尽きる。ありがたやありがたや。
2001.8.15(Wed)
古きもの
ふと思い立って、実家の倉庫を物色してみた。ひょっとするとまだ残っているのではないかと思ったのだが、……………「あった!」PC-8001が。
初めて買ってもらったコンピュータ。20年前のパーソナルコンピュータ。ついでにプリンタまで発掘されてきた。でもモニタは無し。どうやらこちらは捨てられてしまったようだ。おまけにケーブル類もなし。
モニタはPC98用のが余ってるのでなんとかなるとして、ケーブルはなんとかしないとなぁ…。というかこいつまだ動くんだろうか。とりあえずこれは持って帰ることにしよう。
発掘品はこれだけに留まらず、アナログレコードプレーヤーも見つけだすことが出来た。弟のところにあるものとばかり思っていたが、いつのまにかお払い箱になってしまっていたらしい。もったいないもったいない。これも保護してやろう。幸い、アナログレコードのほうも戸棚の奥に眠ってるのを見つけたことだし、丁度良い。
でもこいつ…、動くんだろうか。これもまた20年くらい昔のだから、かなり心配。最後に電源入れてからでも、15年くらいたってるような…。
発掘の過程で、さらに懐かしいものも発見した。小学生の頃に流行ったカード類だ。古くはライダーカードに始まり、スーパーカーのカードやら、アニメ&特撮モノなどすべてが残されていた。ひょっとして最近ではこういうのでも売れたりするんだろうか…などと不埒なことをちょこっと考えつつ、また箱に戻しておいた。もうちょい寝かしておこう。
2001.8.16(Thr)
眠る蝉
渋滞にはまったのかどうか微妙なところだが、“行き”よりも4時間近く余分にかかってしまった帰り道、なんとか日付が変わる前に我が家へと帰還することができた。大量の荷物をクルマから順次運び出し、最後に熟睡しているみこりんをチャイルドシートから取り外す。そぉっと抱き上げたつもりだったが、目を覚ましてしまった。
寝る前の状況と一変している外界に、かなりとまどっているようだったが、門柱にとまって寝ているアブラゼミを発見すると、とたんに活き活きとしだすのだった。蝉はみこりんにとって、近頃の最重要“虫”らしく、よく「つかまえて」とお願いされたり、自分でも捕まえようとすることが多い。が、今宵はみこりんも疲れているのか、「あしたおきたらつかまえる」ことにしたようである。
みこりんの捕まえたい虫が、こうして近頃どんどん大型化の一途を辿っているので、そろそろ専用の虫かごやら大型のプラケースやらが必要になってきた。でも蝉を飼うのはちょっと難しいかな。代わりといってはなんだけれど、夏の間に一度は早起きして、みこりんと一緒に山で虫取りでもしてみようかと思う今日この頃である。
2001.8.17(Fri)
備蓄食糧に手をつけるとき
留守の間、食べ物に困らないように、猫とハムスターとヤドカリ達にはそれ相応の食糧を入れてやっていた。が、今朝確認したところでは、猫とヤドカリ達は予想どおりの減りだったのに対して、ハムスターの“ことりさん”だけはほとんど変化がなかった。水分補給用のキュウリは、そこそこ囓った痕が見られたが、その他の餌はまったく手をつけていないかのように、元通りそこにあった。な、なぜだ……。
ことりさんの名を呼び健康チェック。いつものように最初ちょこっと鼻面だけ出したあと、ひょこっと姿を現してきた様子には、特に変わったところは感じられない。新しい餌に替えてやると、これまたいつものようにがつがつとほじくり返し始めるのだった。
うーん…これはひょっとすると彼は備蓄食糧で食いつないでいたのかもしれない。留守中は特にヒマワリの種ばっかり食べては困るので、意図的に人工飼料だけにしておいたのだった。普段はヒマワリの種を5〜6粒は混ぜてやるのだが、留守用に同じ割合で混ぜてやると、かなりのものになってしまうから…。
彼の食料庫には、ヒマワリの種をはじめとして、各種穀類が溜め込まれていることには以前から気がついていた。たしかにこういうときに備蓄食糧は使うものだけど、どうして彼は“今がその時”だとわかったんだろう。不思議すぎる。
アブラゼミのその後
みこりんは覚えていた。昨夜、アブラゼミが門柱にとまっていたことを。そして、起きたらそれを捕まえると宣言したことを。
いつものように一人で起きてきたみこりんは、リビングへとやってくると、「せみつかまえてくる」と呟き、玄関方面へと消えていった。あわてて後を追い、鍵を外してやる。はたしてアブラゼミはいるだろうか。今は午前9時過ぎ…まだアブラゼミが寝てるとは思えないが…
網を片手に玄関を出ていったみこりんは、なかなか戻ってこなかった。アブラゼミがいないことがショックなんだろうか…と、そっとドアから覗いてみると、ポーチュラカの花を“ちゅうちゅう”吸ってるみこりんの姿があった。アブラゼミは、やっぱり姿を消していたのだった。
2001.8.18(Sat)
肉食のヤツ
ゆく夏をはかなんで、例によって庭で炭火焼きをすることにした。
今回も焚き火台を使う。炭は去年からの残りが十分あるので、あとはちゃっちゃと着火するだけだ。これも去年からの剪定くずが、からっからに乾燥してガレージに積み上げられているので、問題ない。
着火マンで点火すると、あっという間に火は燃え上がり、徐々に炭もヒートアップ。最後の仕上げに団扇で盛大に扇いでやると、ほどなく赤々と輝き始めるのだった。あぁ、やはり夏の夕暮れは炭火が似合う。鼻の奥にツンと染みいる煙がたまらん。
炎が落ち着いてきたところで、肉を並べていったのだが、ぬるぬると艶めかしく柔軟な生肉達は、焼き網の隙間から、1つまた1つと、業火の中へとその身を投じていってしまうのであった。…しまった、そういや去年も同じような失敗をしたような気がする。もっと目の細かい焼き網買っておかなければ。
それでもなんとか肉達は順調に焼き上がり、はふはふと熱いうちに食してゆく。と、そこへ羽音も激しく1匹の大きな蜂が飛来してきたのである。スズメバチだ。種類まではわからないが、そこそこに大きい。たぶん刺されたら猛烈に痛いにちがいあるまい。じっと動かず蜂の行く先を目で追っていると、やがてそいつは皿に盛った生肉の上に着地した。ぬぅ、さすが肉食。うまい肉には目がないとみえる。だが、その肉は我らのもの。今回はお引き取り願おう。
みこりんの虫取り網で捕獲を試みる。へたに刺激して反撃を喰らっては大変なので、一発で仕留めねば…。かなり緊張する。
ばさっ
よ、よぅし、やった。素早く網を捻って出口を塞いで、地面に伏せる。その上から何か重しになるものを乗っけようと近寄ったところ、スズメバチは網を器用にかいくぐり、脱出してしまった。ふ、不覚!!
ささっと緊張が走ったが、スズメバチは脱兎のように東の空高く、一目散に逃げ去っていったのであった。
これでようやく安心して肉が食える。
*
Licが“ツクツクボウシ”の声が聞こえると言う。む、そんな馬鹿な。まだ早い……だが、たしかに耳をすませば遠くのほうからあの物悲しくも暑苦しい「ちゅくちゅく」いう下手くそな鳴き声が聞こえてきた。……夏も、もう、終わりか。
しみじみと肉を食う。
*
実家からの電話に出る。PCが不調らしい。遠隔サポートを試みて、肉を食べに戻ると、みこりんの虫取り網の位置が、さっきと変わっている。Licによれば、スズメバチが戻ってきたのだという。さっきのヤツだろうか。でも今度は無事捕獲に成功したようである。上から重しとして蚊取り線香の缶が乗っていた。
日没前に、肉はすべて腹の中へと消えていた。夏休みも残りあと一日。今回も予定がどっさり残ってしまったようである。
模様替え
当初予定には含まれていなかったリビングの模様替えを、今夜敢行した。
我が家では、ずっとリビングのTVは縦長オーディオラックの上にあったのだが、どうやらこれはちょっと位置が高すぎるなぁということに、最近本格的に気付いてしまったのである。以前は少々高いほうが画面に集中できていい、なんてことを言ってたような気もするが、やっぱり首が疲れるし落ち着かない。というわけで、より低い位置へと移動させてみよう。
南の窓の右コーナーが、新しい候補地である。ここに低いタイプのコーナーラックやオーディオラックを新規に設置してやれば、無事に目的を達することができるにちがいない。L字形に配置することで、無駄な空間をより少なくすることも重要だ。さっそく買い出しに出かけた。事前にLicが目的のブツのある店を調査してくれていたので迷うことはなかった。
3個のラックをクルマに積み込み、帰宅する。さっそく開封し、組み立て開始。ボンドを使用するタイプで、3段BOXなどよりは造りが頑丈そうである。試しに上に乗ってみたが、ぜんぜん大丈夫そうだった。これならあのくそ重いTVを乗せても微動だにしないだろう。
ここでLicとみこりんが睡眠モードに入ってしまったので、あとは私一人でせっせとブツの移動を開始した。座敷をテンポラリ領域として、順繰りに場所を変更すれば簡単だ。……と思ったが、やはりオーディオ類の結線に手間取ってしまった。縦配置を、かなり距離のある横配置に替えたことで、それまでのケーブルのままでは接続不可能な箇所が多数出てきてしまったのである。おまけにCS,BS等のアンテナケーブル、電話線などの引き直しもやらねばならない。なるべく目立たないように、カーテンレールの上を這わしてみたり…
TVとゲームマシン以外の結線がほぼ終了した段階で、Licを起こしにかかる。このTVを一人で移動させたら、確実に腰をいわしてしまう。低い位置ならともかく、1m以上の高さにあるものを降ろすには、少々筋肉が足りない。
寝入ったLicを起こすのは至難の技かと思われたが、10分後には、無事、TVは新たなる場所におさまっていた。Licの得意分野であるゲーム関係も、早々に配置が決まり、あとはテンポラリ領域にあるPC類の移動すれば、この模様替えもほぼ終了。すでに窓の外では朝陽が上りつつあり、すっかり明るくなっていた。とても眠い。
今回の模様替えの基本コンセプトは、高いところにはなるべくモノを置かない、である。それに準拠しつつPC関係を配置しなおし、ごちゃった残りの部分をいったんすべて二階の使ってない部屋へと押し込んでみると……
「おぉ!なんて広い…感じ」
圧迫感が失せたことで、実際よりも部屋が広く感じられる。それと同時にコタツ机を撤去し、Licの嫁入り道具の最重要アイテムであった椅子と机をメインにもってきたことで、なんとなく空間に落ち着きが戻ってきた…ような気がする。窓側がより広く空いたことと、TVへの目線が下がったこと、などなど、いろんな要素が絡んでいるらしいけれど、徹夜した甲斐はありそうだ。
さて、このバージョンアップしたリビングを見て、みこりんはどんな反応を示すだろうか。こっそり覗いてみよう。……つづきは明日。
2001.8.19(Sun)
模様替えのあと
さっそく起きてきたみこりんが、すっかり配置替えの終わったリビングに気付いた。私とLicは、背後からそっとそのようすを窺っていると…
L字形のコーナーラック前を、行ったり来たりして何かを確かめるようにしていた。そして、ぺたぺたと手で触り、もう一度ちょっと下がってうろうろと広がった空間を堪能している、らしい。そしてふいに私達のほうに向き直ると、「かわっちゃってるよ」と報告してくれたのだった。
みこりんはこの模様替えが気に入ったらしい。駆け回ることのできる広さの空間が、先日“和室の大掃除”を行った座敷に続いて、こちらのリビングにも出現したことがポイント高いようだ。「“りずむたいそう”できる!」と、はしゃいでいる。
あぁそれにしても眠い。朝ご飯を食べ終えるまではなんとか瞼がくっつかないように努力したが、ごちそうさまのあとは、そのまま床に寝そべって……zzzZZ
はっと気がついたときには、時計の針は4時を示していた。4時?朝の?そんなばかな。だとすると夕方…なのか。時間感覚を取り戻すのに、しばらくかかってしまった。昼間ぶっ通しで寝てしまったのは、ずいぶん久しぶりなような気がする。
こうして、夏休み第二弾は終了したのであった。
2001.8.20(Mon)
台風に備える
台風11号接近。どうやら直撃コースに乗っているらしい。しかも規模がでかい。
帰宅後、さっそく庭の片づけを行う。
去年は台風が来なかった。そのためか、こうして台風に備えるのもずいぶん久しぶりのような気がする。みこりんも自分のオモチャが庭に転がったままになってるのが気になるのか、しきりと飛んでいかないようにしてと訴えている。はいはい、ちゃんとカゴにいれといてあげるからね。でも普段から片づけてようね。
とりあえず、鉢植えとか飛んでいきそうな軽いモノ達は、すべてサンルーム内に待避させた。動かせないモノは、もうひたすら無事を願うばかりだが、一番気になるのは今が旬の花桃の実である。たわわにびっしりと実った果実が、枝々を重そうにしならせているのだが、暴風雨にこれらがすべて無事に済むとはとても思えない。落果してしまうくらいなら…と、ほんのり色づき始めたものを数個もぎ取っておいた。意外にしっかりとついていたので、ひょっとすると大丈夫かもと思ったりもしつつ。
今回の台風は足が遅いようだ。こういうときに限ってあさって東京方面へ出張だったりするので、それもまた気になるのであった。
2001.8.21(Tue)
暴風雨の“音”
予定では、今日通り過ぎるはずだった台風。だが、夕方になっても雨は本降りにならず。いったいどこで道草食ってるのだ台風。とっとと通過してくれないと、明日の出張が…出張が……
万が一を考えて、とっておいた指定券を見合わせ券に変更してもらった。“見合わせ券”といっても、ビジネスキップの指定取得日のところを二本線で訂正して判子押すだけというものだった。何か特別な切符にかわるかと期待していたのに、ちょっと残念。
ところでみこりんは、台風にはやく来てほしがっていた。風が吹くっていうのはわかってるみたいだけれど、本格的な暴風雨がどんなものかはたぶんわかっていないのだろう。雷をとても怖がるみこりんだから、真夜中、びょおびょおと風が唸ったら、どうなることやら。
みこりんは、得体の知れない“音”に、とても弱い。
2001.8.22(Wed)
台風一過
結局、暴風圏内に入ることなく、台風は過ぎ去っていったようだ。たわわに実った花桃も、雨で少々落果してしまったが、たいした数ではない。
しかしながら今日は出張の日。台風がのろのろと移動して行っている東京方面は、これからが大変なことになるだろう。新幹線情報がなかなか確定せずに焦ったが、6時前には“運行開始”の一報が入ったので、駅へと向かった。ところが運行してるとはいっても、すべて各駅停車なのだった。つまり“こだま”である。そのことを知ったのは、駅まであと一歩というところ。結局、今日の出張は取りやめとなった。あぁ危なかった。名古屋方面に向かって列車に乗り込んでいたら面倒なことになっていたところだ。
台風一過のいい天気。さすがに雨が降りしきった後は、空気がキレイに見える…らしい。山々の姿がやけにリアルで生々しかった。
ナシを喰らう
夕食後、Licが剥いてくれたナシを、家族でつっつく。
みこりんが、自分のナシを私の口に「あーーーん」と入れてくれるのだが、大きくかぶりつこうとすると、するりと引かれて、ほんのちょこっとしか囓らせてくれない。そんなことを何度か繰り返したあと、みこりんの虚を突き、「かぷっ!」。会心の一撃。丸かじりである。
みこりん、じつに悔しそう。
2001.8.23(Thr)
既視感
二日間有効の乗車券を払い戻すのもなにかと面倒というわけで、本日出張ということになった。用件は昨日とは違うのだけど、まぁいろいろと用事は出てくるものである。
仕事の打ち合わせで出向くことはいろいろあるが、今日のように相手が病院というのは初めてのこと。患者さんでごったがえす待合室に入ると、なにやら奇妙な違和感があった。たぶん慣れてしまえばどうってことない日常になるのだろうなぁ…なんて思いつつ、受付嬢に用件を伝える。でも、受付嬢を通さなくてもこういう場所では、たいてい自由に階上へと入れるものである。この安全性もいずれ崩れそうな嫌な予感をかすかに感じつつ、案内された8階へと向かった。
最上階にはヘリポートを備えた病院である。フロアは迷路のように入り組んでいて、気を抜けばあっというまに迷ってしまいそうだ。幸い目的地はエレベータドアのすぐ傍にあった。迷わずにすみそうだ。
打ち合わせには二人の医師が同席されたのだが、名刺及び胸の名札で確認すると、いずれも救命救急のセンター長および副長であった。不思議なことに、初対面なのになんだか既視感がある。センター長は、エネルギッシュな丸顔で、よく通る素晴らしい声の持ち主だが、これとそっくりな人を私は知っている。その人とは名前も違うし、住んでる場所も違うので、別人に決まってるのだが、奇妙な感覚だ。副長の方はといえば、TVにもよく出てくる動物病院の“髭のお医者さん”に印象がとても似ているのだった。これは何かの“罠”じゃないのか……意味もなく、ついそんなことを考えてしまう。
打ち合わせは予定時間を1時間ほどオーバーして終わった。なんとなく長いつきあいになりそうな漠然とした予感があった。
16時半。まだ夕暮れにはちょっと早い時刻だ。ついでなので秋葉原へ寄り道してみる。手近な店でLANカード2枚、冷却ファン1個を購入して、本日の作戦はすべて終了となった。
2001.8.24(Fri)
灼熱コンクリート
ずっしりと重い作業服を着込んだまま、もう何十分歩いているのだろう。Tシャツを通してしみ出た汗が、冬用の作業服の分厚い生地をすっかり湿らせたまま、乾く間もなく汗が噴き出してくる。ヘルメットの内側では、蒸しパンが出来るほどの熱気が籠もってるようだ。おまけに左足を踏み出すたびに、足首に痛みが走る。靴擦れになってしまったらしい。慣れない安全靴を履いてきたせいだ。
目的地は、いまだ見つからなかった。
見渡す限り、だだっ広いコンクリートが敷かれた飛行場。容赦ない照り返しと、航空機特有の暴力的なまでに激しいエンジン音で、五感のほとんどの感覚がぼやけてしまったような気がする。
エンジンテストをやってるらしい傍を通り過ぎる。物理的な振動を伴うすさまじい“音”に包まれた。隣のハンガーをちらと覗く。ここでもない。探している機体は、ここにもなかった。
はるか向こうにヘリコプターの集団が駐機してるのが、ゆらぐ陽炎の向こうに見えた。なんとなくそこにありそうな気がして、少しだけ歩幅を拡げる。靴擦れの痛みが、ぼんやりした五感を現実に引き戻すハートビートのようだ。
およそ1kmは歩いただろうか、ようやく目指す場所へとたどり着いた。
機体内部で作業中の一人に声をかける。
私の問いかけに、ハンガー内部を指さして答えてくれた。
どうやら当たりらしい。
この灼熱コンクリート砂漠ともおさらばだ。
襲撃
「あれが女王蜂?」とLicが指さすので、簾にくっついている蜂巣に視線を移す。ここにもフタモンアシナガバチの巣があることに気がついたのは先週のこと。部屋の模様替えで、窓の向こうがよく見えるようになったので気がついた。
たしかに普通のフタモンアシバガバチよりも数段大きなヤツが1匹とまってる。だがなんかヘンだ。ヤツはいったい何をしている?さっきからかすかに聞こえているパリパリいう音…これはもしかして……
女王蜂ではなかった。ヤツはスズメバチだ。フタモンアシナガバチの巣を、まさにいま襲ってる真っ最中にちがいあるまい。パリパリとかみ砕いているのは巣材。そしてその中で育っているはずの幼虫の肉を、これから喰らおうというのだろう。巣にとりついているフタモンアシナガバチは約2匹。いずれもじっと動かない。もはや観念したかのように。他の蜂たちは、簾の下のほうに避難していた。
そういえばサンルームの蜂の巣で、数日前から蜂たちが1匹も寄りつかなくなったとLicが言っていた。蜂たちは、みんな家側の壁にとりついているのだという。
改めてそちらの巣を確認してみると、これも半壊状態だった。ここもスズメバチの襲撃にあったのだろう。
でも何故彼らは巣を修復しないのだろうか。女王蜂を失った…のか?蜂の世界のことはよくわからないけれど、ちりぢりにならずに今もこうして傍にいるのには何か訳がありそうな気もする。
この季節、スズメバチは食い物に窮してるんだろうか。あるいは他種の蜂の巣っていうのは、ヤツらにとって襲撃しやすいものなのか。フタモンアシナガバチならともかく、スズメバチの巣がこの近くにあるのだとしたら、少々厄介かもしれない。
2001.8.25(Sat)
初トランプ
一風呂あびてさっぱりしたところで、あとは寝るだけという至福のひととき。みこりんも含めて、トランプをすることになった。以前、南知多ビーチランドで買ってきた、魚の図柄が描かれたトランプが我が家にはある。ついにそいつを使うのだ。
みこりんは数字を読むことが出来る。アルファベットもそこそこいける。というわけで比較的ルールの簡単な神経衰弱に挑戦してもらうことにした。
思惑通り、みこりんはわりと早くルールを覚えてくれたのだが、敷き詰めたトランプが広すぎて、あっちいったりこっちいったりしないと手が届かないという問題があった。その移動の間に、すっかり位置関係が崩れてしまうらしく、自信を持って開いたカードが全然別の“魚”だったりして、みこりんはおおいにショックを受けていたようである。
途中からは、伏せられたカードのそれらしき場所を指して、いちいち我々の顔を見上げるようになった。だがここは安易に教えては面白くない。ダイレクトに教えるんじゃなくて、我々が開くカードを、わざと覚えやすいものを選んだりして、みこりんにもとれるように工夫してみた。その結果、第一回戦はみこりんの勝利に終わった。
初めてのトランプゲームは、みこりんにも受けがいいようである。カードの1枚1枚に、すべて違う魚が描かれているというのもポイント高いらしい。特にアカシュモクザメとタツノオトシゴのカードがお気に入り。ちなみにこの2つはJOKERである。
第二回戦。今回の勝負はLicが取りそうだった。でも、最後10枚ほどになったところで、Licがすべてかっさらっていってしまったのを見て、みこりん大泣き。取りたかったカードがあったらしい。これがゲームなんだといっても、そうそう理解できるはずもなく、仕方ないのでさらに8枚ほどカードを並べてゲーム続行。この結果、今回もみこりんの勝利に終わった。
みこりんはパズル系がわりと得意らしい。いずれ、小細工しなくても一番になれるにちがいない。
2001.8.26(Sun)
桃の中にいたもの
庭の花桃を少々収穫してみた。さっそく軟らかそうなヤツを1個選んで、包丁で皮を剥いてみる。痛んだ部分が結構あって、ざくざくと切り捨てていたときのことだ。
む、今なんか動いたっ!
一瞬だったが、種にそって“するっ”と何者かが隠れた気配がする。…嫌な予感。
さらに包丁を進める。
ずるずるずるずるっ
と、ヤツが姿を現した。
うぅぅ、うねうね虫!白くて軟らかい幼虫。私のもっとも苦手とする生き物。
あやうく桃を放り出すところだった。指の先1.5cmに、ヤツはいる。ぞぞぞぞと悪寒が走った。
みこりんが見せてとせがむ。冗談じゃないという意識と、しっかりと見せておくのも大事だという思いが錯綜する。ヤツが動いた。指の方に這い進んでくる。ひょぉぉぉぉ〜。い、急がねば。
結局、さらに包丁で桃を削り、その虫の全貌を露わにしてやるのだった。その有様を、しかとみこりんに見届けさせ、包丁を流しに放り出し、庭までダッシュ。
その間にも、ヤツはさらに指へと這ってくるではないか。速い動きだ。思わず吼えそうになった。もう限界だ。はやく、はやくこの桃を捨てなければ、指がアブナイ。
間一髪、うねうね虫は、桃と一緒に庭に消えていったのだった。
2001.8.27(Mon)
虫のゼリー
先週の台風が接近していた夜、庭の花桃の実が落ちていたのを拾っていて見つけたのが、コクワガタのメスである。おそらく桃の匂いに惹かれてやってきていたのだろう。みこりんが飼いたいというので、そのままプラケに入れて飼っているのだが、毎日の食事は、落果した花桃の実を与えていた。
でも、みこりん的には“カブトムシ/クワガタのゼリー”をやってみたいらしい。保育園ではそういうことになってるようだ。というわけで、今日、そのゼリーを買ってきたというわけだった。
ペットショップでは、虫達は軒並み赤札状態だったそうだが(ノコギリクワガタ♂100円/匹など)、ゼリーは通常価格だったという。賞味期限が4年というブツなので、そういうことなんだろう。
さて、今夜もクワガタは元気だった。桃の実がよほど気に入ったと見える。ゼリーは果たしてどうだろうか。土に下半分を埋め、設置完了。反応を見るため、そっと捕まえ、足先をゼリーに触れさせてみた。
一瞬ぴくっとしたような気がしたが、クワガタは“ぴたっ”と動きを止めてしまった。まるで時間が永遠に静止したかのように、身動き1つしない。私とLicとみこりんの、3人分の熱い視線をたっぷりと浴びてなお、クワガタは微動だにしなかった。
「桃のほうが良かったのに…と思ってるのかも…」とLicが呟く。
ま、まさか。……でもひょっとしたらそうなのかもしれない。なにしろ花桃の匂いに誘われてやってきたクワガタだ。
とりあえず明日の朝、食べ具合をみて考えようと思う。
2001.8.28(Tue)
回る翼
何かの検査中だろうか、地上に着地したままヘリがローターをさきほどから激しく回している。ときおり回転数を変えたり、ボールが跳ねるように2度3度軽く浮上してみたりと、見ていて飽きない挙動である。
ヘリまでの距離は約100m。低周波の振動が、空気を伝って全身へと伝播する。さっきから胃と喉のあたりに違和感がこもっているのは、この振動が原因に違いあるまい。私はこういう低周波には極端に弱いのだった。
それでもじっと見つめているうち、ふっと脳裏に浮かぶイメージがあった。高速回転中のローターが、根元から千切れてこちらに向かって吹っ飛んでくるシーンである。あれがまともにヒットしたら、さぞや痛いだろうなぁ…。と、目だけで無意識に逃げ場所なんかを探してみたり。
ハンガー入り口のドアが4枚重なってる部分がすぐそばにあったのを見つけて、なんとなく安堵してみたり。…でも、もしそこに移動するまもなくヒットしたら……。まったく、不安の種というやつは、放って置いたらどんどん増殖していくドクダミみたいな感じ。
しばらく自分の仕事に集中していたら、いつのまにかヘリのエンジン音は消えていた。ローターが吹き飛んでくることは、なかった。
クワガタの越冬
虫ゼリーは、どうやら我が家のコクワガタの口には合わなかったのかもしれない。今朝確認したところ、まったく触れた形跡がないのだった。
まぁしかし、もうしばらく待ってみよう。いきなり食事内容が変われば、警戒もするだろう。花桃の実がある間は、それと併用しつつ、徐々に切り替えていけばいい。……でもそろそろ夜は肌寒くなってきた。コクワガタの寿命が気になるところである。
部屋に入れて加温すれば、もしかして越冬したりするんだろうか。むかーし、子供の頃飼っていたカブトムシはどうだっただろう。たしかあのときも部屋に入れてたような気がするが…、越冬はしなかったような。試してみなくては。
2001.8.29(Wed)
よしよし
祝! H-IIAロケット1号機、打ち上げ成功
この緊張感が持続してくれれば言うこと無し。
みこりんからの情報
最近みこりんがとても気になることを言うようになった。たぶんLicにはどうでもいいことだと思うのだが、私にとってはかなり重要な内容である。
その話の中身とは……
保育園で園児達がプールに入るとき、もちろん先生達も水着であることが多い。日焼け対策でTシャツなど羽織っていることも多々あるらしいのだが、そんなことよりもみこりんが話してくれた内容は、私の意表をつくものであった。
一人の先生が、みこりんの以前もってた水着みたいなのを着てるというのである。先月新調したワンピースタイプの水着の前、みこりんはビキニタイプの水着を着ていた。それと同じような「おへそのみえる」水着なのだという。
これだけならば、別にどうということはないのだが、肝心なのはこの先である。その水着を着ているのが、常々私が“葵みのり”ちゃんによく似てるなぁ…なんて思っている先生なのだった。
す、すばらしい。この情報がガセではないことを祈るのみだが、先頃行われたプール参観では、別段そういう状況はなかったもようである。ここは1つ、みこりんの情報が正確であることを確認するためにも、プール見学に行かねばなるまい。そうしなければ、きっと後悔する……などと思いつつも、内気な私にそんなだいそれた真似なぞできようはずもないのであった。あぁぁもったいないもったいない。
2001.8.30(Thr)
天気予報
明日からの天気が気になって、Yahoo!JAPANの天気コーナーを頻繁に覗いている。知りたいのは東京の空模様。明日から再び出張が入っているのだった。しかも宿泊あり。久々の“泊まり”である。
昨日は降水確率60%だった。今朝は50%。それから夕方にかけて徐々に下がって40%。雨マークが消えた。しかし週間天気予報によれば、徐々に天候は悪化してくる気配。まだまだ油断禁物だ。
夜になり、スポット天気予報では晴マークも見えるようになってきた。いい傾向だ。持っていくものリストにチェックマークを入れながら、カバンに荷物を詰め込んでいく。何度もリストを確認したが、何か忘れものをしてるようで落ち着かない。
寝る前に、もう一度チェック。チェックリストが間違ってるかもしれない…なんて思い始めたり。
……寝よう。明日も早い。
2001.8.31(Fri)
額縁の裏
ビッグレスキュー東京2001とは、東京に大規模な直下型地震が発生したとの想定のもと行われる災害訓練のことである。昨年行われたときには、自衛隊が相当数動員されたことで、いろいろと話題になったことはまだ記憶に新しい。今回も例によって軍隊アレルギーな方々が騒ぎ立てているようだが、実際の災害派遣、治安出動の時にも彼等が抗議活動をするのかどうかがみものである。
ところで今年の訓練の特徴として民間ヘリが多数参加して、医療搬送訓練を行うというものがある。先日、病院に出張していたのもその準備のためだが、明日はとうとう本番を迎えることとなった。
お昼に病院入りして、会場準備がすべて終わったのが午後8時過ぎ。予定では1時間ほどで終わるはずだったのに、なんてこった。さっきから腹の虫が暴動寸前に猛っている。持参してきたゼリータイプの非常用食料を、ようやく1つ飲み下し、ひとここち。でも頭の中は明日のことでいっぱいだ。何か準備し忘れたものがありそうな気がして、何度も予定表をチェックし直すのだった。
問題なし。オールクリア。すべて順調だ。
我々は、ようやく病院をあとにする。明日は早い。ホテルに着いたら速攻で寝よう。などと思いつつ、たどり着いたビジネスホテルは、すぐ隣が立ち並ぶ卒塔婆もおどろおどろしい“墓場”であった。…な、なんで駅前にこんな墓場が……。いかにもいわくありげな夜の墓場に、身も心もきゅっと引き締まるのであった。
渡されたカギで、がちゃりとドアを開ける。暗い。とても暗い。スイッチをさぐって灯りを付けてみたが、足元がぼんやりと明るくなっただけで、かえって暗さが倍増したような感じ。ベッドまでたどり着くと、枕元のスイッチを一気に入れて、すべてのライトを点灯させた。
これで少しはましになった。
ベッドに腰掛け、ぐるりと部屋を見回してみる。すると、向き合う壁のちょうど真ん中にそれぞれ小さな“額縁”がかかっているのに気が付いた。中におさまった絵は、花と風景画だ。これといって特徴のない、じつに平凡な絵である。まるで意図的にそうしているかのように……
ふと気になったので、私は額縁の1つに手をかけてみた。しばしためらったのち、額縁の裏を、見た。
小さな白い紙切れが貼ってあるのに気づき、指の先に緊張が走る。……だがこれはちがうようだ。“絵”の説明が書いてあるだけらしい。
心の底から、安堵した。
昔、どこかで読んだか、聞いた覚えがある。ホテルの部屋などにかかっている額縁の裏などには、たまに“お札”(“おさつ”ではない。“おふだ”と読んでもらえるとありがたい)が貼ってあったりするらしい。……どうやら、ここは大丈夫みたいだ。シャワーを浴び、浴衣に着替えると、倒れ込むようにベッドに沈む。気が付いたときには、夢の世界に、いた。
つけっぱなしのTV画面に、なにやらニュース速報が出たような気がしたが、眠ってしまったあとでは確認のしようもなかった。