2007.1.1(Mon)

謹賀新年

 平成19年のはじまり。
 私の場合、大学を卒業した年に昭和から平成に切り替わった世代なので、元号で数えた方が就職してからの年数が一目瞭然となって、わかりやすい。つまり、働き始めて、今年で19年目(正確には4月から)ということになる。

 19年といえば、産まれたての赤子が大学生に至る年月に相当する。あまりそういう実感はないのだが、思えば遠くへ来たものだ。
 でも入社して早々に取り組んだ仕事の成果は、いまだ宇宙には上がっていないというあたりに、航空機や宇宙機の開発スパンの長さを感じずにはいられない。新入社員研修で、「航空機開発では、退職するまでに一度でも新機種の開発に関われたら、技術者としてそれはとてもラッキーなことだ」云々、と言われたことをしみじみと思い出す。

 *

 2007年のはじまり。
 みこりんの場合、1997年生まれなので、西暦で数えた方が、生まれてからの年月が一目瞭然となって、わかりやすい。つまり、みこりんは今年で10歳となる。

 10年といえば、産まれたての赤子が小学4年生に至る年月に相当する。歩けるようになったみこりんと手を繋いで、近所を散歩したりなんかしてた時には、まだみこりんの背の高さは私の腰よりも低く、繋いだ手と手は互いに直線をなしていたが、今ではみこりんの頭の先は私の胸あたりにあり、手をつなぐと余裕でV字型になる。大きくなったものよのぅ…

 そんなことを思いつつ、今年もまた家族3人でお雑煮を食べ、おせち料理をつまみ、届いた年賀状に今では遠くに住む友を思い、そしてみこりんにお年玉を渡し。

 *

 夕方、初詣に出かけた。3人でおみくじを引いてみたところ、Licとみこりんはそこそこよい運勢が出たようだが、私はこれまでの人生で二度目となる“凶”を引き当ててしまい、やや動揺を隠しきれない(前回“凶”を引いたのは2004年のこと)。御神木にくくりつけて、少し心も落ち着いてきた感じ。何事も慎重に慎重に。
 そういう年なのかもしれない。


2007.1.2(Tue)

同人誌

 『げんしけん (9) 』読了。これが最終巻。“おたく”がどうこういう以前に、普通に大学のサークル活動を通した入学から卒業までのストーリーとして、楽しめた。
 私が大学生をやってた頃には、“おたく”なる言葉そのものがまだ一般的ではなかったのだが、いわゆる“そっち系”な面々は、SF研とか漫研などに所属し、たぶん今も昔もさほど変わらない活動をやってたのだな、と思う。ゲームマシンの進化と、インターネットの普及、ケータイの有無、あたりがちょっと違うかな、といったところで、本質的には、ありあまる若さとエネルギーを創作活動にかけ、サークルの仲間と共にそれらを共有し。そして若い男女が集まれば、それはもう必然的に“そういう話”の1つや2つや3つや4つは転がっているもので。

 ところで今回買った9巻は、特装版なので同人誌やらCDやらが付属していた。
 同人誌といえば、私は大学に入るまで一度も手にしたことがなく、もちろん買ったこともなかった。高校までをすごした町が田舎だったから、というのもあるのだが、今ほど同人誌が一般的に認知されていなかったという時代背景もあるかもしれない。
 そんな私が大学に入り、“そっち系”なSF研に所属し、初めて買った同人誌というものがある(サークルで毎月創ってた本も同人誌ではあるのだが、ここでは別の団体個人が創ったものという意味で“初”とする)。ちなみに、“エロ”ではない。

 きっかけは、こうだった。サークルの後輩の女の子(彼女は卒業後、本業の傍ら小説家としてプロデビューを果たす)が、独自に所属していた別のサークルで同人誌を売るというので、その会場となる同人誌即売会にみんなでついていったのである。生のコスプレイヤーさんを見たのも、この時が初めてだったような…
 会場は広くなく、狭くなく。いやもしかしたら、けっこう狭かったような気もしてきたが、まぁとにかく大規模なものではなく、地元の同人作家さん達のローカルなものだった。当時すでに小説主体の本よりは、コミックが圧倒的に売れ筋で、テキスト系な方々と、「なかなか売れませんね」なんて話をしたように記憶している(私もテキスト系だったから)。
 その一角で、私は1冊の同人誌に引き寄せられていた。モノクロ印刷なのだが、1冊1冊の表紙に手書きで蛍光マーカーによる装飾が施されており、絵柄もかなり私好みなタイプ。つつっと手にとり、ぱらぱらとめくり、そして、買った。私が初めて同人誌を買った瞬間である。
 この同人誌に掲載されていた漫画は1作品。あとはイラストが少々。一人の同人作家さんによる個人本だった。

 それから幾年か経ち、大学を遠く離れたこの地で社会人として日々労働に勤しんでいた私は、休日の書店巡りの最中、とある商業誌上で、あの時の同人誌に載っていた漫画と再開を果たす。まるでタイムカプセルに封印されてでもいたかのように、あの頃のままの姿で、そこにあった。
 妙にこそばゆいような、懐かしい感じがしたものだ。

 *

 初めて買った同人誌は、今も大事にとってある…、はずだったが、改めて探してみたものの、発見できず。とはいえ本棚はすでにキャパシティオーバーで、至る所に本が散在しているため、どこかに混じっているのかもしれない。というわけで、作家さんの名前が思い出せないのが残念だが、“罰として魔法でちっちゃくされてしまったバニー姿の女の子”というのがキーワード。
 もう一度物置部屋探ってこよう。


2007.1.3(Wed)

『小学3年生』

 午後、みこりんと本屋に出かけた。毎月始めは『小学3年生』の新刊が出るので、みこりんもハイテンションである。
 みこりんの言うことには、先月号の付録としてポケモンの切手シート(のようなもの)が付いていたのだが、今月号の付録にはそれら切手状のものを1枚1枚ばらして貼り付けるコレクションシートが付いてくるらしい。…なるほど、いかにもみこりんの好きそうな作業である。

 いつもの書店に着くなり、みこりんはたたっと目的の品が陳列されている棚へとダッシュし、私は私でいつものように新刊コーナーを端から順にチェックしてゆく。メール等で新刊情報を得ているとはいっても、たまに見落としてるやつがあったりするので慎重に。
 そうやって視線を上下左右にゆるやかに振っていると、視界がぐっと絞り込まれて周囲の様子がぼんやりと化してしまう。だからみこりんがすぐ近くに接近していたのに気付かず、わき腹を突然つんつん突かれてちょっとびっくり。みこりんは『小学3年生』の今月号を、両手で抱きかかえるようにして立っていた。私はそれを見て、うなずいてやると、みこりんは再び新たなる獲物を求めて、別のコーナーへと駆けていったのだった。

 『竹本泉のいろいろぶっく』の現物が置いてあったので、とても中をチェックしてみたかったのだが、この書店における新刊コーナー(ビニールを被ってない)ではその行為は厳禁とされているため、表紙と裏表紙をじっくりと観察しただけで、書架に戻した。いきなり入手難になったりすることはないだろうから、ここはしばらく様子見で。

 ぐるっと一周しているうちに、みこりんが2度ほど私の元へと戻ってきた。その度に、抱えている本の数が1冊ずつ増えているわけなのだが、よほどのことがないかぎり許可とする。たまごっち系に、怪談系か。これもまた、じつにみこりんらしい。

 結局、私はめぼしいものを見つけることはなく、みこりんの本だけを買い、帰宅。
 帰宅早々、みこりんはさっそく先月号の付録であるポケモン切手シートを持ち出してきて、1枚1枚を切り離しはじめた。その数にしておよそ200…、あるいはそれ以上はありそうだったが、みこりんはこの手の作業はまったく苦にならないようで、嬉々としてハサミでちょきちょきやっていた。
 その隙に、私とLicでみこりん用に準備しておいた新しい本棚を、2階のみこりん部屋へ移動。これまでは3段BOXを2つ、みこりんの本棚として使っていたのだが、すでにキャパシティオーバーしており、本が棚から溢れていた。この3段BOXの1つを、新しい本棚と入れ替えることで、あと数ヶ月は持ちこたえる事ができるだろう。なにしろ新しい本棚はそれまでの3段BOXよりも2倍以上の収容能力を有しているのだから。

 ざざっと手早く本の整理も兼ねて新しい本棚をセットし、あまった3段BOXは、私とLicの本棚として再利用すべく寝室に移動。これを機会に本の大移動を行い、メインの本棚から“みこりんが見ては危険な本”の撤去が完了したのである。“危険な本”はもともと高い位置に置いてはあったのだが、近頃のみこりんの成長は著しく、おそらく椅子に乗れば手が届く可能性があった。そこで今回、子供では容易に手が届かない高い場所にある扉つきの書架へと封印。脚立でも持ち出してこない限り、ここへのアクセスは不可能なので、いましばらくは安全であろう。

 本の整理を終え、リビングに戻ってみると、みこりんがポケモン切手をコレクションシートにすべて貼り終わったところだった。ところどころに枠線のみの空白があるのは、おそらく今後の付録か何かでゲットできるであろう特別なやつ用だ。雑誌の売り方も、なかなか抜かりない。
 しかしみこりんが『小学3年生』を買うのも、あと1号のみ。3月からは、『小学4年生』である。昨年、痛い失敗をしているので、同じ過ちを繰り返さないように「3月からは4年生やね!」と、みこりんも意気込んでいる。…しかし、ポケモン切手の続きが4月からの『小学3年生』の付録になっていた場合、みこりんはどうするだろうか。ちょっと気になるところだ。


2007.1.4(Thr)

“おわり”

 クリスマスにプレゼントした『チョコボと魔法の絵本』を、みこりんがついにコンプリートしたもよう。昨日まで、途中の“海中泳ぎ”がうまく操作できず、負けまくりで何度かくじけそうな気配もあったのだが、今夜、「できた!」と勝利宣言してからは、とても順調に進んでいたようだ。
 みこりんも、だいぶ粘り強くなった。

 このゲームは、途中のミニゲームに勝利することで絵本を次々に完成させ、さらわれた仲間のチョコボを救出してゆくという流れになっている。ミニゲームに勝利するたび、絵本の物語が画面をゆっくりスクロールしてゆくのだが、これをみこりんは超高速スクロールさせてほぼスキップしているように見えたのが、ちょっと気になった。
 しかしじっくりその様子を観察してみると、闇雲に読み飛ばしているのかといえば、どうもそういうわけでもなさそうで、絶妙なペンさばきでスクロール速度を調節しているふしもある。もしかするとみこりんは、Lic並にテキストを読む速度が速いのかもしれない。

 ところで、みこりんはこのゲームに“おわり”が来ることを以前からとても不安がっていた。チョコボによほど思い入れがあるのか、あるいはこの世界観にみこりんを捉えて離さない何かがあるのか。そんなことを考えていたからかもしれないが、私は夢の中で、これの続巻をプレイしているみこりんの姿を、みこりん視点で見た。ちゃんとデータも引き継がれる仕様になっているところまで細かく記憶している。あまりにその記憶がリアルなので、目覚めてからしばらく夢と現実との境界があいまいになってしまったほどだった。
 果たして、続巻は出るのか。…なんとなく、出てきそうな、予感。


2007.1.5(Fri)

仕事始め

 仕事始め。
 新型の目覚まし時計の威力はすさまじく、定刻に遅れることなく起動完了。
 しかし…、例年ならば冬期休暇はもっと長く、おそらく来週火曜日が仕事始めになっていたことだろう(10連休など当たり前)。長期休暇だけは、なぜだか妙に長いのがうちの勤務先の特徴だったのだが、それも今は昔。

 とはいっても今日明日(じつは明日の土曜日も出勤日)と有給休暇をとればよいだけの話なので、実際、その権利を行使した人は多く、私の所属の居場所であるだだっぴろいフロアには、人の姿もまばらだった。おかげで暖房が入っていなくて、寒いこと寒いこと。
 入社以来持ち込んでいる電気毛布を、数年ぶりに使うはめになってしまった。

 そして午後、誰もいなくなった…
 このフロアには、私の所属する部署の数人を除けば、あとはまったく違う部門が入っている。その数にして150〜200人。普段より人数が減っていた今日とはいえ、そこここに人の姿はあったはずなのに、今はひとっこ一人いなくなってしまっていた。
 無人の空間に、ときおり鳴り響く内線の呼び出し音が、どことなく不気味。

 いったいどうなってしまったのだろう。午後から休暇をとったとか?いや、それにしてもこんなにきれいさっぱり人がいなくなるってことはあり得るのだろうか。

 うぉぉぉぉ、謎じゃぁぁぁぁ!

 なんて思っていると、30分ほどしてどやどやと人の気配。
 オートロックのドアが、がちゃりと開き、フロアの住人達が戻ってきた。さっきまでの不気味な静けさが、嘘であったかのような日常の復活。
 どうやら部署単独で新年の催しを会議室でやってたらしい。

 というわけで、今日は定時で帰宅。なんだかどっと疲れが…


2007.1.6(Sat)

 非常ベルのようにけたたましく鳴り響く目覚まし時計。…、朝だ。出勤の時刻。いつものように、時計背面のスイッチを切るべく体を動かそうとした時、変調に気が付いた。
 まるで重力が5倍になったかのように体が重い。おまけに全身の筋肉に痛みが拡がっており、身動きとれず。
 しばらく裏返ったヒトデのようにゆるやかにじたばたしてみたのだが、どうにもダメっぽいので諦めた。体が欲するまま、眠りを受け入れる。
 途中、襖がすぅっと開いたような気配を感じたが、瞼を開ける気力はなかった。みこりんが様子を見に来てくれたのだろうか…

 2度目の夢から覚めたとき、時刻はすでに午前11時を回ろうとしていた。体は相変わらず重苦しかったが、朝ほどではなく、どうにか起き上がることに成功する。
 今日を休暇にするためには、どうしても病院で診断書をゲットしなければならない。土曜日の病院の診察時間はおおむね正午まで。急がねば。

 リビングに降りていってみると、みこりんが「おはよー」と元気な声をかけてくれた。ん、元気そうでなによりだ。とーさんはちょっと病院に行ってくるよと、支度して、家を出る。みこりんは自分で朝食をとっていたようなので大丈夫だろう。ただ…、朝見に来てくれたかどうか聞いてみたところ、「いってないよ?」と不思議そうな顔をされたのが、なにやら気にかかる。あの、襖がすーっと開いたような気配はなんだったのか……。いや、今はそんなことを考えている場合ではない。とにかく病院まで安全に到着せねば。

 クルマで3分の距離にある行きつけの病院にて診察してもらい、血液検査などをやっていただく。微熱あり。この胃腸の不快さからいって、胃腸風邪っぽいような。
 無事、診断書を入手し、調合された薬を受け取ると自宅へ戻る。

 午後、みこりんとLicがチョコボの絵本を作ってる横で、寝てすごす。時々みこりんがその出来栄えを見せに来てくれたのを覚えているので、半分起きて半分寝てるような状態だったのだろうと思う。夢の中で、私は不条理な状況に遭遇しており、一刻も早くこの眠りから覚めたいと強く思っているのだが、体がいうことを聞かず。

 昔、小学生の頃飼っていた犬が夢の中に登場していた。他の登場人物には、ちゃんと犬の姿に見えているらしいのだが、なぜか私には親戚のおじさんの姿にしか見えず、そのギャップに苦しんでいる。父方の実家を継いだそのおじさんは、宮司をやっていた。そして私が小学生の頃に亡くなった。その前日、私が飼っていた犬も、フィラリアによって命を落としている。…30年も昔のことなのに、まだ夢に見てしまうとは。

 そういえば、夢の中に、にゃんちくんも人の姿で登場していたような。でも、男の格好をしていたのは何故だ。メス猫なのに。
 不条理すぎる。


2007.1.7(Sun)

『神戸在住(9)』

神戸在住(9) 『神戸在住 (9)』(作:木村 紺)、読了。
 神戸の大学で美術を専攻している学生のお話。9巻で、いよいよ卒業も迫り、果たしてこのあと社会人編があるのかないのか、そのあたりがとても気になる今日この頃。

 とりたてて派手な演出などはなく、淡々と、思わず「これ、ノンフィクション?」と思ってしまうほどのリアルさに、心が軽く時間を跳躍して大学時代に戻ってしまったかのような妙に切ない気分に浸ることもある。

 ところでこの9巻、妙にキャラの描写に艶が出てきたような気がする。前髪とか、目元、口元あたりなど特に。画力の向上というよりは、登場人物の自信の現れみたいな感もあり、なかなかよかったのではなかろうか。この調子で10巻も、ぜひ読んでみたいものだ。

 *

 ちなみに外は天気予報通り、雪。みこりんはソリ遊びをしたがっていたが、ソリは昨年壊れたので、その望みは叶わず。


2007.1.8(Mon)

厄払い

 今年、私は前厄、Licは後厄、という状況なので、厄払いをしてもらうべく、最寄の神社へと向かう。
 新年から1週間が過ぎ、境内は閑散としていた。街中にあっても、一種独特な静寂に包まれたこの場所では、不思議と心も落ち着いてくる。
 鳥居をくぐり、手と口を清め、社務所にて祈祷料などをチェック。通常祈祷で5000円、特別祈祷で2万円…。Licは2万円の特別祈祷に惹かれていたようだったが、決心するまえにガラス戸が開き、中から声をかけられたので通常祈祷による厄払いをお願いした。ここで特別コースを選択していれば、どんな祈祷が執り行われるのか、私も少なからず興味はあったのだが、また次の機会にしよう。

 渡された紙に、それぞれ住所氏名年齢などを書き記し、拝殿へと歩く。みこりんは今から何が始まるのかちょっとドキドキな様子だが、あえて詳細には触れず、拝殿内にて宮司さんを待った。まだ雪も溶けきらない冷えた空気に、体の芯からもうすでに邪気が払われていっているようなイメージが脳裏をかすめる。古い木造建築特有の枯れた色彩に、言い知れぬ郷愁を感じてしまうのは、幼い頃に父方の実家にある社で遊んだ記憶がいまも生きているからなのかもしれない。

 ほどなくして宮司さんが到着。拝殿中央に並べられた椅子に、私、Lic、みこりんの順で座り、祈祷は始まった。

 祝詞が唱えられ、御払いを受ける。ばさっばさっという音を聞いている感じでは、どうやらみこりんの頭上でも御払いが行われた模様。私とLicが無事でも、そのとばっちりをみこりんが受けてしまっては元も子もないので、払われたのであろう。

 3人で玉串を捧げ、二礼二拍一礼で自身も祈願し、厄払いは終了した。
 宮司さんから戴いた2つの紙袋を、みこりんは興味津々で覗き込んでいたが、中にそれぞれ御守が入っているのがわかると、なにごとか納得したような表情をしていた。ちなみに御守袋の色は、私が紺で、Licが朱である。男女別に色が違っているのだろうか。それとも前厄と後厄の別…?そのへんはよくわからないものの、これが同一の色をしていたら、どっちがどっちのだか分からなくなるところだったので、助かった。Licが靴を履く時に私がLicの分も一緒に持っていたのだが、返す段になって「どっちだっけ?」と迷った挙句、違う方を渡していたのだ(御守の色が違う事に、そのあと気付く…。でもLicは紙袋についた水滴の跡や、印刷の微妙な違いをよく覚えており、「これちがうと思う」と即座に言ってたのは、さすがである)。

 *

 帰り道、家電量販店にちょいと寄り道。デジタルビデオカメラのカタログを収集した。SD画質の従来機は、現品限りの叩き売り状態にあり、HD対応の機種がこなれてくるまでのつなぎとしても、十分使えそうなことにちょっと惹かれる。昨年末のみこりんのエレクトーン発表会で録画機能に不具合が発覚した我が家のビデオカメラだが、こいつを修理するには最低でも1万5千円はかかる見込みなので、悩ましいところだ。


2007.1.9(Tue)

『ひらめき子育て マイエンジェル』

 昨日立ち寄った家電量販店にて、みこりんが『ひらめき子育て マイエンジェル』をやってみたいとDS用のパッケージを持ってきたときには、ちょっと驚いた。みこりんが子育てするということに、かなりギャップを感じてしまったからだったが、そのパッケージには“右脳の達人シリーズ”と書いてあったので、あぁそういうことかと納得した次第。みこりんはこういうひらめきパズル系が大好きなのだ。

 昨夜、0歳からはじめて、今日はすでに10歳にまで育っていた。みこりんはプレイヤー“姉”を選択していたのだが、はやくも“妹”に実年齢で追い越された模様。それでもしっかり子育てに余念のないみこりんである。
 プレイヤーの回答状況に応じて、育成中の子供の性格(?)や容姿などか変化するわけだが、どうしたことかみこりんの場合、“しっかりもの”に育つ割合が高く、ときおり“おおらか”に変わったりはするものの、おおむねメガネっ娘(しっかりもの)を維持している。
 そしていよいよ高校受験。性格に合わせてあるのか高校の種類は4つ(5つだったかな?)あり、それぞれ性格に応じた名称がつけられていた。でも漢字が難しすぎてみこりんには読めなかったので、“しっかりもの”なら“誠実”じゃない?という私の助言に従い、“誠実高校”受験に向けたゲームが始まる。

 ところがこれが予想外の難問が最初に出たらしく、1教科惨敗を喫してしまい、不合格となってしまった。ここで性格が“おおらか”に変化し、メガネは消えた。
 さらに3年が経過し、大学受験。“おおらか”だから“寛容大学”かな?という私の助言に従い、受験問題開始。これは比較的みこりんの得意分野なゲームだったようで、無事、合格。ここで性格が“しっかりもの”に戻った。メガネっ娘、復活。喜ぶみこりん。

 ところでこのゲーム、いったい子供は何歳まで育つのだろうか?そういう私に、みこりんは答える。「職業も選べるようになってるから、オトナまで育つと思う」
 なるほど。3キャラまで作れるようだから、私もちょいと子育てしてみるかな。


2007.1.10(Wed)

捨て猫

 あれはたしか、みこりんの通う小学校が冬休みに入ったくらいの頃のことだった。
 朝、学童保育にみこりんを連れて行き、クルマのミラーでみこりんが学童保育の教室に入るのを見届けようと目で追っていた私は、みこりんが教室に上がる階段脇に何かを見つけたらしいことに気が付いた。
 しゃがみこんで何かを見ていたみこりんが、私の方へと戻ってきたので、何事かと私もドアを開け、降りてみる。

 そこには小さなダンボール箱が1つ、置いてあった。横倒しになっており、開いている方から中を覗き込んでみると…

 タオル、のようなものと、乾燥フードが少々こぼれているのが見えた。
 みこりんが言う。「犬か、猫が入ってたんじゃないかな?」

 私もそう思う。愛らしいフードの形状からみて、おそらく入っていたのは猫であろう。捨て猫だ。ダンボールのサイズからして、仔猫に違いあるまい。
 餌をちょっとばかし入れてる偽善ぶりに、無性に腹が立ったことを覚えている。

 その後のLicの情報によれば、たしかに猫が入っていたことは間違いなさそうなのだが(訂正:Licが知っていたのは“箱”があったということだけらしい)、その肝心の猫がどうなったのか、についてはなぜか情報があいまいで今日までわかっていなかったのだが…。
 今日、みこりんを学童保育に迎えに行ってみた所、あのダンボール箱には猫の死体が入っていたのだと、みこりんが教えてくれた。どうやらみこりんのお友達が第一発見者だったらしい。発見当日にそういう情報が子供たちに伝わっていなかったところをみると、発見した女の子のショックは相当なものだったと思われる。

 ところで猫が入っていたダンボール箱なのだが、じつはまだ、同じところに、そのままの形で放置されたままなのである。なぜ撤去しないのか、ちょっと気になったりしつつ…。あるいは、動かすことが出来ない、とかだったりは…。それはちょっと怖い。


2007.1.11(Thr)

『宙のまにまに(2)』

宙のまにまに(2) 『宙のまにまに(2)』(作:柏原 麻実)、読了。
 高校の天文部の話。降るような星空に背筋がぞくぞくした人ならば、たぶん問題なくはまれるのではないか、と。
 私の場合は、中・高と、このような見目麗しき女子達のまったくいない野郎共オンリーな科学部で、真夜中、星見をした記憶しかないのがちょっと痛いが、それでもやっぱり星空はいいのぅ…、と遠い目をしそうになってしまう。

 たとえ、“初めて流星群をカメラで撮ってみたら、外灯に照らされた電線しか写ってなかった”とか、“シャッター開放で撮りまくってたら早々にカメラの電池が切れて茫然自失した”とか、そういう失敗があったとしても、やはり、“夜明けを迎える天空の色彩変化があまりに美しすぎて…”とか、“夏の夜のキャンプ地で、圧倒的な星の数に思わず声が出なかったり…”なんて貴重な思い出もあったりするので、まぁそれはそれで満足していたりする。
 いやほんと、夜を徹して活動するエネルギーは若さの特権でもあるのだから、これからみこりんにもたくさんの宇宙を見てほしいと思わずにはいられない。でも近頃は、夏の休みときたら梅雨が終わってなかったりして星見が不発気味なのが残念だ。

 さて、今年の夏は、長いか短いか…。そこが問題だ。


2007.1.12(Fri)

髪洗い

 今夜は珍しくみこりんが髪を洗って欲しいと言うので、がしがしとシャンプーで泡立て、頭皮を十分洗った後、髪を天に向かってピンと立ててやった。みこりんの髪の長さは肩に届くか届かないかというところなので、泡の力だけでも十分に立つのである。
 通常はこうやって髪を1本のツノのように立てたところで洗い流すのだが、みこりんが小さい頃にはアトムのように2本立ちにしてみたり、いろいろとバリエーションを加えて遊んでみたものだ。いつの頃からか自力で髪を洗えるようになってからは、あまりこの遊びをやってなかったのだけれど、今宵のみこりんは昔のようにツノのように立った頭でおおいに笑ってくれた。

 ざばっと泡を洗い流して、みこりんの髪洗い終了。
 で、ふと見ると、湯船の中で温まっていたLicが、頭を浴槽の外に突き出し、長い髪をだらんと垂らして、静止している。一瞬、『呪怨』のワンシーンを思い出して、どきっとしたが、即座にその意味を理解し、続いてLicの髪洗い開始。

 Licの髪は長い。ゆえに、湯をかけると先端部分がぺったりと床についてしまう。そこでみこりんが洗面器を床に置いて、髪の毛が直接床に触れるのを防止してくれている。なかなか気の利くみこりんであった。
 そして二人してそれぞれシャンプーを手にとり、がしがしと洗う。長いだけでなく、量も多いので、シャンプーが頭皮に達するように洗いあげるのはなかなかに大変である。頭皮マッサージを私が、髪部分をみこりんが、分担して洗った。

 「どこか痒いところはございませんか?」

 「全部」と言う答えが返ってきたので、もうしばらく頭皮マッサージを続け、頃合を見計らって、ざばっと湯で泡を洗い流した(ツノを立ててやろうと試みたが、長すぎて失敗)。使ったシャンプーの量に比例して、洗い流すのに必要な湯の量も結構なもので、湯船の湯の残量が1/3程に低下してしまったのだが、3人で“▲▲▲”のように横並びに入ればその体積分、水位も上昇して丁度よい。“▲▲▲”だとぎゅうぎゅうになるので、“▲▼▲”にすればもう少し余裕が出来るのでは、などと話しつつ、湯が冷えてきたので上がる。
 しかし日々大きくなっているみこりんなので、“▲▼▲”でも無理になりそうな日は、そう遠くはなかろう。


2007.1.13(Sat)

ブロードバンドルータ交換

 我が家のインターネット回線が光になったのは、2003年7月3日のこと。今から約3年半前になる。その当時から使っているバッファローのブロードバンドルータは、致命的な故障を起こすこともなく、黙々と作動し続けてくれていたのだが、この度、これを新調することになった。
 きっかけは、Licが「これってマルチセッション対応?」と、聞いてきたことに始まる。

 まるちせっしょん?それって、おいしい?
 思い出すのにちょっと時間がかかってしまったが、Licがフレッツ・スクエアのサイトを見ていたので、急速に記憶が蘇ってくる。「あぁ、残念ながらこいつはマルチセッションには対応してない、はず」
 フレッツ・スクエアに繋ぐには、今使ってるプロバイダの設定ではダメで、フレッツ・スクエアのやつに設定内容を変更しなければいけなかったと思う。そんな不便もあり、これまでフレッツ・スクエアには多少興味はあったものの、一度も繋いだことがなかったのだった(マルチセッション対応のルータならば、そんな面倒なことをしなくても、最初から接続先を2つ、あるいはそれ以上、設定しておける)。

 そろそろ買い替え時か。このルータは致命的な故障は起こしてはいなかったが、突然通信が途絶してしまう現象が最近たびたび起きるようになっていて、少々気にはなっていたのだ。電源断/再投入でいちおう復帰はするものの。
 というわけでPPPoEマルチセッション対応のブロードバンドルータを探してみると…。最近のは対応してないやつの方が珍しいらしい。時の流れを如実に感じる瞬間だ。
 さっそく各社Webサイトで候補となる型番をチェック。ケータイにメモる。

 近頃では地元の家電量販店でもブロードバンドルータの品数は豊富になってきたので、そのまま買出しに出かけた。4000円くらいの品をいちいち通販してたら送料がもったいない。
 みこりんがDSのコーナーを探検している間、私とLicはブロードバンドルータの棚の前で物色開始。棚の大部分を無線式が占めていたが、うちには必要のないものなので、ひたすら有線オンリーのやつを手にとり、メモしてきた型番とつき合わせてみる。
 メーカーは、アイ・オー・データとコレガから選んだ。といってもあとはバッファローくらいしか置いてなかったし(バッファローを外したのは、今使ってるやつの不満などもあり)。
 それぞれ目的の型番のブツはあった。2者択一。いずれにしようか。値段もほぼ一緒。機能的にも遜色なし。私は最初、色がブラックのコレガの方に結構気持ちが傾いていたのだが、機能欄に“各社インターネットサービス対応”とうたってるだけなのが気になっていた。ちなみにアイ・オー・データの品には、“フレッツ・スクエア対応”と明記してあった。………うーむ。今時フレッツ・スクエアに対応してないとは思えなかったが、明記してあるのとないのとでは、やはり印象はかなりかわる。しかもパッケージサイズが、コレガの方が倍近くでかいし重い。アイ・オー・データのは、昔流行ったルービックキューブくらいの片手に乗っかる立方体サイズ。そして軽かった。

 結局、アイ・オー・データのルータを選んだ。Licは最初からアイ・オー・データ支持派だったらしい。たしかにこのメーカーには、PC98時代からずいぶんお世話になってるしなぁ。

 *

 帰り道、別の店で買い物したり、夕食をとったりしてるうちに、帰宅したのは午後9時過ぎになっていた。というわけで、とっとと交換作業を実施する。
 箱から出したおにゅうのルータは、とても小さかった。3年半前、バッファローのルータを買った時にも、(それまで使ってたISDN用のルータに比べて)ずいぶん小さくなったものよのぅと思ったものだが、今回買ってきたやつは、バッファローのルータよりもさらにさらにちっちゃくなっている。まるでプラモデルのような印象を受けた。ある意味、装置というよりは、なんとなくオモチャのような。

 “簡単設定ガイド”に目を通すと、ルータのIPアドレスが192.168.0.1になってるらしい。今使ってるやつが192.168.11.1の固定だったので、つながってる各PCのIPアドレスのセグメントもこれに合わせてあるのだが…。いちいち変更するのも面倒なので、これを機会にDHCPを有効にして運用することにした。
 各PCのTCP/IP設定をDHCPを使うように変更した後、ルータを交換する。ブラウザで設定画面を呼び出すと、素直に画面が表示された。ただ、トップページに白いままの部分があって、ちょっと不安になったものの、基本設定等の項目をクリックすると、正しく目的のページが表示されるので、大丈夫っぽい。

 マルチセッション対応なので、接続先も複数設定できる。1番目に通常使うプロバイダの設定を、2番目にフレッツ・スクエアの設定を。フレッツ・スクエアの設定は、使用するNTTを選ぶとボタン1つで自動的に値が入力されるので、じつにお手軽。たぶんこのへんが“フレッツ・スクエア対応”と明記してある理由なのだろう。
 あとは詳細設定やら細かい部分の確認を行い、特に問題なさそうなので、ログアウト(デフォルトから変更したのは管理者パスワードと、ログの有効化くらい)。各PCからのインターネット接続が問題ないかチェックする。

 Web、メールともに問題なし(あ、FTPの確認忘れた)。FFXIも普通に動いた。フレッツ・スクエアもOKのようだ。
 あっけない。ルータの動作も、以前のやつにくらべると、さくさくいってるような気がする。スループットが1.5倍向上してるだけではなく、プロバイダとの接続動作そのものが速い(管理者パスワードを変更すると、いったん接続が切れるのだが、その後、再接続したら1秒くらいでステータスが“通信中”になった。以前のルータでは、この再接続に5秒以上かかっていたのだ)。

 お風呂に入っていたみこりんが出てきたときには、すべての作業は終了していた。
 みこりんが新しいルータを指差して、「それは何?」と問うので、「PCとインターネットを接続する装置」と答えると、「うーん、よくわからない」と頭を抱えている模様。でも、その役目を終え、テーブルの上に置かれている旧ルータと同じようなものだとわかると、なんとなくわかったらしい。

 次にこのルータを交換する時は…、WAN側のギガビット接続が当たり前になってる頃かな。果たしてそれが何年後になるのか、今はまだわからないけれど。


2007.1.14(Sun)

 昨年、Licへのプレゼントとして炭素で出来た鉱物を研磨したものが付属した装飾品を買った宝石店から、年賀状が届いていたのだが…。“この葉書持参で粗品進呈&30%オフ”の文字を、Licはおそるべき記憶力で覚えていた。
 というわけで、その店が入っているスーパーまで買い物に(本当はみこりんの髪をカットしにいくのが主目的)。

 カットの予約を入れ、時間までその宝石屋さんでお気に入りの品を物色するLicとみこりん。
 およそ40分ほどかけて、Licは獲物を3つにまで絞り込んでいた。みこりんは自分の指のサイズが1号よりもさらに小さいことが判明し、ショックを受けていた模様。みこりんには中学生くらいになったらちゃんとした指輪でもなんでも買ってあげようと思いつつ、Licの選んだ品をチェック。
 Licの選んだリングは、いずれもV字型にカーブしているのが特長だった。それ単独でつけると、どれもよさそうに見えるのだが、マリッジリングと重ねるとなると、たしかに店員さんの言うとおり、あまり湾曲してないリングの方がよいみたいだ。

 結局、赤系の石が3連星になったリングに決まった。ここでみこりんのカット時間になったので、あとは私一人で支払いなど済ませておく。カジュアルリングなので、さほど値のはる品ではないものの、やはり30%オフの効果は大きく、驚きの安さに。しかもレジの入力間違いでさらに400円ほど安くなってるし(店員さんが「あ…」と言うまで、私はこの間違いにまったく気付いてなかった)。しかし店員さんは、「特別にこのお値段でかまいません」とのこと。太っ腹だ(すでにクレジットカード支払いのサインも終わってたので、修正が大変というのもあるのだろう)。宝飾品の定価っていうのは、どの程度の利益率になってるんだろうか…。なんてことを気にしつつ。

 同じスーパー内にあるカット屋さんまで移動。みこりんはすでにカットが始まっていた。Licの予約はさらに30分後ということらしい。そこで、みこりんのカットが終わるまで、待ち、Licが染色のためあやしげな液体を髪に塗られている間、みこりんと時間をつぶす。
 みこりんが本屋に行きたいというので、2階のすみっこに入っている本屋までちょいと見に行ってみる。じつはここには昨日も来ているので、どんな本があるかはすでにみこりんの頭の中には記憶されていたようで、買いたい本はさくっと決まってしまった。ここで1時間くらいはゆっくりできると思っていたのだが、大きな誤算。

 再びカット屋さんまで戻り、みこりんは買ってきた本を読み、私はケータイでニュースなどチェック…、してるうちに、いつのまにか寝入っていたらしい。みこりんにつつかれて、はっと我に返る。
 みこりんが、「かーさん、頭にへんなもの巻いてる」と指差すので見てみると、たしかにラップのようなもので頭をくるまれていた。ほー、あぁやって染色するのか。と思いつつ、待っていると、またしても私は眠っていたらしい。
 退屈しきったみこりんに起こされた時、Licはドライヤーで念入りに髪を乾かされているところだった。

 Licの髪は長い。ゆえに、ドライヤーもそれなりにかかる。
 それにしても、さすがプロの仕上げは素晴らしく、ストレートパーマをかけたわけでもないのに、さらさらだ。うーん、さっきまでのLicとは別人のようだ。

 *

 買い物など終え、帰る頃になってから、みこりんが2階にある石屋さんに吸い込まれていった。宝石店では自分に合う装飾品を見つけられなかったみこりんだが、ここにならあるという確信があったのだろうか。あるいは、宝石店にあったマイナスイオン系なブレスレットに惹かれていたみこりんに、「あやしいマイナスイオンより」(ここまでは私の言葉)は、「2階の石屋さんできれいな石を買ったほうがいいんじゃない」と助言したLicの言葉をしっかり記憶していたのか。

 石屋さんといっても、墓石とかそういう系の石屋さんではない。ここにあるのは、いわゆるパワーストーン系な水晶とか、ラピスラズリとか、その他諸々の鉱物類がところせましと並べられた石屋さんだった。
 棚にはずらりと小さいガラス瓶に入れられた小さい玉が並び、それらをブレンドしてオリジナルのブレスレットも作ってくれるハンドメイドな石屋さんでもある。

 みこりんは十分時間をかけて石を選んだ。なかなか納得のできる色の石が見つからなかったようだが、店員さんのアドバイスもあり、メタリックな青系の美しい石をメインに使ったブレスレットを、その場で作ってもらっていた。こういう小さいきらきらした石に、みこりんは小さい頃から格別の興味を示していたが、こうやって本格的な装飾品を買うのは、これが初めてである(幼児の頃はプラスティックのオモチャで満足してたんだけど)。
 それに触発されたのか、Licもお気に入りのブレスレットを1つ選んでいた。種類が豊富すぎて、迷いまくるほど、この狭い店内は石で満ちていた。

 上機嫌なみこりんが「とーさんは買わないの?」と言ったのだが、私はすでに昨年、みこりんがキャンプに旅立った日に買ったターコイズの勾玉が付いたケータイのストラップがお気に入りなので、今回はパス。竜神の彫られた水晶の玉には、やや心惹かれるものはあったのだけれど…

 以上で今日の買い物終了。昨夜に引き続き、帰宅したのは午後9時過ぎになっていた。んー、時間の経つのがとても早い今日この頃。


2007.1.15(Mon)

夜のガード

 毎朝、みこりんを起こしに行くたびに、ベッドから半ば落ちそうになってたり、ベッドの隅のほうで隠れるように寝ていたりして驚かされる日々であった。みこりんの寝相は小さい頃からかなりアクティブで、布団の大海原を眠りながら航海する船乗りのようでもあった。
 みこりんの証言によれば、ベッドで眠るようになってからも、毛布ごと床に落ちてたりすることはしばしばあったらしい。そこで、みこりんはベッドガードをベッドに装着することを提案していたのだが、今宵めでたくそのベッドガードが我が家へとやってきたのである。

 木製のベッドに、金属製のベッドガードはややミスマッチな質感を醸し出していたが、さすがにあと3年もすれば必要なくなるだろうから、みこりんにはこれで我慢してもらうことにする。
 ミスマッチとはいっても、金属製の細いパイプで出来ているので、めちゃめちゃ違和感があるわけでもなく、ベッドガードとしてはまぁ普通の品だと思うし。

 待望のベッドガードが付いたことで、みこりんは意気揚々と布団の中に潜り込んでいった。これでもう落ちることもない。その安心感は何物にも代えがたいのであろう。
 みこりんが夜中目覚めることのないように、ベッドガードよ、みこりんを護りたまえ。


2007.1.16(Tue)

四十にして惑わず。

 「子曰、吾十有五而志乎學、三十而立、四十而不惑、五十而知天命、六十而耳順、七十而従心所欲、不踰矩」

『論語』為政編より

 四十にして惑わず。
 今日、Webのアンケート欄の年齢の項目で、ついいつもの調子で“36〜39”にチェックを入れようとして、ふと気づく。もう四十なのだと。

 四十にして惑わず。
 まだ迷ってばかりだ。おおよその自分の道筋は見据えているものの、そこから先の幾重にも分岐した未知の領域へ、どう進んでいったらよいのか迷っている。だいたい私は20代で死ぬのだと思っていた。体の中から腐敗が進んでいくようなイメージに常につきまとわれ、カンカンと鳴る踏み切りの前で、ここで一歩踏み出せば楽になれるのかな…、なんてことを考えてしまっていた時期すらある。

 その時期をどうにか乗り切り、いつのまにか30になり、みこりんを授かり、そしてとうとう40である。生まれてから今日までの日にちよりも、今日から死ぬまでの日にちの方が、たぶん短い。願わくば、みこりんが二十歳になるまでは自分の目で見、己の足で立っていたい。

 誕生祝だといって、みこりんがビーズで腕輪を作ってくれた。
 これは墓場まで持っていくことにしよう。


2007.1.17(Wed)

“フカマル”

 “フカマル”とかいう名前のポケモンが、秘密の入り口を抜けた先のダンジョンにいるらしいという情報を得たみこりんは、昨日、DSで『ポケモン ダイヤモンド』を起動し、ひたすらその秘密の入り口を探すのに明け暮れていた。おおよその場所はわかっているのだが、隠し通路になってるらしく、なかなか入り口は見つけられないようだった。

 サーチエンジンで検索してみたところ、たしかにそのような場所はあり、“フカマル”という名前のポケモンも存在していることはわかった。その場所も、みこりんが現在探査中の場所と、ほぼ一致している模様。となると、あとはもうひたすら探すしかあるまい。とあるページには、能力“かいりき”が必要と書いてあったりもしたので、ちょっとずつ進んでは“かいりき”を使用してみたりしていたようだが、“ここでは使えません”とのメッセージが出るだけで、空振りに終わったらしい。
 しかしみこりんは執念深く探索を続けていた。いつものみこりんらしからぬ根気強さである。

 そのうち、みこりんはあることに気付いたのだった。今、探索している場所より上に、さらにもう1本、道があることに。
 ぱっと顔を輝かせ、「きっと、ここにあるんよ」と言いながら、またしても“かいりき”を使いつつ進むみこりん。だが、やはりここでも“かいりき”は使えないらしい。徐々にがっかり顔になってきつつあったみこりんだが、何度かカーソルキーを動かしているうちに、すすーっと入れないはずの場所へと移動することに成功したのである。

 ついに“フカマル”が潜むダンジョンに到達。しかし、“フカマル”は“低確率”らしい。出現頻度が“低確率”なのか、ゲット確率が“低確率”なのかはわからないが、とにかく簡単には捕まえられなさそうだ。
 みこりんも慎重にダンジョンを進んでゆく。そして…

 野生ポケモンが現れた!

 緊張の一瞬である。
 現れたポケモンの名前は、“フカマル”だった。みこりんのおそるべき“くじ運”の良さは、ここでもいかんなく発揮されたもよう。一発で遭遇するとは。

 みこりんは慎重に相手のHPを削り、倒してしまわない程度に弱らせてから、モンスターボールを使用した。はたして“フカマル”ゲットなるか。
 しかし、“フカマル”はモンスターボールから何度も脱出を果たし、結局、この遭遇戦では、捕獲に失敗してしまったのである。
 その後もダンジョンを徘徊しつつ“フカマル”を探していたみこりんだが、“低確率”と書いてあった通り、なかなか遭遇することはできず。まれに出現しても、モンスターボールから脱出してしまい、ゲットならず。
 昨日はそこでプレイ中断。

 そして今日、みこりんはダンジョンでの“フカマル”捕獲作戦を再開していた。
 けれども、なかなか遭遇できず、だんだんみこりんも弱気になってきたらしい。方向感覚に優れたみこりんだったが、このダンジョンはあまりに奥が深く、戻り道がわからなくなってきたっぽい。
 「戻れなくなったら、任天堂の人に助けてもらえる?」と、みこりんが心配そうに聞くのだが、例のバグ技を使って戻れなくなったケースとは違うからそれは無理なんじゃないかなぁと答えると、「えー…」と困り顔。「迷ってしまったら、永遠にそこからは出られないかもしれないよー」なんて怖がらせようとしてみたところ、みこりんは突然しゃきっとした顔で「へへ、でもちゃんと“あなぬけのヒモ”持ってきてるから大丈夫!」と言ったのだった。おそらくダンジョンから一瞬で脱出できるアイテムを持参してきているということなのだろう。なかなか抜け目のないみこりんである。

 そろそろ晩御飯の時間。何度目かの“フカマル”との遭遇戦が始まった。倒してしまわない程度にHPを削り、そして、モンスターボールを使用。「“スーパーボール”使った方がいいんじゃないの?」と言う私に、「それはもったいないから」と、あくまでも冷静なみこりん(モンスターボールにも、いろいろグレードがある)。だが、ボールを使った瞬間は、画面を手で覆い隠し、目を閉じたのだった。神にでも祈っているのだろうか。
 そして、ゆっくりと液晶画面から手をどかす…。

 みこりんは勝った。
 “フカマル”をゲットしたみこりんは、さっそくニックネームをつけてやっていた。

 そんなみこりんの現在の悩みは、なかなか“殿堂入り”できないこと。みこりんよりあとから始めたお友達が、次々に“殿堂入り”を果たすのがうらやましくて仕方がないらしい。ちなみに“殿堂入り”するためには、四天王を倒し、ラスボスにも勝利しなければならないのだが、みこりんは四天王を倒すところまではいけるらしい。しかし、そこから先で力尽きているようだ。まぁこればっかりは時間をかけて手持ちのポケモンを鍛えるしかないので、いたしかたあるまい。みこりんの場合、ポケモンのレベル上げよりも、いろんな種類のポケモンを集める方に重きを置いてるようなので、“殿堂入り”にはもうしばらく時間がかかりそう。


2007.1.18(Thr)

夢の中で…

 私は暗がりの中、何か得体の知れないものと、闘っていた。黒い影のような手足がびゅんびゅんと私の方に向かって突き出されてくるのを、必死になって手で払い、かわし、そして隙をついて私は、右の拳を繰り出していた……

 ごつん

 鈍い音。右手に伝わる実感のある重み。

 常夜灯の薄灯りの中、目を覚ました私の隣で、Licが目を見開いてこっちを見ているのが確認できた。

 ………やってもうた orz...

 夢の中で私が繰り出した拳は、隣で寝ていたLicの頭を直撃してしまったらしい。
 夢の中の出来事のはずなのに、実際に体が動いてしまうとは…

 「ゆ、夢の中で、何かと闘ってたら、手が当たった、みたい。」しどろもどろに、そんなことを言ったような気がする。寝る前に、Licが「近頃は夫婦でも普通に相手を殺してしまうんやねぇ」(昨今のバラバラ殺人事件等のことをさす)みたいな話をしていただけに、よけいびっくりさせてしまったかもしれない。
 「起こしてごめんね」と言う私に、すかさずLicの「起きんかったらええんかい」と突っ込みが入っていたが、眠気でぼーっとしてる私の頭は回転がひどく鈍っていて、よい言葉を思いつかず。うーん…

 夢の中のことなのに、実際に体が動いてしまう、というパターンは以前にも1度、私はやってしまっていた。
 あれはそう、みこりんがまだ、ほにゃほにゃの赤子だった頃の事だ。
 私とLicの間に、みこりんをはさむ形で眠っていたのだが、その日、私は夢の中でやはり何ものかと闘っていた。そして、相手の手が目の前に迫って来たので、つい“がぶり”と噛んでしまったのだ。その直後…

 轟きわたる、みこりんの泣き声に、私は、はっとして目覚めていた。
 なんということだろう。私が夢の中で噛み付いたのは、隣で寝ていたみこりんの愛らしい小さい手だったのである。夢の中で噛み付く瞬間、何か物理的な抵抗を感じたので、ふっと力を弱めていたからよかったようなものの、本気で噛み付いていたら、みこりんの手はどうなっていたことか。今でもぞっとする思い出である。

 この癖(というか体質?)、なんとかしなければ…


2007.1.19(Fri)

眠り姫

 今夜はLicとみこりんが、職場の新人歓迎会に出席のため、私ひとりで留守番である。ひとりきりというのも寂しいので、にゃんちくんをリビングへと招き入れ、組んだ膝の上で丸くなってもらった。ぽかぽかと暖かくてよし。

 やがて22時を過ぎる頃、がちゃりと玄関ドアが開く音。
 戻ってきたようだ。
 しかしすぐには上がってこずに、Licの声だけが届いてきた。みこりんがクルマの中で眠ってしまったらしい。

 Licはみこりんを産む前、10kgの米袋を抱えることも不可能だった。
 だが、母は強し。みこりんの成長に合わせて、徐々に鍛えられてきたLicの腕力は、今では10kgの米袋なぞ容易に持ち運ぶことが可能である。
 とはいえ、さすがに小学3年生ともなると10kgの米袋2つ分よりも重いため、クルマのシートからみこりんを抱き起こすことはその母力をもってしても無理っぽく、私が召喚されるのであった。

 助手席ですやすやと眠るみこりんに「抱っこするよー」と声をかけ、両脇の下に手を入れ、そろりと持ち上げる。…、お、重くなったな、みこりん。
 前かがみの姿勢のままでは腰をやってしまいそうなので、直立姿勢になるべく、みこりんをシートからひきはがし…。って、「あれ?」みこりんの体が、微動だにしなくなった。ほとんど体はクルマの外に出ているのに、なぜかそれ以上動かせなくなってしまったのだ。「な、なにゆえに…」

 視線をつつっとみこりんの体に沿って下げていってみると、原因がわかった。みこりんの足首が、クルマのシートの隙間にはさまって抜けなくなっていたのだ。
 危ないあぶない。もうちょっとで、力任せに、ぐいっと引っ張り上げるところだった。
 片手でみこりんを抱きかかえたまま、左手ではさまった足首を外し。
 ようやく自由になったみこりんを縦抱きにしたまま、玄関から入り、階段を上る。

 ちょっと抱きかかえる姿勢が悪かったみたいで、腕に必要以上に重みがのしかかってくる。階段の半ばあたりで、はやくも息切れが…。
 ぜぇはぁ言いながらも、みこりんの部屋の前にようやく辿り着き、ドアを開け……。これがなかなか開かなかった。取っ手を下に捻ればOKなのだが、そこに指をかけるためには、みこりんを抱きかかえたままあと30cmほど腕を上にやらねばならない。なんというか、みこりんを投擲するかのような体勢にもっていかないと、指がドアの取っ手に届かないのだ。
 うーん、いつもならみこりんの背中に回した方の手でドア操作が出来るのに、なぜ今日はそれができないのか。悩みつつも、みこりんの腰を保持した下側の手を、どうにか取っ手の高さまで持ち上げ、ドア・オープン。うは、みこりん落としそう。腕の筋肉がぷるぷるといい感じに脱力しかけ。

 しかも寝かせる予定のベッドは、朝起きたままの状態だったので、掛け布団を引き剥がす作業まで加わってしまった。まず、みこりんを迎えに行く前に、こっちの準備を終えてからにしとくべきだったと思っても、後のまつり。
 若干の躊躇のあと、布団は足で蹴り飛ばすことで、寝かせスペースをどうにか確保し、そろりとみこりんを降ろす。
 ふぅ。
 ちょっと呼吸を整えたあと、部屋の明かりをつけてみる。パーカーを着たままのみこりんは、首元までジッパーを上げているので、なんだか窮屈そうに見えた。そこでパーカーは脱がしておこうとみこりんの半身を起こした時、みこりんがうっすらと目を開けた。「おはよう、みこりん」そう言う私に、みこりんは「寒い」と、呟いた。

 パーカーをちゃちゃっと脱がし、毛布と掛け布団をかけてやると、みこりんはもぞもぞと布団の中で体を丸め、やがて静止した。落ち着ける場所を探し当てたようだ。
 おやすみ、みこりん。
 冬、真っ只中の、金曜日の夜のこと。春はまだ、遠い。


2007.1.20(Sat)

猫じゃらし

 数年前、にゃんちくんが若さのピークにあった頃、Licが猫用のオモチャを買って来たことがある。短い竿の先端に糸が結ばれ、その糸の先には、ネズミを模した小さいぬいぐるみがくっついている、猫じゃらしである。
 そのオモチャに、にゃんちくんはすぐに夢中になった。我を忘れて野生に還ってしまったんじゃないかと思うほどに。
 その結果、またたくまにネズミのぬいぐるみは糸から取れてしまい、ぬいぐるみ本体も毛が抜けてしまって、えらい惨状になってしまった…

 そういう経緯もあり、その後、こうした猫じゃらし系なオモチャは、あまり買わなくなったのだが、近頃のにゃんちくんはシニア餌が必要な年頃になり、ちょっと貫禄というか落ち着きが見られるようになってきた。というわけで、今一度、猫じゃらしで遊ばせてみてはどうだろう。そう思った私は、さっそくホームセンターにて、猫じゃらしを物色。前回の反省を踏まえ、糸はより頑丈に、しかもからまりにくくなっているやつを選択。ぬいぐるみ本体も、あっさり壊れない簡素なつくりで、なおかつ猫が喜びそうな尻尾付きのやつにした。よりシンプルに、ただの球体がくっついてるのもあったのだが、あまりに味気なさそうなので今回はパス。複数の小さいネズミが数珠繋ぎになったやつもあったが、どうみてもすぐに破壊されそうなので、これもパス。たぶん、こっちのは仔猫用なのだろう。糸も細かったし。

 さて、帰宅後、さっそくにゃんちくんを遊ばせてみることにする。
 竿を振って、ぶらーんぶらーんとネズミのぬいぐるみを上下左右に廊下を跳ねさせてみたところ、にゃんちくんは冷静にじっと見ているだけで、なかなか手を出しては来なかった。
 もうこういうオモチャでは遊ばなくなったのかな、と思いつつも、なお、根気強く待っていると、徐々に、にゃんちくんの体内エネルギーが蓄積されつつあることに気が付いた。バネを限界まで巻いたような感じの緊張感が、そこにはあった。

 そして…。ついに、にゃんちくんが飛びかかったのである。猫パンチを繰り出しつつ、両腕で抱きかかえるようにしてネズミのぬいぐるみにがぶりと噛み付いている。
 「ぐるるるるるる〜」、と低い唸り声まで上げて。

 にゃんちくんの闘争本能は、まだ枯れてはいなかったようだ。いったんじゃれついてしまうと、もう誰にも止められない状態に。
 まだまだやるなぁ、にゃんちくん。そんなことを思いつつ、竿を振る。

 でも、それもつかの間、なんだかにゃんちくんの息が上がってきてるような?
 気のせいではなく、明らかに両肩で息をしているように見える。そして、ネズミが目前を通過しても、今度は手を出さなくなってしまった。
 自分から飛びかかっていくことはなくなったが、顔の前とか、体の下なんかに入ってくると、はっしと捕らえてしばしじゃれつき、その後、ふっと我に返る…、みたいな感じになってきた。
 あまり無理をさせてもいけないので、遊びはこのへんでおしまい。

 *

 そして夕方、みこりんが「おとーさん、これなに!?」と、ネズミをぶら下げた竿を持ってリビングに駆け込んできた。
 にゃんちくんのオモチャであることを教えてやると、その形状から遊ばせ方はすぐに理解できたようで、さっそくにゃんちくんの潜む、椅子の下あたりに向かって竿を振ってみている。

 ネズミのぬいぐるみの口の部分が、ちょっと固いモノで出来ているため、床に落ちるたびに、“コツン”と音がして、その後、“ざざざー”と引きずる音が続く。

 コツン ざざざー コツン ざざざー コツン ざざざー…

 にゃんちくんがなかなかじゃれついてこないので、みこりんがちょっと不満そうな表情になってきた。でも、椅子の下では、にゃんちくんの両眼は鋭くネズミに注がれており、確実にその動きをトレースしている模様。もうじき辛抱たまらなくなって飛び出してくるはず。私はそう確信したので、みこりんに「もうちょっと続けてみてごらん」と言ってやる。

 コツン ざざざー コツン ざざざー コツン ざざざー…

 その直後、まるで白い幻影のように高速に、にゃんちくんがさっと姿をあらわし、猫パンチをネズミにかまして、また、ふっと椅子の下に戻っていった。その様子を見ていたみこりんは、けたけたと笑い転げていた。
 たしかにこれは面白い。まるで、猫を餌(ネズミのぬいぐるみ)で釣る遊びのようでもある。にゃんちくんの方も、猫パンチをくらわすだけでは飽き足らなくなってきたのか、両腕で抱え込み、「がるるるる」としばらく床の上を転げまわった後、何事もなかったかのようにふっと椅子の下に消える技も披露してくれるようになった。
 猫がじゃれつく姿は、じつに愛嬌があっていいものだ。

 今回買ってきた猫じゃらしは、その丈夫さに主眼を置いて選抜したのが功を奏したか、いまだ壊れてはいない。
 まだ当分はこれで遊べそうだ(我々がにゃんちくんに遊ばされている、のかもしれないが)。


2007.1.21(Sun)

ブロードバンドルータのその後

 我が家のブロードバンドルータを、アイ・オー・データ機器のNP-BBRM交換してから、はや1週間。まったく問題なし、ならばよかったのだが、最初の2日間で、同じような問題が1件ずつ発生した。

 通常、夜間から翌夕方までFFXIの世界にてチョコボ育成用餌をバザーするため、私のPCは、ほぼ終日FFXIを稼動させているわけなのだが、これがなぜかタイムアウトエラーで連日に渡り、落ちていた。ルータの設定では、常時接続環境にしてあり、30秒ごとに通信が正常に行われているか確認し、切れていれば自動的に再接続するようになっている。だが、タイムアウトは起きていた。FFXI上では一定時間通信が途絶すると、タイムアウトする仕様になっているので、このあたりに何か問題が起きているような気もするが…。
 類似例がないかどうか、サーチエンジンでチェックしてみると、そういう場合にはファームウェアのバージョンアップが推奨されていたので、まずそれを実行することにした。この機器そのものの販売開始時期は2004年と古いのだが、最新ファームウェアの日付は2006年11月17日になっており、比較的メンテナンス状況は良さそうだ。

 手順に従い最新ファーウェアにバージョンアップ。その後、同様の問題は発生しなくなったので、ほっと安心していたところだったのだが…

 夕方、うとうとと昼寝をきめこんでいると、Licがインターネット接続がうまくいかなくなったと言っている。詳細を聞いてみると、なぜかフレッツ・スクエアの方の接続は問題なく、しかもLicのPC以外ではマルチセッションに設定してある両方の接続ともに正しく動作してるらしい。んー、なにやらあやしげな。
 ルータの設定はいじっていないことを確認し、まずDHCPクライアント一覧にLicのPCが入ってるかチェック。これは問題なし。次にLicのPCのTCP/IP関係のプロパティをチェック。…こちらも特に問題なさそうに見える。そして試しにブラウザでWebサイトにアクセスしてみると…、正しく表示されていた。問題はいつのまにか直ったらしい。
 はたして問題がプロバイダであるOCNの方にあったのか、ルータか、LicのPC固有の問題か。いまひとつ釈然とせぬまま、とりあえず直っているので様子見。

 その後、FFXIにログインしてみると、数秒で受信データがゼロになり、やがてタイムアウトしてしまう現象に遭遇した。この現象だけみると、ルータ交換直後に発生していたタイムアウト事件に酷似しているが、あの時はタイムアウト後のログインではまったく問題は起きなかった。今回は、何度ログインしても同様の現象ですぐに落ちる。
 Webサイトの閲覧やメールの送受信等は問題がないため、FFXI特有の現象が起きている模様。ちなみにLicのPCでFFXIにログインしても同様の問題が発生したので、PC固有の問題ではないようだ。となると、ルータか、プロバイダか、あるいはFFXIのサーバそのものの不具合の可能性が考えられる。じつはFFXIのサーバには、ここ数日、ログイン障害等が連日のように起きていたので、当初はその線が濃厚な予感もあったのだが、もしもこれがサーバ側の原因だとしたら、同様の障害に悩まされている人によって何らかの反応が、掲示板なりに現れてもおかしくはなかった。しかし、そのような気配はない。FFXIのサーバ・ステータスも正常だし、ログイン障害は直ったと告知があったばかりである。

 悩みつつも、とりあえずFFXIの運営会社宛に、不具合報告でもしておくかな、とメールを書き書きしていると、Licが「ルータの再起動は?」と言う。
 おぉ、たしかにそいつはやっておくべきだな。というわけで、書きかけのメールは破棄し、ルータを再起動させてみた。
 再起動後のルータの通信状況が良好なことを確認したのち、改めてFFXIにログインしてみる。すると……、さっきまでの通信障害が嘘のように、普通にデータは流れ、まったく問題なし。
 ルータが原因だったか。

 どうしてFFXIの受信データのみ遮断されるという現象が発生したのか、そいつの究明は出来ていない。もしかすると、ルータのファイアウォールの仕様で、そのような現象がごくまれに起きるのかもしれないし、あるいはPING応答無視の設定がFFXIの通信仕様と相容れない状態がごくまれに発生するのかもしれない。だが、一応、ルータの再起動で問題は解決した。ちょっと不安な現象ではあるものの、これもまた、しばらく様子見だ。問題が発生するからには、何かそのトリガとなる条件があるはず。それがわかれば、解決できるかもしれない。


2007.1.22(Mon)

クジラの竜田揚げ

 保育園な頃のみこりんは、クジラの皮を薄く刻んだものを混ぜた“なます”をたいそう気に入って、ぱくぱくと食べていたものだ。おそらくその当時は、それがクジラだという認識はなかったものと思われる。一応、「それ、クジラっていうんだよ」とは教えたものの、果たしてみこりんに、食材と化しているそのちっこいものが、あの海にいるでっかい生物と同一視できていたかどうかは、ちょっとあやしい。
 もっとも、クジラは牛や豚の肉のように普通に売ってるというわけではないから、そうそう口にできる品ではなかったのだが…。

 あれから時は流れ、今日、みこりんは給食でクジラ肉を食べたという。むかーしならば、給食にクジラ肉は普通にメニューとして載っていたものだが、現代においては、それはなかなか難しい。今回、クジラ肉の料理が出たのも、特別に入手できたからだと献立表に注意書きがしてあった。いわゆる調査捕鯨でゲットしたクジラの肉である。

 そのあたりの背景説明などは先生から受けていたようで、みこりんも“調査捕鯨”がどういういきさつで行われるようになったかは、おおまかには学習している模様。
 で、肝心の味についてだが…。

 お風呂の中では、「うーん…」と、やや言葉を濁していたみこりんだったが、お風呂上りにLicに語ったところによれば、「おいしかった」んだそうな。
 そうだろうなぁ、クジラの竜田揚げか、あれはたいそう美味であった。私もできることなら、今一度、あれを食べてみたいものである。
 ところでみこりんに、小さい頃に食べたクジラの皮入りなますの話をしてみたところ、「?」というような反応を示している。……、どうやら忘れてしまっているらしい。たしかに、皮と赤身の肉では、ぜんぜん見た目も味も違うしなぁ…。


2007.1.23(Tue)

病院にて

 今日は通院の日。というわけで帰宅後、出かけようとしたところ、みこりんもついて行きたいと言うので、連れて行くことにした。
 みこりんの狙いはわかっている。病院の待合室に置いてある『ドラえもん』の続きを読みたいのだ。

 病院までは、山をぶち抜いた地元民しか知らない秘密ルートを通っていくので、クルマで3分ほどしかかからない。この道ができるまでは、わざわざぐるっと山を回りこんでいかねばならなかったため、かなり時間を食っていたのだが、じつに便利になったものだ。
 その短い車中で、今日、消防署見学に行ってきたことなどを話してくれるみこりん。“水槽車には水が10トン入る”というフレーズが、ちょっと気に入ってるらしい。

 病院到着。通常の受付時間は過ぎているため、診察室は閑散としていた。どの席でも座り放題である。さっそくみこりんは本棚から『ドラえもん』を抜き出してきて、読み始めた。それを横目でちらちらと覗いてみると、のび家のテレビは、まだ白黒テレビで、カラーテレビを持ってるのは一部の金持ちだけなんていうシーンがあり、ちょっと驚く。そうとう古い時代の作品が、いまでも現役で読めるとは…。というか、みこりんには白黒テレビが何か分かっているのだろうか。ちょっと気になる。
 ちなみに私が保育園な頃は、まだ家のテレビは白黒だった。でもすぐにカラーテレビに代わったような記憶があるので、白黒テレビを知っているぎりぎりの世代かもしれない。

 でもそのうち、ブラウン管テレビを知らない世代なんてのも出てきそうだし、いやまったく年を重ねたものよのぅ……。なんて思いつつ、名前を呼ばれたので診察室に入る。みこりんは『ドラえもん』に没頭中。

 数分後、待合室に戻ってみると。床にひざをつき、椅子に肘をのっけて『ドラえもん』を読んでるみこりん発見。なぜそのような格好なのか。そう聞いてみると、肘が痛いからとか。あぁそういえば、昨日あたりから肘の筋肉(というか筋?)が痛いと言っていたような。肘以外にも、足の裏とか、膝とかも、打ち身(?)してるらしい。冬だからそうなりやすいというのもあるかもしれないが、ちょっと気になる今日この頃。

 家に帰り、お風呂上りに足に湿布でも貼ろうかということになり、わくわく顔のみこりんだったのだが…、残念、うちにあった湿布は11歳以上限定だった。みこりんもその注意書きは読めるので、がっくりきているもよう。子供用の湿布薬をゲットするには、やはり病院で診てもらうしかないかもしれない。


2007.1.24(Wed)

『螺天-BIRTH』『逆境戦隊バツ「×」』

螺天-BIRTH (1) 『螺天-BIRTH (1)』(作:山口譲司)。この人の作品には、『BIRTH 全9巻』があったりするので、その再版モノかと思ってしばらく様子を見ていたのだが、どうやら新作らしいとわかったので買ってみた次第。

 “千獣観音の触手”を軸として、それを兵器として使いたい蛾羅間重工の思惑、古よりその触手(仏手)を封印してきたイスルギの者(前作を読んでいれば、だいたいの関係は理解できる)の出現。そして、今、一人の若者が千獣観音の触手に取り込まれ、長き眠りから覚め、人外の者として蘇った…、ところで1巻終了。長い前振りだった。ものすごく続きが気になる。次巻が出たら即買い。

 *

逆境戦隊バツ「×」(1)逆境戦隊バツ「×」(2) 『逆境戦隊バツ「×」(1)』『逆境戦隊バツ「×」(2)』(著:坂本康宏)。以前『歩兵型戦闘車両OO(ダブルオー)』で作家デビューを果たしたとして紹介した大学時代のサークルの後輩の作品がいつのまにか立て続けに出ていたので、買い。題名からして面白そうだ。
 まだちょっとしか読み進めていないけれど、なんだかちょっと懐かしい気分にひたる…


2007.1.25(Thr)

竹島プロジェクト2007

竹島プロジェクト2007 みんなで竹島の日を盛り上げよう!キャンペーン

2月22日は、竹島の日。 というわけで、トップにバナー追加。ぺたぺた、と。

 韓国によって今現在も侵略状態にある、日本国の領土、竹島。
 小さな小さな島だが、けしてこの状況を黙認はしない。少しだからと許せば、次はもっと大きなものを要求してくる。対馬、いや、九州もよこせと言い出しても不思議ではない。

 韓国はすみやかに国際司法裁判所に出てくるべし。


2007.1.26(Fri)

サイレン

 日付がゆるやかに木曜から金曜へと移り変わる頃、布団の中でそろそろ夢と現実との境界線が曖昧になってくる。そんな時に、遠くでもの悲しいサイレンの音を聞いたような気がした。
 何の音だろう、と回転の鈍ってきた頭でぼぅっと考えていると、その音はだんだんと明瞭に聞こえるようになり、ついには、はっきりとそれが救急車のサイレンの音だと理解できるまでになった。確実に近付いてきている。
 このあたりに人家といえば、この団地くらいしかない。救急車はまさにこの団地の坂道を上ってきているのだった。

 救急車の位置が、脳内の団地地図で明確にポイントできるほどに接近してきたと思ったら、ふいにサイレンが止んだ。耳をそばだててみると、ぼそぼそと複数の人の声らしきものが聞こえてくる。
 何を話しているのかはわからない。Licが布団から起き出し、そっと西の窓から外をうかがっているようだ。救急車が止まった辺り。

 なかなか次の動きが始まらない。
 まるで救急車の音が幻であったかのように思えてきて、徐々に意識はふたたび暗がりの奥底へと沈みこんでゆく。ここから先の記憶は、ない。

 *

 ふと気が付けば、朝になっていた。いつのまにか、みこりんが傍に来ており、もぞもぞと布団の中に潜り込んでくる。

 みこりんは「怖い」と言っていた。真夜中、サイレンの音がして、目が覚めてしまい、そのまま眠れなかったらしい。「あぁ、救急車が来てたからね」そういう私に、みこりんは言った。「ちがうよ、消防車よ」
 救急車と消防車のサイレンの音が違うことは、みこりんも知っている。みこりんは、消防車が到着した後に、救急車が来たのだと説明してくれた。

 どうも私が記憶しているシーンとは、異なった時間のことを話しているような気がした。私が覚えているのは救急車のサイレンの音だけ…。
 いったい昨夜は外で何が起きていたのだろう。

 それにしても、みこりん、怖かったらその時にこっち来ればよかったのに。するとみこりんは、こう答えたのだった。「怖すぎて動けなかった」と。
 みこりんの部屋と、私とLicの寝室は隣り合わせになっている。そのわずかな距離の移動を躊躇わせるほど、外は騒然としていたということだろうか。

 出勤時、昨夜Licが救急車が停まっているのを見たと思しき家に視線を走らせてみる。しかし、これといった変化は見られなかった。何もかもが、夢であったかのように、明るい陽光に照らされた風景が、そこにあった。

 真夜中のサイレンの音。私達家族が聞いた、その音は、果たして現実のものだったのかどうか…、謎は残ったままである。


2007.1.27(Sat)

湯屋にて

 近場に、天然温泉を使用した銭湯、それに宴会場やレストラン、各種リラクゼーション設備が渾然一体となった湯屋があるというLicの情報を元に、我々は夕刻を待って出かけた。
 ここのレストランには本場インドのシェフがおり、本格インド料理を食わせてくれるというのが、私的にはポイント高い。みこりんは、もとから温泉好きなのに加えて、子供用本格カレーセットがメニューに入っていると知って、朝から気合入りまくりであった。

 クルマで約20分。夕闇に景色が染まる頃、湯屋到着。隣接する廃材置き場が、そこはかとなく寂しげな雰囲気を醸し出している。この辺りは開発途上の地区らしく、道路の反対側は一面の田園風景だった。
 駐車場は広かったが、そのほとんどが埋まるほどの盛況ぶり。土曜の夕方という時間帯のせいかもしれない。

 靴箱は一人一個が割り当てられており、その鍵を入浴料金と共にフロントに渡すと、引き換えに脱衣所のロッカーの鍵をゲットできるという仕組みになっていた。貼ってあった説明文によると、当初からこんな厳重な管理にはなってなかったらしい。いろいろと靴に関してトラブルがあったものと推測される。

 浴場は階段を上がった2階部分にあった。向かって右が男湯、左が女湯となっている。入り口の注意書きには、“小学2年生以上の女の子は、女湯へ”とあったので、みこりんはLicと共に。
 館内図によれば、男湯と女湯の構造はほぼ対称的であり、違いはない。「じゃ、一時間後に、ここで」それぞれ、脱衣所へと消えてゆく。

 *

 30分後、私はややのぼせつつ、待ち合わせ場所の椅子に座り、Licとみこりんを待っていた。自分的にはかなり時間が経ったように思っていたのだが、時間感覚ずれまくりである。
 各種牛乳の自販機に、ものすごく惹かれるものを感じていたが、財布の中身が5千円札と硬貨が少々、たぶんここで使える100円玉は、1つくらいしか残ってなかったことを思い出し、見るだけにしておく。なんとなく、今使ったらまずいような予感があったのだった。

 それからしばらくして、みこりんが姿を現した。みこりん一人である。Licはもう少し時間がかかるらしい。
 「何か飲みたい」と、みこりんが言った。私はおもむろに財布を取り出し、硬貨を確認。んー、100円、100円っと…。10円玉の背後に隠れていた1つきりの100円玉をようやく見つけ出し、みこりんに渡してやる。やはりこれを温存しておいて正解だった。

 みこりんはずらっと並んだ自販機を前に、悩んでいた。牛乳はどう?と勧めてみたのだが、「あれってふつーの牛乳?」と、あまり乗り気ではない様子。「りんごとか、コーヒー牛乳とか、ピーチとか、いろいろあるよ」と、牛乳ビンが整然と詰め込まれている自販機に興味をもたせてみようと画策したものの、見慣れぬあやしげな自販機を警戒してか、結局、みこりんは無難に紙カップのカルピスに決めたのだった。残念。風呂上りの正しいビン牛乳の飲み方を伝授しようと思ったのに…

 Licが出てきたところで、館内のレストランに移動。みこりんと私は、当初予定通り、それぞれインドカレーセットを注文してみた。インドのシェフがいるとはいっても、レストラン的には普通のメニューも和洋中と揃えてあるので、どちらかというとカレーセットの方がメニュー内では異色を放っているような感じだ。
 やがて出てきたカレーセットは、盛り付け方からして普通ではなかった。銀色の大きな丸いトレイの中に、同じく銀色のカップにカレーが数種類、そしてトレイの上にそのままサラダや肉、そしてでっかいナンが乗せられているダイナミックさがちょっとうれしい。

 実食。
 みこりんは学校の給食のカレーでもナンが出てくるらしく、上手にちぎって食べていた。私の小学生時代には、ナンそのものの存在すら知らなかったというのに、えらい違いである。
 お子様カレーセットとはいうものの、やや辛い設定のものがあったようで、みこりんがちょっと苦戦気味。私の方には3種類のカレーがあり、その中でもベジタブルカレーは辛味がほとんどなかったので、みこりんのそれと交換してやった。

 私の方の肉料理には、素材が何か分からないぎゅっとスポンジを固めたように水分のない物体があり、そいつはLicにも協力を仰ぎつつ、どうにか食べ終える。みこりんは、お腹ぱんぱんらしく、やや疲れた表情。いつもならデザートのプリンは絶対に外せないところだが、今はもういいらしい。お子様用とはいえ、けっこうなボリュームだったようだ。

 ロビーの特産物売り場など見ていると、みこりんが館内案内図の前でなにやら思案顔。そっと様子を覗ってみると、男湯と女湯を見比べて、ため息なんかついている。
 男湯、女湯それぞれに、数種類の湯船があったわけだが、その中に1つだけ、男湯と女湯で湯の成分(というか色)が違ってるやつがあったのだ。それがみこりんには残念でならないらしい。男湯にあるというそれを、どうしても体験したいっぽい。でもみこりんは小学3年生なので、男湯には入れない。
 やや落胆気味のみこりんを連れ、帰路につく。

 途中、レンタルDVDを返すべく立ち寄った店で、中古ゲームの『ポケモン』各色シリーズがあり、以前から欲しがっていたこともあって、1つだけ買ってやることにした(みこりんの強い希望で『エメラルド』に決定)。これはゲームボーイアドバンス用のソフトだが、DSにはそれ用のスロットもあって、『ポケモン ダイヤモンド』もしくは『同 パール』と同時にそれぞれのスロットに挿す事で(みこりんが「ダブルスロットよ」と説明してくれた)、ポケモン図鑑が拡張されるという仕様になっているのだった。子供の収集癖を巧みについた仕様である。こうすることで、古いソフトでも、いまだに現役で売れてしまうのだ。おそるべし。

 そして帰宅。
 時刻はそろそろ午後9時を回ろうとしていた。
 そこで私は、いつもの癖でこんなことを口走っていたのである。

 「みこりん、お風呂はいる?」

 「はいらん」と即答されたあと、自分でも気が付いた。ぼけぼけである。


2007.1.28(Sun)

おにゅうの電話機

 みこりんが自室で怖くて身動きできない場合でも、私とLicに連絡がとれるよう、電話機を新調することにした。
 電話機と言っても、ケータイではなく、固定電話の方である。子機2つで子機間通話ができれば、それでOK。

 いつもの家電量販店にて、電話機を物色。今使ってる電話機にはFAX&コピー機能がついているため、新しい電話機にもその機能はあった方がいい、かも?でも、シンプルに電話機能だけのやつなら、若干値段が安く、懐に優しい。しかしその差は思ったほどには違わない。
 悩みどころである。

 親機と子機1つだけならば、いずれもほどほどに安いのだが、子機1つ追加になるだけで、1万円近く値段が上がる。この値段上昇分に比べると、FAX&コピー機能の値段上昇分は、相対的に低くなる…。
 FAXは滅多に使わないが、コピーの方は回覧版のメモ代わりにさくっとコピーを残したりする(Lic談)ので、あったら便利といえば便利、とか。たしかにそれもそうだ。

 で、どうせ買うなら液晶モニタは20数年前のワープロ専用機よりも劣りそうな“カタカナのみ”なんてのは遠慮したいところ。
 ほどほどの解像度があって、漢字表示にも対応してて、ナンバーディスプレイ対応で(対応してないのを見つける方が難しいけど)、みこりんにも簡単操作のインタフェースを備えてて、着信メロディもそこそこ選べて、コンパクトに美しいデザインで……。

 店頭に並んでるやつの中から厳選し、みこりんの第一印象なども考慮しつつ、結局、買ったのはコレ。ブラザーの“FAX-360DW”。

 設置は、私が風呂に入ってる間にLicにお任せ。入れ替わりに、Licが入ってる間に、私が電話番号の登録など。
 この登録した電話番号だが…、やはり親機と子機では共有できなかった。なので面倒でも子機側にも親機と同じように設定しなければならず。んー、親機子機、子機間通信できるのだから、こういうデータも送受信できれば便利なのに…。

 少々手間はかかったが、以上で作業終了。今夜から、みこりんは身動きできないほど怖くなっても、もう大丈夫。いつでも子機で私達と連絡がとれる。…子機の呼び出し音で起きないほど、私が熟睡してたら意味ないんだけど、たぶん、大丈夫。


2007.1.29(Mon)

ミッション・コンプリート

 MMORPGである『FINAL FANTASY XI』では、これまで3つの拡張ディスクが発売され、その度に冒険エリアは増えていった。そしてやはりRPGであることから、それぞれに用意されたシナリオ(ミッション)があり、そいつをクリアすることも、このゲームの楽しみ方の1つでもある。

 最初の無印版、それに拡張ディスク3つで、あわせて4種類のミッションがあるうちの、無印版のミッションは早々にコンプリートしていたのだが(基本の3国それぞれに用意されているので、正確に言えば無印版だけでも3種類のミッションがある)、次の拡張ディスク『ジラートの幻影』では、ミッションをある程度進めることで新エリア“トゥー・リア”(通称“空”)へと行けるようになる。
 この“トゥー・リア”はレベル上げでも重宝されたため、行けないとパーティでの行動半径がかなり制約されるとあって、とりあえず行けるまではちゃきちゃきとミッションを進めたものの、そこで安心してしまい、結局、ミッション・コンプリートしたのは、2006年に入ってからのことであった。じつに、ディスク発売から3年半が過ぎていたのである。

 そして、続く拡張ディスク『プロマシアの呪縛』が発売されたのは、2004年9月16日。こちらのミッションでも、ある程度進めると新たなエリア“タブナジア”に行けるようになり、さらに次の段階に進めることで“アル・タユ”(通称“海”)に行けるようになる。
 “タブナジア”には新しい街があったため、とりあえずそこに行けるようにミッションを進め、そこから先は、小休止していた。…のだが、続く拡張ディスク『アトルガンの秘宝』で、“アル・タユ”に行けるようになってるといいことがあるらしいとかなんとかいう情報があったりしたため、遅ればせながらミッションを再開し、次の拡張ディスク発売日である2006年4月20日までには、なんとか“アル・タユ”へは行けるようになっていた。
 しかし、そこから先は……

 最新の拡張ディスクである『アトルガンの秘宝』のミッションは、ソロでもかなり進めることが可能なように改良されたが、それ以前の『プロマシアの呪縛』ではソロ可能なのはほんの一部で、その大部分にパーティ戦闘が要求されており、旬を過ぎた現在ではミッションの攻略メンバー募集のシャウトも、滅多に聞かれない。ミッション・コンプリートするためには、自分で主催するか、リンクシェル等のつてを頼るしかない状況だった。でも私はリンクシェルには入ってないので、まずそっちの線は無理。
 そういうこともあり、ほぼ放置状態にあったプロマシア・ミッションだが、ひょんなんことからお誘いを頂く機会があり、ついに今夜、最終決戦へと臨む。じつに2年と4ヶ月かけて、いよいよミッション・コンプリートなるか。

 *

 最終決戦は、通常6人パーティで入れるバトル・フィールドになっている。だがしかし、現在の面子は4人である。前衛2、後衛2、これにNPCが2名加わることになる。
 勝利条件は敵の殲滅、敗北条件は、NPCのうち、特定の一人が倒されること。つまり、このNPCが倒されないようにすれば、4人でも勝機はある…、らしい。もう一人のNPCがやたら強いので、うまくすればこの構成でも勝てる…、らしい。

 というわけで、念入りに強化魔法をかけ、突入。ムービーでミッションの続きが語られているのだけれど、残念ながらストーリーをほぼ失念しているため、いまひとつのめりこめないという不具合はあったものの、いざ戦闘に入ればそんなことを考えてる余裕などなかった。
 敵は1体。神が相手である。かなり強い。まともに攻撃を受けると、前衛で2発、後衛なら1発で死ねるくらいの痛さ。ゆえに、強いNPCに敵の攻撃を受けてもらい、我々はそれを援護しつつ敵のターゲットを取らない程度に攻撃する、という戦法だった。
 だがしかし、敵の攻撃には単体攻撃の他に、痛い範囲攻撃の2種類があった。この範囲攻撃に、敗北条件となっているNPCが巻き込まれ、…死亡。強制退去とあいなった。

 いかに範囲攻撃から、敗北条件対象のNPCを引き離すかがポイントのようだ。そのための作戦を練り、そして、前衛2人がサポートジョブを白魔道士に変更して、回復魔法をパーティメンバー全員が使えるようした。これに、ログインしてきた主催者さんのフレを1名追加することで、2戦目突入。

 一度戦闘を経験したことで、2度目はわりあいうまく立ち回ることができるようになっていた。追加された1名は、黒魔道士であり、その有り余る凶悪な攻撃魔法で、大ダメージを与えてくれた。…でも、その攻撃力がアダとなり、敵のターゲットを一身に受けて、早々に死亡。
 蘇生してあげたいのは山々だったのだが、敵をNPCから引き離すために走り回っていたため、しばし生贄状態に。

 それが功を奏したのかどうかは、わからない。でも、我々はいつのまにか勝っていた。神に、勝ったのだ。

 ミッション・コンプリート!(正確には、まだ後日談が残ってるので、すべてのムービーを見たわけではないのだけれど)
 か、感動である。ストーリーはほとんど忘れているものの、なんとなーく、あぁそういう話もあったっけなぁ、なんて懐かしく思い出しつつ、画面を流れてゆく台詞を目で追った。

 残るミッションは、現在進行形の『アトルガンの秘宝』のみ。今のところ、やれるところはすべて終わってるので、次のバージョンアップ待ちである。できればソロ主体な仕様は継続してもらいたいところだ。


2007.1.30(Tue)

車検後

 車検を通すか、新車への買い替えか、ほんの少しだけ迷っていた私のクルマのことだが、結局、車検を通す道を選び、先日の土曜日曜と2日間かけてじっくり点検修理をしてもらったのであった。
 かかった費用は約17万円。当初見積りに挙がっていたタイヤ交換は、その後スタッドレスタイヤに換装していたため、その分だけ安く済んだ。とはいっても、春になれば擦り減った元のノーマルタイヤに戻さねばならず、その時にはタイヤ交換は必須である。払わねばならない金額は、結局、見積り時と同じ程度の約20万というのに変わりはない。

 今回の車検で新しくなった部品はいろいろあるが、中でも重要なのはクラッチ板の交換である。そうとう磨耗していたようで、整備の人がわざわざ「かなり運転感覚が変わってると思いますので…」と念押ししてくださった。私の車はオートマではなく、いまどき珍しいマニュアル車なのだ。クラッチの感覚というのは、かなり重要な要素といえる。そして実際、その変貌振りには、驚くべきものがあったのである。

 まず、乗り込んですぐ、エンジンをかけ、ギアを1速に入れた時点でガクンとエンストをかましてしまった……。いや、これは単にクラッチペダル踏むのを忘れただけの、恥ずかしい失敗なので、まぁよしとして。
 いざ発進したあとは、まさに「な、なんじゃぁこりゃぁ!!」な世界だった。車検に出す前までのクラッチの感覚と、今のとでは、まるで違う。どのくらいクラッチペダルを踏み込めば、エンジンパワーがどれだけ車軸に伝わるのか、そのあたりの微妙な部分が、いきなり新品に置き換わったために、別のクルマかと思うほど操縦感覚が変わっていた。

 ギアチェンジの度に、「うぉぉぉ!」と心の中でこっそり叫びつつ…

 *

 あれから2日が過ぎ、そろそろこの新しいクラッチ感覚にも体が慣れ始めてきたような気がする。でも、油断は禁物。いつにも増して慎重な運転を心がける今日この頃であった。


2007.1.31(Wed)

『GIRL'S ROCK』

デーモン小暮『GIRLS’ROCK』 我が家には、聖飢魔IIのCDが少なからず、ある。これはLicの趣味なのだが、私もちょっと食わず嫌いなところがあったようで、Licがこれらを持参してきた当時、改めて彼等の音楽をちゃんと聞いてみると、かなり高感度がアップしたものだ。ただのイロモノ・バンドではない。

 しかし残念ながら、聖飢魔IIはすでに解散して幾年月。メンバーはそれぞれソロ活動中ということであるが……。
 Licがこのアルバムの存在を知ったのは先週末のこと。Webで公開されているデーモン小暮閣下自らのプロモーション映像を見て、私も俄然興味を持った。なにしろ、80年代から90年代初頭にかけての女性ボーカルによる有名楽曲を、デーモン小暮閣下がカバーするというのだ。しかもその曲の中にはREBECCAの『RASPBERRY DREAM』やら中村あゆみの『翼の折れたエンジェル』等も入っている。これはぜひとも聞いてみたい。いったいどんなふうに化けるのか。興味津々である。

 地元のCD屋には売ってなかったので、さくっとAmazonに注文していたのだが、発注まで1〜2週間のステータスで、Licもひどくがっかりしていた。が、しかし。いきなり今日届いたのであった。Amazonの嘘つき。でもこういう展開ならぜんぜんOK。

 今宵、私の帰りはいつもより遅かったので、すでにみこりんは自室にて就寝中。
 LicがCDプレーヤーの再生ボタンを押し、1曲目の『六本木心中』がスピーカーから流れ出す。原曲が女性ボーカルということもあり、キーが高い。いやそんなことより、なんだかすごく懐かしい気分の方が強かった。たしかこの曲が流行ってた頃は、私はまだ少年で…。んー、30代中盤から40代にかけての人には、まさにツボつかれまくりではなかろうか。

 そしてREBECCAの『RASPBERRY DREAM』のカバー。意表をついて、スローバラードにアレンジされていた。これはこれでなんか雰囲気が怪しくてよい。Licの言うことには、このデーモン小暮閣下が歌う、スローバラードに編曲された『RASPBERRY DREAM』を聞くなり、みこりんはこう言ったそうな。「これ、とーさんのクルマでかかってる曲〜」、と。
 たしかにREBECCAのアルバムは6連装CDチェンジャーの中に2枚入っており、いずれも『RASPBERRY DREAM』は入っている。みこりんも何回か聞いた事はあるはずだった。でも、これほどスローにアレンジされた曲で、しかもボーカルがデーモン小暮閣下であるのに、みこりんはこれがREBECCAの『RASPBERRY DREAM』であると瞬時に看破した。……おそるべし。“みこりんは耳がよい”という音楽教室の先生の言葉は、やはり本当なのだろう。

 ちなみに、全楽曲の中で、私が特にぞくぞく来たのは、中村あゆみの『翼の折れたエンジェル』のカバー。めちゃ、かっこえぇ。

 今20代の人だと、ぎりぎりこれらの楽曲が流行った時期から外れているので、原曲がどんなのか知らないかもしれない。もし、このカバーアルバムを聞いて興味を持ったら、ぜひオリジナルの方も聞いてみて欲しいと思う。

 *

 『GIRLS’ROCK』デーモン小暮

  1. 六本木心中(アン・ルイス)
  2. Return to Myself(浜田麻里)
  3. My Revolution(渡辺美里)
  4. RASPBERRY DREAM(REBECCA)
  5. SEVEN YEARS AFTER(PRINCESS PRINCESS)
  6. 翼の折れたエンジェル(中村あゆみ)
  7. 永遠の一秒(田村直美)
  8. TATTOO(中森明菜)
  9. DISTANCIA〜この胸の約束〜(杏子)
  10. City Hunter〜愛よ消えないで〜(小比類巻かほる)
  11. 限界LOVERS(SHOW-YA)

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国際サンゴ礁年2008
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