2003.8.1(Fri)

キャンプ場変更

 夏休み第2弾まであとわずか。前回延期したキャンプを、今回の休みに組込むためには、お盆の帰省のスケジュールの都合も考えねばならず、なかなか悩ましいところであった。なにしろ猫とウズラを飼っている身では、あまり長く家を空けられないからだ。かといってキャンプと帰省をそれぞれ単独で行うというのも、各々二泊三日必要という事で、9連休あるとはいえちょっときつい。

 もっとも、キャンプと帰省を両立させるべく、キャンプの行き先を帰省先に近い場所に変更したとしても、1日短縮できるだけで、体力的なしんどさはあまり変わりはないのだけれど。なにしろ新たなキャンプ候補地も、帰省先から250kmばかり南に下ったところにあるからだった。
 なぜそんな遠い場所かといえば、この場所こそ、私が学生時代から通っているキャンプ場だからである。できれば家族で一度は訪れてみたいと思っていたのだ。近くには足摺海中公園などもあり、海のきれいさは申し分なく、なによりキャンプ場のことがよくわかっているので不安がない。どこで買い出しすればいいかとか、どんな設備があるのかとか、行ってから迷う必要がないので、キャンプ初心者のみこりんとLicがいても、余裕である。

 というわけで、この夏のキャンプは三重県の新鹿海水浴場キャンプ場から、高知県の爪白キャンプ場へと変更することに決めた。行きと帰りが大変だが(帰省するだけで400km近く運転しなくてはならない)、まぁ長い休みなので、なんとかなる…、はず。ならなかったら、まぁそのときはそのときだ。


2003.8.2(Sat)

プラモデルその2

 音楽教室の帰り道、クルマを停めた駐車場の脇にはプラモデル屋があったりする。以前、みこりんにカウンタックを買ってやったのも、ここだ。そのまま店の前を横切ろうとしていると、ふいにみこりんがプラモデルが欲しいと訴え始めた。あまりオモチャを欲しがらないみこりんにしては、かなり珍しいことである。私もプラモデルは嫌いじゃないので、そのまま店に入ってみることにした。

 みこりんにも作ることのできる簡単なモノといえば、やはりクルマだろうか。でも前回のカウンタックはあまりに精巧すぎて、みこりんの手に負えるような代物ではなかった。今度は同じ失敗を繰り返さないようにしなければならない。
 とりあえず、どんなクルマがいいのか選ばせてみると、エスティマとかのRVを指さすみこりん。ミニカーでもこんなタイプのクルマは持ってないのに、珍しい。でも、もうちょっとカッコイイ系なやつがいいなぁと思ったので、そばにあったポルシェとかランチャ・ストラトスとかを勧めてみたのだが、みこりんの興味を引くことはできなかった。

 やはりエスティマにするしかないのか。そう思いかけた頃、突然、みこりんの嗜好が変化したようだ。「やっぱりこれにする」と指さしたものは、180SX。どっちかといえば、その横にあったRX−7の方が私的にはよかったのだが、まぁ180SXなら妥協してもいいだろう。そう思って、確認のために箱を開けてみた。黄色いボディが鮮やかである。…黄色。そうか、みこりんは黄色いクルマが好きなんだった(ラジコンも黄色いスカイライン)。
 値段は1200円ほどで、部品の数も比較的少ない。ぱっと見、エンジン等もないようである。ドアやボンネット等も可動ではなく、動く部分はタイヤのみといった感じ。これならば、カウンタックのようなことにはならないだろう。よし、決定。
 みこりんの気が変わらないうちに、とっとと買って店を出る。

 帰宅するなり、作りにかかった。設計図も実質3ページほどしかない簡単なものだ。ちゃかちゃかと作業は進む。カウンタックの時には、誤ってタイヤホイールの可動部を接着してしまい、タイヤが回らなくなってしまうという失態を演じてしまったが、今度は間違えずにタイヤは可動状態で車体に取り付けることができた。「こんどはタイヤうごくね、おとーさん!」と、みこりんにも好評で、さっそくフレームだけの状態で走らせて遊んでいる。

 みこりんにも切断できる部品は手伝ってもらいつつ、いよいよ作業は終盤へ。ボディにガラス部を貼り付け、フレームとくっつけたらおしまいだ。結局、一時間ほどで作業は完了した。
 クルマが出来上がると、みこりんはさっそくブロックを持ってきて家を造り始めた。駐車場等も作って、遊ぶつもりらしい。まだ接着剤が完全に乾いてないのに、そんな派手に動かしたら壊れる…、と思ったものの、みこりんの好きにさせておいた。みこりんがプラモデルに求める価値とは、作る喜びよりも、どうやら完成したもので遊ぶ事の方に比重が置かれているようなので、少々壊れてもまた直せばいいと思ったからだ。

 「こんどはおとーさんのプラモデルつくってみたい」と、みこりんが言う。私のプラモデルとは、長らく買ったままにしてあるハセガワのマクロス・シリーズ。あれはこのクルマのように、切って貼るだけじゃできないということを、みこりんに理解してもらうのはなかなか難しい。いずれみこりんにもワンランク上のプラモデルの作り方というのを披露してやりたいものだが、さて、いつになることだろう。私の場合、買ったら安心してしまって箱のまま温存というパターンが多いから、なかなかカタチになりにくいのだが、下手したら死ぬまでずっと箱のままなんてことにもなりかねないので、いずれ着手せねばなるまいと思っている。

スイカ収穫

 市民農園で育てているスイカを見に行ってみると、本体部分がなんと枯れつつある。実の方はまだ無事そうだったので、そのまま収穫して持って帰ってきた。大玉スイカということだったが、中玉でおしまいとは、ちょっと残念。本当はもう少し大きくなるはずだから、味の方もそれ相応かとあまり期待せずに切ってみると、色はほどよく黄色に染まっていていい感じ。ふむふむ、食べられない、なんてことはなさそうだ。
 人数分に切り分けて、食卓へ。

 さっそくかぶりついてみる。さほど甘くはない。が、青臭くもない。無理せずに食べられる状態に、安堵する。畑の方には、あと2つほど実が大きくなりつつあった。カラスにつっつかれなければ、この夏いっぱいは自家製スイカで楽しめそうである。


2003.8.3(Sun)

茶色いブローチ

 蝉取りに行こうとみこりんが言うので、炎天下、外に出る。じっとしてても汗が噴き出してくるほどの、真夏日であった。じーわじーわと蝉の大合唱が聞こえてくる。近くに空き地があって、そこにわりと背の高い木が何本か生えており、そこが蝉達の憩いの場となっているらしい。
 捕虫網をみこりんが持ち、プラケを私が下げて、その空き地へと向かった。

 蝉の声は頭上から降ってくる。かなり高い場所に留まっているらしい。みこりんの捕虫網では、手出しできない領域だ。でもみこりんは、下の方でいいものを見つけていた。「ブローチはっけん!」と、喜んでつっこんでいく。
 みこりんの言う“ブローチ”とは、蝉の幼虫の抜け殻のことである。下草から木の幹から、そこら一帯に無数に“ブローチ”がくっついているのだった。この空き地は蝉達の憩いの場であるだけでなく、重要な繁殖場でもあるらしい。それにしてもすごい数だ。つい先月末まで、蝉の声なんてほとんど聞かなかったというのに、わずか数日でこれとは。虫達も気温変化にはとても敏感なのだろう。

 プラケの中は、やがて“ブローチ”でいっぱいになった。そろそろ生きた蝉も捕獲したい。場所を移動した。
 少し歩いたところに、ちょっとした林がある。ここでも蝉の声はかなり上の方から聞こえてきたので、あきらめかけていたのだが、ふっと目をやった先に、なにやら茶色いものが1つ。アブラゼミだ。地上1m、この高さならば余裕で捕獲圏内である。みこりんの捕虫網を貸してもらい、そっと慎重に網を寄せて…、一気にばさっといった。が、あと一歩のところで枝に遮られた。蝉は、“ぢっ”と一声鳴いて、飛んでいってしまった。
 それでも、みこりんは蝉が捕れそうだったという事がうれしかったらしい。逃げられても、どこか満足気であった。

 一度、山の方まで虫取りに行ってもいいな、と思う。蝉だけでなく、いろんな虫がいることを、図鑑の中にとどまらず、生で見せてやりたい。

蝉とナナフシ

 蝉捕りから戻って、みこりんは家の外でお友達と遊び中。私は、伸びすぎたコモン・マロウの枝を剪定していた。短く切ろうとハサミに力を入れようとしたとき、何かが目に留まった。枝ではない。虫だ。虫が枝にくっついている。

 枝そっくりな虫だった。いわゆるナナフシである。体長にして10cm以上はある、どでかいやつ。気づくのが遅かったら、ハサミで枝ごと両断してしまっていたところである。危ない危ない。
 ナナフシを、そっと枝から引きはがし、元のコモン・マロウのところに戻してやった。さっそく枝の振りして、両手両足触角をピンと伸ばして硬直してる。じつは、この庭にはもう5〜6年前からナナフシがいる。毎年見かけるナナフシが、いずれも同一個体なのかどうかはわからない。が、いつぞやは脱皮したばかりの小さいヤツも見かけたので、この庭で繁殖しているのかもしれない。その時もあやうく雑草と一緒に、ハサミで両断してしまいそうになったものだ。擬態がうますぎるのも、こういうときには危険である。

 そんなことを思っていると、突然、ぢぢぢぢぢぢという激しい鳴き声と羽音が聞こえてきた。何事、と音源に向かってみると、コニファーの枝で、アブラゼミが一匹逆さまになって暴れている。カマキリに捕獲されてしまっているのだ。
 ほほぅ、蝉か。カマキリには悪いが、ちょうどいい。その蝉を、こっちにいただこう…、と思ったのだが、すでに蝉の頭が囓られつつあるのが見えた。手遅れか。

 その時ちょうどみこりんが戻ってきたので、さっそく呼んでやった。みこりんは、蝉が欲しくてたまらなかったらしく、「セミとって〜」と泣きそうになる。でも、「頭を囓られてしまって手遅れなんだよ」と言う、私の言葉で徐々に冷静さを取り戻してきた。じぃっと囓られている蝉を見つめているみこりん。かなりグロい図ではあるのだが、これもまた自然の摂理。目を背けてはならない。

 ナナフシも見せてやろうとしたのだが、こっちは一目見た瞬間に「いやー」と拒否されてしまった。みこりんは大きな虫は苦手なのだ。でも、ナナフシより、蝉をむさぼり食うカマキリの方がいいなんて、みこりんもなかなか肝が据わっているというか、将来有望かもしれない。


2003.8.4(Mon)

“ひい”の謎

 就寝前のひととき、常夜灯の仄暗い灯りの下で、みこりんが言った。「おばあちゃんのおかあさんってだれ?」

 私は答える。「ひいばあちゃん」
 みこりん再度質問。「じゃぁ、ひいばあちゃんのおかあさんは?」
 私、ちょっと言葉に詰まる。誰やったっけ。「ひいひいばあちゃん」と、適当に言う。
 みこりん「ひいひいばあちゃんのおかあさんは?」
 私「ひいひいひいばあちゃん」
 みこりん「ひいひいひいばあちゃんのおかあさんは?」
 私「ひいひいひいひいばあちゃん」ほんとうにこれでいいのかと思いつつ、眠い頭ではこれ以上の回答が思いつかない。

 このあたりで、みこりんの笑い袋に火がついたらしい。うきょきょきょきょきょきょ、と息も絶え絶えに笑いこけるみこりん。どうやら「ひいひいひい」という繰り返し言葉の言い方が、ツボにはまったようである。
 なかなか笑い虫が去らないみこりんは、笑いすぎて苦悶の表情を浮かべつつも「ひいってなにぃ〜?」と、己の疑問を解消すべく努力するのであった。でも、残念ながら私にも“ひい”が何なのかわからない。みこりんの笑いは、ひとしきり続いたのであった。


2003.8.5(Tue)

大切な人

 “いまどきの12歳が、もっとも大切に思っているのは誰か?”という、ちょっとしたニュースの特集を見ていたみこりん。子供達が、次々に「友達」と答えてゆくのをじっと聞いているようす。12歳といえば小学6年から中学1年、私の時代もそんな感じだったかなぁ、などと思いを馳せていると、みこりんがぽつりと言った。

 「みこりん、かぞくがいちばんたいせつ〜」

 TVを消して寝る準備に入った時にも、再度みこりんは同じことを言った。自分が一人になってしまうと悲しいからだという。みこりんは、“自分が一人になってしまう”という状況を、何度か想像したことがあるにちがいない。だからすぐに「かぞくがたいせつ」と言ったのだろう。
 いったいどんな状況を想像して、怖い思いをしたのかというのに少し興味はあったのだが、とりあえずみこりんには「もし一人になっても、ばあちゃんとこ行けばいいから大丈夫」と答えておいた。少なくともみこりんの祖母達は、日本人女性の平均寿命から考えても、まだまだ十分に生きていてくれることになっているから、みこりんは一人になることを不安に思う間は、大丈夫のはずだ。もっとも、こういう場合は「とーさんは絶対にいなくならないから安心だよ」と答えるのが理想なのかもしれないが、何事にも絶対というのはあり得ないので、もしもの時の反動はより大きいのではないかと思ったりもし。

 いずれにしても、みこりんが12歳になっても「かぞくがいちばんたいせつ」と思ってくれていれば幸いだ。


2003.8.6(Wed)

落ちてきた“何か”

 夜、リビングからウッドデッキへと通じる網戸を開け、外に出た。少し湿った空気が、ねっとりと頬にからみついてくる感触が、夏っぽくてよい。羽虫の類が部屋の中に入ってこないように、網戸を閉める。と、何かが“ぱさり”と落ちてきた。

 光量が不足しているため、何が落ちてきたのかはっきりとは確認できない。しかし、ぼんやりとした輪郭から、何か虫のようだという気はした。大きさは、ちょうど…、ゴキブリのような感じ。もしや本当にゴキブリだったりして、と思った私は、急いで懐中電灯を取りに玄関へと引き返す。いつもはリビングに置いてあるのに、こういう時に限って近くにないのが悩ましい。
 戻ってくるまでに、10秒以上を有してしまった。スイッチを入れ、何かが落ちた辺りを照らす。しかし、そこには何もない。ウッドデッキのパネルが、鈍く光を反射しているのみ。

 ゴキブリだったのだろうか。でも、落ちたあとの動きが、ゴキブリらしからぬのんびりした感じだったのが気にかかる。逆さに落ちて、わしゃわしゃと6本の脚をうごめかしていたような…。なんとなく、クワガタだったのかもしれないという思いが湧き起こる。毎年、夏になると、我が家にはコクワガタが何匹か訪れるのだ。今年はまだその姿を見ていないが、そろそろやってきてもいい頃だった。

 みこりんはクワガタが来たら、飼うのだとはりきっている。しかし、いつになく冷夏なこの夏、はたしてクワガタは飛来するのだろうか。少し心配な今日この頃。


2003.8.7(Thr)

去り行くもの

 “NEC「PC-9800シリーズ」ついに受注打ち切り

 私が初めて触れたコンピュータは、NECのPC-8001だった。型番から推察できるとおり、PC-9800シリーズよりも前の世代になる。世が16ビット全盛となる時期にあっても、しばらくはこのPC-8001でマシン語を勉強していたものである。この時代の独学が、現在の仕事におおいに貢献したことは言うまでもない。マシン語は、“コンピュータ・プログラムとは何か”を、包み隠さず明らかにするには最適なものだったから。

 大学も卒業間近になって、ようやく私はPC-9800シリーズに手を出した。もちろん大学の研究室には既に導入されており、個人用に買うという意味で初めて16ビットマシンに触れる事になったのだった。でも天邪鬼な私は、NECのマシンではなく、EPSONから出ていた互換機を買った。このマシンは、就職してからも、職場に持ち込んだりしてかなり活躍してくれたものだ。なにしろ当時の職場には一人一台なんて環境にはほど遠かったので、自分で何とかするしかなかったのだから。

 それからしばらくして、怒涛のようにPC-9800シリーズを使う機会が増えた。ちょいとしたモーター制御とか、GSEと呼ばれる地上支援装置に組込まれるカタチで、PC-9800シリーズは豊富なI/Oボードと共に重宝したものだ。
 しかし盛者必衰の理のとおり、PC-9800シリーズはDOS/Vマシンにとってかわられた。私もその頃にはいい加減、NECの殿様商売的価格の高さに辟易していたので、あっさりとDOS/Vマシンに鞍替えした。自家用マシンとしてDOS/Vマシンを導入したのも、仕事で使う機会が増えたからであった。これが1993年のことだ。

 あれから10年、我が家の押し入れの中には、起動することなく眠るPC-9800シリーズが2台ある。そろそろバラして粗大ゴミにすべきではないかと思っているところだ。保存しておく価値は…、あまり、いやほとんどない。PC-8001の方は残しておいてもいいかなと思っているのだけれど。でもこれはこれでモニタがないので、使えないというのがなんとも悩ましいところである。


2003.8.8(Fri)

嵐前夜

 季節外れの台風が来る。帰宅してから、庭で飛んでいきそうなものを、サンルームへと避難させた。
 明日から夏休み第2弾だというのに、嵐とは。咲いたばかりの鹿の子百合のことも心配だが、重そうに鈴なり状態の花桃の実のことがもっと気にかかる。ここで大風をくらっては、残らず落ちてしまうのではなかろうか。そろそろいい具合に熟し始めているのだが、今年も1個も食べることなくその季節を終えてしまうのでは…

 週間天気予報では、来週も雨が降るらしい。この夏のキャンプをどうするのか、決断の時であった。


2003.8.9(Sat)

 明け方、吹き荒れる風の音で目が覚めた。TVの台風情報を確認すると、まだ中心は到達してはいないらしい。それなのに、窓の外ではコニファーが猛烈な勢いで揺れている。
 もう一度寝ようと布団に寝転んだが、窓の外から届いてくる嵐の音が気になって、眠れなかった。午前6時過ぎ、仕方がないので起き上がる。倒れそうなコニファーを、今一度リビングから覗いてみて、はやく台風が通り過ぎるのを願う。

 嵐のため、保育園も休園となった。本体はまだ到着せず。久しぶりの直撃コースだ。みこりんの相手をしていても、なんだか妙に体がだるいのを感じる。Licに微熱があることを指摘され、布団へと戻った。明日から帰省。熱を出している場合ではない。

 午後遅く、再び目覚めたときには、嵐は去ったあとだった。コニファーは倒れなかった。幸いである。


2003.8.10(Sun)

火星

 約8時間半ほどで実家にたどりついた。目立った帰省ラッシュがなかったわりに時間を食ってしまったのは、途中のSAでランチとディナーをゆっくりととっていたからに他ならない。それ以外は、耐え難い渋滞もなく、幸いであった。

 庭にクルマを乗り入れ、荷物を玄関に運び込んでいても、いっこうに中から誰も出て来る気配がない。明かりはついているのに、妙なことだ。いつもならばクルマの音をききつけて、あらかじめ出迎えてくれるというのに。
 もしや誰もいなかったりして…。と思いつつ、リビングへと続くドアを開けた。はたしてそこには、父母祖母がきょとんとしてこちらを見ていた。「あら、おかえり」と、なんとものどかなことである。もしや耳が遠くなってきているのでは、という予感もちらり。

 明日は午後から雨の予報。そこで、火星を見るなら今夜しかあるまいと、望遠鏡をセットする。ところがターゲットスコープの調整がずれていて、再設定に手間取っているうちに、火星はすっかり雲の中に隠れてしまった。みこりんには、ぜひとも火星を見ておいて欲しかったのだが、仕方ない。とりあえず月面を見せてやる事にした。これはこれでよい思い出になることだろう。私も初めて望遠鏡で月面のクレーターの影を捉えた時には、けっこう感動したものだ。
 みこりんは右目で、じぃっと接眼レンズを覗き込んでいる。満月に近い月明かりは、かなりの光量で、みこりんの瞳にまばゆい光輪を投影しているのが横からでも見えた。
 火星を隠した雲は、微動だにせずそこにあった。

 *

 夜遅く。みこりんはいまだ眠りについてはいなかった。環境が変わると、いつもこうだ。ちょうど火星にかかっていた雲も晴れていたので、再度みこりんとLicをつれて、ベランダへと上がる。最高倍率約160倍で、火星を捉えた。
 …お、大きい。私が子供の頃に見た火星よりも、5倍ほどは大きく見えているような気がする。極冠の白い輝きが目に眩しい。赤い表面にも、なにやら筋が何本か見て取れる。ここまではっきりと火星の姿が確認できることに、自分自身驚きつつ、みこりんに代ってやった。どんな反応を示してくれるだろうか。
 ところが、みこりんはほんの数秒覗き込んだだけで、望遠鏡から目を離した。もういいらしい。本来、火星はどのくらいの大きさに見えるものなのか、を知らないみこりんにとっては、先の月面ほどのインパクトはなかったかもしれないなぁ…、と思ったりもし。まぁいつか思い出してくれたら、それでよしとしよう。みこりんの誕生日プレゼントに欲しいものは、今でも『宇宙の図鑑』なので、星に興味があることは間違いなさそうだし。


2003.8.11(Mon)

海辺にて

 夏の帰省の恒例となった海水浴。遠浅の浜辺へと繰り出した。
 砂浜で、本当はキャンプに持っていく予定だった折畳式のサンシェードを展開する。Licはここで休息を、私はみこりんを連れて海の中へ。午後から雨というのが嘘のような、真夏日である。青い空、白い雲…、しかし、海は台風の影響か、かなり濁っているうえ、ゴミが波打ち際に無数に漂っていてあまり快適とは言い難い。まぁそれでも、ちょっと沖に出ればゴミからは逃れられるのだけれど。ここが遠浅なのが幸いだ。

 みこりんを浮き輪に乗っけたまま、じゃぶじゃぶと少し進んでいくと、水面付近を何か細長いモノが浮いているのに気がついた。金色というか黄土色というか、そんな系統のわりと鮮やかな色彩を持った、棒のようなもの。長さは約10cmはあろうか。異質なものに、一瞬ドキリとしたが、よくよく見れば頭部と思われる部分に小さな目がついているのがわかった。どうやら魚らしい。そう思って見てみると、ヨウジウオのようにも見えてくる。そっと手を伸ばすと、突然、そいつは泳ぎ始めた。

 腰まである水の中を、早足で歩くのはなかなか難しかったが、魚はあまり泳ぎは上手ではないらしく、離されずについていくことができた。最初、みこりんはなんだかよくわかってなかったみたいだったが、ようやく魚の存在に気付いたようで、自分でも手を伸ばして捕まえようと試みている。でも、意外に素早いところはあって、なかなか素手での捕獲はうまくいかない。それにしても、なぜこの魚はずっと水面付近を逃げているのだろう。水中に逃げ込めばいいのに…、と思ったのを相手が察知したのかどうかは定かではないが、ようやく斜め下に潜るようにして魚は泳いでいった。色彩が明るいせいで、それでも容易に見分けはついたが、さっきよりは追いかけにくくなった。
 気付いたときには、完全に見失ってしまっていた。みこりんも辺りをきょろきょろと見回していたが、どこにも金色の魚の姿はなかったようだ。諦めよう。

 しばし波打ち際で戯れる。みこりんは浮き輪なしで、直接海中に潜ることもできるようになっていた。日頃、小学校のプールを貸してもらって泳いでいる成果だろうか。やがて、「やどかり、ゲットー!」と、みこりんが叫んで砂浜にあがってきた。みこりんの潜水も、なかなか本格的になったようだ。
 昨年のように、ヤドカリはペットボトルに入れて持ち帰る事にする。私は、水底に固まっていた海藻を2つほど、同じくペットボトルに詰め込んだ。水槽の中で、“何か”が発生することを期待して。

 それにしても、この浜辺では相変わらず音楽が鳴り響いている。会話が聞き取りにくいほどの大音量。その安っぽさがいかにも“田舎”な雰囲気を醸し出しているのだが、もしやわざとやっているのか。雨の予報でなければ、今ごろは静かなキャンプ場の海で夏を満喫できたものを、と思うが、天候には勝てない。今年の夏は、雨、ばかり…


2003.8.12(Tue)

帰還

 まずはペット達の様子を確認。玄関開けたらすぐに、にゃんちくんの甘えた鳴き声が聞こえたので、猫はOK。問題はリビングのウズラ達。水は大丈夫だったろうか。実験では水は5日はもつことを確認していたが、夏は何があるかわからないので、油断は禁物だった。

 リビングの明かりを点けると、ウズラの雄叫びが響き渡る。元気そうだ。部屋の空気も、天候の悪さが幸いして、さほど高くはなっていなかったようだし。餌もほどよく残っていて、あと一日くらいは余裕で大丈夫そう。

 夜、疲れきって眠る私の耳に、にゃんちくんの鳴き声がずっと届いていた。甘えたいのだろうか。でも相手してやる元気が、今はない。そんな不十分な眠りが、ずっと明け方まで続いた。


2003.8.13(Wed)

ビニールプール

 夏らしい良い天気だったが、明日はまたしても雨らしい。みこりんがビニールプールを出して欲しいと訴えているので、ウッドデッキのオモチャ類を片付けさせた。いそいそと片付け始めるみこりん。よほどプールが恋しいようだ。

 しゅこしゅこと、ビニールプールに空気を入れる。みこりんと順番でポンプを押して、やがてプールは展開を終えた。もっと大きいかと思ったのだが、意外にプールは小さく見えた。みこりんが大きくなったので、相対的に小さく感じるのかもしれないが…
 冷たい水の中、みこりんが顔付けやらオモチャのカエルロボットやらで遊んでいる。ふと気がついたが、ツクツクボウシが鳴いているではないか。なんとも、物悲しい響きであることよ。今年の夏も、もう終わり、か。

 庭のプラムの木にとまっていたアブラゼミが、「じ」と鳴いて飛んだ。が、そのまま『完璧な防壁』に阻まれて、苦戦している。みこりんに「蝉がおるよ」と教えてやると、捕まえてとタモ網を手渡されてしまったので、花壇に分け入り、アブラゼミの捕獲を行った。
 メスだった。みこりんはさっそく“みすず”と名前をつけて、虫かごにいれた。蝉の成虫の命は短い。そう言うと、みこりんは「なんでー?」と、とても不思議そうな顔をした。

 *

 夕方、公園にみこりんと散歩に行った。すでに子供たちの遊びの輪ができていて、みこりん、それをちょっとうらやましそうに眺めている。知ってる子が一人しかいないらしくて、なかなかその輪に入れないようだ。そうこうするうち、6時のチャイム。これが鳴ったら帰る合図だ。再びみこりんと手をつないで家路へと。帰り道、みこりんは保育園でも自分のしたい遊びを皆がいっしょにやってくれないと哀しそうに話してくれた。だからみんなは自分のことをキライなのだと、みこりんは結論づけていたが、私にはみこりんのしたい遊びを友達がしたくないだけのように思えたので、そのように答えてやった。でも、みこりんがそれで納得したようには感じられなかったが、どこまで深刻な悩みであるのか、これだけでは判断できない。もっと保育園での出来事を聞いておく必要があるようだ。


2003.8.14(Thr)

PT

 昨夜というか、今朝の明け方近くまで『FINAL FANTASY XI』で初めて本格的なパーティ戦をやった(Licも同じパーティメンバーにいた)。ネットワーク型のRPGでは、やはり他人とこうやって共同してプレイするというのが基本になるわけだが、やはり終了時間が自由にならないという不自由さはある。4時間とか5時間とか、ぶっとおしで拘束されることになるので、最初はかなりとまどったりもしたものだが、だんだん感覚が麻痺してきたような気もする。

 ところで今回は、みこりんが途中で起きてきた。外が白々と明るくなりつつある時間だ。目覚めて一人だったので、リビングへと様子を見にやってきたのだろう。そのまま座布団2枚並べて寝転がっていたのだが、徐々に私とLicが冒険してるのが気になってきたのか2台のPCの画面を交互に見つめはじめた。やがて、それぞれで私とLicの操るキャラを発見したらしい。一緒に冒険してることを、たいそううらやましがっていた。
 画面の中の世界には、明け方にも関わらず他にも様々な人たちが活動している。みこりんはそちらにも興味を惹かれて、いろいろと観察しているようす。オレンジ色の服が可愛いとか、モンスターが怖そうとか、階段の向こうには何があるのか、とか、いろいろとおしゃべりしてくれている。

 近頃みこりんは、ネットワーク型のゲームでは、画面のキャラを操作してるのがどこか遠くの“誰か”であるという認識が固まってきたようだ。やはり私とLicが2台のマシンで、それぞれに登場してるのが効果的だったのかもしれない。いまのところみこりんは、私のキャラと遊ぶことで満足してるようだが、いずれ自分でも“他の誰か”と冒険したがるのは時間の問題かも。


2003.8.15(Fri)

ビーズ遊び

 晴れてるんだか雨なんだか、はっきりしない天気。夏というより、すっかり秋の気配である。なのでみこりんも部屋の中で遊んでる。
 ビーズセットを持ち出してきて、ネックレスとか腕輪とか指輪とか、じつにさまざまなものを作っていた。直径2ミリにも満たないようなちっこいビーズを、これまた細い糸にちまちまと通してゆく気の遠くなるような根気のいる作業だが、みこりんは特に気にしてないようだ。案外、根気強いのかもしれない。

 あるいはみこりんの小さい指には、小さいビーズでも相対的にちょうどよいサイズになるのだろうか。それにしても、長さ30cm以上にわたって小さなビーズを連ねていくという作業は、私には途方もないことに思える。このあたりの執着心の強さはLic譲りなのではなかろうか、と思う今日この頃。


2003.8.16(Sat)

ナンバンキセル

 曇り時々雨。ビニールプールの水換えを行った(みこりんがどうしてもプールに入りたいというので)。ざざざぁと流れゆく大量の水。庭がしばし水浸しになる。雨続きなので、これがなかなかしみ込んでゆかない。ちょっともったいなかったかな〜と思いつつも、三日目の水でみこりんを遊ばせるわけにもいかないし、悩ましいところである。どこかに水タンクでも設置してれば、庭木の水やり用に使えるところだが、あいにく我が家には雨水タンクはまだないのだった。

 しかしこの寒いのに、みこりんは一向に気にすることなくプール遊びに興じている。もっとも、鳥肌は立ってるので寒さを感じてはいると思うのだが。なんとなく夏だからということで、無理やりプール遊びしてるんじゃないかとも思ってみたり。みこりんはこういう“建前”というか“こだわり”に執着する傾向があるのだ。

 そんなみこりんの傍らで、しばし庭を眺めていると、鉢植えに“こそっ”と紫色の小さい花が咲いているのを発見した。ナンバンキセルだ。宿主であるカヤが冬の間にすっかり枯れていたので(もともと冬に地上部は枯れるものではあるのだけれど)、半ば諦めていたのだが、無事に復活していたらしい。もっとも枯れ葉の方が多いように見えるので、ぎりぎりの状態かもしれないけど。まぁとにかく無事でなにより。雪の中に埋もれても大丈夫なことがわかったのは、大きな収穫だった。来年も、ぜひまた開花してほしいものだ。

 みこりんがもう上がると言っている。プールに入ってから、5分少々。やっぱり寒かった、か。


2003.8.17(Sun)

夏休み終了

 今日も雨。つくづく雨にたたられたお盆休みであった。
 夕食時、みこりんがぽつりと言った。

 「きょうでなつやすみもおわりだね」

 しみじみ〜
 みこりんも夏休みを意識するんだなぁと、妙に感心したのであった。


2003.8.18(Mon)

ごっこ遊び

 保育園にて、“FINAL FANTASYごっこ”をやってきたというみこりん。どうも一人のお友達が『FINAL FANTASY』(どの版かは不明)をやったことがあったらしく、話が通じたようだ。これに先生が一人加わっていたらしい。先生はやったことないということなので、理解不能な世界だったにちがいあるまい。それでもつきあいで遊べるとは、さすが保育士だなぁと感心する。

 そういえば昨日は、ブロック遊びで“FINAL FANTASYごっこ”をやらされたような。みこりんはまだ本物の『FINAL FANTASY XI』ではモンスターを倒すことはできないのだが(戦闘モードの操作を教えてないので)、その鬱憤を“ごっこ遊び”で晴らしているのかもしれない。それほどまでにみこりんが『FINAL FANTASY XI』にハマっているのは、なぜなのか。私やLicがハマっているから、みこりんも一緒に遊びたがっているだけか、あるいは本当に面白がっているのかは、定かではない。でも、Licが『アッピー』にハマっていたとき(今もやってはいるようだが以前ほどではない)、みこりんはそのゲームをやること以外に、アッピーの絵を描く程度の関心しか示さなかったことに比べると、大きな違いである。
 やはり登場するタルタルが可愛いから、か。CGの完成度ということでは、『アッピー』と『FINAL FANTASY XI』じゃ雲泥の差だし(2Dと3Dを比較してはいかんのだろうけど)、みこりんの感情移入度合いも自ずと違ってくるものなのかもしれない。


2003.8.19(Tue)

写ってはならないもの

 保育園にて、心霊写真が話題になっていたという。お友達の一人に、心霊写真が写っていたということで、おおいに盛り上がったらしい。なんでも、ありえない場所に“手”が写り込んでいたというのだ。
 みこりんには、以前、私が撮影したデジカメの映像に、小さな丸い光が数個写り込んでいたのを心霊写真といって紹介したことがあって(たぶん光が浮遊するゴミにでも反射したのだろうけど)、心霊写真がどんな感じのものかというのは理解しているようだ(滅多に見られない珍しいモノとか、あり得ない映像という意味において)。

 心霊写真といえば、思い出すのは学級文庫である。小学校低学年の頃、なぜか学級文庫にその手の怖い本が数冊混じっていて(“恐怖新聞”とかもあったような)、ついつい手を出してしまっては後悔したものである。特に子供の足とか手が消えているヤツは、かなり怖い思いをした記憶がある。反対に、人の影らしきモノ系はぜんぜん平気だった。「ただの影では」という思いが、子供ながらにあったことは確かである。でも、手や足が消えてるやつは、背景が見えているので明らかにそこにあるはずのものがない、というのが直感的に理解できたため、見るたびに産毛が逆立ったものだ。よせばいいのに心霊写真の本を借りて帰っては、夜、結局開けずに、本を置いてある場所にさへ怖くて近寄れなかったような…

 まぁそれはさておき、みこりんのお友達のことである。その心霊写真は、結局、恐かったので捨てたんだそうな。なんとなくそっちの方が恐いような気もするが、何事もありませんように。


2003.8.20(Wed)

星と星座

 かねてよりの計画通り、みこりんの誕生日プレゼントとして図鑑を買ってやるべく、本屋に向かった。みこりんのリクエストは『星と星座』そして『宇宙』だったが、残念ながら『宇宙』の方はまだ発刊されていなかった。続刊ということになっているので、クリスマスには間に合うかもしれない。
 『星と星座』だけでは何なので、定番の『動物』も買ってやった。最近の小学校では、ゆとり教育とやらで生物の名前もほとんど教えなくなったと聞く。学校で教わらないなら、自衛するまでである。みこりんには、図鑑で生物の豊かさをたっぷりと味わってもらいたい。

 家につくなり、みこりんは『星と星座』を開いてみている。これには付録として星座早見盤がついていて、おおいにみこりんの興味を惹いたらしい。何をするものなのか、どうやって使うのかとか、質問の嵐。24時間表記の時刻を、みこりんはまだ知らないので、22時が夜の10時というのをどうやって教えたもんかなと悩んだものの、とりあえず日付と時刻を合わせてやると、今の星空の様子がわかるんだよと言っておいた。ためしに今日の現在時刻に合わせてやったのだが、空は相変わらずの曇天で星はほとんど見えず。これでは比較のしようもない。もっと星のきれいな場所ならば面白いだろうになぁ。と思ったが、こればっかりはどうにもならない。想像の世界で星空を堪能するしかあるまい。

 みこりんは星座早見盤がどうやって機能するものか、おそるべき幼児の勘とでもいうやつで、おおまかに悟ったらしい。何事か納得したように頷いている。自分で日付と時刻をくるくる回して、星座が回転するさまを観察していた。すると突然「ちきゅうはどこをまわってるの?」と問われた。惑星が太陽を中心にして回っていることを、みこりんは知っている。だから、地球も星座早見盤に現れるはずと、そう思ったのだろう。
 地球から見た星空を表しているから、地球の動きはここには出てこないのだということを説明したのだが(というか星座の動きが、そのまま地球の動きを表しているわけだが)、こちらはちょっと難しかったようで、困ったような表情をしていた。まぁ徐々にわかってくるだろうから、今は焦らず騒がず星座を楽しもう。
 図鑑に合わせて“ステラナビゲータ”があれば、みこりんの謎もわりと容易に解決するかもしれない。投資するなら、星に興味を持っている“今”、が最適かも。


2003.8.21(Thr)

悪夢

 夢だとわかっているのに、なかなか目覚めることができない場面は多々ある。今夜もそうだった。しかも悪夢。心拍数は跳ね上がり、じとっと汗ばむ首筋が、なにやらひんやりとする。

 みこりんが何者かにさらわれる、という設定の夢だった。人間ではないもの、太古より悪魔とか魔物とか呼ばれてきた勢力に、目をつけられてしまったのだ。それを阻止するために、なぜか私はみこりんを連れて豪勢な屋敷に逃げ込んでいた。金にものを言わせて、凄腕のエージェントやら超能力者やらを雇って対抗するが、敵は圧倒的な破壊力とスピードでみこりんに迫り来る。強固にシールドされた部屋が、いともカンタンに穴だらけとなり、奥のみこりんに敵の魔の手が迫る…

 というような夢を、最近よく見る。だから朝起きると、ぐったりと精神的に疲れていることが多い。精神は肉体にも作用し、疲労感も抜けきらない。何かの予兆でなければよいのだが…


2003.8.22(Fri)

桃の実にクワガタ

 庭の花桃が、たくさんの実をつけている。いい熟れ具合になるまでと思って待っていたのがよくなかったのか、近頃ではぽたぽたと落果していることが多い。もっと早くに摘んでおくべきだったと思っても後の祭りである。落ちた桃は食べられない。先に虫が食っていることが大半だからだ。

 落果した桃は、そのままにしておくと歩道にこぼれ出たやつを、踏んだりして大変なことになってしまうので、見つけたら庭の方に戻している。今ではその量もかなりのもので、周囲は甘酸っぱい匂いでくらくらしてしまうほどだ。
 この甘い香りに誘われて、クワガタでもやってこないかと期待するのだが、今日までに見かけたのはメスが1匹のみ。コクワガタにしてはちょっと大きめだったので、もしかするとノコギリクワガタ等のメスだったのかもしれない。でも、クワガタはやはりオスじゃないと楽しくない。

 ひょっとすると真夜中には、桃の実に集まっているのだろうか。まだそこまでの探索はしていないので、一度調べてみる価値はありそうだ。


2003.8.23(Sat)

屋外映画

 自治会主催の移動映画館(でいいのか?)が、公園にやってくる。上映作品は『モンスターズ・インク』。みこりんはこの日をずっと楽しみにしていたのだった。

 午後7時、座布団抱えてみこりんの手をひき、公園へ。中央に青いシートが敷かれ、そばには役員さんによるこぢんまりとした露店などもあり。子供には無料でお菓子が配られる大盤振る舞い。さっそくシートの中央右よりに座布団を2枚並べて、みこりんと座った。

 予定よりも30分遅れてのスタートとなった。こんなことなら急いで来ることもなかったなぁと思いつつ、大きなスクリーンを二人して見る。
 みこりんはこの作品を一度見ているので、こっそりストーリーを先に教えてくれたりもしながら、物語は進んでゆく。それにしても青いシートは半分も埋まってはいなかった。団地の総数約300世帯に比して、子供の数は20人もいないような具合だ(単に映画を見に来てない子供が多いのかもしれないが)。こんなものなんだろうか。なんかちょっと寂しいような気も。

 途中みこりんは飽きたのか、思いっきり寝転がって夜空を見上げ、「あれ、かせい」とか指さしてたりもしてたが、終盤には再び集中力が戻ったようで、おおいに面白がっていた。
 ところでこの『モンスターズ・インク』、題名なんとかならなかったんだろうか。英語表記を見るまで、ずぅっとインクって、あのペンとかにつけるインクのことかと思っていた。たぶん子供達もそう思ってる子が多いんでは…。そんなことないかな。


2003.8.24(Sun)

夏っぽい

 お盆休みの雨がうらめしくなるような、真夏日である。しかも昨日に引き続き。お盆休みが終わってからというもの、すっかり気分は秋モードになっているので、なんだか夏のイベントをいまさらやるのもなぁ…、という感じですっかり遅れをとってしまった。みこりんに言われるまで、今日が絶好の川遊び日和、バーベキュー日和なことに気づかないとは。ふ、不覚。

 来週、もしも今日のように晴れてくれるのであれば、ゆく夏を儚んで川遊びなりバーベキューなりでもしてみようではないか。晴れてくれれば、だが、天気予報を見る限り、なんか雲行き怪しい気配。


2003.8.25(Mon)

秋の虫

 秋の虫達が、夜の合唱に余念がない今日この頃、みこりんはそれらの鳴き声をどんな虫が発しているのかが気になるらしい。

 りーりーりー。というのを指して「あれはなに?」「あれは、たぶんコオロギかスズムシ」
 すい〜っちょ、すい〜っちょ。というのを指して「あれはなに?」「あれはウマオイ」
 じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。というのを指して「あれはなに?」「オケラ〜」
 ぎょっぎょっぎょっぎょっぎょ。というのを指して「あれは、セミ〜」「え?」

 セミなのかどうかは怪しいのだが、なぜかみこりんはそう断言する。たしかに夜でもセミが鳴いてることもあるにはるのだが、今鳴いてるのはちょっと違うような…

 夏の夜の虫といえば、小学生の頃にやった夏休みの宿題『自由研究』を思い出す。夜中、白熱電球を屋外で点灯させ、水をはったタライをその前に置いておくと、光に誘われて虫が無数に寄ってきては、タライにぽちゃんと落ちるという仕組みだ。その虫の種類と数を、研究内容にしたような記憶がある。その時には期待したようなカブトムシとかクワガタムシはぜんぜん現れずに、ちょっとショックだった。なにしろ飛来してくる虫といえば、わけのわからない羽虫の類がほとんどで、図鑑を見ても同定が難しいほどの種類があったからだ。
 ためしに今、同じような実験をしたらどうなるだろう。昔ほどには虫は寄ってはこないだろうか。それとも思わぬ虫がやってきたりして、みこりんを楽しませてくれるだろうか。今も『自由研究』というのがあるのならば、来年、みこりんに実験させてみても面白いかな。


2003.8.26(Tue)

夜更かし

 平日はなかなか『FINAL FANTASY XI』をやってる時間がない。一人でやっていてはレベルはなかなか上がらないので、必然的に仲間と一緒のPTとなるのだが、これがまた時間が合わなくて実現も難しい。みこりんを寝かしつけると、だいたい夜の10時半とか11時になるので、そこからやり始めて12時までというのが中途半端な長さなのだ。

 なぜ12時までかといえば、それが私の習慣だから、ということになる。ちょっと前までは、夜中の2時とか3時とか、平気で起きていたような気がするのだけれど、最近では1時を過ぎたら翌朝ひどく疲れてしまって仕事に支障をきたすほどになってしまったのだ。なんとしたことだろう。
 逆にLicはまだまだ平気で夜更かししている。こ、これが若さというものか。

 そんなわけで、Licと私のレベル差はどんどん開いてゆく一方なのであった。


2003.8.27(Wed)

『放浪ノ双生児』

 久しぶりに内田美奈子の新刊『放浪ノ双生児』が出るというのを、bk1のお知らせメールで知り、即行で注文したのが月曜日の夜のことだった。bk1では、1500円以上ならば送料無料になるので、他にLicのために竹本泉の『よみきりもの 5巻』も買い、これだけでは1500円に微妙に足りなかったので、買い逃している本がないか検索をかけた結果、木村紺の『神戸在住 5巻』がこの春に出ていたのを知り、これも加えておいた。しめて約2000円也。

 本は、今日届いた。中1日で届くとは、さすが新刊。注文があと2〜3日、いや1週間も遅れていれば、どうなっていたことやら。永遠に入手できなかったかもしれん。

 さっそく夕食後、ぱらぱらっとページをめくってみる。「んんん!?」なんかタッチが違うような?内田美奈子独特な細やかさがないような気がする。妙に線がすっきりしていて、画面が白い。特に目のあたりが、やけにさっぱりしすぎのような。『BOOM TOWN』の頃からこうだったっかな〜?と思いつつ、まぁとりあえず読んでみることに。

 まだ最初の数ページしか読んでないのだけれど、話の中身は期待が持てそうな感じ。テンポが速くてダレてない。かえすがえすも、絵柄が変わってしまったのが残念ではあるのだが、まぁこれも時代の流れなんだろうか。ちょっともったいないかも。


2003.8.28(Thr)

雷対策

 午後、職場に突然アナウンスが入る。曰く「雷が近づいているので、“雷対策”をしてください」

 “雷対策”…。まさか今から避雷針を立てるとかじゃないだろうから、PCの電源を落とせってことだろうか。この職場の電力は、わりと不安定で、ちょっと雷が発生するとちょくちょく瞬停とか、停電とかが発生するという前科がある。でも、これまで“雷対策”なる文言を聞いた記憶はないんだけれど。

 “雷対策”が謎のまま、刻々と時間だけが過ぎてゆく。雷は、結局、就業時間内にやってはこなかった。でもいちおうサーバの電源は落としてゆこう。真夜中、雷雨になる可能性はある。

 *

 みこりんを寝かしつけている頃、激しい雨音が響いてきた。がらがらと、遠くで雷も鳴っている。暗がりの中、みこりんが、そろ〜っと手を握ってきた。みこりんは雷が苦手だ。にゃんちくんも雷が苦手だ。今頃はトイレの中で丸くなっていることだろう。
 雷が弱まってきた頃、握られたみこりんの手は脱力し、夢の中に入っていったことを知る。そっと私は起きあがり、寝室を出た。
 明日も雨なのだろうか。窓の向こうは、べっとりと塗りつぶされたかのように暗い。火星大接近の旬だというのに、さっぱりである。8月のおしまいくらい、夏の根性見せてほしいものだが、さて、この週末、晴れるかな。


2003.8.29(Fri)

新しいVGAカード

 Lic用に組み立てたPCには、以前のマシンで使っていたPCIバス接続タイプのGeForce2が使われている。今となっては非力もいいところのVGAカードだが、それでも『FINAL FANTASY XI』を作動させることはできたので、Licは日々これでヴァナディールの世界に没頭している。しかし、足跡をつけたり、影をつけたりといった様々なグラフィック・エフェクトを切ってないといけないのは寂しいらしい。シミュレータとも言ってよいゲームの場合には、グラフィック・エフェクト次第で没入感も大きく左右されるだろうから、Licのために新しいVGAカードを注文することにしたのが数日前のことであった。

 そして届いたのが今日。小さな段ボール箱から出てきたのは、GeForce4 MX440SE である。新しいとはいっても、中古のしかも1世代以上前のやつだから、最新のカードほどの能力はない。けれども、PCI接続のGeForce2より数倍速いことは間違いあるまい。5000円の投資で没入感が大きく改善されるならば安い買い物である。
 というわけで、さっそくさくっと取り換えてみることにする。

 まずはFFXIベンチを走らせているLic。刻々とカウントアップされてゆく数値は、結局、以前の2倍以上の結果となった。思惑通りの改善効果である。
 いよいよ本体を実行し、グラフィック・エフェクトを次々にONにしてゆく。おぉ、影をつけてもさくさくと動く。Licも喜んでくれていることだし、めでたしめでたし……、と思ったのもつかの間、30分ほどプレイしていると、突然、電源が落ちたらしい。パーティを組んでいる状態だったので、焦るLic。しかし、電源はなかなか再投入できなかった。メインスイッチを一度切ってから、パワースイッチを入れても、うんともすんとも動かないのである。困った。

 結局、Licには私のPCでゲームを続けてもらうことにして、私は電源断がなぜ起きたのか、調べてみることにする。もしかすると、たまたま起きたのかもしれないし。まずは再現実験。ゲームを作動させていると、やはり30分ほどすると、電源断になってしまうことが判明した。やはりどこかおかしいようだ。一度電源が切れると、なかなか復旧しないのもあやしい。もしやこれは電源の保護回路が作動してしまっているのでは…

 GeForce2とGeForce4では、電源食うのは(たぶん)後者であろう。このPCには、Athlon XP 2400+を搭載しているので、もともと電源食いなところに、VGAカードを取り換えたものだから、いよいよ電源容量が厳しくなってきたのではなかろうか。いきなり電源断というのは、電源容量に問題がある場合が多いらしいし。将来的にもっとハイパワーなVGAカードに換装することもあり得るマシンだけに、ここらで1つ電源も新調しておくべきなのではないか、というのが私の結論である。
 さっそく電源をオンラインで注文しておいた。今度のヤツは460Wクラスなので、CPU換装しても大丈夫に違いあるまい。電源だけで約1万4千円というのは、ちょっと痛いが、いつ電源断があるかわからないマシンでオンライン・ゲームをやるのは不安すぎる。

 安く仕上げたLicのマシンだったが、結局、『FINAL FANTASY XI』にはまったばかりに、改修を余儀なくされてしまったことになる。が、まぁ、それもいいか。『FINAL FANTASY XI』には、それだけの魅力があるのだから。


2003.8.30(Sat)

雑草の海

 じつに久しぶりに市民農園へとやってきた。8月の第1週目に訪れて以来だ。昨年は、もっと頻繁に手入れをしたものだが、今年は天候不順なため、作物の出来も最悪であまり出向こうという気力がなかった、というのもある。

 畑は、みるも無惨に雑草に覆われてしまっていた。夏はちょっと手を抜くと、すぐにこれだ。この雑草のように、トマトやナスが大きく育てばいいのだが、そちらの方はあいかわらず芳しくない。9本植えたトマトのうち、半数が立ち枯れてしまっていた。ナスも、ほとんど大きさが変わっていない。まるでそこだけ刻が止まってしまったかのよう。

 Licと二人、黙々と雑草を抜く。みこりんはコオロギやらカエルやらをおっかけていたようだが、結局、捕まえることはできなかったらしい。素手だと、どうしてもワンテンポ遅れてしまうのが原因のような気がする。みこりんは、結構慎重なところがあるので、雑草の中にずかずかと入り込んでいくのではなく、そろぉっと脇から手を伸ばす感じになっているのだった。

 雑草に埋もれるようにして、スイカの実を発見した。前回見たときと、ほとんど大きさが変わっていないように思える。ハンドボール大なので、まだまだ食べるには早すぎるような気もしたが、1ヶ月もこの状態なのだとしたら、じつは大きさはそのままで中だけ熟していたりは…。とりあえず周辺の雑草を抜いて、太陽に当ててやり、様子を見ることにした。うまくすれば9月中旬頃には収穫できるかもしれない。

 雑草を抜いていて1つ気掛かりなことがあった。それは臭いだ。しゃがみこむと、どこからともなく、あの“猫糞”の耐え難い臭いが鼻にツンとくる。も、もしやこのエリアのどこかにブツがあるのでは………。自分の庭は『完璧な防壁』で守ることはできるが、さすがに市民農園でそんな囲いを作るわけにもいくまい。一度雑草を完璧に整理してしまわねばならないようだが、今日はそのための時間がない。こういう時は、ハンディタイプの耕耘機が欲しくなる。あれがあったら、一気にガーッとやってしまえるのに。秋野菜の準備もそろそろしなくてはならないので、悩ましいところである。


2003.8.31(Sun)

散髪

 みこりんの散髪は、とあるスーパーのテナントとして入っている美容院でやることにしている。今回も、そろそろ髪全体が重たくなってきているようなので、さっぱりとやってもらうことにした。店に出向くと、待ち時間が1時間以上とのことだったので、その間、昼ご飯でも食べて待つことにした。

 このスーパーには、食べ物屋さんが複数入っているため、選り取り見取である。以前なら、こういう場合、みこりんは回転寿司を所望したものだった。100円の回転寿司ならば、3人で食べて2000円もかからないため、こちらとしても望むところだったのだが、近頃はなぜだか回転寿司には興味がなくなってきたらしい。今回も、普通のレストランを希望されてしまった。みこりんのマイ・ブームは、回転寿司から、お子さま用カレーに移ってしまったようだ(もしかすると、おまけで付いてくるオモチャねらいかもしれんが)。
 子供用メニューだけなら、500円以下なので問題ないのだが、大人用メニューとなるとそうはいかないので、なかなか痛い。ま、たまにしか来ないので、よしとしようか(チリも積もればなんとやら、だが)。

 そろそろ時間になったので、美容院へ。みこりんは、切ってもらってる間、なんだか眠そうな表情をしていた。満腹した午後のこと。規則正しいハサミの音は、妖怪まどろみんよりも強力な睡魔となったのであろうか。
 それでもどうにか切り終えるまで、崩れ落ちることなくみこりんは耐えた。洗髪してもらったら、しゃきっと目が覚めたような感じだ。

 帰りのクルマの中、みこりんはカレーのおまけで付いてきたオモチャに興じていた。やっぱりそれが目当てだったのでは、という思いは強くなる一方である。


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