2008.12.1(Mon)
猫とストーブ
PCの発する冷却ファンの、からからいう音だけが流れる静かな夜のこと。
ふと、みこりんが言った。
「にゃんちくんが、とろけとるよ」
指差す先には、赤々と燃え盛るストーブがあり、その手前では、みこりんの言うとおり、にゃんちくんが、スライムのようにとろけていた。
熱くないのだろうか。ここまで近いと、温かいを通り越して、焼き猫になりそうなくらい熱そうなのだが。
我々のそんな不安をよそに、にゃんちくんは長々と寝そべったまま、ぴくりとも動かない。
しばらくじーっと見守ってみたが、やはり静止画のごとく動きがないので、大丈夫なのだろうと思うことにした。きっと猫は熱さに耐性があるのだ。しかも、にゃんちくんは白猫だしなぁ…
そんなことを思った、12月最初の夜。……もう12月とは。早すぎる。
2008.12.3(Wed)
ホームセンターにて
定時の日なので、帰りにホームセンターに寄ってみた。猫用トイレ用品の買い足しというのが主目的だが、園芸コーナーがどんな風になってるのかという興味もあった。
秋にチューリップの球根を買って以来、園芸コーナーに立ち寄ってなかったので、さぞや品揃えも激変していることだろうと思ってはいたが、実際にその変化を目の当たりにすると、季節の移ろいを猛烈に実感する。
柊やシクラメン、ポインセチアに、和風な葉牡丹、万両等が入り混じり、クリスマスと正月が渾然一体となった園芸コーナー。なかなかこれはこれで味わいがあるようなないような。
その中にはもちろんプリムラの仲間達もいたのだけれど、我が家の玄関先のテラコッタには、昨冬買ったジュリアンが、夏を無事に過ごし、今も元気に葉っぱを広げているので今年の分は買わなくても大丈夫そうだ。…まだ花芽が付いてないのが、少々気がかりとはいえ、そのうち咲くんじゃないかなと気長に待ってみる事にする。
ところでチューリップの球根、…じつはまだ植えてない。
12月中に植えれば大丈夫みたいなのをどこかで読んだような気がして、すっかり安心してたら、いつのまにかその12月本番になってしまっていたという。
おそるべき月日の流れの速さである。今月を逃したらもう後がないので、早めに植えておかねばと思いつつ、寒さにくじけてなかなか庭仕事のできない今日この頃であった。ダメダメである。
2008.12.5(Fri)
底冷えの夜
異様な冷気に包まれた夜だった。
ストーブをいくら燃しても、そのエネルギーが軒並みどこかに吸い取られているかのように、少しも温かくなってこない。にゃんちくんも、今宵は自分のベッドの中で丸くなり、出てくる気配がなかった。
みこりんは1時間ほど前に眠りに付いたはずだが、寝る時にいつも聞いているCDは、まだ再生中で、ぼそぼそと豊崎愛生ちゃんの“独り言”がスピーカーから流れている。…起きてるんだろうか。そっと様子を窺ってみると、眠っているようだったがなぜか毛布一枚で冷え冷えになりつつあったので、掛け布団をかけなおしておいた。
こんな寒い夜には、自分もとっとと風呂であったまって寝るに限る。
温かな湯船で極楽気分な状況を想定しつつ、風呂場にて…
何の疑いもなく、ばさっとかけ湯してみたところ、心臓が止まった。
そこになみなみとあったのは、湯ではなく、冷水だった。
ここで撤退すればよかったのに、なぜかその時には湯船につかってみるとじつはあったかいのではないか?と思ったらしく、ざぶっとつかってみて全身が縮み上がった。冷水は冷水のまま、そこにあり、しかも底の方ほどさらに温度は低く、氷水のようであった。
みこりんが風呂から上がって1時間ちょっと。その間に、こんなにも冷えるものなのか。にわかには信じがたい光景を前にして、一瞬思考停止しかけたが、現実は現実として直視しなければならない。
さすがにこのままでは命が危ないと思って風呂から上がり、シャワーをかける。…が、温度が上がるまで十数秒。いつもはどうってことのない時間だが、この時は永遠にも思えるほど長く感じた。
寒い。寒すぎる。まるで何かの荒行のようだ…
*
この夜、結局、雪は降らなかった。
たぶん、夜空はしゃきっと晴れていたのだと思う。あとから考えると、絶好の星見日和だったんじゃないかと思えてきて、ちょっと悔しい。
2008.12.6(Sat)
『娘たま♀』
『娘たま♀』到着。マクロスFのボーカル曲だけを収録した2枚組だが、オリジナルサウンドトラック『娘フロ。』と『娘トラ☆』を持つ身には、かなりのだぶりがある。…とはいえ、このCDにしか収録されていない曲も、もちろんあるので後悔はしていない。…がしかし、だぶってないのが“宇宙兄弟船”だけだったとしたら……、それはそれで面白かったかもしれない。
いつものようにPCに吸い上げ。メディアプレーヤーが参照するデータベースに、曲データがまだ登録されてなかったらしく、曲名をすべて昔ながらの手入力しなければならなかったのが、ちょっと…。
通しで聴いてみたところ、個人的にツボだったのはランカ母(声:坂本真綾)の歌う“アイモ〜こいのうた”。歌詞は日本語ではなく、おそらく地球上のどの言語でもないと思われる(作詞が、あのGabriela Robinさんだしなぁ…)。設定的には、“バジュラ語”なんではないかと思っているのだが、“母”の慈愛に満ちたやさしい声質が、あまりにも美しすぎて、ぞくぞくとする。
Amazonの評価等では、“アイモ多すぎ”という声もわりとあるみたいだけれど、マクロスF的には、“アイモ”というのは物語の根幹をなす歌だと思うので、様々な言語(歌詞)、アレンジのものが入ってるのはむしろ似合っているのでは。
“インフィニティ#7”は残念ながら私がそのエピソードをすっかり失念していたため、普通に聞いてしまった orz... く、悔しすぎる。
みこりんの食いつきがよかったのは、“宇宙兄弟船”だった。日頃、聞かないタイプの曲(…宇宙演歌)なので、新鮮だったのかもしれない。“アイモ”や、“ダイアモンド クレバス”をどう感じたのか興味はあったのだが、本編を見ていないみこりんには、ただ「きれいな曲」で終わりそうな予感もあり。
今回のカバーイラストは、シェリルだった。なんとなく、映画公開前に、ランカをカバーに持ってくるアルバムがもう1枚出そうな予感。
2008.12.13(Sat)
からからの謎
ここ数ヶ月ほど、みこりんのPC方面から「からからからから」という、異音が聞こえてきている。
からからというからには、回転物体に何かが当たっているか、回転物体そのものに異常が起きている可能性が高い。PC内部で回転しているものといえば…、電源の中にあるファン、CPUのヒートシンクを冷やす用にくっついているファン、グラフィックボードのヒートシンクにくっついているファン、そして、ハードディスク内部のディスクといったところだろうか。
ハードディスクがたてる異音とは微妙に違ってる感じなので、たぶん、何かのファンであろうと思われる。
みこりん用PCには、今年に入ってからハードディスクを2個ほど追加したり、RAIDコントローラを追加したり、グラフィックカードを強力なものに取り替えたりしているので、そろそろ電源をランクアップさせてもいい頃合だった。
というわけで、おにゅうの電源は買っておいた。Antecの“NeoPower550”だ。
電源をこれと取り替えるついでに、筐体内部の点検もやっておくことにする。
みこりんのPCは、LicのPCと縦積みになっており、しかも下側なので、必然的にLicのPCも各種ケーブルを抜いて取り出さねば作業が出来ない。そんなわけで、2台のPCの筐体を開け、チェック開始。
ファンの回転具合などを確かめつつ、汚れをウェットティッシュでクリーニング。ヒートシンクに降り積もっている綿ぼこリは、掃除機で一気に吸い。
ファンにケーブルなどが当たっている形跡はなかった。回転軸にガタが来てるんだろうか。純正品ではあるのだけれど、さほど高性能というわけでもない。そろそろ耐用年数も超えそうだし。
筐体を開けたついでに、コネクタの数が足りずに回転を止めていたケース取り付けの冷却ファンを、すべて取っ払った。回してなければ、付いてるだけで風の通りが悪くなるし、いいことは何もない。
外してみて始めて分かる、その汚れ。しかも興味深い事に、上段にあったLicのPCに付いてたやつには、薄茶色の土ぼこりみたいなのがびっしりとファン表面に付着していたのに対して、下段になるみこりんのPCに付いてたファンには、真っ黒い煤みたいなのが、これまたびっしりとくっついていたことだ。
なにゆえ、こんなに両極端な汚れになるのか。
というか、部屋の中の空気がこんなにも汚れていたことに軽く衝撃を覚えつつ…
汚れまくった冷却ファンを、丁寧にウェットティッシュで拭き拭き。後日必要になるかもしれないので、物置部屋に片付けておく。
汚れが落ちたところで、電源交換。新品を、みこりんのPCへ。みこりんのPCで使ってたやつを、LicのPCへ。
LicのPCについてた電源が、規格も購入時期も一番古いので、そのまま物置部屋へ。スペアとして確保しておくことにする。
*
PC2台を元の位置に戻し、動作チェック。
しゅぃぃぃぃぃんと回り始めるファンの音。ふむふむ…、いまのところ静かになったような気がする。汚れが原因だったのだろうか。
*
夜。
からからからからという音が、復活していた。
電源のファンなら、聞こえてくる位置が微妙に変化するはずだが、それはなかったので、CPUかグラフィックカードのファンなのだろう。古さでいえば、CPUのファンの圧勝なので、十中八九、CPUのファンだと思われる。
これはまた微妙なパーツが……
近くにパーツ屋さんがあればこういう時に便利なのだが、だいぶ以前にお店はつぶれて今はなし。仕方がないので、ネット通販で探すしかない。こういう安いパーツの場合、送料が占める割合が相対的に高くなってくるので、ついつい他の“何か”を買ってしまいそうになるのが悩ましい。
まぁしかし、この慌ただしい年末に発注したら、配達中の事故が予想されるので、来年になってからにしておこうかと思う。それまでは、からからと共に。
2008.12.14(Sun)
アンサンブル演奏会
毎年この時期になると、みこりんの通う音楽教室では、自分で創った曲を発表する演奏会が執り行われる。今回みこりんは、いつものグループで合作に挑戦した。
5人のメンバーによる合作。どんな感じに創ったのだろう。一人で創るよりも、なんだか難しそうだが…。その点をみこりんに聞いてみたところ、いつのまにか5人の曲が渾然一体となって1つの曲に仕上がっていたのだそうな。
肝心の曲の方だが、みこりんは家で練習するときにはエレクトーンのボリュームを極限まで落とし、周囲に聞こえないようにしてしまうので、私は聴く事ができなかった。今日が“初”である。
その方が楽しみといえば楽しみなのだけれど、音を聞かずに練習になっているんだろうか…、という漠然とした不安もあり。
午前中はアンサンブル、午後がソロの発表となっているので、今日は午前の部だけでおしまい。休日の午前中は、たいていごろごろと惰眠をむさぼっている事が多いため、有意義な時間になりそうである。
午前10時過ぎ、開演。
小さい子から発表のため、みこりん達の出番はかなり後ろだ。撮って欲しい曲をあらかじめみこりんから聞いておいたので、そこだけビデオカメラで録画しつつ、演奏に聴き入ってみる。どれも自作曲だから、すべてが新鮮。ただ、なんとなくアンサンブルとしての音の調和のようなものが、いまひとつなような気が…。まぁこれは個人の好みの問題かもしれないけれど。
やがてみこりん達のグループがステージに登場。一人がピアノで、残り4人がエレクトーンという構成である。
美しいメロディだった。新しい生命の誕生を祝う曲。調和もいい感じに聴こえる。ピアノとエレクトーンの音が、いつになくきれいに融合しているのが印象に残った。これまでは、ピアノの音質とエレクトーンの音質が、微妙にミスマッチしていたように思うのだが、今回はピアノが流れるようにエレクトーン群の音に溶け合っている。
おだやかに、演奏終了。
これ以降のグループは、さすがに演奏歴も長いので、明らかな失敗みたいなのはない。どれも美しい曲に仕上がっていた。が、みこりんによると、同じパターンの繰り返しが多かったので、あまり面白くはなかったそうな。私とは逆に、小さい子の曲の方が、変化に富んでいて新鮮だったらしい。
なるほど。そういう見方もあるのか。
みこりんが、なんだかいつもよりちょっとだけ大きく見えた気がした。
*
午後、庭にて。
やっとこさチューリップの球根を植えることが出来た。座敷に保管してあった球根達からは、早くもちょろっと芽が出ているやつもあり、ぎりぎりのタイミングだったかもしれない。
無事、大きくなりますように。
2008.12.23(Tue)
クリスマスプレゼント
祭日だが、勤務先のカレンダーでは出勤日になっているので朝から仕事。途中、みこりんからケータイにメールが届いたので見てみると、サンタさんが日にちを間違えて今日、プレゼントを持ってきてくれていたらしい。プレゼントの中身は、みこりんがぎりぎりまで迷って決断したPSP3000のホワイトモデル、しかもメモリ同梱版だったそうな。
サンタさんの読心術、おそるべしである。
2通目のみこりんからのメールには、「USBケーブルある?」と書かれていた。たぶんPSP3000に接続して、PCから音楽データ等を転送しようというのだろう。USBケーブルといっても、コネクタの形状がいろいろ異なる場合があるので、私が帰るまで繋ぐのは待つようにと返信しておく。
コネクタ形状を事前に調べておくべきだった。失敗失敗。これでは何のためにサンタさんが日にちを間違えてまで、わざわざ祭日にプレゼントを持ってきたのか意味がなくなってしまう。
*
帰宅してみると、すでにLicによってPSP3000用のバージョンアップデータがメモリスティックに保存されつつあった。なるほど、オンラインでのバージョンアップ以外に、こういう手も使えるのか。なかなか便利かもしれない。
クリスマスイブイブディナーの間に、PSP3000のバージョンアップは完了していた。
さっそくPSP3000をPCに接続して、音楽データを転送。USBケーブルは、先月買ってきたカードリーダライタ用のやつがそのまま使えた(PSP3000側が小さい凸型)。
PCから見ると、PSP3000は普通に外部記憶媒体として認識され、エクスプローラを使って目的のデータをコピーすればOKというのが、みこりんにもわかりやすくてよい。これなら自力で出来るだろう。音楽用に“MUSIC”、動画用に“VIDEO”といったフォルダを作成する必要はあったが、これは最初の1回だけでよいので問題なし。
みこりんが、転送した音楽データを再生してみている。画面はグラフィックイコライザとして機能しているようだ。他にも切替可能かもしれないけれど、これはこれでなかなかかっこいいかも。
みこりんも、自分の望んだ通りのケータイミュージックプレーヤーとして機能していることがわかって、満足気だ。
次に、動画。
PSP用のMP4に変換しなければならないようだが、最初は試しにSD解像度のままのMP4データを転送してみた。
PSP側でこのデータを見てみると、“認識できない”と言われてしまった。ふむふむ。やはり適正解像度にしないとダメか。
というわけで、PSP用の解像度にエンコードし直し再転送。変換には、携帯動画変換君(+FFmpegのリビジョン9017使用)を用いた。
今度は正しく動画データとして認識、そのまま再生することが出来たようだ。みこりん曰く「めちゃきれい!」とのことで、たしかにPSP3000の液晶ディスプレイはなかなかシャープな映像を映し出していた。PCの液晶ディスプレイで見ると小さいサイズではいまいち迫力不足は否めないのだが、元から小さいPSP3000のディスプレイだとそれが普通サイズなので、逆に美しく感じてしまうということだろうか。ちょっとお得な感じ。
この夜、みこりんの部屋からは、PSP3000でリピート再生している音楽が、小さく小さく、止むことなく流れたのだった。
気に入ってくれて、なによりである。
2008.12.31(Wed)
『魔神伝』
ちょっとまえに新刊情報で『魔神伝』(“神”の字は、正しくは“神”の下側に“人”という字が入る造語)(作:来留間 慎一)のタイトルを見つけ、即、注文していたのだが、届いた1巻2巻の分厚さにまず驚く。このコミックは、1985年〜1989年に月刊少年キャプテンで連載され、その時期に単行本も発売されていたわけなのだが、私が最初にこの作品に触れたのは、同時期に創られたOVA版『真魔神伝』(“神”の字は、以下同文)であった。その直後に、原作コミックを借りたか買ったかして読んだ時には、こんなに分厚かった印象はあまりなかったのだが、なにしろ20年ほど昔のことなので、私の記憶違いかもしれない。
そんなわけで、新刊とはいっても、今回発売されたのは新装版だ。ぱらぱらっと中をめくってみて、1巻、2巻でそれぞれ完結した話となっていることに気付く。そして、2巻の内容は記憶になかった。これはこれで、かなりうれしい(どうやら旧版は4巻構成で、今回は2巻ずつをまとめているようだ)。
内容的には、80年代に爆発的人気を博した菊池秀行の雰囲気を強く感じさせるものとなっている。魔法と、念法、そして、科学の3分野を、それぞれバックボーンとする使い手が、それぞれの事情により、闘うというアクション伝奇モノ。魔法と念法の組み合わせというのは、わりとよくあったように思うが、ここに科学力によって対抗する異星の宇宙刑事(正確には刑事ではないんだが)の存在は、組み合わせ的に当時でもかなり新鮮に感じたものである(宇宙刑事単体だとありきたりなんだけど)。宇宙刑事といえば、やはり蒸着。コンバットスーツに、超空間移動、レーザー光線といった科学力を駆使した技術がてんこ盛りなのである。だが本作品では、どっちかというと、この宇宙刑事はいじられ役になっているのが面白い。
超空間移動で瞬間移動しながら攻撃を加えるコンバットスーツの宇宙刑事に対して、念法の使い手は生身。だがしかし、超空間移動中の宇宙刑事を、念法の使い手は己の武器とする刀を超空間内部に侵入させ、叩き落したりする。レーザー光線も、彼の念法の前には、ただの玩具と化し、レーザー光は刀でぶった切られるのである。さながら銃弾をものともしない、五ェ門と斬鉄剣のように。
魔道士(彼の場合は肉体派魔道士と言うべきか)も、念法使いも、宇宙刑事も、それぞれ駆使する力は異なるものの、それが作用する例えば超空間といった場は同じというのが、ミソかもしれない。エスパー用のジャマーが、念法使いにもやや効果ありな設定とか、よくツボを心得ている。
個人的には、邪妖精に寄生されて人外のモノに変わってしまった女子高生のあたりが、特に秀逸だったと思う。20年前、OVA版を見た時から、その印象は強烈で、今でもそのシーンは鮮明に思い出せるほどだ。
ぐちゃぐちゃずるずるな化け物に変わってしまった彼女を、魔道士は完膚なきまでに破壊してしまうのだが、魔道士のベースとなっている男は彼女がなぜそうなったのかを知っているため、そのぐちゃぐちゃずるずるずるの血と肉片から、元の彼女だけを再構成してしまう(再構成の過程が、骨→内臓→筋肉→皮膚といった感じに順に行われていくのがなかなかリアルだった)。
細胞(もしくは原子)レベルに分解されて死んだ人間を、肉体と共に魂まで元通りに復元する描写によって、神以上の存在であると言う魔道士の力が、強烈に読み手に刻み込まれるのである。
グロさの中にあっても、魔道士の軽妙なノリと、念法使いのシニカルさ、宇宙刑事の熱血漢ぶりが絶妙にマッチしていて、変に暗さを感じさせないのもいい。
で、1巻終了。
2巻は…、時系列的には1巻よりあとの話。でも、念法使いは最後の方にちょろっと顔出し、宇宙刑事は出てこないので、話的には別物。ちょっと間延びした印象を受ける。1巻だけでも十分かもしれない。
ただ念法使いとの絡みは、後続巻が出ることを念頭に置いてあるっぽいので、続き読みたいところではある。でも最後に“完”と書いてあるので、もう出なさそうな気もする…。20年も経ってるしなぁ…。