2002.8.1(Thr)
外産
昔は図鑑の中でしか見ることの出来なかった角が三本あるカブトムシやら、見慣れない顎を持ったクワガタムシやらが、ホームセンター等で当たり前に売られるようになって久しい。これだけ出回っていると、いつかは出てくるんじゃないかと思っていたけれど、すでに外国産昆虫が日本の野山で発見されたり、あまつさえハイブリッドが誕生してたりするらしい。…まぁ当然の帰結と言えなくもない。故意にしろ事故にしろ、その可能性が0%なはずもなく。
いずれ昆虫採集でアトラスオオカブトムシが普通に捕まってしまう時代になるのかもしれん。あるいは意外にモロくて、そこまで勢力を拡大することなく野生化グッピーみたいな扱いになるのかもしれん。みこりんが大きくなってもまだ虫への興味を失わないでいてくれたなら、5年後、一緒に裏山を探索してみようと思う。予想としては、“コクワガタがどっさり見つかる”、に1800ポッチ。
2002.8.2(Fri)
○○工作
氷上の“ねずみーランド”の仲間達を、Licとみこりんは満喫してきたらしい。しかも帰りにちょいと寄り道して、工作活動をしてきたらしい。一体何を工作してきたかというと……、みこりんがさっきからうれしそうに手に握りしめているのがソレだ。薄っぺらいゴム状の物体で形成されている“塗り絵”である。焼くと絵の具が固まるらしい。ハム太郎の絵が描かれたソレは、じつにうまい具合に塗り分けが施されている。たしかにみこりんが自慢したくなるのも頷ける出来だった。
しかし私が注目したのは、その塗り絵ではなく、もう1品の方である。ピンクの紙で覆われ、フレームが木で出来ている、電動オモチャ。スイッチを入れれば「かたかたかたかた」と激しく縦ノリしながら前進してゆくソレは、昔懐かしのマブチモーターが組み込まれた工作キットであった。
今からこんな電動工作キットに手を出し味を覚えてしまうと、小学生になったらいったい何を工作し始めるか楽しみで仕方がない。最近みこりんは、誕生日のプレゼントには「“らじこん”がいー」と主張し始めていることからも、その片鱗が伺える。ラジコン、しかもクルマがよいらしい。改造するにはもってこいだ。まさに願ったり叶ったり。ラジコンで遊ぶなら一台だけじゃつまらないので、やっぱり二台は欲しいところ。いや、Lic用のも含めて三台あれば完璧だ。工作好きのLicのことゆえ、きっと怪しげな改造を施してくれるはず。
たしかにみこりんは工作好きの血を受け継いだようである。
ワニのスワニー
という絵本を買ってきたらしい。工作してる近くの本屋で、ちょうど作者(中川ひろたか氏)による読み聞かせがあり、裏表紙にサインまでしてもらってきていた。
絵本の題名は、正確には『わにのスワニー3/しまぶくろさんのたんじょうパーティの巻』という。つまりシリーズものの3巻目だ(しかも新刊)。1巻目がなくても大丈夫なのかと少々不安なところもあったが、さっそく今夜の眠りの友として、みこりんに読んでやることにした。
しまぶくろさん、面白すぎる。途中、何度も笑いの虫に取り憑かれて音読するのも困難になりかけた。ギャグセンスが素晴らしい。幼児向けというより、これはオトナが読んでも十分楽しめる作品だと思う。絵本なので単価が高いのが難点ではあるけれど、それでもこれはぜひ買って手許に置いておきたい類の本である。
さっそく明日1巻買ってこなくてはなるまい。
2002.8.3(Sat)
サボの手術 episode 2
Tシャツが汗でぺったりと肌に貼りつく真夏の午後のことだった。ウッドデッキのテーブルの上に、サボテンが1本、横たわっている。その横には、刃を限界まで出したカッターナイフが1つ、置かれてあった。サボテンは、その長い胴体を、根元から3cm付近のところで両断されており、根っこの側は、あからさまに放棄されたように転がっていた。
どうやら手術は無事に終わったらしい。根元側から切り離された頭頂部は、丁寧に横たえられていて、その切断面にはおそらくミリオンAの粉末がまぶされているはずである。腐食部の完全なる切除のためには、このような荒療治が必要なのだった。
サボテンの異変に気が付いたのが7月の頃。くたっと倒れ込むように、サボテンが“おじぎ”をしていた。いつのまにか根元付近の肉が、ぶよんぶよんになっていたのだ。このまま放置していたら、いつぞやのように手遅れになってしまう。Licにサボテンの様子をしかと見せて、治療してくれるようにお願いしておいたのだった。なんとなく、サボテンはLicに治療してほしがっているように感じられたから(このサボテンはLicの“嫁入り植物”である)。
前回、私の手術は失敗に終わった。残った部分が小さすぎたのか、乾涸らびて死んでしまった。だが今回、Licはうまくやったように思える。
ところで心配なことが1つ。テーブルの上でこのまま乾燥させていると、みこりんが触ってしまうのではなかろうか。いかにも訳ありげに横たわるサボテンは、みこりんの好奇心を刺激しまくることだろう。……でもまぁ、もともとサボテンを置いてあった場所もみこりんの手の届く範囲内だったので、いらぬ心配かもしれない。みこりんのことだから、サボテンの触り具合は確認済みのはず。棘の触り方も心得ているにちがいあるまい。というわけで、しばらく様子を見ることにしたのであった。
夕方、サボテンにもみこりんにも、異変はなかった。
変わり玉
花火大会好きのLicに連れられ、地元の花火大会に出向く。みこりんは夜店を期待していたようだったが、ここはメイン会場からは離れていて、かき氷屋さんの姿はどこにもなく。夜空に炸裂する花火だけに集中するのが吉。
今年の花火大会も3場所目だが、今回は“初めて”が多かったような気がする。まず目に留まったのが、打ち上がっている最中にも、きらきらと星形(のように見える)の火花を残していくヤツ。軌跡を残すのは普通にあるが、それとは異なったタイプのようだ。軌跡にプラスして、まるで特殊効果のように星を散らしながら上昇してゆくのである。いったいどういう仕掛けになっているのか、構造が気になって仕方がない。
そのうち別の“初めて”が上がり始めた。やはりこれも上昇中から芸を見せている。しかも開花してからも2段階変化だ。しめて3段階変化の変わり玉。興味深いのは色が変わるだけなく、火薬の展開の仕方が全然違うパターンになっていること。まるで3つの花火が連続して打ち上がっているようにさへ見える。いったいどういう仕掛けになっているのか、構造が……
悩みつつも、次々と開花する夜の“華”に魅入ってしまう。みこりんはときおり敷物を離れて、20メートルほど一人で駆けていき、暗がりに溶け込んだりする遊びをやっていたが、おおむねおとなしく花火を鑑賞できていたようである。夜店がなかったのが幸いだった。
例によってフィナーレを迎える前に、撤収。
帰りに本屋に寄ろうとしたら、みこりんが何故か恥ずかしがっている。浴衣を着てるのが自分だけかもしれないという予感が、そうさせたらしい。これまでになかった反応だ。浴衣が特別な服であるという認識が、みこりんの中には目覚めたらしい。でも、今宵はあちらこちらでお祭りがあったようで、道々に浴衣姿のお姉さん発見。きっと本屋にもいるはずという説得を、みこりんは受け入れてくれた。
結局、本屋に浴衣姿の女の子は、みこりんだけだったが、入ってしまえばどうということはなく、いつものみこりんだった。やはり最初の扉を開けるまでが肝心のようである。
2002.8.4(Sun)
ブラックベリー・ジャム
地元の七夕会で貰ってきたという宝石瓜を食べている間、Licは庭で摘んできたブラックベリーのジャム作りに余念がない。近頃は暑さもピークと見えて、ブラックベリーの落果率もかなり高く、みすみす土に帰すくらいならジャムにしたほうがマシ……、ということらしい。
ことことと煮詰められているブラックベリーは、じつに目に良さそうな色彩を放っている。砂糖を多めにしたとのことだったが、試食した限り、酸味もほどよく甘さが気になるほどではない。じゅくじゅくに熟れた果実が投入されているので、一瞬、果実に巣くってそうなうねうね虫のことが脳裏をよぎったが、おそらく煮詰まってしまえばうねうね虫は跡形もなくとろけてしまうであろう。カタチさへ判らなければ、うねうね虫が少々混じっていても大丈夫。見えないものは、無いも同然なのである。そう、“入っている”と神経質に考え込まない限り。
ところで宝石瓜は、少々固かった。瓜といえば、真桑瓜。子供の頃、夏休みに母方の実家へ遊びにいくと、よく真桑瓜を出してくれたものだが…。瓜の食べ方を思い出すのに、数分を要してしまうほど、昔のことになってしまっていたとは。
庭のプラムの木で、ツクツクボウシが初鳴きを披露してくれた。
なにやら秋の気配…
秋の気配
夕方、市民農園でしばし農作業にいそしむ。
やっと色づいたトマトをどっさり収穫。ナスも、あいかわらず豊作である。キュウリもほどほど。こうして一週間分の野菜をどかっと収穫すると、冷蔵庫がぱんぱんになってしまうのが、唯一の難点。もう少し市民農園が近いといいんだけど。
「とうもろこし、げっとー!」と高らかに宣言したみこりんが、ふさふさの毛やら皮やらを積み上げて、さっそくままごと遊びに興じている。“消毒薬”をかけるとか、そんなことをしきりに言っているのだが、たぶん何か別のモノと間違えて覚えている可能性大。いったい何と間違っているのかLicと予想してみたが、妙案を思いつかず。まさか“醤油”なんてことはないだろうと思いつつ。
夕暮れは、なんだか秋の気配がする、と、Licが言った。
お約束のように、ヒグラシがものがなしく鳴いていたことは、言うまでもない。
2002.8.5(Mon)
結婚するなら
「おとーさんは、だれとけっこんしたい?」
就寝前の絵本を読み終え、灯りを消した寝室で、みこりんが突然こんなことを言い始めた。何故と問う私に、「だっておとーさん、なまえがかわってないから、けっこんしてないでしょ?」と、みこりん。どうやらみこりんにとって、私はまだ結婚していないことになっているらしい。
先月、みこりんの担任の先生が結婚して苗字が変わったことも影響しているのだろう。どうりで最近、Licの昔の名前を聞き出したり、私の小さい頃の名前を知りたがったりしていたわけだ。
しかしまぁ夫婦別姓とかいろいろ意見もあるが、結婚と同時に夫婦が新たなる姓を名乗るシステムについては、あまり言及がないのは何故だろう。別姓論にしろ同姓論にしろ、いずれかの“家”を基本にしてる点では根は1つ。でも、実家を遠く離れていると、新たなる自分の“家”は新姓で、というのも悪くないような気になってくる。
それにしてもみこりん、おとーさんが結婚したら、おかーさんが二人になるけどいい?と聞いたら、うーんと考え込んでしまった。そこまでは想定していなかったらしい。……一夫多妻制だと、こういうのもぜんぜんOKなんだな、と、ちょびっと考えたりもし。
2002.8.6(Tue)
真夜中、とたとたいう音
暗がりの向こうから、突然物音がして、一瞬身構えてしまう。真夜中のことだった。
何かが階段を下りてきているのだと気付くのに、さらに数秒を要してしまう。にゃんちくんか?と安心しかけたが、彼女は足元でころんと横になり、「にゃ?」と小さく鳴いてこちらを見上げていた。にゃんちくんではなかった。
音は、まさに階段から廊下へと入ってこようとしていた。昔見た映画『ペットセメタリー』に、似たような怖いシーンがあったような…。だがしかし、ここでようやく私は気付く。音の主は…、みこりんだということに。
ずばっと廊下に走り込み、階段をぐいっと見上げる。光量が絶対的に不足した空間にあっても、みこりんの明るいパジャマの色は容易に識別可能だった。そこにいたのは、まぎれもなく、みこりんであった。
夜中に目覚めたみこりんは、たいていは泣いて知らせてくれるのだが、たまーに運が良いとこうして自力で降りてきてくれるときがある。階段を下りる音がするのはまだ良い方で、いつぞやはいきなりリビングに入ってきて肝を冷やしたことがあった。可愛いみこりんとはいえ、丑三つ時に突然ちっこい人影が現れたら、そりゃぁ怖い。できればインターホンで事前に教えてくれたら安心できるのだが(夜は寝室とリビングでモニター用の単方向インターホンが稼働中だ)、まだその技を習得するには至っていない。しばらくは、真夜中の“ドキリ”が続きそうだ。
2002.8.7(Wed)
真昼の弁当
改札を抜け、コンクリートの階段を上ると、灼熱の太陽が容赦なく降り注ぐ真昼の世界が待っていた。駅周辺に人影はなく……、いや、いた。足元にうずくまるように数人の若者が腰を下ろしている。装備から判断する限り、大学のハイキング部かその同類に属するものと思われる。休憩中らしい。余計なエネルギーを消費すまいとでもいうように、わずかな陰にじっと身を潜めて微動だにしない。
彼等の間を抜け、私は、線路沿いに歩みを進めていた。
だいぶ南に位置するためか、植生もどことなく違う。もうじき正午。腹の虫が盛大にうずき出すもの時間の問題だ。しかし、どこまでいっても、“陰”がない。じわじわと、汗に焦りが混じり始める。
目下の最大の問題は、出張カバンに詰め込んだ弁当を、どこで広げるか、ということだった。田舎とはいえ駅前はほどほどに人家があり、まさかその目前で弁当食うわけにもいかず、適当な空き地を探しているのだが…。線路を挟んだ反対側には田園風景が広がっている。最悪、その畦道ででも、と思い始めた頃、唐突にそいつが視界に飛び込んできた。
バス停だ。おあつらえ向きに屋根の下にはベンチが用意されていた。ペンキがぱさぱさに乾燥しきっており、いまにも崩れそうなボロさだったが、このさい贅沢は言っていられなかった。クルマがほとんど通らないのを幸いに、さっそく腰を降ろし、弁当を広げた。
日陰に入っても、空気はあいかわらず沸騰したかのようだったが、弁当はじつにうまかった。空腹に飯粒がしみる。ゆっくりと噛みしめて、味わった。
すっかり空になった弁当箱を、カバンに戻し、私は陰からゆっくりと出た。出張先は、あと2キロ彼方にあった。
2002.8.8(Thr)
僻地の赤提灯
その店は、田園地帯のど真ん中にあった。道路からは少々離れていて、詳細を見て取ることは困難だったが、おなじみの赤提灯と、黄色い看板の雰囲気から、一杯飲み屋であることは想像がついていた。
辺りには人家もほとんどなく、その赤提灯の小さな光は、夜の中にあって異様に目立っていた。
田畑と、資材置き場しかないような、限りなく人口密度の低いこんな場所で、飲み屋があるということ事態が奇っ怪ではある。Licの推理によれば、あれは狸がやってる店なのではないかということだった。たしかにこの辺りならば、狸や狐、それに雉やら鼬などといった野生動物の方が多いだろう。動物相手ならば、商売も成り立つかも知れない…
一度確かめてみたいような、みたくないような。真夏の夜には、得体の知れないものが徘徊する…、らしい。なんとなく、あの店にはけして近寄れないような気がしてしまうのであった。
2002.8.9(Fri)
ゴーヤの異変
試しに植えてみたゴーヤに、待望の実が2つ成っているのに気付いたのは、最近のことだった。なかなか雌花が咲かずにやきもきしたものだが、そんな心配を吹き飛ばすように、実は日ごとに大きくたくましくなっていくのだった。
X-Day、つまり収穫の日をいつにするのかで、私とLicは迷っていた。Licはまだ早いと言い、私ももう少し大きくしてからのほうが食べ応えがありそうに思った。みこりんはいつでも収穫できる態勢にあった。
明日か、明後日か、そんなことを考えていたのが今週の初め頃のこと。そろそろX-Dayも近い。そんな予感がしていた。
ところが…
大きい方の実に、異変発生。昨日まで青々しくもうまそうだったはずの深緑の肌が、一変して黄色く染まってしまっていた。食べ頃は、あっというまに去ってしまっていたようである。こんなに熟してしまっては、もはや食べるのは不可能に違いない。む、無念である。
残りは1つ。こちらはまだそれほど実が大きくなっていない。まだ大丈夫、まだ…。案外、みこりんの野生の勘に任せた方がうまくいったりして。
2002.8.10(Sat)
露天
いつもより1時間も早く目覚めた我々は、各自お出掛けの準備を粛々と進めている。ただし放っておいたらみこりんのリュックの中身はオモチャだらけになりそうだったので、必要最低限のものにするよう指導した。
今日から夏休み第2弾の始まり。Licの実家方面へと帰省する。しかも初日はじぃじばぁば、それにお姉ちゃん二人と共に温泉旅館に泊まるとあって、みこりんのテンションはいつになくヒートアップしていた。冬に温泉を楽しんでからというもの、みこりんはことあるごとに「おんせんいきたい、もっぺんおんせんとまるー」と繰り返すほど、温泉にハマってしまっているのだ。
*
温泉街を目指す車中でも、みこりんの目はしっかと見開かれ、お昼寝のわずかな気配も感じられない。後続のお姉ちゃん二人が乗ったクルマが信号に引っかかってはいないかと、常に心配する余裕まであった。それにしても山深い。おそらく外はミンミンゼミの鳴き声で埋め尽くされているのだろう。街道沿いに点々と見かけた貼り紙には『300坪900万円』などという謎のメッセージもあり、怪しさいっぱいである。
温泉旅館着。部屋に案内されつつ、仲居さんが露天風呂やらプールやらの説明をしてくれている。「プール?」みこりんの耳は敏感に反応していた。温泉以上にプール好きなみこりんのこと、部屋に着くなりとっとと水着に着替え、水泳帽と水中メガネを装着して準備万端整えると、私の手を引き先ほどのプールへと向かうのだった。こうなることを予測していたLicは、あらかじめみこりんと私の水着を持参していたのだ。まさに備えあれば憂いなし。
温水プールは深かった。貸し浮き輪を装備したみこりんだったが、さすがにちょっと怖いらしい。他のお客さんもわりと多めで、水飛沫も結構かかる。数回往復したところで、プールはお仕舞いとなった。
しかし何故、温泉にプールなのだろう。水着OKな混浴露天とかの方が……、まぁ状況的には一緒だからどっちでもいいのかも。
プールから上がったみこりんと私は、そのまま隣の露天風呂に向かった。注意書きに『石鹸は鳥が持っていくので出しっぱなしにしないこと』とある。鳥…、どんな鳥がやってくるのか少々興味を惹かれつつ、がらがらっと戸を開ける。洗い場の向こうは山だった。その向こうに人工物は一切無く、ただ稜線が遙か彼方まで連なるのみ。鳥どころか、四つ足の獣もやってきそうである。
最近熱い湯にも耐性の出てきたみこりんは、わりとすんなり湯船に浸かることが出来た。湯の色は薄い飴色で、底の方にざらざらとした感触がある。岩肌にまるで鍾乳石のように貼りついた物質が、年代を感じさせた。顔をつるんと撫でると、しょっぱい味が口中に広がる。海水濃度よりも濃い。さっそくみこりんにも教えてやると、鼻の下まで湯に没していた。塩分を確認できたらしいみこりんは、にやりと目で笑った。
*
その夜、つい飲み過ぎた私は、早々にダウン。みこりんは夜遅くまでお姉ちゃんと戯れていたということである。
2002.8.11(Sun)
モザイク
温泉宿より帰還した午後、二人のお姉ちゃんが交互にお昼寝する中、みこりんは一人元気だった。一緒にお昼寝してくれればと期待したのだが、みこりんは一時も無駄にしないと固く心に決めているかのように、手近な相手を見つけては遊びに興じている。
夜、駅前の盆踊りをみんなで見に行った。みこりんはやはりここでも夜店狙い。すっかり私とLicのことなど眼中にないようである。機は熟した。計画通り、みこりんに「買い物に行ってくる」と告げてみたが、まったく付いて来たがる気配なし。それではと、Licと二人、そろって抜けだし駅に入る。時刻は午後7時ちょっと過ぎ。午後8時半からの映画には、十分間に合うタイミング。
*
映画館に足を運ぶのは、じつに6年、いや7年ぶりかもしれない。全席指定な映画館だったので、チケットを買った後はしばらく周囲を散策してみる。初期のWebブラウザと同じ名称をもつこの一帯は、夜ともなればカップルだらけ、まれに観光の親子連れがいるくらいで、雰囲気も妖しくなってくる。インテリア雑貨の店を数軒ひやかしに覗いてみたが、ここにも苔玉健在。それにしても苔だけを玉にして売ってみても面白かろうと思うのだが、何故にないのか。
定刻が近づいてきたので、映画館へと戻る。まだ宵の口だというのに、異様に閑散としていた。5分前、もぎり開始。館内から出てくる人波も、拍子抜けするほどに少ない。こいつはいい。ほぼ貸し切り状態かもしれん。そんなことを考えつつ扉を開け、着席する。案の定、客の数は両手で足りるほどだった。
『STAR WARS EPISODE II』は、やがて懐かしいテーマと共に始まった。
きっと観た人は多かれ少なかれ、同じようなことを思ったに違いあるまい。「ヨーダに杖はいらんなぁ」と。それにしてもあのクローン兵達は、その後みーんな殺されてしまうんだろうかと、ちょっと気になってしまったりしつつ、エンディングを迎えた。
スタッフロールを最後まで見届けたのは、私たちの他は、一名だけだった。外はすっかり人の気配が失せている。店もとうに閉店時間を迎え、灯りも消えていた。そこへ小さな影が、ちょろちょろっとやってきた。仔猫だ。今がもっとも愛くるしい時期の仔猫が1匹、きょとんとこちらを見つめている。しかし、Licが近寄ろうとすると、そそくさと隠れてしまった。じつに用心深い。だからこそ生き残ってきたのかも知れないが。
*
みこりんは、おとなしく眠ったらしい。大好きなお姉ちゃん達が帰るときにも、あっさりと見送ったという。人への執着が、以前よりも薄くなってきているような?たしか去年はお姉ちゃんと一緒に帰るといって、しばらく駄々こねていたはずなのだが。心境の変化が何によるものか、今はそれが少し気になっているところである。
2002.8.12(Mon)
幼児の勘
じぃじの趣味であるところの囲碁に、いつのまにかみこりんも取り憑かれていたらしい。昨日は対戦相手のお姉ちゃんに、ついに勝ち、そして今日、みこりんは私に勝負を挑んできたのである。
受けて立とうではないか。碁盤を挟んで対峙するみこりんと私。みこりんが白で私が黒だ。この碁盤を黒で埋め尽くしてくれよう……、あ、それはオセロゲームか。囲碁は、一度もやったことのない私である。はたしてじぃじから直接手ほどきを短時間とはいえ受けたみこりんに勝てるだろうか。汗が喉をつたって畳に落ちた。暑い…
みこりんは着実に陣地を拡げていた。自軍で囲ってしまえば敵を捕虜にできるというシステムが、みこりんのツボにはまっているようだ。捕虜数を稼ごうとする結果、陣地も増える。マップの上半分は、みこりん優勢。もはや劣勢を挽回する術はないように見えた。みこりんの野生の勘、恐るべし。かろうじて下半分の領域では私が優勢のようだが、勝負の行方は実に微妙だった。
石を打つ場所が残り少なくなったとき、みこりんは言った。「これでおしまいにしよう」と。こうして、みこりんとの対戦は終わった。勝敗は……、どうやって判定すればいいのかわからない者同士なので、同点ということに落ち着いたのだった。案外、磨けばかなり光ったりして…と、親馬鹿は妄想する。囲碁セット買ってみてもいいかな。
『めで鯛飯』と『ひっぱりだこ飯』
夕方、ひとりで帰還。Licとみこりんは、実家に残った。
我が家では、にゃんちくんが「にゃーにゃー」と歓迎してくれた。かなり心細かったと見える。
新神戸駅にて買ってきていた駅弁を、晩ご飯とした。明石鯛を使った『めで鯛飯』である。これはやはり明石産タコを使った『ひっぱりだこ飯』と双璧をなす、ちょっと変わった焼き物製の容器に入った駅弁なのだった。
『めで鯛飯』の入れ物には、壺に鯛の頭と尻尾、それにヒレがくっついている。愛らしいその姿…、食器棚には過去に食した入れ物をすべて残してあった。改めて数えてみると、1つ2つ3つ、もある。今日ので4つめだ。意外にも『ひっぱりだこ飯』の入れ物は、1つしかなかった。こちらは蛸壺型をしている。こっちを今日は買ってくるのだったと、少しだけ後悔した。
さて、この入れ物、このまま飾っておくだけでは少々勿体ない。何かに使えないかと、今も悩んでいるところである。
2002.8.13(Tue)
夏のイメージ
赤鹿の子ユリの開花に、ようやくカメラが間に合った。今夏3つめの開花である。
あとはカラスアゲハが蜜を吸いに来てくれるのを待つばかり…、なのだが、なぜか今年はまだカラスアゲハの姿を一度も見ていない。ユリにとまるカラスアゲハというのが、幼少の頃より脳裏に刻まれた夏のイメージ。来たれ、カラスアゲハよ。
*
午前中、市民農園にて汗を流す。炎天下、さくさくと響くクワの音が心地よい。平日ということもあってか、だだっぴろい田園風景に、人の姿は確認できず。まさに風景の貸し切り状態である。
筋肉の奥まで熱湯を注ぎ込まれるような暑さの中、畝2つを耕した後、収穫にかかった。ナスはまたも鈴生りである。その一方で、トマトはかなり状況が悪化していた。おまけに、強風のためか、1本が倒れ伏していた。元に戻そうと支柱をぐぃっと差し直そうとしたら、「ばきっ」という嫌な音と共に、根元の茎が折れてしまった。支柱に括り付けていたバンドを外さないままだったのがまずかったらしい。しばし呆然と切断面に見入ってしまったが、見つめていても復活するはずもなく、とりあえずそのままにしておくことにした。まだ青い実が、やがて独力で熟してくれることを期待して。
西瓜は順調に丸々と太っていた。ツルが枯れ込み始めていたので、ぽんぽんと叩いてみたところ、“こわわん”と反響音が返ってくる。もしかしたら採り頃なのかもしれん。が、これはみこりんが収穫するのを楽しみにしてたはず。ハサミを入れるのはぜひみこりんにやってもらいたい。しかし、Licとみこりんがいつ頃戻ってくるのかは、まだ未定だ。
とりあえず西瓜をちょいと回して、そのまま地面に座らせておいた。
2002.8.14(Wed)
夢のつづき
目覚めてみれば、すっかりお天道様は空の高みにあった。やがて正午のチャイムが団地内に鳴り響く。ついさっきまでの夢の続きが、なんだかまだ現実に重なっているようで、奇妙な感じだ。昨夜は眠るまで谷甲州の『終わりなき索敵(上)』を読んでいた。遙か銀河中心を目指す情報体…というシーンで記憶が途切れているので、ちょうどそれに関連した夢を見たのだと思う。宇宙をとぶ夢を見たいならば、この本はかなりお薦めだ。
さて、本日の作業は“座敷の片づけ”である。とっちらかったままお盆を迎えるのは、なんだか罰当たりな気がしたのだ。
みこりんの謎なアイテムが、あちらこちらから発掘された。がらくたというか、ゴミにしか見えない透明な板とか、紙片とか、何かの蓋といったものが、ごろごろと出てくる。いちおうすべて袋に入れて、みこりんの部屋に戻しておいたが…、はたしてみこりんはその全てを把握してるんだろうか、という疑問もある。こっそり“ぽい”しててもわからなかったりして。
すっきりと片づけたあとは、神棚の掃除。久しぶりに榊を取り替え、お供え物を一新し、ぱんぱんと柏手を2つ。家内安全、怨敵退散、etc...
夕方、突然黒雲が立ちこめ、落雷、激しい降雨に包まれる。隣の空き地方面から、「にー にー」いう心細げな鳴き声が頻繁に届いていた。雨は、夜には上がっていた。扇風機をつけると肌寒いほどの夜だった。
2002.8.15(Thr)
やってくるのは…
午後から天候は急変し、激しい雨風そして雷の来襲。ケージの中で、にゃんちくんがひたすら目を閉じ、眉間に皺を刻んでいるのが見えた。名前を呼んでもまったく反応がない。それどころではないらしい。にゃんちくんは雷にとても弱いのだ。ふと、昨夜の“にーにー”のことが思い出された。耳を澄ませば、今もか細い鳴き声が聞こえてきそうな気もしたが、どこかで安全なねぐらでも見つけたか、気配はなかった。
やがて雨足が弱くなってきたのを見計らって、買い物に出かけた。お盆用のお供えを買ってくるのが目的だったが、途中で園芸店に立ち寄ってしまっていた。
店内では秋植え球根が目立つ場所に並べられ、はやくも秋の匂いに充ちつつあった。ラッキョウやらアサツキやらの向こうには、ニンニクがごろごろと群れている。買おう。1つ手に取り、しばし思案したのち、もう1個をカゴに追加した。6片ニンニク1個だけでは6×6の36片にしかならないが、2個ならばその倍、72片にもなる。備えあれば憂いなしだ。
そして寒い季節の必需品、長葱苗を物色する。ノーマルタイプと赤タイプ、それに下仁田葱の3品種が取り揃えられていた。ノーマルタイプの苗は入手のあてがあったので、ここは一束300円也の下仁田葱にしておく。一束にはおよそ10〜15本が入ってそうなので、これだけでも我が家には十分過ぎるかもしれない。
あとは消滅しそうなスペアミントのために新しいポット苗を買って、ホウレンソウの種を買って……とかやってるうちに、主目的であるお盆用お供えのことをあやうく忘れてしまうところだった。雨は再び激しさを増しつつある。急がねば。
結局、おはぎを買って来て、自家製ナスと一緒にお供えしてみたのだけれど、我が家にはまだ迎えるべき“霊”はいない。別の何かが…来たり、して?
2002.8.16(Fri)
イモころころ
平日が休暇のうちにと、秋の園芸通販リストの作成にとりかかる。郵便振替なので、15時がタイムリミット。あと3時間もない。焦りつつも、これまでの下書きを何度も見直し、どうしても必要なものと、今回は見送るものとに振り分けていった。
庭の構想を練る場合、完成形態をイメージし、それを絵に描くとよいらしいのだが、私の場合はもっぱら脳内シミュレーションのみで行っている。でもやはりコンピュータ・シミュレーションで可能になればさぞや便利に違いあるまい。四季折々の生長を再現しつつ、日照の影響を確かめながら、試行錯誤で各種植物を植え込めれば理想的。園芸品種だけでも数千とか数万とかいう植物モデルを誰が作るんやというのが最大の問題だろうなぁ…
さて、ようやく決まった注文書を携え、片道15分あまりの郵便局まで往復して戻ってくると、ツクツクボウシの鳴き声もどこかしんみりと響く夕暮れの気配。凪かと思うほど風はなく、庭仕事にはじつに不向きな時間帯だったが、秋野菜のために菜園1号2号の準備をしておこう。
立ち枯れていたインゲンを抜き、とてつもなく場所をとっているゴボウを少々収穫して場所を空ける。ゴボウの葉というのは、最盛期には座布団くらいになるので、およそ半径80cmくらいの円が必要になる。これは狭い庭にはかなりの負担だ。おまけに収穫するのも一苦労。根っこに沿って、傷つけないように縦穴を最低でも30cm〜50cmは掘らねばならない。それでも、元気にすくすく育つ姿を見ているうちに、つい情が移ってしまって見守ってしまうのであった。今では菜園のほぼ半分をゴボウで占めるほどになっている…。
空けた領域に堆肥を入れ、石灰を振りまき、さくさくと混ぜ込んでいたときのこと。“ころり”とまろび出てきたものが、あった。
ピンポン球サイズの丸っこいもの。色は…、肌色?ということは、もしやこれはジャガイモでは。
春頃に、堆肥置き場から生えてきていたジャガイモを、ここに植えたことを思い出していた。途中までは順調に育っていたのだが、いつのまにか消滅してしまっていたはず。もうかれこれ1ヶ月はその姿を見ていない。まさか子イモができていたとは。他にもあるかもしれないと、慎重に掘り返してみたが、結局2個しか見つからなかった。とはいえ全然諦めていたのに思わぬ収穫があり、ついつい頬もにやけてしまう。出来てるとわかってればみこりんと芋掘りしたのだが、それは来年のお楽しみとしておこう。
2002.8.17(Sat)
嵐の中の収穫
みこりんが戻ってきたので、満を持して西瓜の収穫に向かう。ところが突然、西の空から黒雲が、おどろおどろしい効果音と共に湧き上がってきたのだった。
市民農園に到着した頃には、まるで洗車機の中に閉じ込められたかのような激しい雨と、ひっきりなしに鳴り響く雷に見舞われてしまっていた。しばらく待てば止む、とかいうレベルを超越しており、そろそろ覚悟を決めねばならないようだ。
車内に常備している傘を鷲掴みにして、ドアを開けた。雨粒が痛い。傘を開くも、吹き荒れる風に今にももっていかれそうだ。急いでトランクを開け、二人分の長靴を取り出した。
長靴に履き替え、傘をしっかと握りしめた私とみこりんは、西瓜の待つ区画へと向かった。まるで傘が歩いているようなみこりんの後ろ姿が、時々立ち止まっている。雨と風と雷と、三拍子揃った攻撃に、すっかり怖じ気づいてしまっているらしい。背後から声をかけつつ、なんとか到着。雷はまだ1キロほど向こうにいるとはいえ、こういうだだっぴろい場所にいると、ぎろりと発見されてしまいそうで落ち着かない。
いつもならば率先して収穫してくれるみこりんだったが、さすがに今はとてもそういう気分ではないらしい。それでもどうにかハサミを手に、ちょっきんと西瓜を収穫してくれた。ずしっと重い西瓜をカゴに入れ、とっとと撤収しようと思ったのだが、ついついナスやらトマトやらに目が向いてしまった。明日は収穫には来られない可能性が高い。ならば今しかあるまい…、と、ハサミでちょきちょきやり始めたのはいいが、雨はますます激しく全身に打ち付けてくる。風も半端ではない。みこりんなどあっというまに飛ばされていってしまいそうだ。て…、撤収!
急いでクルマに戻る。もはや傘が傘としての用をなしていなかった。ずぶ濡れである。クルマに転がり込むようにして、ようやくひと心地。それも束の間、寒気がどどっとやってきた。エアコンの設定を真冬仕様に切り替えて、発進。雨雲からの退避を開始する。
猛烈な雨は、それから30分ほどして小降りへと…、夜半には、終息していた。
今回の西瓜は赤だった。待った甲斐のある出来栄えに、「あぁこれで元がとれた」と、ついうっかり思ってしまったことは言うまでもない。
2002.8.18(Sun)
名古屋港水族館にGO
夏休み第2弾も今日で終わり。最終日は、やはり水族館で締めることとなった。目指すは“名古屋港水族館”である。
前日の予定では、午前中には到着してイルカショーをゆったりと堪能し、展示水槽と売店に夕暮れまで浸りきる…ことになっていたのだが、目覚めればすでに時計は午前10時を回っていた。結局、家を出たのはお昼前、着いたのが本日3回目のイルカショー開始の10分前というありさま。お盆休み最終日ということもあってか、駐車場は満杯、臨時駐車場から寿司詰めのシャトルバスに揺られての到着だった。も、もしや魚よりもヒトばかりを見ることになってしまうのでは…という不安が沸き起こる。
館内の様子などは『お魚日記』に譲るとして、ここでは売店について書こうと思う。水族館とくれば、何はなくとも売店でTシャツ買うのが私の習性なのだが、さて今回はどうだったかというと…。1軒目では私の苦手とするところの“ほわほわ系”な可愛ゆいキャラに圧倒され、2軒目では、底知れぬ疲労感に取り憑かれていてTシャツを見るどころではなかったのだった。Licの話によれば、姉妹水族館から出品されていたTシャツにはなかなかよいものがあったらしい。
次回はきっとド平日に来てやると心に誓い、水族館を後にしたのだった。
2002.8.19(Mon)
ラジコンあれこれ
誕生日には「クルマのラジコンがほしい」というみこりんのために、私のお古を復活させる案も一時は候補に挙がっていた。田宮模型の本格派が、今でも実家の押入に眠ったままなのは、先月帰省した折りに確認済みである。しかし、二十数年前の品だけに、コントローラであるところのプロポはいかにもメカメカしく無骨で大きかった。昨今のトリガとホイールによるスマートなものではなく、スティックが2本立ったタイプだ。みこりんのちっこい手には余るだろう。
で結局、新品を買うことに決めた。お古はいずれみこりんがもっと大きくなったころに、持ち出してこようと思う。
まずは希望調査だ。スーパーのオモチャ売り場でみこりんに問う。「大きいのがいいの?それとも小さいの?」最近は手のひらサイズのちっこいラジコンカーが流行っているようだが、さて、みこりんはどちらを選ぶだろうか。すると即座に「おおきいのがいー」とのお返事が。大きいとはいってもオモチャ売り場に並んでいるものなので、最大でもせいぜい1/24サイズなのだが、みこりんにとっては十分大きく感じられるのだろう。
これで大まかな方向性は固まった。あとは車種と色の好みを把握できれば、何を買うべきかが定まる。てっとり早く、大きいサイズのものを1つ1つ手に取り「これは?」と総当たり。やがて1つの傾向が見えてきた。みこりんはどうやら“スカイラインGTR”、しかも“黄色”がお好みらしい。同じ“黄色”でも、ビートルやらS2000ではダメで、“スカイラインGTR”でなければならず、逆に“スカイラインGTR”でも、“青”や“黒”は却下なのだった。これだけ明確に定まると、もはや選択の余地はほとんどない。ここに並んだ候補の中では、みこりんの要求を満たすものは、2つしかなかった。
2つの違いは、重要なものだった。アクセルとステアリングの操縦方法が、一方はON/OFFのデジタル式スイッチ操作、もう一方がアナログ式可変操作だ。それに応じてコントローラも4ボタン式、トリガとホイールによるものとなっている。みこりんには4ボタン式の方が簡単そうに思えたが、微妙に車体の大きさで勝っていた後者の方を、最終候補に決めた。値段も倍近く違っていたのだが、手先の器用なみこりんならば無段階操作の可能な方が、操縦しやすかろうと思ったからだ。それに本人も「これがいー」と言っているし、なにより私でも楽しめそうなヤツにしておきたかった、というのもある。
みこりんの誕生日まであとわずか。それまでは何を買ったかみこりんには秘密だ。
2002.8.20(Tue)
ラジコンとみこりんと猫と
肌寒い。まるで夏が終わってしまったかのように、秋深し匂いが夜の空気に充ちている。もの悲しい…
さてさて、ラジコンである。くぃっとトリガを絞ると、「ぎゅるるるるる〜」とものすごい勢いでかっとんでいくみこりんのラジコン。前方の壁に激突し、派手な衝突音を響かせた。さすがに6V電池を食わせているだけのことはある。一歩間違うと哀しい事故も予想され、ここは慎重な運転が望まれるところだ。
車体は事前調査通り、“黄色”の“スカイラインGTR”。リアからの眺めが逞しくて素敵。
次にみこりんがコントローラを握る。操作方法は特に説明しなかった。みこりんは動かせそうなところを1つ1つ試してみては、学習しているようす。トリガがアクセルに相当するとわかると、そろぉっと前進。秒速1cmの超低速だ。さきほどの衝突がショックだったのだろう。
慣れてきたのか徐々に速度を上げてゆくみこりん。ステアリングとアクセルの同時操作はまだ無理らしい。いったん止まってから、ハンドル切って、そのまま前進という風にやっている。
そのうち赤いボタンに気が付いたらしい。ぽちっと押してみると…、ヘッドランプとテールランプが点灯した。「よるでもうんてんできるように?」と不思議がっていたが、部屋の灯りを消してみるとなかなかさまになっていて、みこりんも何やら納得していた。
ラジコンはみこりんにおおむね好評のようだった。
さて、みこりんがぐっすり寝静まったあとは、私の時間だ。クルマを床に置くと、にゃんちくんがじっとこちらを見つめているのに気が付いた。…にやり。
おもむろにスタートさせる。にゃんちくんは瞳を爛々と輝かせて、くるくると周囲を回転した。それにあわせてクルマを走らせていくと、やがて「ちょいっ」と繰り出されてくる猫パンチ。怖がるかと思ったのだが、にゃんちくんにとってはいい遊び相手ができたようだ。たぶんこれにネズミのぬいぐるみでも着せてやれば、猫パンチだけでは飽きたらず、かぶりついてきそうな予感もする。ぜひ試してみなければなるまい。
2002.8.21(Wed)
Operation Systemの謎
新聞などでは“基本ソフト”と訳されることの多い“OS”という言葉だが、これがいったい何の略語かといえば、“Operating System”… だろうとこれまでずっと思っていたし仕事でもそう使ってきたのだが、どうも“Operation System”と言ってる例もあるらしい。
“オペレーティング”と“オペレーション”それに“システム”をキーワードに、ちょいとサーチエンジンで調べてみると、ずらずらと出てくる出てくる。謎なのは、同じOSという用語について、同一ページ内で両方の言い方をしてる場合が結構あることだ。いったいどんな基準で使い分けているのやら。ただの誤記とか思い違いとは思えないほど、混在ぶりが堂々とし過ぎていて不気味ですらある。
英語圏ではどうかというと、ざくっと調べた限り混在してはいないように思える。ただ少数だが“Operation System”と記述してるページもあった。
ただの誤記か、思い違いか、あるいはそういう言い方が新設されたのか、はたまた昔から存在していたのか。気になるところである。
2002.8.22(Thr)
識別するもの
「住民票コード通知票」を返却するパフォーマンスが一部で流行っているようである。ところでこういう人達は、既存の住民基本台帳には反対していないらしい。情報が漏れる心配は同じなのに……、謎だ。11桁のコードはダメで、住所と指名ならOK…なのか、もしかして。
2002.8.23(Fri)
高架下にて
定刻に退社。建物を出ると、外は雨だった。朝方なんとなく空模様が怪しかったというのに、結局傘を持たずに来てしまったことを一瞬後悔したが、軽い降りなのでそのまま歩いてゆくことにした。門を出ればLicがクルマで迎えに来てくれているはず。その間300メートルほどを濡れて歩いたところでたいしたことではない。
門を出たところでクルマを探したが、まだ到着していないらしい。すぐそばの高架の下で待つことにした。頭上をはしっているのは片側2車線の国道だ。雨をしのぐには十分すぎる幅がある。
暗がりの中で、なんとなく上を見ていた。分厚い支柱に、これまたぶっとい鎖で道路部分が接続されているのが見える。1995年のあの震災後、全国で似たような改修工事が行われたと聞く。たしかにこの片側8本からなる極太鎖を引きちぎるのは容易なことではないだろう。でも、ついつい考えてしまうのだ。もし今この頭上にあるヤツが落下してきたらどこに逃げよう、と。
高架下からの脱出にはどんなにダッシュしても3秒はかかる。下手に動くと、胴体まっぷたつ、ってことも……。それよりはこの鉄骨の隙間に、すぽっとはまるような体勢をとった方が得策ではなかろうか。道路部を支える鉄骨の隙間は、2mはあるように見える。うまい具合にはまれば無傷で済みそうな…
とりとめもなくそんなことを考えてしまう、夏の夜の雨宿りだった。
2002.8.24(Sat)
アシナガバチの要塞
菜園1号で土いじりを楽しんでいたときのこと。高速な羽音とともに、飛来してきたものがいた。スズメバチだ。まっすぐこちら目がけて飛んでくるので一瞬ひやりとしたが、スズメバチの目標は、どうやら私の背後にあったらしい。
古びた90cm水槽の上には、錆びだらけのバーベキューグリルに、園芸用のカゴが少々積み上げてある。スズメバチは、バーベキューグリルとカゴの隙間付近で、滞空していた。なるほど、それが狙いか。じつはこのバーベキューグリル内部の空間には、フタモンアシナガバチが巣を構えているのだ。およそ直径15cmはあろうかという立派な巣ができあがっていたはず。これを襲いに来たのだろう。
しかしスズメバチはホバリングを続けるのみで、中へ入っていく素振りをみせない。そして1分後、スズメバチは去っていった。アシナガバチの巣は、危機を乗り切ったのだ。
なぜスズメバチが中の巣を襲わなかったのか。そっと覗いてみて気が付いた。スズメバチの体格では、このバーベキューグリルと上に乗ったカゴとの隙間は狭すぎて入れないに違いない。いいところに巣を構えたものである。去年まで、ずっとスズメバチに巣を襲われ続けたアシナガバチだったが、とうとうモノリスに触れた女王が出現したようだ。
みこりんがウッドデッキに出て来たので、おいでおいでと呼んでみた。この巣を見せてやらねばなるまい。
そぉっと中を覗き込むみこりん。ずらっと巣にとりついた蜂達と、目があったような感触。蜂は怖いらしいみこりんだったが、巣のロケーションが奇抜すぎて、好奇心が恐怖心に勝ってしまったようだ。まるで蜂に取り憑かれたように、ひたすらに見入っていた。
その時、再度襲来するスズメバチ。大急ぎで私の背後へと避難してくるみこりんは、そろっとスズメバチの様子を覗き見ているらしい。さっきと同じく、バーベキューグリルの手前でホバリングするスズメバチ。どこかに“穴”はないかと探っているのか、付近を舐めるようにゆるやかに移動してゆく。が、結局、“穴”は見つからなかったようだ。ほどなくして、スズメバチは去っていった。
みこりんが言う。「どうしてここに“す”があるの?」
裏庭の通り道に面したこの場所に、苦手な蜂の巣ができたことが不満らしい。おまけにスズメバチまでやってくるし。…そう、スズメバチだ。スズメバチがやって来たけど、どうなった?逆にみこりんに問い返す。「はいれんかった」そう呟くみこりんは、ここに巣がある意味を悟ったらしい。納得したような表情で巣を覗き込んでいる。でもやっぱり蜂に睨まれるのはいまいちなみこりんだった。
捕食者カマキリ
引き続き、菜園1号にて大根やらキャベツやらニンジンやらといった秋野菜の種播きをしていたときのこと。びびびびびびと、突然響き渡る激しい羽音と呻き声。蝉だ。桜の木方面から、それらの音は届いてくるようだった。
蜘蛛の巣にでもひっかかったのかと見に行ってみると、なんだか様子がおかしい。そこに蜘蛛の巣はなかった。でも、蝉は空中に静止したかのように止まっている。……「む!?」あまりに意表をついた状況だったので、そこにいたヤツに気付くまで、一瞬、間が必要だった。蝉は、カマキリに捕らえられていたのだ。
私同様、あやしげな物音に引かれてLicが庭に出てきていた。蝉がカマキリに捕まったと知って、たいそう驚いた様子。カマキリのひょろっとした姿に対して、寸胴の蝉はかなり場違いに映る。まさかそんなものを捕食するとは…。
この姿をぜひみこりんにも見せてやりたかったが、あいにく午後のお昼寝中。残念無念。みこりんはカマキリが獲物を捕らえ、むしゃむしゃと食べているさまをたぶん見たことがないはず。一度は見せておきたいものである。
それにしても蝉はかなり固そうなイメージなのだが、どうやって食べるのだろう。しばらく観察してみることにした。
まず最初にカマキリは、蝉の目玉付近にかぶりついていた。そこを重点的に攻め、ついに外骨格に穴を穿つことに成功。その後は、あっという間だった。穴を拡げ、中の肉をむさぼり食うカマキリ。とてつもない食欲だ。蝉は、おそらく明日の朝には羽だけとなってしまうのだろう。
カマキリの腹を満たすには、蝉ほどの肉が必要なのか。近頃、庭のバッタ達が一向に減らないのは、カマキリが大物指向になってしまったからではないか。ふとそんなことまで考えてしまった。オンブバッタだと、50匹くらいは捕らえないと蝉1匹分の肉には相当しそうにない…。
つい身を乗り出して見入ってしまっていたらしい。カマキリが食事を止め、“ぎろり”とこちらを見上げていた。いかんいかん。そろぉっと後ずさりでその場を後にする。まだ動いていた蝉が、ちょっと哀れでもあったが、これが自然の摂理。このカマキリも、明日には鳥の餌食になっているのかもしれないし。食い、食われて、一日が過ぎてゆく。
2002.8.25(Sun)
紫蘇の香り
切って干しておいたサボテンは、無事に根っこが生え始めていたので、本日朝、Licの手によりめでたく植木鉢へと復帰をはたした。これまでサボテンが乗っていた“ちゃぶ台”は、再びみこりんの“ままごと遊び”に使われることとなった。
お皿を並べ、材料を揃え、みこりんは一心不乱に何かを料理しているようす。やがて「みてみて」と私を呼んだ。ほほぉ、紫蘇を使った「ふりかけご飯…かな?」。はぐはぐと食べる真似をしてやると、みこりんはたいそうな喜びようであった。
さらなる食材を求めて、みこりんが花壇を物色している。紫蘇の群生を指差し、とってもいいかと聞くので許可してやった。またしても紫蘇だ。紫蘇が妙に気に入っているらしい。実際に食べられる葉っぱというのがポイント高いのかも。ぶっちぶちと葉っぱをちぎってゆくみこりん。あぁそれだけの量を天ぷらにすれば、さぞうまかろう…、という思いが一瞬よぎっていった。
今度の作品は紫蘇の葉っぱで巻いた“紫蘇寿司”とのことだった。緑の立方体が3つほどお皿に盛りつけられている。中身が“泥”でなければ、たしかにそのまま食べられそうな感じ。ふむふむと匂いを嗅いでみると、紫蘇の爽快な香りが鼻孔に拡がった。夏の匂いだ。昨日までの秋めいた肌寒さが嘘のような、夏らしい一日の始まりだった。
サツマイモと西瓜
午後から市民農園に出向く。秋野菜講習会を聴講したのち、収穫。先週は荒れ狂う空模様に追い返されてしまっていたので、ヘチマかと思うようなぶっといキュウリとか、大きくなりすぎて地面に着いてしまったナスとかがそこここに待ち受けていた。
さらに驚くべきことは、サツマイモの爆発的拡大だ。割り当て区画のおよそ1/4を、サツマイモの葉っぱで埋め尽くされている。その勢いに負けていないのが西瓜だった。サツマイモと西瓜だけで、半分の領域を占めているといっても過言ではない。しかも西瓜のツルには、みこりんが予想したとおり、ハンドボール大の実が再度すくすくと育ちつつあった。数えてみると4つもある。はたして本格的な秋がやってくるまえに、育ちきることができるだろうか。西瓜の表面をさわさわと撫でて気合いのほどを確かめてみると、なかなかよい手応えを感じた。なんと頼もしい。
ところでトマトは惨敗の気配濃厚。生命力の強いはずのトマトが、下の方から枯れ込みつつあり、実も色づいたまますかすかにしぼんでしまっていた。よっぽどこの場所が気に入らなかったとみえる。来年に向けて課題は多い。
2002.8.26(Mon)
ぶりかえす夏
風の止まった夜だった。夏の終焉が、突如延期になったかのような蒸し暑さに、にゃんちくんも茹だっている。猫が暑いなら人間も暑い。暗い階段を、ことりことりと下りてくる足音が1つ…
苦悶の表情を浮かべたみこりんが、やがてリビングへと現れたのだった。
しっとり、というよりは、べったりと表現した方がいいほどにパジャマが濡れている。もちろんこれは汗である。おねしょではない。さっそく着替えさせて、寝室のエアコンを作動させた。こうして外気温はさらに上昇し、夏の寿命も延びてゆくのかもしれん。
昨日は七夕飾りを天に返した。この辺りは星空がほとんど見えない。夏の大三角形が懐かしく思い出される今日この頃である。
2002.8.27(Tue)
現れた“にぃにぃ”
クルマの後部シートではチャイルドシートに包み込まれるようにして、みこりんが寝入っていた。時刻はおよそ22時、今夜もLicの運転で、助手席の私は眼精疲労した眼球を休ませていた。
いよいよ我が家へと到着するのがわかり、私は閉じていた瞼を開く。するとヘッドライトの光芒に照らされて、道の真ん中あたりに何かが落ちているのが見えた。
それが何なのか、私には心当たりがある。Licにも思うところがあったらしい。驚かさないように、そーっとそーっと…、ゆるやかにスピードを落とすクルマの前で、その物体の輪郭が徐々に明らかとなってきた。やはり「にぃにぃ」だ。手のひらサイズのちっこい仔猫が、ちょこんとセンターラインの上で座っていた。てっぺんに、ぴょこんと2つ乗っかっている大きな耳が印象的。
愛らしさ大爆発の“にぃにぃ”を初めて確認したのが、先日の日曜日のことだった。やはり家の隣の空き地に面した側溝で寝そべっていたのだが、最接近距離1mでダッシュされてしまい、表情をゆっくり堪能する隙も与えてはくれなかった。あぁその“にぃにぃ”が、今、その向こうにいる。クルマの鼻先で、きょとんとこちらを見上げるその仕草がたまらん。どうしてそんなにちっこいのか。まるで幻のように、“にぃにぃ”はそこにいた。
目があったような気がしたとき、“にぃにぃ”は突然向きを変え、暗がりの中へと駆け込んでいった。まだたどたどしい足取りで、転がるようにちょろちょろと。………はふぅ。
また“にぃにぃ”に会えるだろうか。我が家のにゃんちくんを差し置いて、不埒にもそんなことを考えている私がいる。ところで1つ心配なことがあった。“にぃにぃ”の母猫はいったいどうしているのだ。とても乳離れしてるとは思えないサイズの仔猫だというのに、付近に潜んでいる気配はなし。まぁ野生の猫のことだから、慎重に身を隠しているのかもしれないが、それにしても仔猫をフリーにし過ぎではなかろうか。道路で遊んじゃダメと、しっかり教えてやってないとあっという間に猫煎餅に…
猫のせいで庭を完璧にネットで囲ってしまわねばならなかった身としては、こうして猫が増えてゆくのは少々複雑な気分だが、今はただ“にぃにぃ”で癒されようと思う。大きく育てば、立場も変わる。それまでの数ヶ月は、じつに短い。
2002.8.28(Wed)
現れた秋の虫
洗濯機の上に置いてあった着替えに、なんだか黒っぽいものが這っていた。一瞬、あぶらぎったヤツかと身構えたが、どうもそうではないらしい。艶々の大きな目、そして長く伸びた産卵管、スモークのかかった長い羽…。そこにいたのはコオロギだった。
久しく家の中に入ってきたことはなかったが、そろそろそういう季節が巡ってきたということだろう。その割には今夜も熱帯夜で、じっとりと空気が淀んでいるが…
家の中に置いてやってもいいのだが、こんなところにいてはにゃんちくんの格好の遊び相手になってしまうことは必定。やはり外に出してやろう。そう思って捕まえようとしたのだが、これがなかなかうまくいかない。ぎゅっとやってしまってはコオロギが潰れるし、そっと掴もうとすると、手の動きまで緩慢になってコオロギの動きに付いていけず。それでもどうにかこうにか手のひらに包み込むことに成功した。そのまま玄関から、外にぽぃっ。
コオロギは、さささっと暗がりの中に消えていった。
2002.8.29(Thr)
床下に住み着いたもの達
みこりんが仕入れてきた情報によれば、保育園の遊戯室の床下に、アライグマが住み着いているらしい。しかも2匹。たしかにこの付近の野山にはアライグマが野生化していて、時々道ばたで冷たくなってる姿も見かけるので、保育園にいてもおかしくはない。今朝だって出勤途中の路上でタヌキが事故死していたところだ。アライグマやらタヌキやらキジやらには不足しない土地柄である。
ただ気になるのは、みこりんの目撃情報ではその動物は「ちゃいろだった」ということだ。……もしや住み着いているのはアライグマではなく、キツネ、だったりして。
2匹いるというのも気になるところだ。おそらく巣を構えているのだろう。しばらくすると、愛らしくもころころした子供達がわらわらと出てくるのかもしれない。うまく共存できればいいのだが、すぐ傍には養鶏場があったりするので、少々デンジャラス。しかも大人のアライグマは気性が激しく結構獰猛と聞く。ラスカルのイメージで子供達が接してしまうと、えらいことになりそうな…。最近の子供達はラスカル知らないから大丈夫か。
ブラウザ
“Netscapeブラウザ利用者、さらに減少”(ZDNet JAPAN 2002年8月29日)
Netscape利用者が3.4%、IE利用者が96%とか。やはり最初からついてくるブラウザってのは強いわな。素人さんがわざわざ自分でブラウザを入れ換えたりはしないだろうし。
それにしてもNetscapeとIE以外のブラウザ利用者が0.64%というのは多いんだか少ないんだか、微妙な数値だ。ちなみに我が家で使ってるブラウザは、Operaである。Ver6.05になってだいぶ安定してきた感じ。マウスジェスチャーでページ移動とかできるのがちょっとお気に入り(右クリックしたまま左方向にちょいとドラッグすれば前ページ、といった具合)。そろそろレジストしてもいいかな…と思いかけているところだ。できればOperaには細々とでもいいから潰れずに作り続けてほしい。
2002.8.30(Fri)
道ばたの出会い
道ばたに何か落ちていたので、咄嗟に視線を向けると、それは獣だった。こんなクルマがびゅんびゅん走ってるところで寝ているはずもなく、事故死した獣に違いあるまい。
毛皮の色と体格から、一瞬タヌキかと思いかけたのだが、その顔面を見て間違いに気が付いた。鼻筋にぴっと通った白いライン。「…ハクビシンだ」
こうして実物を見たのは初めてである(いやもしかすると、以前からタヌキの死体だと思っていた中にハクビシンが混じっていた可能性はあるが)。
昨日はタヌキ、今日はハクビシン、か。明日になったら、いったい何がいることやら。
2002.8.31(Sat)
下仁田葱と魚採り
市民公園にて。今回も着くなり、用水路チェック。先週は魚の姿は見られなかったが、今回は違った。みこりんがさっそくタモ網とプラケを取りにクルマに戻ってゆく。小さすぎて種類までは判別できないが、元気よく泳ぐ小魚の姿に、じわじわと秋の気配を感じつつ。
*
ざっくざっくとクワで畝に2つの溝を掘る。今回植えるのは下仁田葱である。庭の菜園だけでは苗が余ってしまったので、こちらにも植え付けておこうと思ったのだけれど、意外に本数が多い。およそ40〜50本はあるだろうか。畝1つを全て使い切りそうな予感。
それにしてもLicとみこりんはどこにいってしまったのだろう。最初に魚を発見した用水路付近で魚採りしていたはずなのに、さっぱり姿が見えず。声の1つも届いてこない。不安になったので、腰を上げ、ぐるっと周囲を見渡してみた。…ん〜、いない。
みこりんだけだったら用水路に落ちたとかいうアクシデントが考えられるが、Licも一緒だからたぶんそれはあるまい。もしかするとトイレかもしれないし。というわけで作業再開。下仁田葱苗を、適当な間隔で溝に並べ、根っこが隠れるように土をばさばさと重ねてゆく。腰を屈めて作業をしているので、だんだん筋肉がつりそうになってきた。いったん休憩。顔を上げ、青空を眺めつつ、ぐりっと首を回したところ、向こうの方でLicとみこりんの小さな姿を発見した。タモ網を手に、魚採りに興じているようだ。獲物を追って、どんどん移動していったらしい。どんな魚が採れているのか少々気になる。
やがてみこりんとLicが戻ってきた。獲物は3匹いた。あとモノアラガイやらカワニナと思われる貝の子供が6匹くらい。アメンボの赤ちゃんも、ついついとプラケの中を泳いでいる。魚はいずれも体長1cm以下というベビーサイズ。これまた将来が楽しみだ。
畑のものを収穫して、撤収。またしても茄子が山盛り採れてしまった。やはり漬け物にでもして保存するのがよさそう。キュウリも然り。西瓜は3玉が無事だった。でも生長速度が鈍化してきたような…。熟れ頃まであと2〜3週間。もつのか、ほんとうに。
廃盤とβ
『ブレードランナー』と『ライトスタッフ』のDVDを買った。いずれも期間限定特価1500円也。安かっただけでなく、『ブレードランナー』は廃盤が決定しているので、このチャンスを逃せば入手できなくなるおそれが非常に高い。保護は必然であった。『ライトスタッフ』の方も、なんとなく消えて無くなりそうな予感があったので同様に。1983年の作品だけに油断禁物だ。
じつは両作品ともに、学生時代にダビングしたビデオテープは持っている。が、そのテープというのがβなのだった。βの行く末も消滅ということが決定してしまった今、もはやβの資産はないものと思わねばなるまい。なにしろ我が家にはβのデッキが何年も前から不在なのだから。しかしこうして買い直しのきくやつはまだいい。心残りなのは、オリジナル作品やら友人が撮った8ミリ作品のコピーだ。それらのためだけに、新規にβのデッキを購入するというのも豪勢すぎるような気もするし悩ましいところだ。さて、なんとしよう。
どこかにβのデッキ落ちてないかな…
ところで、こういうのを見つけた。こんな使い方ができるらしい。たぶん30代の人には癖になっちゃいそうな人いるのではなかろうか(PCにサウンドボードとスピーカーがついてないと楽しさ半減だけど)。
ここも楽しい。
『ふたつでじゅうぶんですよ研究所』