2007.5.1(Tue)

雨の一日

 連休4日目。しかし、みこりんは今日明日とド平日のため、学校がある。寝過ごさないよう、念入りに目覚まし時計を二重系にしておいたのだが…、ふっと気がついたときには、家の中には私ひとりしかいなかった。

 午前10時過ぎ。外は、雨。しかも今日は燃えるゴミの日だ。
 昨日袋詰めした雑草の山は、およそ9袋にのぼる。雨でなければクルマに積み込んでラクできるところだが、雨ゆえに、すべて人力で行わねばならない。雨で濡れたゴミ袋には、いろいろとぬめっとした生物などがくっついているので、クルマに積むにはちょっと…
 なんて思いつつ、昨日袋を並べておいた庭の一角を見やると、あれだけひしめきあっていたゴミ袋の山が1つもないことに気づく。
 も、もしかして…
 テーブルの上に置かれたメモに、ここでようやく気がついた私。
 読んでみる。

 どうやら朝のゴミ出しは、Licがやってくれていたようだ。
 袋のあちこちから、枝などが突き出て持ちにくい上に、結構な重量があるにもかかわらず、この雨の中、1つ1つゴミ置き場まで往復して運んでくれたのか。ありがたや、ありがたや。
 そしてLicはかねてからの計画通り今日一日、羽を伸ばしに出かけた模様。雨なのが、ちょっと残念。

 というわけで、みこりんが学校から帰ってくるまで、ひとりだ。世間が平日な日に片付けておくべき作業は、いろいろあったが、とりあえず宅急便屋さんと、郵便局で用事を済ませてしまうことにする。宅急便屋さんに運んでもらうブツは、昨夜のうちに厳選しておいた中古のPCパーツ類。すでにメールによる査定は済んでいるので、あとは現物を送るだけとなっている。これで物置の荷物も、少しは減るので大助かり。しかも買い取ってくれるため懐にもちょこっとだけうれしい。とはいっても一番高値のついたCPU(Athlon XP 1600+)でも1500円なので、ほんとうにささやかなものなのだけど、燃えないゴミとして捨てるよりはなんぼかましだ。

 雨の激しさが増し、ざんざん降りの中、用事を済ませ、帰宅。
 本当は、物置で場所を無駄に消費している故障中のCRTモニタも郵便局で送ろうと思っていたのだが、メーカーに引き取ってもらうには事前に申し込みしておかないとダメだったりしたので、今回はやめておいた。それよりも、民間業者が“送料のみ個人負担で、タダで引き取ります”という商売の方が気にかかる。正規のルートを通せば4000円必要だが、送料のみならばおそらくこれよりは安価で済むだろう。
 …しかし、なにか引っかかるものを感じるので、もう少し調査が必要だ。

 *

 午後、みこりん帰宅。雨なので野菜苗が植えられないことに、ちょっとがっかり気味。
 昨日の陽気に比べると、まるで2月にでも戻ってしまったかと思うほどの肌寒さ。燃料の尽きたストーブ類を、生き返らせるべきかしばし迷う。みこりんとも話し合った結果、寒いのは服を余分に着込むことで耐えることとなった。みこりんも、なかなかしっかりしている。

 *

 夕食を2人で食べ、風呂にも入り、あとは寝るだけとなったみこりんが、「かーさんは、まだ戻ってこないの?」と、少し不安そうに言った。
 夕方、Licからメールで状況を聞いていたので、たぶんみこりんが起きている間には戻ってこないだろうということを話して聞かせると、何事か納得したのかおとなしく眠りについたのだった。

 *

 Lic帰還。
 お土産に持って帰ってきてくれたパン屋さんのおいしいパンを食べつつ、Licがさっき見てきたばかりの映画『バベル』について語るのを、聞き入る。あらすじを聞いた感じだと、私が大学時代にいろいろ試しに見た、イタリア映画やスペイン映画あたりの雰囲気と似たものを感じる。真夜中、部屋の灯りを落として、小さな14インチのブラウン管テレビで、ぼーっと布団にくるまりながら見ていると、だんだん頭の中がトリップしていきそうにな感じの…。

 でも一番ツボだったのは、Licが“ヨコーテ”と言ってたこと。私も一瞬、ヨコーテって何?と思ったのだが、状況からしてそれはきっと“コヨーテ”だろうと。
 たまーに、素でこのようにボケをかましてくれるところが、Licのコケティッシュな一面である。
 Licが楽しそうだと、私も楽しい。『バベル』は、あとでDVDが出たら借りてこようと思う。


2007.5.2(Wed)

カビ

 保有しているカセットテープやビデオテープに録音/録画したデータを、PCに取り込みデジタルデータとして永久保存するべく私のPCは組み立てられた。2002年11月のことだ。あれから4年と半年ほど過ぎ、CPU、マザーボード、メモリ、ビデオカード、LANカード、そしてハードディスクを新しいパーツに換装し、能力的にも別次元のマシンに変貌を遂げている(とはいえ現在のテクノロジーからすれば、それでもまだ旧式…)。しかしながらアナログデータとPCとのインタフェースに使用するDVコンバータ(カノープス製)とサウンドカード(オンキョー製)は昔のまま、今も現役で稼動中。特に故障もなく、優れたパーツである。

 アナログ→デジタルへの変換率は、ビデオテープで70%ほど、カセットテープで20%となっている。カセットテープの変換率が低いのは、テープ毎の事前の調整(左右のバランスやら最大音量やらetc...)に手間がかかるのと、録りっ放しに出来ず、ついついリアルタイムでヘッドフォン片手にチェックしてしまうからだった(曲の頭と終わりを覚えてないと、1曲ごとの切り出し時に困るから)。その点、ビデオテープの方は、わりとお手軽に録りっ放しにできることが多いので、かなりラク。でも、たまにビデオテープとデッキの相性が悪かったり、ノイズが乗ってしまったりすることもあり、そういうのは後回しになっていた。
 というわけで、昨夜からデッキと相性の悪いビデオテープのために、物置にしまい込んでいた旧デッキをPCの隣に持ち出してきて、接続。延々とデジタル化を行っているというわけである。ゴールデンウィークのような連続休暇だからこそ、この手の時間のかかる作業はやっておいてしまいたい。

 ハードディスクを大容量なものにしたおかげで、2時間テープでも20本以上は録りためできるようになったのは大きい。以前は80GBしか容量がなかったため、DVデータで記録すると、数本ごとにMPEG変換&DVD焼きが必要になり、勢いを削がれたものだが、もはやそのような心配は、ほぼ無用。連続してビデオテープを次々に取り込んでゆくのは、なかなか爽快である。
 テープが古いため、頻繁にヘッドのクリーニング作業は必要だったが、幸い再生途中でノイズが大量に発生したりするアクシデントも、ほとんどなく、変換作業は順調に進んでいた。ところが…

 みこりんの映像を記録した古いビデオテープの中に、カビが発生したものを3本ほど見つけてしまったのだった。
 ラベルには1997年頃の日付が書かれている。およそ10年前のブツだ。それより前のビデオテープも多々ある中、よりによってカビに侵食されているのは狙いすましたように、みこりんのテープに集中していた。…かなり脱力。

 少々のカビなら、テープの早送りと巻き戻しを繰り返すことでなんとかなるのだが、今回見つけたカビは、カセットの覗き窓一面に真っ白く広がっており、それをどうこうするにはテープクリーニングしか方法がないように思われた。
 昔はビデオテープのクリーナーというものがメーカーのカタログに載ってたりもしたけれど、最近はどうなのだろう。ビデオテープそのものがDVD系あるいはハードディスク系に駆逐されつつある今日この頃、果たして入手可能な品なのだろうか。少々不安な気持ちでネットを検索してみたところ、そのようなサービスを提供する業者が多数ヒットした。なるほど、同じような悩みを抱えた人達は、かなりいるということだろう。
 だいたい2時間テープで1本2千円というのが相場らしい。高いのか安いのか、なかなか微妙なラインである。

 しかしまぁ、バックアップのない1本きりのテープのことなので、カビ取りクリーニングにかけるしかないのも事実。信頼のおける業者選定がキモのようだ。
 現在、慎重に調査中。


2007.5.3(Thr)

水色の自転車

 昼食用のパスタが茹で上がるまであと3分という頃、みこりんが「トラックが来たよ!」と言って玄関方面へとダッシュで駆けていった。予定では今日の正午に、自転車が届くことになっていたが、今はその約5分前。なかなかいい仕事をする。

 それにしても、みこりんはどうやってトラックの到着を知ったのだろう。いまだ来訪を告げるインターホンも鳴っていないし、物音もそれとわかるようなものは聞こえてこないが…。みこりんが開けた玄関ドアの隙間から、私にもトラックの存在が確認できた。おそるべき子供の勘というやつだろうか。おにゅうの自転車の到着を、みこりんはずっと楽しみにしていた。それゆえに、全身のセンサーは鋭敏化されていたのかもしれない。

 やがて、がさごそと音がして、インターホンが鳴った。対応に出ようとして気がついたが、このままではパスタを茹で過ぎてしまうのではあるまいか。かといってここで火を止めるのもまずかろうし…。2秒ほど迷った結果、玄関でわくわくと自転車が運び込まれてきているのを見守っているみこりんを呼んだ。

 名残惜しそうにやってきたみこりんに、キッチンタイマーが鳴ったらコンロの火を止めるという重要な使命を与え、私は来客の応対のため玄関へ。自転車は、梱包材でミイラのようにぐるぐる巻きにされてそこにあった。
 受け取りは、ハンコだけでOKだったので、ものの数秒で終了してしまった。どうやら運んできたのは普通の宅配業者さんのようで、自転車の説明などは特になく。
 みこりんのもとへと戻って見ると、まだキッチンタイマーはカウントダウンを続けており、みこりんとタッチ交代しようとしたのだが、みこりんは与えられた重要な使命を最後まで全うしたのだった。さすが小学4年生は伊達じゃない。

 無事、茹で上がったパスタをザルにあげ、手早くフライパンのソースと絡めて完成。みこりんの後を追う。

 到着した自転車は24インチサイズなので、これまでみこりんが乗っていた自転車(保育園の頃に買ったやつ)に比べるとかなりでかい。みこりんに乗りこなせるのかちょっと不安に思うくらい、でかかった。でも、みこりんはさっそく乗ってみたいようなので、二人してぐるぐる巻きの梱包材を剥がしにかかる。徐々にそのボディをあらわし始めるおにゅうの自転車。

 色は、みこりんの大好きな水色。変速機は付いていない。メカよりも、色彩を選んだみこりんであった。
 さっそくサドルにまたがってみている。でも、ちょっと高いようだ。そこでサドル位置をもっとも低い状態にセットしてみた。今度はちゃんと両足のつま先が付いている。うん、これならいけそう。

 家の前の坂道を、みこりんとおにゅうの自転車が何往復かするのを、Licと見守る。
 まだちょっとふらついているようだ。自転車の形状が新しいので、体がその変化に慣れてないような感じ。両足がつくので、慣れてしまえば大丈夫のような気もするが、サイズが大きくなった分、重量も増えているため、取り回しにちょっと苦労しそうではある。

 自転車置き場も、これまでのガレージでは狭すぎて置けないため、玄関前へと移動。
 道路から門扉まで、2段の低い階段があり、しかも門は人間サイズ。自転車と共に通り抜けるには少々狭く、みこりんはかなりがんばって自転車を格納位置まで運ばねばならない。自転車ごと倒れるのではないかと心配な場面もあったが、なんとか踏みとどまり、格納完了。車体に付属している後輪のロックを自らの手でかけて、すべての作業を終了した。

 *

 この日、みこりんは5回ほど、自転車に乗り、付近を巡回したのだった。慣れるのも、時間の問題と思われる。


2007.5.4(Fri)

野菜苗、定植

 天候やらその他諸々の事情で、野菜苗は買った時の状態のまま庭に置いてあったが、今日、ようやく菜園の方に植え込むことになった。
 みこりんと共に、野菜苗の入った箱を手に、東側の菜園へと向かう。

 菜園といっても、3m×60cmほどのささやかなもの。でも、今年は買ってきた5本の苗以外には特に用意していないので、かえって広すぎてどこに植えてよいのかみこりんも見当がつかないらしい。
 苗は、トマト、ミニトマト、キュウリ、ナス、スイカである。この陣容だと、スイカを中央に、そしてキュウリを端っこのネット際にもってくることに気をつけておけば、あとは適当で問題なし。みこりんにそのように助言すると、意を決したように、まずトマトから順番に植え込みはじめたのだった。

 スコップで小さい穴を開け、ポリポット表面の土を片手で押さえたまま、くるっと逆さにして土ごと苗を抜き出し…。みこりんは小さい頃からこの手の作業をお手伝いしてくれていたので、手馴れたものだった。若干、ポリポットから抜けにくいやつがあったりしたが、その辺はちょっと私がポットをつまんでやって、あとはみこりんに任せておく。

 ほどなくして、野菜苗5本は、すべて菜園へとおさまった。

 あとは支柱を立てて、水をやり。無事に育ちますように。
 みこりん的には、スイカが一番気になるらしい。育て方を間違わなければ、たぶん1つか2つは収穫できそうだが、このあたりにはカラスがいるため油断できない。カラスのごっついクチバシは、スイカの皮なぞ容易に突き破ってしまうから…。なんてことをみこりんに話して聞かせると、みこりんは真剣な表情で、こう言った。

 「スイカだけ、ウッドデッキで育てたい」

 そうすれば、屋根があるため、カラスに食べられることはないのではないか。そう、みこりんは考えているようだ。たしかに一理ある。カラスに発見されなければ、スイカが食べられてしまうこともあるまい。でも…

 ウッドデッキには、ヤツが…、今も潜んでいるかもしれないのだ。みこりんは、ヤツのことをリスだと推測しているのだが、もしそうでなかった場合、もしかするとカラスよりやっかいかもしれず。なかなか悩ましいところである。というか、そもそもスイカをウッドデッキで育てるのは難しそうだから、たぶんみこりん案は採用できなさそうだけど。


2007.5.5(Sat)

くじ運

 午後、日本モンキーパークに出かけた。みこりん的には、催事館で開催中のポケモン関係のイベントに興味を惹かれていたようだが、やはり遊園地といえばジェットコースター。中でも、昨年来たときに故障中で乗れなかったやつ(オトナも楽しめる結構速いやつ)を、今度こそ制覇する気満々で、みこりんは駆けてゆく。
 こどもの日ということもあり、コースター乗り場はほどほどに行列が出来ていた。搭乗するLicとみこりんを見送った私は、近くのベンチに腰掛け、ケータイで今日の世界情勢などをチェックしていると、エキスポランドのジェットコースターで一人死亡のニュースが…。

 記事は速報だったので詳細は不明だが、走行中に人死にとは、えらく物騒な話である。みこりんとLicは大丈夫だろうか。気になり始めると、際限なく怖い想像になってしまいそうで、恐ろしい。

 やがて、みこりんが元気に駆け戻ってきた。かなり堪能したらしく、笑顔がはつらつとしている。無事でなにより。
 続けて水上を急降下するタイプの乗り物を所望したので、次は私が一緒に列に並んだ。こちらの待ち行列は、進行速度がかなりゆっくりで、やや暇を持て余し気味。そのうち園内にアナウンスが流れ始めた。曰く『ジェットコースターは緊急点検のため、ただいま使用できません』
 エキスポランドの死亡事故が影響しているのだろう。なんだか妙に事故が生々しく感じられて、「これは大丈夫なんだろうか?」と、落下してゆく乗り物を眺める。んー…、車輪で固定するタイプじゃないから、大丈夫かな。

 水上落下でスリルを味わったあとは、みこりんは一人でがんがん乗り物を制覇していった。今回、フリーパス券を腕に装着しているのはみこりんだけなので、私とLicは柵の外から見守るのみ。
 身長制限もオールクリアで、年齢制限も問題なし。みこりんは、もはや一人でも存分にマシンを楽しむ余裕があった。でも、ジェットコースターだけは、一人ではまだちょっと怖いらしく、またしてもLicを指名して列に並んでいた。今日2度目のジェットコースターに挑戦である(点検は終わったらしい)。

 *

 空が夕方頃からどんよりと灰色に変わり、いつ降ってきてもおかしくない状況だったが、みこりんの執念が雨雲に勝ったか、結局、2粒3粒、ぽつぽつと落下してきただけで終わった。
 いつもなら閉園は18時なのだが、連休ということもあり、今日はナイター営業で20時まで開いているらしい。夕闇が徐々に周りの輪郭を曖昧にしていき、遊具や街路樹に施された電飾が、ぴかぴかと輝きを増したように感じられる。
 夜の遊園地独特の、ちょっと異世界入ってる感じの雰囲気が心地よい。
 みこりんも怖くて乗れない、もう1本の絶叫系ジェットコースターが、闇に溶けるような勢いで虚空に伸びたレールの上を滑走してゆく。そのまま宇宙に向かって発射してしまいそうなシチュエーションだ。これはかなり怖そう。

 最後にスタンプラリー(みたいなもの)で、くじびき3回。がらがらと回すのは、みこりん。1発目でいきなりプール無料券を引き当てる。続いて2回目、今度は無料入場券を引き当てた。3回目はハズレ。あいかわらずくじ運の強いみこりんである。やはり宝くじはみこりんに買ってもらわなくてはなるまい。


2007.5.6(Sun)

きくのめさし

 昨夜は蒸し暑かったので、寝室の窓を全開にして寝てしまった。本格的に眠る前に、戸締りしておこうと思ったのだが、やはりそんな器用なことはできず。
 で、朝方、猛烈な雨音で起こされた。あやうく部屋の中までびしょ濡れになってしまうほどの、激しい雨。まさに連休の最終日を飾るにまったくふさわしくない、気分どよーんな天候である。

 みこりんは昨日モンキーパークで買ってもらったポケモンのポーチに、あれこれと秘密道具を詰め込んで、お友達に見せたがっていたのだが、この雨では出るに出られず、ぐだぐだと過ごす。
 気温も昨日までとはうってかわって、肌寒い。急激な温度変化に弱い私は、なにやら喉の奥がいがらっぽく感じて、真冬の半纏を着込み、リビングで長々と横になる。天気がこうだと、気分もどこかすっきりしない。

 *

 夕食後、Licとみこりんはそれぞれ2階の部屋に上がったまま、降りてこず。そーっと様子を見に行くと、Licは微熱でダウン中。みこりんは睡魔にやられて、こちらもダウン中。でも、明日から学校なので、風呂には入っておいたほうがいいんじゃないかと揺り起こして見たところ、みこりんがようやく目を覚ました。
 しかし、風呂に湯が満ちるまでに、またしても睡魔に襲われ、みこりんは結局、歯を磨いたところで気力が尽きたらしく、そのまま自室へと消えていったのだった。

 皆が寝静まった家の中で、ひとり洗い物などしていると、ふいに背後からみこりんの声が聞こえて、しこたま驚く。でも驚いた様子はかろうじて抑えることに成功した。
 「ど、どしたの?みこりん」そう言う私に、みこりんは魔法の呪文を唱えた。

 「きくのめさし」

 きくのめさし…。んー、いったいこれの意味するところは何だろうか。
 きくのめさし。きくのめさし。……

 しばらく謎の呪文を繰り返していると、ふいにひらめきが訪れた。
 それってもしかして「菊の芽挿し?」
 みこりんは大きくうなずいている。どうやら連絡帳のコメント欄に、先生からのお題に対して回答せねばならないらしく、休暇中のお題が“菊の芽挿し”なのだそうな。

 私は菊は育てたことはないが、“芽挿し”という言葉からなんとなく推測はできた。たぶん親株の新芽を切って、そいつを挿し穂にして殖やすんだろう。
 みこりんにそのことを説明するとき、“挿木”を例に出したら、すんなり理解してくれたようだ。

 明日は、地元の菊栽培のプロをお招きして、4年生全員で“菊の芽挿し”を実習するらしい。
 菊栽培か。奥が見えないくらい深そうで、これまで手は出してこなかったが…。ちょっとだけ世界を覗いて見るのも悪くないかな…、と思う夜のことであった。


2007.5.7(Mon)

飛び出してきたもの

 会社からの帰り道。19時半を過ぎているので辺りは闇に包まれており、田舎道ゆえ、街灯もほとんどない。クルマのヘッドライトだけが頼りである。

 ただこの時間帯は仕事帰りのクルマが比較的多いため、細い道路にもかかわらず交通量はぐんと跳ね上がる。真後ろについたクルマが適切な車間距離も空けずにぺったり張り付いてきたり、対向車のライトがやたらまぶしかったりと、かなりデンジャラス。
 しかし、この川沿いの道を途中で左折して対岸に渡れば、帰るべき団地はすぐそこにある。家に帰り着くまで、あとわずか。

 左折すべき小さな橋が肉眼でも確認できたと思った瞬間、ヘッドライトに照らし出される茶色の物体。対向車の背後から突然現れたそいつは、目の前を右から左へ、波打つように疾走していた。
 一瞬、イタチかと思ったが、あまりに毛がふさふさしすぎていることに違和感を覚えた。…というか、このままでは轢いてしまうんじゃないのか。な、なんとかせねば…

 ブレーキよりも先にハンドルを切っていた。大きく右へ。
 時速50km/h、秒速に換算すると約14m/s、つまり1秒で14m進む。ブレーキペダルを踏み込むのと、ハンドル切るのと、どっちのほうがより早く反応できるのか。…なんとなくブレーキのような気もするが、咄嗟にハンドル切るのは私の癖らしい。

 眼前を駆け抜けていった生物の姿は、途中でクルマの死角に入ったが、恐れていたタイヤへの衝撃はなかった。
 どうやら轢かずに済んだようだ。そのまま左折して橋を渡り、団地へと。呼吸を忘れていたような気がして、ふぅっと息を吐き、大きく深呼吸する。
 …やっぱり、あれ、イタチじゃなくて、テンだったかもしれない。そんなことを思いつつ。


2007.5.8(Tue)

出現したもの

 みこりんも寝静まった夜のこと、リビングの隣にある和室の暗がりの中に、にゃんちくんがひっそりとたたずんでいた。襖の隙間から見える、座敷の様子がとても気になるらしく、ときどきじっとそちらを覗き込んだりもしていたのだが、やがて何かにじゃれつきはじめたのに気がついた。いったい何にじゃれついているのだろうか。置きっぱなしになっているみこりんの工作セットの中から、何か面白いものでも見つけたのか?
 私は、にゃんちくんが猫パンチを繰り出しているモノに瞳の焦点を合わせてゆく。明かりが足りないので、いまひとつはっきりとしないのだが……

 しゅるるるっ

 と、そいつが畳の上を移動したような気がして、脳裏にある生物のイメージが湧きあがる。…む、むかでざうるす。
 捕獲用のビニール袋を取りに行っている時間はなさそうだ。見失ったが最後、恐怖の夜を過ごさねばならなくなる。私は手近にあったティッシュの箱をつかむと、にゃんちくんのもとへとダッシュする。

 畳の上に、みこりんの工作セットがそのままになっており、にゃんちくんがじゃれついていた生物は、すでに姿を消していた。
 だがしかし、ここに隠れているのは間違いない。そろりと手を伸ばし、工作セットを持ち上げてみると…、やつがいた。うねうねと体をくねらせ躍り出てくるムカデザウルス。
 いや、まだザウルスというにはちょっと小さい。長さにして10cmちょいといったところ。このくらいならティッシュでつまんでも大丈夫。

 にゃんちくんがじっと見守る中、私はティッシュ3枚重ねでムカデを捕獲し、部屋をあとにする。にゃんちくんはついてくることなく、ただそこに座って私の方を見つめていた。

 今年になって初めて家の中に出現したムカデ。まだ5月になったばかりだというのに、妙に早いのが気にかかる。やはり庭の雑草を整理するのが遅れたからかもしれない。
 梅雨…、ムカデザウルスが大量に出現しそうな、いやな予感。


2007.5.9(Wed)

LAME

 私の場合、音楽CDからリッピングしたデータは、そのままWAVEデータとして保存しているので、MP3エンコーダの出番はほとんどない。iPod等の音楽プレーヤーを持ってないこともあり、MP3変換でサイズ縮小を考えなければならないほど、昨今のハードディスク事情(容量)が悪くないというのもある。
 でも、ふっと気になったのでLAME公式サイト)をダウンロードしてみた。ヴァージョン3.97(2006-09-24)の品だ。配布されているのはソースファイルだけだが、各種コンパイラ用のドキュメントが同封されているので自分で実行ファイルを作成することはできる。

 VisualStudio用のソリューションが同梱されていたので、今回はそいつを活用させてもらうことにして、VisualStudio2005.NETにてビルドしてみた。ワーニングがちょろちょろと出てくるが気にせず、完了を待つ。

 ほどなく、ビルド終了。outputディレクトリ内に作成された実行ファイル(lame.exeとlame_enc.dll)が、行儀良く並んでいる。
 これだけでもコマンドラインから実行すれば使えるが、便利なフロントエンドも使ってみようというわけで、Lame Ivy Frontend Encoder(ver.2.97)をダウンロード。解凍して、ヘルプファイルを読みながら各種設定を行い、試しに1曲、MP3に変換させてみることにした。ちなみに最低ビットレートを128kbps、最高ビットレートを256kbpsにしたので、かなりの高音質が期待できる。

 変換完了。早い。数秒で終わった。昔の200MHzとかのCPUを搭載したマシンでMP3変換したら、アルバム全部変換終わるまで数時間かかっていたのが幻だったのかと思わせるほどの、高速さだ。
 PCのオーディオ出力をちゃんとしたアンプに接続し、ちゃんとしたスピーカーでオリジナルのWAVEデータのと、MP3変換したものと、聞き比べ。

 …………

 「みこりん、どっちの音がよかったと思う?」
 耳が良いと音楽教室の先生に太鼓判を押されているみこりんに、まず感想を聞いてみる。するとみこりんは言った。「あとの方が、迫力があるように聞こえた」
 あとの方とは、つまりMP3変換した音楽データの方だ。そう言われてみると、気持ち少しだけ臨場感が増してる?ような…。でも私の耳には、どっちもほとんど変わらないような気はするんだけど。

 LAMEの設定で“心理音響モデル”を有効にしていたのが、もしかするとこれのせいで“迫力があるように”聞こえるのかもしれない。
 というわけで、本日の実験終了。


2007.5.10(Thr)

C#と.NET

 普段仕事で使うプログラミング言語は、ほぼC++なので、その他の言語を使う機会はほとんどない。作ったプログラムには保守(バグつぶしや機能向上)がつきもので、しかも保守する要員が、作った本人でないことは普通にある。だから一般的ではない言語を使ってしまうとあとで困ったことになってしまうのだった。
 だから一貫してC/C++に特化し、他の言語が華々しく登場しても「ふーん」てな感じでスルーしてしまうこと多し。特にC#が発表された当時は、「なんかJavaの亜種が出た」みたいな感想した持っていなかったのだが、あれから数年が経ち、.NETも3.0になったので、そろそろ手を出して見ても面白いんじゃないか、と。

 まずC#の文法や作法などについて、Webサイトで勉強してみた。「DelphiをC++風味にしたようだ」という意見がどこかに載っていたが、C#の開発には元Borland社でDelphiと、そのコンポーネントであるVCL(Visual Component Library)の開発者として知られる、あのAnders Hejlsberg(アンダース・ハイルズバーグ)氏が関わっているのだから、ある意味当然かもしれない。VCLはDelphiで書かれており、それを利用するBorland社のC++開発環境であるC++BuilderはC++言語でありながら、プロパティ等の拡張がほどこされており、そのあたりの勘所がC#に非常に似ている。しかもC++時代に、あぁこういう機能があったらなぁ…、と思ってた部分(スタティッククラスとか、インタフェースとか)がいい感じに取り込まれていて、じつに自然。

 次に.NETの機能をヘルプのリファレンスで熟読。.NETにも、先に挙げたAnders Hejlsberg氏が関与しているとされる。そのせいかどうか、クラス構造がVCLとかなり似ている。文字列クラスのメソッドの名前とか見ていると、VCLのリファレンスかと錯覚を覚えるほどだ。たぶんBorlandのVCLで開発したことがある人だと、.NETはものすごく理解しやすいかもしれない。

 Anders Hejlsberg氏がMicrosoft社に引き抜かれてから、VCLは.NETとして昇華を果たしたのかな、などと思う。これはかなり使えそうだ。
 ところでVCLの中にあってもっとも利用価値の高かったTStringListクラスが、.NETの中に見当たらないような気がする…。ここだけちょっと心配。


2007.5.11(Fri)

お留守番のみこりん

 今宵はLicの職場で新人歓迎会がある。これまでこの手の宴会には、ほとんどみこりんは同席していたので、今回もすっかり行く気満々だったみこりんだが、直前になって自分の席がないことが分かり、かなり落ち込んでいる、らしい。そういうLicからのメールを受け取っていたので、今日は定時でとっとと帰る。

 帰宅して見ると、たしかにみこりんは、どよーんと顔の表情に斜線で陰ができているような感じだった。
 Licが用意しておいてくれた夕食のハヤシライスを食べてる時も、「かーさんと一緒に食べたかった…」と、残念そうなみこりん。だがしかし、食事も終わって風呂の準備を始める頃には、みこりんの機嫌もかなり回復してきた模様。自分からいろいろと今日あった出来事を私に話して聞かせてくれるようになった。

 もうじき保育園児との交流会があるので、それ用に畑の畝を作ったこととか(サツマイモを植えるらしい)。畝作ってる時に、ミミズやクワガタが出てきたこととか。
 一対の顎を持つ甲虫は、みこりん達の間ではどんなものでも“クワガタ”になるらしい。たとえそいつがただのゴミムシであろうとも。

 ベッドに入る頃には、いつものみこりんに戻っていた。

 だいぶ感情を理性でコントロールできるようになったみたい。さすが小学4年生は伊達じゃない。


2007.5.12(Sat)

TMPGEnc4.0XPress試用中

 古いビデオテープからPCのDVコンバータ経由で行っているデジタル化は、いまだ継続中。ところでこれまでは取り込んだ動画データをMPEG2に変換するのに、AVI(DV type-2)データ→AviUtilで編集&インターレース解除→プロジェクトファイルを保存→TMPGEnc2.5PlusでAviUtlのプロジェクトファイルを読み込みMPEG2変換、という手順でずーっとやってきた。インターレース解除はAviUtlの自動化におまかせ。
 これで特に不自由はなかったのだけれど、TMPGEnc4.0XPressをちょっと試してみるかなと思って(エンコーダの性能が上がってるとかいう話もありやなしや)、試用中。

 ユーザインタフェースがえらくキレイになってて驚く。でもそのかわり、設定項目のマニアックさが少々薄れているような。しかもAviUtlのプロジェクトファイルを読み込ませようとすると、“動作保証できません云々”とメッセージが出てくる。なんだかとても不安。でも一応読むことは出来る。
 とりあえずAviUtlとの連携は後回しにして、TMPGEnc単体でのMPEG2変換を試すために、いろいろいじっていると、どうやら近頃のビデオカードはハードウェアでインターレース解除をやっちゃってくれてることに今更ながら気付く。いやはや、このPCのビデオカードはちょっとまえまでGeForce4シリーズだったので、そんな便利な世の中になっていたとは思いもよらず。うーん、たしかにこれなら無理にインターレース解除はやらない方が時間も短縮できるし、オリジナルの映像をできるだけそのままに残すという思想にも共感できる(とはいってもDV type-2のオリジナル映像はサイズが莫大なので、何らかの手段で圧縮はしなければいけないのだけど)。インターレース解除は下手に変換してしまうと、あとで二度と元に戻らなくなるからなぁ。

 ところがインターレース解除をしなかった場合のMPEG2データを、PowerDVDで再生するとキレイにインターレース解除してくれるのだが、WindowsMediaPlayerだと縞が残ったまま見えることが判明。…うーん。
 なにか設定が必要なのだろうと探っていると、DirectShowフィルタの優先順位とか、ビデオオーバーレイの設定とかが、あやしいらしい。もうしばらく調整の日々は続きそうである。


2007.5.13(Sun)

図書館にて

 みこりんは読書好きである。みこりんだけでなく、クラスの結構な人数が学校の図書室を活発に利用しているらしい。良いことだが、その分、競争率が激しく借りたい本がなかなか借りられないという事態になってるようで、みこりんは市の図書館にも行ってみたいらしい。私もたまたま買うまでもなく借りて読んでみたい本の候補があったので、夕方、みこりんと共に図書館へとお出かけ。

 この図書館は、みこりんが保育園な頃にできた、比較的新しい施設である。今では蔵書もそれなりに蓄積され、どこからみても立派な図書館に成長した。
 独特の静寂感に包まれた広大な空間。最初みこりんはそれにびびって、私のそばを離れなかった。でも、児童書のコーナーに入るなり、目つきが変わった。真剣そのものである。ここはみこりんに任せ、私は自分の借りたい本があると思しきコーナーへと向かった。

 日本の小説の棚を、作家順に“あ”から“わ”まで、順繰りにサーチしてゆく。作家名は分かっているので、ダイレクトにそこに向かってもよかったのだけれど、やっぱり掘り出し物とか偶然の出会いなんかを期待して、ちょっと寄り道。

 最後の“わ”のところで、お目当ての作家の名前を背表紙に発見したものの、それは借りたい本ではなかった。やはり新作ということもあり、競争率は高いのだろう。まぁしかし、コミックのようにあっさり絶版になったりすることもないだろうから、安心して待っていられるのは心強い。
 さて、そろそろみこりんは借りたい本が決まったかな?児童書コーナーへと戻ってゆくと…

 とある本棚の前で、みこりんはおおいに悩んでいた。一人5冊まで借りられるし、私のカードも使うと都合10冊までOKなので、どんどん借りていいんだよとアドバイスしたものの、みこりんは安易な妥協は許せないらしい。徹底的に厳選するつもりのようだ。
 みこりんが釘付けになっている棚は、ハンディキャップを持った人のドキュメンタリーとか、戦争時の体験を綴った物語などがメインだった。みこりんはこういう系統のお話が、とてもとても好きなのだった(あと医療関係のドキュメンタリーとかも)。
 まだまだ決まりそうになかったので、再度、私は日本作家のコーナーへと戻り、『新宿鮫』シリーズなどをつらつらと手にとって見たり。何巻まで読んだっけかな…、かなり記憶が曖昧。

 そんなことをやってるうちに、突如、館内放送が静寂を破る。
 その放送によれば、閉館まであと30分らしい。おぉぉ、急がねば。
 児童書コーナーに様子を見に行ってみると、みこりんが3冊ほど本を抱えて立っているのが確認できた。みこりんも先ほどの放送の意味するところはわかっているので、決断したらしい。
 貸し出しの手続きは、カードと本のバーコードを読み取るだけでOK。じつにあっけない。
 返却日は、6月3日。予想よりかなり先だった。みこりんちょっと残念そう。もっと短いと思ってたようで、それで3冊に抑えたらしい。ま、読み終わったら、また借りに来ようね、みこりん。


2007.5.14(Mon)

『みんなのうた ベスト・アルバム』

 みこりんのベッドサイドに置かれた目覚まし時計兼CDプレーヤーは、もはやみこりんの必需品となっていた。眠るまでお気に入りのCDをスリープモードで再生し、音楽と共に夢の中へと旅立ってゆくのだ。一人で眠ることができるようになったとはいえ、まだまだ心細いことに変わりはないようで、そんな時に音楽はみこりんの心の強い支えになっているのだろう。

 そんなみこりんに、以前、CDで聞けるようにしてとお願いされていた私の古い(19年前の)カセットテープ『みんなのうた ベスト・アルバム』は、PCのハードディスク内にデジタルデータとして格納は終わっていたものの、焼くべきCD-Rを切らしてしまっていて、なかなかCD化できずにいた。DVD-Rならいくらでも余っているのだが、近頃CD-Rの使いどころは滅多にないため、買ってこなくてはならない。その機会を逃し続けて4月が終わり、5月も中旬になった昨日、ようやくゲットすることに成功したのであった。
 たまたま行きつけの家電量販店が新装オープンセールをやっていたということもあり、太陽誘電製のCD-RとDVD-Rを比較的安く買うことが出来たのは幸いである。

 そしてさっそくCD-Rに、音楽CDとして『みんなのうた ベスト・アルバム』を書き込み保存。みこりんはカセットテープのA面とB面がCD一枚に全部入ってしまったことに驚いていたようだが、もともとCDからカセットテープに録音したものなので不思議ではない。「みこりんの好きな曲だけを集めたオリジナルCDも作れるんだよ」と言ったら、瞳を輝かせていたので、いずれ何か依頼されそうな気がする。

 今夜もみこりんは『みんなのうた ベスト・アルバム』を聞きながら、眠りにつく。
 よい夢が見られますように。


2007.5.15(Tue)

春の毛虫

 朝方、みこりんが庭の花桃の木に毛虫がいると教えてくれていたのだが、朝はなにかと慌しくじっくり観察する間もなく仕事に出かけた。

 そして夕方、ちょい早めに帰宅。みこりんはすでに戻ってきており、自転車でその辺を周回中。
 私は、花桃の木をじっと見つめてみた。地上部分を下から上まで、ずずずぃっと。
 木の先端部分が、2階に引き込んである電話線やら光ケーブル等にぎりぎりで接触するかしないかといった高さにまで育っている。12年前、わずか10cm足らずの苗を植えた時には、まさかここまで大きく育つとは想像してなかったのでちょっとびっくり。ほうき性花桃なので、やはり普通の桃よりも上へ上へと育つ性質があるようだ。

 ところで毛虫だが…、じっくり幹を舐める様に観察したものの、発見できなかった。
 痕跡はあった。まだ毛虫が1cmくらいのサイズで、わらわらと綿のような蜘蛛の巣状のコロニー内で暮らしていた痕跡だ。しかし、そこには今、脱皮した抜け殻しか残っていない。ここで一回り大きくなった毛虫達は、さらに幹の上の方を目指し、やはりそこで集団生活を行い、2回目の集団脱皮を行ったらしい。…しかし、痕跡はそこでぷつりと途切れていた。例年ならば、大量に葉を食われて容易にその存在を確認できるというのに、今年は葉っぱもほとんど異常なく、毛虫達の移動先を突き止めるのは、不可能かもしれない。

 途中、でっぷり太った蛍光ブルーとオレンジのラインが混ざったような巨大毛虫を2匹ほど見かけたが、ひょっとすると生き残りはこれだけなんだろうか。いつぞやはこのでかい花桃の葉を、ほとんど食い尽くされたりもしたものだが…

 みこりんが巡回から戻ってきたので、毛虫のことについて聞いてみた。
 「朝、みこりんが教えてくれた毛虫って、これ?」
 私は幹にびたっと張り付いているでっかいやつを指差すと、みこりんは抱っこをせがんだので、抱っこして毛虫の近くまで寄せてみる。あんまり接近させすぎるとみこりんがパニックになるので、ほどほどの距離で。
 すると、これに間違いないと、みこりんは言った。
 ふむ…。やはり今年は毛虫の生存率が極端に悪かったとみえる。何か肉食の生物が増えたか、あるいは…、異常気象のせいか。なにやら釈然としないものを感じつつも、わらわら状態の毛虫に立ち向かうことなく春が終わろうとしていることに、少々安堵するのであった。


2007.5.18(Fri)

みこりんの疑問

 人は死ぬと、どこへ行くのか。
 もちろん肉体が、ではなく、精神(意識)が、である。
 これが私に向けて発せられた、みこりん最大の疑問。

 天国やら地獄やらといった答えを求めているのではない。ちょっとまえなら、その程度の回答で満足していたみこりんだが、小学4年生になった今、そんな型通りの答えでは許されない。

 難解也。

 だいたい人の精神活動そのものが、脳細胞という物理的な媒体を用いているらしいことは分かっているが、では、死んだあと、脳細胞がない状態で、人の意識はどうなってしまうのか。というかそもそも自我は、なぜゆえに存在するのか。存在できるのか。脳細胞のネットワークは何らかの役割を果たしているとして、本当にそれだけなのだろうか。まだ観測できていないだけで、未知の“何か”が関与している可能性は?

 さらに、みこりんが問う。
 今、自分がこうしてあるのは、本当に自分の意思なのだろうか、と。
 もしかすると、自分は誰かに操られているのではないか。
 誰かがプログラムしたとおりに動かされているだけなのではないのか。
 そこには自我は存在せず、あるのはただ見えざる“神の意思”のみ。

 難解也。

 私は、みこりんに言う。
 この世界は、もしかすると誰かの夢の中の出来事なのかもしれないよ、と。
 そろそろ、『ビューティフル・ドリーマー』を、みこりんと共に見るべきなのかもしれない。


2007.5.25(Fri)

グレード試験

 エレクトーンのグレード試験をみこりんが受けたのは、先月の29日のこと。みこりん的にも、私的にも、結果はとても気になっていた。ここで取り逃すと来月に再試験があるらしいという情報はあるものの、来月は発表会とかぶっているため、練習もままならないことになってしまう。願わくば、一発合格を期待したいところ。

 その結果通知は、昨日の音楽教室にて手渡されていたらしい。しかし、みこりんは封を切って中を覗くのが、ちょっと怖かった。
 だから一晩寝て、心の準備を整えた。

 朝食を終えたみこりんは、おごそかに結果通知の入った封筒を開け、通知書を見る。緊張の一瞬だ。

 受かったのか。落ちたのか。みこりんの表情は、微妙にどっちともとれるような感じだったが、やがて、やや控えめに笑顔を見せると、「受かった」と言った。

 おめでとう、みこりん。
 祝、7級合格。
 評価の方を見てみると、初見演奏の評価がいまひとつだったのに対して、残りの自由曲演奏、即興演奏、聴奏は、おおむね良好。みこりんは評価Aの項目が少ないことを気にしていたが、私には十分に思える。むしろ自由曲は当日までかなり冷や冷やものだったことを考えると、評価Aが自由曲の項目に並んでいることのほうが不思議。やはり本番には妙に強いみこりんであった。

 *

 グレード試験のサイトでは、当日試験を受けたお友達の状況も確認することが出来る。みこりんは、保育園な頃から一緒のクラスでやってきた二人のお友達の事が気になっていた。
 サイトにて登録ナンバーを入力し、試験会場を選ぶと、ずらずらっと合格者の名前一覧が表示される。果たしてお友達は受かっているのだろうか。

 ほどなく一人、発見。ほっと安心のみこりん。
 でも、もう一人の名前がどうしても見つからない。
 もしかすると、来月に実施されるという試験に賭けているのかもしれない。そう言ってみたものの、みこりんの表情は、晴れることはなかった。


2007.5.26(Sat)

新しいみこりんの家具

 みこりんが「もう少し広い部屋がいい」と、突然言い始めたのが昨夜のこと。こういう時のみこりんには、真の考えが別にあることが多い。それがわかっているので、その本心をいかに引き出すことができるかという、一種のゲームのような会話になってゆく。
 今回は、最近キャパシティオーバーしつつある学研だのチャレンジだの小学4年生だのといった雑誌類に付随する付録の数々を、いかに片付けるかというのが隠された真のテーマらしいことがわかるまでに十数分を要してしまった。つまり、みこりんは新しい家具が欲しいのだ。

 しかし、「家具売り場にでも見に行ってみる?」という私の提案に、みこりんはあまり乗り気ではない。どうやら心に決めたモノがあるようだ。
 みこりんはちょっと恥ずかしそうに「座敷にある、とーさんのビデオラックが使えそうだと思う」と言った。…なるほど、あのビデオラックか。4列3行で計12個の個別収納領域を持ち、しかも足にはキャスターが付いていて移動もらくらく。天板もスチール製でわりと頑丈な造りになっているため、適当な椅子に座れば簡易机にもなってしまう優れもの。
 ビデオラックの中に収めてあったビデオテープは、どんどんPCに録画中なのでいずれこのラックは不要になる。その時期が今日になったところで、さして問題はない。
 というわけで、午前中、みこりんと二人してぞーきんで綺麗に拭き拭き。色は半艶消しのブラック。汚れが落ちると、なかなかしゃきっとして凛々しい。うん、これなら家具としても十分使えそうだ。

 さっぱりしたところで、階段を上り、みこりん部屋に設置。あとの細かい位置の微調整やら収納作業は、みこりんの楽しみの1つなので取っておいてやった。
 午前中から午後にかけて、みこりんは部屋の中であれこれと模様替えの真っ最中。自分の部屋を持つと、この模様替えというのは、いかにも自分の城を作り上げているようで楽しかった思い出が、私にもある。ずいぶん遠い記憶なので、すっかり記憶の輪郭はあいまいになってしまっているが…。

 夕方、みこりんは配置の変わった自分の部屋を私に公開してくれたのだった。
 ビデオラックの12個ある引出しのそれぞれにラベルが書き込まれており、整理整頓は問題なし。むしろ空きスペースをどう有効活用するかが今後の課題とも言える。じつはこのビデオラックはまだ2個残っているので、みこりんがそう望むならさらに運び入れることも吝かではない。
 みこりんは、ビデオラックと洋服ダンスとベッドで囲むように、わずかな隠れ家を作り上げていた。小さい頃からみこりんは、こうした狭い場所を囲って中でお店屋さんごっこをするのが、ことのほか好きだった。あの頃の記憶は、いまもどこかで生き残っているのかもしれない。

 1つ問題があるとすれば…、この美しい調和があと何日続くだろうか?ということだが、案外もちそうな予感。


2007.5.27(Sun)

図書館にて その2

 返却期限にはまだ1週間ほど余裕があった。でも、みこりんは図書館で借りた本をすべて読破してしまっていたので、再び図書館へと出向くことにする。返却と、新しく本を借りるために。

 返却の手続きは、あっけなかった。返却受付で、借りてきた本を手渡すだけでOKとなる。貸し出しリストとの突合せは、あとでまとめてやってしまうのだろうか。そのへんがちょっと謎だが、さっそくみこりんは児童書コーナーへ、私は日本の小説コーナーへと向かった。

 私が借りたい『わ』で始まる作者の本は、相変わらず貸し出し中のまま。仕方がないので、他の棚を順に巡って、ピンとくる本をつらつらと探してゆく。

 で、結局、収穫物は『Project SEVEN』(著 七瀬晶)と、『天狗』(著 成定春彦)の2冊のみ。他にもシリーズものでちょっと気になる作品もあったりしたが、ちょうど1巻が借りられていたりしたので、このへんに抑えておく。

 みこりんは、今回は一気に5冊選び出していた。妖怪モノ、戦争モノ、ドキュメンタリーモノ、救急医療モノなど。みこりんの趣味を見事に押さえた布陣である。

 午後4時半。
 今回は、閉館のアナウンスはなかった。よくよく館内情報を見てみると、通常の閉館時間は午後5時のようだ。つまり、前回がイレギュラーだったらしい。でも、4時半閉館のつもりで行動したため、余った30分、やることがない。みこりんに「本でも読んでいく?」と聞いてみれば、「喉が渇いたで、コンビニに寄って欲しい」と言った。
 撤収だ。

 *

 寝るまでのわずかな時間に、みこりんすでに1冊を読破。2冊目も、半分ほど読んでしまったらしい。あいかわらず読むのが早いみこりんであった。


2007.5.29(Tue)

オリジナル技法

 図工の授業で、“きらきら光るもので表現する絵”というお題のもと、みこりんが書いたのは雪景色だという。自分の宝物としてこれまで保管していた、きらきら系のビーズやら石のかけらなどを総動員して、表現してみたらしい。かなり自信があるのか、工夫した点などを得意気に私に話して聞かせてくれる。

 例えばきらきら光る素材で出来たモールの、毛の部分のみをハサミで切って、その粉を画用紙に散らして幻想的な雰囲気を出した技などは、たしかにみこりんオリジナルと呼んでもいいくらいの工夫と発想だと思われる。しかし、みこりんはその技法をクラスメート数名にさくっと真似されてしまったのが、悔しいらしい。
 先生は、「人の良いところはどんどん盗みましょう」と言ったらしいのだけれど、真似する側の子から「それとてもキレイだから、私にも真似させてね」という一言があれば、こんなぎすぎすした雰囲気にはならないんじゃないかなと思う。先生の言った“盗む”の意味が、“使わせてもらう”っていう感じのニュアンスよりも、言葉本来の“パクリ”という意味として子供達に解釈されてしまってるのが、ちょっと残念。


2007.5.30(Wed)

おしゃれモード

 慌しい朝、出勤までの残り時間は逼迫していたのだが、みこりんの髪はやや爆発気味。みこりんは洗面台の大きな鏡の前で、ブラシを操り、爆発をなだめすかしていたのだけれど、時間切れ。自分ではぜんぜん納得いってない表情だったが、これ以上遅れるとまずいので出かける。
 学校でみこりんをクルマから降ろした時、若干、顔にどよーんとした暗い模様が入っていたのが、とても気になったが、私も時間ぎりぎりだったので深く考えている余裕なく出勤ルートを目指したのだった。

 *

 そしてあっという間に昼は過ぎ、夜。
 みこりんは私に向かって「少しは髪伸びたかな?」と聞いてきた。ちょっと前までは、暑いからと髪を短くすることに何の抵抗も感じていなかったみこりんが、今は爆発する髪を、己の髪を長く伸ばすことで、自重により爆発を防ぐという事にすべてを賭けている様子。
 実用的な髪型よりも、おしゃれを優先するようになったか…。
 お風呂上りのドライヤーをかけてやった後、鏡の前でブラッシングしているみこりんの姿は、たしかにどこかお姉さんっぽいところがあって、ちょっとドキっとしてしまうのであった。

 大きくなったな、みこりん。


2007.5.31(Thr)

記録を残すということ

 仕事中の気付き事項や、会議のメモ、何かの設定手順の覚書等、備忘録としての業務日誌は、記憶力が急速に衰えてくる今日この頃、いよいよその重要性は増すばかりである。しかしながら、昔ながらの紙媒体の小振りなノートとボールペンの組み合わせでは、あとから検索する時が大変だ。あいまいな日付を頼りに、一枚一枚ページをめくって目的の項目が書かれた箇所を探り当てねばならない。もしこのノートの情報がデジタルデータとして存在していれば、一瞬で検索できるだろうに。

 かといって、社内の共通基盤として構築されているNotesの掲示板を活用するとなると、今度はその動作の重さと、記憶容量の厳しい制限がついてまわるので(いまどき1つの掲示板の容量が50MBって…。注:これは社内規定)、これもいまひとつ使えない。でもみんなに知っておいて欲しい情報とか、手順とかは、Notesの方が共有しやすいので、適材適所で複数の掲示板を使い分けてきた。
 しかし、情報が分散してゆくと、どこに保存したか忘れてしまうという恐ろしい事態を招くことになるので、できれば集約して保存しておきたい。ノートにボールペンでさらさらっと書くほどお手軽に、でも検索容易性は高く、動作の軽くて記憶容量に制限なく、カテゴリー分けや様々なタグを付けて管理できるもの…。といえば、やはりブログツールを活用するのがよさそうな気もする。

 というわけで、まずXAMPP for Windowsをインストールして環境を整えた後、ブログツールとしてWordPressを選び、こいつもさくっとインストール。MovableTypeよりはフリーなところが、ちょっとWordPressに惹かれる理由。

 WordPressそのもののインストールは、謳い文句通り、ものの5分もかからずに終わった。めちゃ簡単。そう、この手軽さがいい。思い立って即試してみられるというのは、こういうツール選びの時には重要だ。
 で、試しにエントリーを何個か書いて、コメント機能やカテゴライズの機能などをチェック。ふむふむ、あっけないほどさくさくと動くな。
 思わず“にやり”としそうになったが、ここで1つ残念な問題を発見してしまったのであった。

 1つのエントリー単独で表示させた場合、ナビゲーションリンクがアクティブにならないのだ。IEで表示させた時には問題は起きない。Operaだと起きる。しかも不思議なことに、一度そのページをリロードすると、リンクが生き返るという謎。
 んー…、Operaを捨ててしまえば悩むこともないのだけれど、骨の髄までOperaが染み付いた体では、そんなことはできようもなく。なんとなくマウスのホバー処理あたりのCSSでトラブってるような気がしないではないのだが、原因究明には至っていない。

 もうしばらく設定をなぶってみて、使えそうなら紙のノートからWordPressへ、徐々に移行しようかなと思っている。ただ問題は、リアルタイムでの書きなぐり性能は、ノートとボールペンの方が優れてそうなことだ。一度ノートにメモったやつを、改めてWordPressに入力するか。…今のところ、それしかうまい手はなさそうだ。


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