2001.4.1(Sun)
ボカシ肥作り
自家製ボカシ肥作りに挑戦。お手本は『30坪の自給菜園』(著:中島康浦 農山漁村文化協会発行)である。この手法の特長は、材料の厚みを15cmほどに抑えることで、通常は発酵に必要な切り返しをやらずに済む点にある。容器はトロ箱、これも場所をとらなくていい。じつにものぐさな私向きといえる。
材料は、菜種油かす、米ぬか、魚かす(魚粉)、発酵促進剤コーラン。これらを3:2:1:0.5の割合で混合する、と記述されている。あらかじめ発酵促進剤以外の材料は揃えてあったのだが、肝心の発酵促進剤コーランなるものがどうしても見つからず、結局今日の午前中にホームセンターで“生ゴミ発酵促進脱臭剤”(アイリスオーヤマ製)を買ってきて間に合わせた。でもなんとなく違うような気がするのだが、まぁしょうがない。ちなみに発酵に用いるバクテリアは、空気中に自然に漂っている土着の菌を利用するので、特別にEM菌だとかは投入しない。
今回、米ぬかが1.4kg分しかなかったので、他の材料もそれに合わせて投入量を調整した。この作業のために、今日はわざわざ秤も買ってきたのだが、最大1kgのタイプしか置いてなかったので、数回に分けて計量せねばならなかった。
無事配合が終わると、あとはよーく撹拌する。均一に混ざったところで、もっとも重要な作業である水の投入へ。
軽く握ると固まり、それでいてちょんとつっつくとすぐに崩れる…というのがポイントだ。水分がにじんだりしたら多すぎる。少なすぎても、多すぎてもダメなので、ここはじっくり慎重に、ジョウロで少しずつ加えては混ぜ、の作業を繰り返すことになる。
やがて“これ以上やったらきっとダメになる”という微妙な状態へと到達。材料の固まり具合は、じつに記述どおりに見える。それでもなお水分を加えたくなるのをやっとの思いで我慢して、くん炭を適当に投入(今書きながら本を改めて読んでみると、くん炭の投入は発酵終了後の乾燥段階で行うことが発覚!ま、まずいかも)。さらによく混ぜて、最後にトロ箱の上部を布で蓋してできあがり。虫などが入らないように、目の細かい布を使用した。
あとは置き場所。今回はサンルームに決定。雨は当たらないし、遮光もされているので直射も防げる(ただ、今にして思えば、締め切った場合、少し温度が上がりすぎるのが不安ではある)。
さて、無事に自家製ボカシ肥は出来上がるだろうか。
*
夕方からアーチの脚を固定するための、仕掛けを準備。半丁のブロックの穴に、ラティス固定金具を差し込んで、そこにセメントを投入するのだ。こうして出来上がったヤツを土に埋め、上からアーチを取り付けてネジで固定すれば倒れることもあるまい。
セメントの粘性が意外に高いので、少々苦戦した。金具と穴の大きさが、ぎりぎりだったので、隙間にうまくセメントが入り込んでくれなかったのだ。細い木の棒でつっつき、なんとか埋めてみたが、はたして無事くっついてくれるかどうか、ちょっと心配。
2001.4.2(Mon)
捨てる勇気
会社敷地の桜並木は、そろそろ八分咲きというところ。新年度を迎えたものの、引っ越しの後片づけで今日も一日が終わっていった。
これまでの所属で物置として使っていた部屋を皆で整理したのだが、なんと大部分がゴミとして廃棄処分となってしまった。過去に何度か部屋の整理は行われたものの(直近だと去年の12月くらい)、その時には「いや、これは要る」とそれぞれが主張して、結局、部屋は片づかなかったというのに。
この勢いを利用して、我が家の物置と化してる部屋もやってしまおうかな。
2001.4.3(Tue)
スクラップ
今日も朝から引っ越しの後片づけだ。残る作業はゴミの山を所定の場所まで捨てに行くことと、長期保管書類(段ボール40箱分)を書庫に格納すること。まずはゴミ捨てからだ。
可燃物、再生金属類は、まぁ普通のゴミ捨ての要領なのだが、問題は大きな段ボールいっぱいに詰め込まれたさまざまな“がらくた”ども。いわゆるジャンク品である。
マザーボードとか拡張ボード、CCDカメラに工具類、TV、塗料など、明らかに“使える”がらくたは、事前に山分けしてあったのだけど、一日明けて改めて見てみると、ゴミの山にはまだまだ宝が眠っていたりする。あまりの量の多さに、つい見逃していたヤツとか、用途を思いつかなかったものの天啓のごときひらめきで新たなる使い道を発見してしまったモノとか、だ。
そうやって2段階のフィルタにかけられたゴミの山は、ようやくスクラップ置き場へと向かう……はずだったのだが、建物を出たところで新たなる“お客”登場。いったいどこから湧いて出るのか、あっというまに段ボール箱の周囲には人だかりができてしまった。現場のおっちゃん達とか、通りすがりの社員とか、その他諸々。ひとしきり検分したのち、それぞれが興味を惹かれたブツを引き上げ、消えていった。
ゴミの山は2/3ほどに減った。それでもスクラップ置き場まで、ツーリングワゴンの後席を倒しても2往復。スクラップ置き場では、時節柄同じように運び込まれたがらくたの山ができていて、ここでも食指がむずむず動きかけたものの、かろうじて踏みとどまる。さすがにPC8801本体(まだ残っていたなんて…)とかを運び出すのは苦労しそうだったから。
午前中で、すべての作業は終了した。古巣はガランと置き去りの机と椅子だけで、もはやここに戻ってくることはないのだろうという思いを強くする。たった数日のことなのに、はや、どこかよそよそしい雰囲気に変貌していた。願わくば、再び…。
2001.4.4(Wed)
ひなげしの怪
会社敷地内の桜も、ほぼ満開になった。うららかな日和である。自宅の庭でも、ついに花桃が1つだけ開花した。残る蕾もはちきれんばかりに膨らんで、枝という枝は、びっしりとモコモコで縁取られてる。なんというか、猛烈な秘めたるパワーを感じてしまう情景だ。夜、だからかもしれないが…
サンルームで育苗中の“ひなげし”はどうなったろう。昨日までは元気に双葉がひしめきあっていたが、そろそろ本葉でも出て来たろうか。そぉっとラップをどけてみる……。暗転。突如として鳴り響く恐怖のマーチ。苗は大半、いやほぼ全部が枯れていたのだった。茶色く変色して、倒れ伏している。枯れるというより、溶けてしまった感じ。い、いったい何故。しばらくプラグトレイを前に、動けなかった。
見つめていても再生するわけはなく、諦めるほかない。そう踏ん切りがつくまでに、ずいぶん時間が経ったような気がする。とにかく枯れた苗を抜き去り、新たに種を蒔かなくては。幸い、種の残りは十分にあった。
ただ原因がはっきりしないのが不安ではある。また同じコトの繰り返しにならねばよいが。
エンドウ豆2種のポット苗は、いちおう順調そうだ。本葉も伸びて、よーく見るとツルがちょこっと生えてきてるような気もする。現在地上4cmほど。無事育ちますように。
2001.4.5(Thr)
入園式
春休み中だったみこりんも、今日から新年度のスタートである。いつもより、ちょっとだけおしゃれな服を着て、髪にも白いリボンなど結び、真新しいオレンジ色の帽子に、新しい名札のスモックを着れば、いかにも新入生って感じで春らしい。でも保育園4年目のみこりんには、なんだか余裕が感じられる。不安など微塵もないようにさえ思えた。年少クラスの大半を未満児クラスの面々が占めるのだから、それも当然なのかもしれないが。
入園式に出席していたLicから、仕事中、ケータイにメールが入っていた。本文を読んだ私は、少しだけがっかりする。私の一押しの先生は、今年もみこりんの担任ではなかったようだ。あと2年……巡り合わせはあるだろうか。
この夜、みこりんは新しいクラスのことより、自分の去ったあとの未満児クラスのことをたくさんお話してくれた。やはりみこりん、初お目見えの赤ちゃん達のことが気になるようだ。意外にみこりん、世話焼きらしい。
2001.4.6(Fri)
夜のお話
沿線の桜の木に、はや、ちょろっと薄紫色した葉っぱの赤ちゃんが見え隠れしている。もう葉桜になってしまうのか…。はやいものよのぅ。
ところで春といえば、春の小川、メダカの学校である。川面にちっこいボウフラみたいなメダカの赤ちゃんがたむろする光景も今は昔……その雰囲気をみこりんに伝えるべく、今夜の“お話タイム”では『メダカの学校パート2』を語って聞かせてみた。むろん、私の創作だ。パート1は先月の中頃に披露したのだが、ふっと続きを思いついてしまったのだった(日本昔話ネタが底をついてしまったから、というのもじつはある)。
前回、赤ちゃんメダカ達は恐ろしいザリガニの追撃をからくも逃げ切り、滝壺に封じることに成功した。今回、赤ちゃんメダカ達に襲い来るのはタガメである。どうやって逃げる!?そこで一匹のメダカが提案する。滝壺にまた逃げ込んで閉じこめればいいじゃないか、と。さっそく実行に移す赤ちゃん達。よし滝壺は目の前だ。その隙間から飛び込めっ!ところがどっこい滝壺には前回閉じこめておいたザリガニがいた!あやうしメダカの赤ちゃん!この絶体絶命のピンチを乗り切ることは出来るのか!?
ここでみこりんはその小さな手をぎゅっと握りしめたに違いあるまい。だがここで焦って声高に演じてしまっては元も子もない。あくまでこれは眠りへと誘うための心地よい導入でなければならないのだ。あえて落とした声で、でも、感情は込めて、言霊を発す。眠れ眠れそのままいい子でねんねしな〜の思いを乗せて、物語はクライマックスへ…
メダカの赤ちゃん達は助かった。その背後には互いに闘い破れて共倒れたザリガニとタガメの図…。この時は知らなかったのだが、これではまるっきり『おたまじゃくしのひゃくいっちゃん』の結末だった。どうりでみこりんの食いつきが良かったわけだ。でも、語り終えたあとにみこりんの発する「おもしろかった!」の言葉は、やはりいいものだ。本当に面白かったときしかこう言ってくれないので、次回の励みにもなるし。でもそろそろ日本昔話の新ネタも仕入れないと夜も眠れない…ことになるかもしれない。
2001.4.7(Sat)
『完璧な防壁』最終段階
すっかり春爛漫な土曜の朝。びっしり輝くように散りばめられたプラムの花は、夏の果実のことを想像すると、口の中がおいしい状態になってしまう。あぁほんとうにこれがぜんぶ実になったらなぁ。
花桃続々開花中。チオノドクサも、ブルーとピンクが咲きそろい、淡いグラデーションを楽しませてくれている。開花当初よりも花弁の色が薄くなって、いい感じだ。水仙も今が盛りと咲き誇る。庭も次第に色彩が豊かになってきた。もうじき木々の葉が芽吹いてくるだろう。
ところで先週、アーチの固定用にセメントを流し込んでおいたブロック(と金属片)は、すっかりいい具合に硬化したようである。おそらく『完璧な防壁』構築作業でもっとも重労働になるであろう、このアーチ固定用ブロックの土中埋設は、不思議と気力の充実している今を逃してはなるまい。午前10時。さっそく作業を開始する。
シャベル1つで4つの穴を掘りあげ、高さ調節に位置合わせ。水平と垂直もある程度出さなければならないのでパラメータは意外に多い。が、まぁそれはそれ、多少のゆがみは自作の味わいってことで許容して、と。ブロックに埋め込んだ連結用金属片にネジで止め、埋め戻せばできあがり。なんとかお昼前には終了することができた。すぐそばで咲いているルッコラへの被害も最小限に抑えることができたのがうれしい。このルッコラの花、今年もみこりんに持たせて保育園に飾ってもらわねば。
『完璧な防壁』−外部からの野良猫飼い猫その他放し飼いの猫どもの侵入から我が家の庭を守る盾。その作業もいよいよ佳境。
午後から外周へのネット貼り。アーチが建ったので、最終段階である。上下2段のネットは、高さ約2m。庭は道路から約1mほど高くなっているので、外側からだと地上3mほどの“壁”となる。越えられまい。ここを突破できる猫がいるとすれば、そいつはたぶん二本足で歩く黒猫に違いない。
ネットの方は、いちおうまだ仮止め状態にしておいた。『完璧な防壁』のためには、もう少し縛りにも時間を掛けた方がよさそうだから。で、今日の作業はアーチの内側に取り付ける扉(ラティス改)の組み立てと接続へと進む。
2枚のラティスを木片で結合ネジ止めし、蝶番をアーチに取り付け、固定……すれば完成だ。もうちょっとでとんでもない位置に扉をくっつけてしまうところだったが、Licの鋭い指摘で事なきを得た。まったく危ないところであった。『完璧な防壁』のためには、一箇所でも抜けがあってはならないのだ。そんな穴が1箇所あれば、その他の防壁はまったく無意味なものとなってしまう。それだけは避けなければ。
明日、『完璧な防壁』は完成する。
春のお散歩
夕方にはまだ少しだけ早い時刻、みこりんと約束していたお散歩に出かける。今日はLicも一緒だ。三人揃っていつものコースを下り、団地下の川へと向かった。
この川は、去年秋の大雨で護岸が崩れかけていて、今はその再生工事中だった。でも、その工事も一段落したらしい。工事用車両の姿が見えなかった。でもまだ距離にして半分ほど残しているようなので、この工事も4月いっぱい、いや5月になっても工事している可能性はある。今年の川魚への影響が気になるところ。と対岸の広場に立つ看板に目が留まった。この工事についての説明が書いてあるようだ。視力2.0を活かして文字を読みとってみれば、蛍の幼虫とその餌であるカワニナは、人力で保護回収し上流へと放ったとある。この川は地元では蛍のいる川としてちょっとは知られているのだった。そういう声に配慮したのだろう。でも、2種だけ避難させてもあんまり意味がないような……ヘタすると上流の生態系のバランスが崩れる可能性もあったりするんでは、と余計に心配になってしまうのだった。結果は5月になればわかるのだけど。
川の両岸は、真新しいブロックで囲まれていて、植物がまったくなかった。これから雑草が芽吹いてくれば、徐々に再生するのだろうけれど、ここでも1つ気になる点が。この人工の岸辺は、2段式になっていて、途中2mほどの平らな部分が作られており、そこには赤土が盛られているのだけれど、どうやらそれがコンクリートで平らにならした上に、厚さ20cmほどの土を乗っけただけのようなのだった。大雨が降ったらひとたまりもないような状況。たぶん植物の根が張れば大丈夫と踏んでのことだとは思うのだけれど……それまで雨が降りませんように。
みこりんの三輪車を押してやりつつ、さらに上流方向へと歩く。工事の箇所は終わり、元の緑豊かな川面が戻ってくる。向こうの橋の下で、Licが獲物を待つダイサギのように固まっていた。そこで魚がたくさん跳ねていたらしいのだ。でも、近寄ったとたん、動きが止んでしまったとのこと。川魚の目は侮れない。
しばらく辺りを一周してきて、再び戻ってきてみると、なるほど確かに魚が大量に群れているようだ。水面から銀色の光が何度も何度も跳ね上がっているのが見える。まるで遡上してくる鮭かなにかのような……いったい彼らは何をしてるのだろう。驚かせないようにそぉっとそぉっと近付いて。
はっきりとはわからなかったが、どうやら魚達は、水面付近を飛んでいる虫の類を食べているようだった。それにしてもすごい数だ。この辺りの魚が全部集まってきてるような感じである。ひょっとして川の中では餌が不足してたりして…。
田圃のあぜ道にツクシがぶわっと顔を覗かせている。でもすっかり開いてしまってる感じ。摘むなら早くしたほうがいいようだ(昨年は4月8日に“つくし摘み”をしている。だいたい状況は同じらしい)。でも野の花はあんまり咲いていないような…。今年の方が、ちょっとだけ寒いのかもしれない。なにしろ3月の終わりに雪が降ったくらいだから。
夕方、庭の枝垂れ染井吉野の蕾がだいぶ膨らんできているのを発見。そろそろかもしれない。
2001.4.8(Sun)
ついに『完璧な防壁』完成
美しい花は、じつに儚い。プラムの無数の花びらが、徐々に地面へと舞い降りはじめた日曜の朝。『完璧な防壁』の仕上げに取りかかる。
昨日仮止めしておいたネットを、恒久的な固定にすべく、まずはもっとも強度の心配なアーチ部分から始めた。この部分は、家壁->アーチ左側、アーチ右側->フェンスと、接続部分が4つあって、それぞれについてネットの網目を壊さないように支柱なりアーチなりに固定しなければならない。乱雑にやってしまうと、たちまち隙間が発生してしまうだろう。ここは慎重に事を進めねば。
より確実にネットを支柱に固定するには、ネットで包み込むように支柱をくるみ、袋を閉じるように紐で網目を縫っていけばいい。…でも高さ2mともなると、1cm四方の網目1つ1つに漏らすことなく紐を通すのは、なかなか骨だ。結局、このアーチ部分だけで午前中いっぱいかかってしまったのだった。
私がネットと格闘している間、Licはこつこつと煉瓦を積んでくれていた。ガレージへ抜ける扉の下には、高さ10cmくらいの隙間があるので、そこを埋めようというのである。猫の目線でいくと、地面と接する部分がもっとも狙われやすいだろうから、扉の下というのは最重要チェックポイントと言える。それゆえに、煉瓦の配置にはLicも苦労しているようだ。
しかしながらLicは煉瓦とは相性がことのほか良いらしい。まるで難解なパズルが最終局面で“すぱっ”と最適解にたどり着くがごとく、煉瓦はあるべき場所へと収まっていたのだった。パズルが得意なLicらしいやり方といえる。
午後、外周に沿ってネットを固定開始。高さ1mほどのフェンスに一段目をまず固定し、その上の二段目を、さらに上下につなげば出来上がりなので、楽な作業である。ただし、ネットの長さは約20m。これを10cm間隔に上下につなぐ。楽なんだけど、だんだん面倒になってくる…。みこりんが時々話しかけてくるのさえうっとうしく感じてしまうほどに、神経が苛ついてしまった。たしかに楽しい作業ではない。猫を放し飼いにする無神経な奴らのために、自分が時間を削って、金もかけて、庭の見栄えが悪くなるのもこの際我慢して、こうして猫よけのための『完璧な防壁』を作らねばならないのだから。
午後三時過ぎ、ついに『完璧な防壁』は完成した。…ただし、アーチの扉にカギはまだついていない。しばらくは紐でくくりつけておくとしよう。ところで出来上がりを見て、早くも改修すべき点に気がついてしまったのは、じつに痛い。アーチの扉の厚みが思いのほか広く(幅3cmほど)、これだと猫の足場には十分なような気がする。高さ1m30cm、猫なら飛び乗るのにさして苦労はしないだろう。…扉の上を足場にさせないための工夫が必要だ。これは来週までの課題とする。
さて、こうして出来上がった『完璧な防壁』を改めてぐるっと眺めていると、猫以外の生き物にも“防壁”になってしまいそうな心配が出てきてしまった。それは鳥だ。鳥は三次元空間を自在に飛翔するので一見問題なさそうに思えるけれど、実際には鳥の飛行ルートは直線が多い。『完璧な防壁』は、庭からガレージの下へと抜ける東西ルートをネットで塞いでしまっていて、ここを通り道にしていた小鳥達には影響が出そうである。ネットの目が細かいので、カスミ網のようなことにはならないと思うのだけれど…
夕方、庭の枝垂れ染井吉野が、ほんのり淡いピンク色の花弁を展開しているのを見つけた。
2001.4.9(Mon)
ころんころん
仕事を終え、いつものように正門で待つクルマへと乗り込む。後席、チャイルドシートに埋もれるように固定されてるみこりんに「ただいま」を言おうと振り返ると、それに目が留まった。
みこりんの顎の下に、なんだか白いものが貼り付いている。最初、折り紙でもくっつけて遊んでるのかと思ったのだが、どうも違うようだ。みこりんが片眉下げた得意の渋い表情で語ってくれたところによれば、保育園で転んだらしい。どうやったら三輪車に乗ってて立ち転けできるのか謎だが、とにかく転んだんだそうである(真後ろに倒れたんならまだ分かるのだけど……顎…、いったいどうやって…)。
じつはここ数日、みこりんは毎日1回は転けている。もっとも被害の大きい部位は、右足の膝小僧だ。何度も同じところをやってしまうので、痣にならないか心配してたところに、顎ときた。傷痕が残らなければいいのだが。
よく転けるのは元気な証拠と思えば、それはそれでうれしい成長のあとではある。
2001.4.10(Tue)
くくる
仕事を終え、いつものように正門で待つクルマへと乗り込む。後席、チャイルドシートに抱きかかえられるように埋もれたみこりんに「ただいま」を言う。そして続けて「今日は転けなかったかぃ」と聞く。半ば冗談だったのだが、みこりんは恐縮したような姿勢のまま、片眉を下げ、消え入るように情けない声で…「こけた」と答えた。毎度の右膝小僧に、またも新しい傷が出来てしまったらしい。
さて今夜は久しぶりに帰り道、スーパーに立ち寄って少々買い物をした。みこりんも自分用の杏仁メロン(メロン味の杏仁豆腐)をしっかり購入。そして袋詰め。杏仁メロンを小さなビニール袋に入れたみこりんは、「あの“ぴんく”のとって」と私に要求した。「ピンクの?」いったいそりゃ何だ?ちょうどそこへLic登場。みこりんの言うことが聞こえていたのか、ささっと“ピンクのビニール紐”を備え付けの梱包セットから取り出し、手渡してやっていた。ま、まさか、そいつで縛ろうというのか、そのビニール袋の口を?本当に?
すっかり手慣れた感じにさささっと紐をかけ、固結び…二、三度失敗したものの、三度目には成功してしまっていた。いつのまに紐を結べるようになっていたのか。私の知らないみこりんがそこにいる。それだけならまだしも、さらに蝶々結びに取り掛かるのを見て、私は唖然とした。う、うそだ……
でも、手つきはそれっぽかったが、さすがに蝶々結びは無理だったようだ。見よう見まねでやってるらしく、どうやったら蝶々結びになるのかは分かっていないような感じだった。だが最初の固結びの時には、明らかに“結び”のできる理屈を理解して結んでいたように見える。この分だと、早晩、蝶々結びも楽々とこなすようになっているだろう。
ところでみこりん、これほどまでに大事そうに買って帰った杏仁メロン、結局半分も食べられなかった。…そういや赤ん坊のころから杏仁豆腐系は苦手だったなぁと、このときようやく思い出した私であった。もっと早く思い出してやっていれば…、失敗失敗。
2001.4.11(Wed)
お花の、お・く・ち
日々、春の装いに満ちてゆく我が家の庭で、みこりんが保育園に花を持っていくのだと言っている。望むところなので、ハサミを持たしてやると、とととっと駆けてくみこりん。どうやら心に決めた花があったらしい。どれどれと後から覗き込むと、「おぉ!」そ、そいつは“スプリング・プライド”、去年初めて我が家に登場した例の『ピンク色のカップになる』というふれこみの水仙ではないか。今年もピンク色にはほど遠くどうみても薄いオレンジ色にしか見えないのだが、まぁそれはそれ、変わった花色なので満足してる。それをみこりんはすでに1本切り終えていた。残りはあと3本。こいつは3球しか植えていなかったので、花数がとても少ないのだった(ラッパ水仙は基本的に1球1花。今年は分球したヤツが1つあったようで、4本咲いていた)。
2本目を切り終えたところで、みこりんが4本すべて切るつもりなのだと悟り、それとなく「違う色のも混ぜた方がキレイだよ」と誘ってみる。緊張の一瞬だ。
幸い、みこりんもそう思ってくれたようで、もっと株数の多い水仙の方に移ってくれた。普通に黄色いヤツ、花弁が白でカップが黄色のヤツ、花弁が白でカップが濃いオレンジのヤツ、花弁が黄色でカップがオレンジのヤツ、を、それぞれ適当に切ったところで水仙系終了。だがみこりんはこれだけで終わらせるつもりはなかったようで、さらに「ぶどうみたいなのも、もってく!」と、花桃方面へと駆けだして行くのだった。
“ぶどうみたいなの”とは、“ムスカリ”のことである。今年も花桃の足元に、無数に群れ咲いてくれていた。何度か“ムスカリ”という名前を教えてやったのだが、どうも“ぶどう”というイメージが先行するようで、正しく呼んでもらえない。それにしてもムスカリを切り花にってのはOKなのか?と一瞬戸惑う。水仙に比べると、高さにかなり差が出てしまうような気もするが…。
持ってく用のビンに刺さった切り花達は、かなり華やかなものになっていた。ちょっと雑然としてるのは、緑がないせいだろう。どれも球根モノの花だから、葉っぱがついていなかった。これに明るい緑の葉っぱモノが入れば、さらに花が引き立つに違いない。だがあいにくと我が家にはそれに使えそうな葉っぱがなかった。残念だが、今日はこれで我慢してもらうしかあるまい(って自分が渡す訳じゃないんだけど)。
そろそろルッコラが満開になりそうだ。来週はこれを持たせてみよう。
ところで保育園までの道のりで、みこりんはこんなことを話してくれた。お花たちにお水をあげると元気になるよね、というものだったのだが、“花のお口”に水をあげるよとみこりんが言うので、それが妙に気になった私はさっそく質問してみた。それはいったいどこかなのか、と。みこりんによればそれは「おはなのまんなかの、お・く・ち」らしい。……たしかに口に見えなくもないな。特にラッパ水仙は。でもそこはやめておいてねと、お願いしておく。いずれ植物のカラダについてちゃんと教えてやらないといけないようだ。
2001.4.12(Thr)
お揃いの
眠い朝、いまだ布団で微睡んでいた私の方に、起き出してきたみこりんが近寄ってきて、しげしげとこちらを見つめている。私の隣にはLicが同じく寝入っているのだが、そちらと私とを見比べつつこう言った。どうして同じパジャマなのか、と。
いずれもクジラ模様、異なるのは色だけだ。しかも掛け布団からはみ出ているわずかな部分のみで同一の模様と判断したとは、なかなかやるな。私の関心がそのことに向いている隙に、Licが「仲良しやから一緒なんやよ」と答えている。みこりんしばし沈黙の後、思いがけないことを…
「おとーさんにも、ぴんくいろのぱじゃまかってあげるからね」
この日みこりんは、ピンク色の上下なのだった。
2001.4.13(Fri)
ちょこっと肌寒い春
昨日から、なんとなく左の耳の下あたりがわずかに腫れているような感じのみこりん。顎を動かすと痛いらしい。一見おたふく風邪のようだが、すでにこれは“済み”のはず。となればいったいこれはなんだろう……というわけで今日診察してもらったところによれば、おたふくかどうかはハッキリしないものの、とにかく耳下腺が腫れてるらしい。耳下腺炎にも、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、慢性耳下腺炎など、いろいろなタイプがあるようだ。
でもみこりん、今日は痛いと言い出さなかった。そのことを指摘しても痛みがぶり返さないようなので、じつはもう治りつつあったのかもしれない。そういえば月曜日、転んで顎を擦りむいたあとぐらいに、ちょくちょく口の中が痛いと言ってたような気もする。あれが耳下腺炎の前触れだったのではなかろうか(擦り傷の痛みがそう錯覚させるのかなと、その時には思っていた)。
その顎の擦り傷もすっかり塞がりつつあり、子供の回復力は惚れ惚れするほど逞しい。それにひきかえ……と、つい自分の首筋を撫で上げてみる。もうかれこれ1ヶ月ほど、ずっとこのあたりのリンパ腺が腫れっぱなしのような気がするのだ。あと一歩進めば“熱が出そう”な気配のまま、ずるずるとこんな調子で来てしまってる。じつは職場環境の大変動ってやつが、意外に効いてたりするのかも。自覚はないのだけれど。
2001.4.14(Sat)
玉と豆と葡萄と
目のくらむほどまばゆい空に誘われて、朝飯もそこそこに庭へ出る。やることはいっぱいあった。手始めに“玉”の植え替えからやってみよう。
“玉”とは、1月11日の日記に書いた、あの立派な“緑玉”を持つ植物のこと。一冬越して、ますます窮屈そうに玉がひしめき合っているのだった。
こいつを植え替えるには、まず鉢から出さねばならない。でも、玉の圧力はそれを容易にはさせてくれないだろう。無理に押し出そうとすると、玉を痛めてしまいそうなので、ここは鉢のほうに犠牲になってもらうことにした。大型ハサミで慎重に、殻を剥くような感じに切ってゆく。根っこは意外に張っていない。その必要がないのだろう。なにしろこの玉だ。蓄えに不安はないに違いあるまい。
玉は全部で6つあった。いずれも互いにぶつかりあって押し合いへし合い。これをそのまま植え替えても、あまり意味がなさそうだ。そこでちょっと乱暴かなと思いつつ、玉を握り、左右にゆさゆさ振動させつつ、めりめりめりっと……。根がそれほど発達してなかったのが幸いしたらしい。玉達は無事に独立させてやることができたのだった。
6つの大玉と、(大玉の表面にくっついていた)無数の子玉。1鉢に収めるには少々バランスが悪い。結局、大玉は3つずつ2鉢に、子玉は浅鉢にずらっと一並べして“保育”することにした。この子玉、まだ根っこがない。文字通り“玉”なのである。だからなんとなく植物というよりは、なんか別の生物のような雰囲気がする。親から早期に切り離しても生きていけるのか不安は残るが、このまま育ててみようと思う。
さて、密室の怪で大幅に遅れをとってしまったエンドウ豆達だが、ようやく地植えにしてもいいくらいに育ってくれた(でも中には皮を破れずに、双葉を閉じたままで本葉を窮屈そうに伸ばしてるやつもいたりする)。植え場所はウッドデッキ外周のサイド1&2に決めてある。すでに土の準備は数週間前に終わっているので、あとはただ植えるだけでいい。作業はあっけなく終わった。……が、密室の怪のことが頭から離れない。アレは結局のところ何ものの仕業だったのかわかっていないのだが、私個人の勘では、“鳥”…なんじゃないかと思っている。それゆえに、地植えにされた豆の苗は、格好の餌食になりそうな気がしてしょうがない。
消えてしまってから嘆いても遅いので、今回は先手を打つことにした。支柱を苗の周囲に4本立てて、上から台所用の排水口ネットを被せてみよう。これならば襲われる心配もあるまい。
着想は悪くなかったと思う。しかしながら我が家の排水口ネットは、数ヶ月前からゴム状のメッシュに切り替わっていたのだった。びよんびよん伸びて縮んで、キャップにするには少々無理がある。何か代用品はないかと庭中探して、先日の『完璧な防壁』で使ったネットの切れ端を発見。こいつはいい。さっそく適当に切って巻いてみると、まさにあつらえたかのように豆をすっぽり覆ってくれた。ただ、長さがちょっと足りず、苗2つ分残したところで打ち止めに。キャップできなかった2つの豆苗は、ちょっと心配だが、そのままにしておくことにする。これが運良く生き残れば、他のキャップを外す目安になるだろう。じつはそろそろ蔓を伸ばしてるヤツもいて、ネットに巻き付かれるそうなのだった。
*
午後からは、みこりんと約束していた葡萄苗の植え付けを一緒にやった。葡萄の写真が印刷されたラベルがくっついて届いていたので、この枯れ木みたいなやつがブドウであることは、すぐにみこりんにもバレていた。「はやくうえたい」とせかすみこりんを抑えつつ数週間。ようやくその望みを叶えてやれる。
穴を掘り、根を開いて下ろす。そこに水を加えて底なし沼状態にしながら、落ち着かせ、支柱を立てればできあがり。ところが、ついうっかり新芽をひっかけて欠いてしまっていた。しかも先端寄りにあるもっとも重要そうな芽を…。なかなか前途多難である。
こぼれ種で増えていたネモフィラ“ペニーブラック”
生存確認
冬の間、雪の重みですっかり枝が乱れてしまっていたゴールドクレストを、1つ1つシュロ縄で整えていた時のこと。込み入った枝の奥まった部分に、なにやら小鳥の糞が堆積しているのに気がついた。そこを寝床にしているんじゃないかと思うほどの量だ。雀にしては妙なところに入り込んだものだ…なんて思いつつ、手で払い落としていると、軍手にくっついてきた一枚の羽根に私の視線は釘付けとなった。
「ピーコ…」
思わずそう口にしていた。若干色彩が薄れてはいたものの、それは間違いなく黄色い尾羽であった。ピーコの尾羽だと確信していた。
2月16日に猫に襲われ行方不明になって以来、今日まで姿を見せなかったピーコ。でも、やはり戻ってきていたのだ。ゴールドクレストの大量の無数の枝葉が、冬の寒さを防ぐ手助けになったのだろうか。でも、糞の様子から推測するに、あまり最近のものではなさそうな感じだ。暖かくなったので、居場所を移したんだろうか。
いや、そんなことよりも、猫になぶり殺しにされていなかったのだとわかっただけでも十分である。おそらく怪我もしていなかったに違いない。それだけの生存期間を示す糞の量だった(少なく見積もっても約2週間)。
夜、懐中電灯の灯りを頼りに、そぉっと先ほどの枝付近を探してみた。やはりもうここにはいないようだ。無事、春を迎えたことを祈りつつ、しばらく夜空を見上げてみる。春霞にぼんやりと輝く星々…。
いつか元気に飛ぶ姿を見せに来ておくれ。
2001.4.15(Sun)
準備怠りなく
豆は無事だった。カーテン開けたら、庭で雀が何やら丸いものをついばんでいたので、一瞬どきっとしたが、どうやら大丈夫だったらしい。でもまだ完全に安心するにはちょっと早い。もうしばらくの辛抱だ。
今朝も穏やかな晴天。暖かな風が心地良い。プラムはすっかり散り終え、枝垂れ桜も、だいぶ花びらを風にもてあそばれている。花桃はといえば、盛大に路上にピンクの絨毯を敷き詰めにかかっており、春の花もそろそろ一段落しそうな気配。…早い、早すぎる。まだなんにも準備は終わっていないのに。春、というと、昔から何かしなくちゃという強迫観念みたいなのがあって、桜の季節が過ぎると共に、言いしれぬ虚無感みたいなのに苛まれるのだった。この癖は、なかなか治りそうにない。
午後から先日当選した市民農園の講習会に参加。実際に割り当て区画を見てみたが、30平米というのは思ったほどには広くない。でも、このくらいの広さが丁度良いのかもしれない。土は、急遽田圃から転用したとの説明通り、かなり粒子が細かく、乾燥してカチカチに固まっており、気合入れて耕さないといけないようだ。とはいえ、不毛な土地ってわけじゃないので、それほど心配はないだろう。最大の問題は、苗を時期に間に合わせて準備できるかどうか、だ。
講習会から戻ってくると、さっそく手始めに葉っぱものを中心に、プラグトレイに種を播いてみた。総勢80株分、それでも30cm×20cmほどのスペースに収まるのがプラグトレイの特長である。今度は温度管理を失敗しないようにしなければ。
菜の花いっぱい
今年は庭で菜の花系が咲き誇っている。白菜“ポチ”、キャベツ、レッドキャベツ、子持ちキャベツ、大根等々。いずれも肝心の葉っぱを食す時期を逸し、花を咲かせるに至ってしまった。でも、花だって食べられる。特にキャベツの花や花茎は、じつにうまそうである。というわけで、今夜はキャベツの花のおひたしが食卓に並んだ。
姿は菜の花、だけど味はキャベツ。甘くて歯触りよく、ブロッコリーよりうまいかもしれない。すると、白菜の花は、やはり白菜の味がするんだろうか。大根は……ちょっと辛いんだろうか。気になる、とても気になる。
“舌切り雀”改
今夜みこりんに語って聞かせるのは“舌切り雀”。でも、肝心のストーリーはかなり怪しく、いったいこれのどこが“舌切り雀”かというほどに話をつくりながら言葉をつないでゆく(いちおう違ってるのがわかる程度の記憶状態)。
奥深い大霊山。そこに棲むという巨大な龍。舌を切られた雀を助けたい一心で、おばあさんは山に入ってゆく…。龍との対峙。龍は、「雀を助けたくば、おまえのもっとも大事なものをよこせ」と告げるのだった…。なんとなく日本昔話というより、アーサー王の時代背景が似合いそうだなと思いつつ。
「めでたしめでたし。おーしまぃっ!」
やがて一大感動巨編は終わりを告げる。みこりんの感想が聞きたくて顔を覗き込むと……ぱかっとかわゆい口を開いて、すっかり寝入っていたのだった。い、いつのまに。途中までは目が開いてたのを覚えてるのだが……、たしか龍が出てきたあたり。「ごぅぅぅぅ」と炎を吐く効果音のとき、びくっとしたように目を見開いてたはず。あぁでもあの時すでに微睡んでいたのかも。
まぁいい。また改めて“舌切り雀”を聞かせてやればいいのだ。さらにパワーアップさせて。
2001.4.16(Mon)
妖しのピンク系水仙
ニッセンのカタログから、今回も『BRECK'SのFlower&Garden』をチェックしてみよう。
早くも来年の春用(つまり秋植え)球根の特集である。表紙をめくってまず目に留まるのが“ジャックポット”と名付けられた黒(に近い紫)のチューリップ。花弁に鮮やかな白の縁取りが凛々しい。こういうのがさり気なく庭に咲いてると、ワンポイントになっていいかもしれない。なんて思いつつ、次々にページを繰ってゆく。と、そ先ほどのよりもさらにインパクトのあるチューリップに出会ってしまった。
チューリップ“アルバ コエルレア オクラータ”(Tulip humilis 'Alba Coerulea Oculata')というその花は、一見チューリップとは思えない花色をしていた。基調は白、だが、特徴的なのはその奥まった部分に広がる薄いブルーの色彩だ。上からみると、白とブルーのコントラストがじつに涼しげでいい。原種チューリップ系なのでおそらくそういう目線で見ることも多いだろうから、まさに願ったり叶ったり。欲しい。これは買いだ。値段は……3球1290円となっ!?もうちょっと悩んでみようか。
さて、BRECK'Sのカタログといえば、ピンク系水仙(Pink Daffodils)を忘れてはならない。我が家のピンク系水仙(と当時は銘打たれていた…と思う)“スプリング・プライド”も、ここで買ったものだ(あまりピンク色には咲いてくれないけど)。
“レプリート”(Replete)、“ロージークラウド”(Rosy Cloud)、“アクセント”(Accent)、どれも恐いくらいにカップがピンク色である。でもその色調がみんな同じ雰囲気なのが、ちょこっと気になったりもして。まさかそれはないだろう、と思いつつも、…なんか画像処理してそうな…雰囲気に、いまひとつ手出しを控えさせるものがあるのも事実。どうしようか今年も迷ってるうちに期限切れになってしまいそうな。でもこれだけ目を惹く水仙なのだから、どこかに画像なり感想なりがアップされてそうなのだけど…と探してみたところ、やはりあった。Kucchin's gardenの園芸日記<2001年3月>より、3月23日のところを見れば、一目瞭然。栽培条件の違いで、これほどまでに花色が変わるもんなんだろうか?ブルームーンがピンクムーンになるとか、そういうレベルを超越してるように見えるのだが。…やはりピンク系水仙には手出ししないほうがよさそうだ。ひょっとすると本国ではカタログ通りのピンク色になるのかもしれないが、日本の気候には合わないらしい。代わりと言っちゃ可哀想だけど、レモン色の“スペル・バインダー”にしとこうかな。
2001.4.17(Tue)
新たなる花束
ルッコラ満開。さっそくみこりんに保育園に持っていってもらうことにする。
でもハーブなだけに、少々の束ではいまひとつボリューム感に欠けてしまう。先生の机の上に飾るのであれば、そういう一輪挿し系も捨てがたいのだが、置き場所はどうやら靴箱の上らしい。となれば、もっと派手さが欲しい。
幸い庭で自生(?)してる白菜“ポチ”も花盛りだ。鮮やかな黄色は、ルッコラの野趣溢れるベージュともよくマッチしそう。さっそくざくざくと切ってみる。なかなかいい具合になった。でもちょっとばかり緑が足りないような…
そこへみこりんが「これももってく!」と指さしたのは、ホトケノザ。いわゆる春の雑草である。こちらも今が旬とばかりに咲き誇っている。先日の日曜日、これの花もパイナップルセージと同じように蜜が吸えることを発見したみこりんは、ホトケノザに格別な思い入れが出来たようだ。
3本ほど切って花束に加えてみたところ、意外に似合う。いや、それどころか主役を食うほどの存在感…かもしれない。特に緑の葉っぱを多数持ってるのが強い。私の発想だとルッコラを花束にするレベルで止まってしまってたが、みこりんの感性は固定観念がまだほとんどないだけに新鮮だ。
*
ところで例の緑の子玉だが、鉢の上で少々飛び跳ねているのがあった。自力でこういう芸当が可能なんだったら面白いのだが、たぶん鳥の仕業かな。でも数が減ってないところを見ると、味の方は相当まずいに違いない(ちょっと傷ついてるのもあって、ねばっこい透明な粘液が内部から分泌されてた)。見た目は豆か何かにそっくりだから、ついついつっついてみたのだろうが、試し食いした鳥にはさぞや災難だったことだろう。
プラグトレイには、まだ変化なし。
2001.4.18(Wed)
うちわサボテンを食す
冷蔵庫に“サボテンヨーグルト”なるものが鎮座していたので、さっそく食べてみることにした。製造販売はジャパンミルクネット株式会社、ラベルには“うちわサボテン”使用と記載されている。
“うちわサボテン”が食用になることは知識として知ってはいたが、じつは食べるのは今回が初めてだ。いったいどんな味がするのか興味津々で開封し、まずは外観チェック。アロエベラを使ったものより、なんとなく色彩がくすんでいる。皮の部分がかなり含まれているような気配だ。匂いは……ん〜、花粉症で鼻が利かずよくわからない。ではさっそくスプーンでひとすくい。
サボテンはかなり歯ごたえがあった。野菜ヨーグルトの中に入ってるニンジンみたいな具合だ。その噛みごたえも手伝って、味はやや緑っぽい感じ。たぶんそんなに癖のあるものじゃないと思うけれど、歯ごたえが立派すぎで、脳が勝手に味を連想してしまってるような…。でもなんだかワイルドな雰囲気である。サボテンばりばり食ってるんだって思うと、ついリクイグアナの食事シーンがフラッシュバックしてしまう。
総合評価……5級
ヨーグルトとはちょっと相性が悪いかも。一時期流行ったナタデココにアロエベラが混ざったやつ(をなんて呼べばいいものやら)みたいにしたほうが、サボテンをおいしく食べることができそうな気がするんだが。でもそうなるとジャパンミルクネットの守備範囲を越えちゃうんだろうな。そのうち別のメーカーが出してきそうな気もするが。
2001.4.19(Thr)
情報ツールって
私の勤務する社内のソフトウェア関連部門は、入社したときからすでに2系統あった。1つはいわゆる製品用の開発を担当する部門、これは組み込み系が主流だ。もう1つが、大型計算機の保守運用などを担当する部門、社内ネットワークもここが管理していたりする。で、昨年から不正ソフト撲滅運動に急遽取り組んでいるのが、後者ということになる。まぁそれはいいのだけれど、不正コピー疑惑ソフト一覧を紙のコピーで各部門に配布してしまったり(何十ページにもわたるリストから、自分の名前を探し出すだけでも一仕事……Excelで集計してるんだったらそのままのデータを配布すりゃ検索で一発なのに)、不正コピー疑惑ソフトにリストアップされたものの大部分が、グラフィックドライバとかプリンタユーティリティとかそういう類のものだったり(曲がりなりにもソフトウェアのプロなんだからライセンスの要不要くらいある程度絞り込めるだろうに)、いろいろと頭を抱えてしまうこと多し…なのであった。
せめてシェアウェアとかフリーウェアとか、ライセンスの要不要が把握できるデータベースくらいは準備すべきだろう。丸投げされた各部門は、こぞってまずこの分類から始めなきゃならない。なんと非効率、かつ無駄であることよ。…まさか外部委託ばかりやってたので自力開発できなくなってるとか……。ありそうで恐い。
2001.4.20(Fri)
忙しい時に限って
異動後も、旧所属のWebサーバとして運用してきたPCが、朝、死んでいた。ハードディスクだけでなく、マザーボードも逝ってしまったらしい。ペンティアム133MHzと、かなりの高齢ではあったのだが、あまりにも突然の死に、1秒ほど我を忘れてしまっていた。だが哀しんでばかりもいられない。なにしろWebサーバが止まっては一大事である。さっそく別のPCを新たなるサーバマシンとすべく、棚の奥から叩き起こすのだった。
今回も Turbo Linux Server 日本語版6.1をインストールした。インストール後の各種設定手順は前回のをメモっていたので、淡々と粛々とサクサクくと進む。もっとも重要なデータは、幸い、HDDを2つに分けて運用していたので、そのままマウントすれば何事もなかったかのように復活した。じつはバックアップをとっていなかったので、HDDのデータが失われたかどうかが最大の関心事だったのだが、拍子抜けするほどあっけなく移植作業は完了した…
とはいえ半日以上は潰れてしまった。まったく、忙しい時に限って何かが壊れる、ような気がする。
2001.4.21(Sat)
今日の園芸
なんとなくすっきりしない空模様だった。今にも泣き出しそうな雰囲気に、食事を取るのも早々に切り上げ、とっとと庭仕事に取り掛かる。まずはボカシ肥の具合は…と、トロ箱を覆った布を取ってみると、そこには腐海が忍び寄って来つつあったのだった。
発泡スチロールに接した内周と、あとは表面にうっすらカビが生えてきている。青カビのようだ。酷い部分を少しばかり取り除き、あとは混ぜ込んでしまうことにする。カビが勝つか、発酵菌が勝つか、勝負勝負。底のほうがすっかり乾燥しつつあったので水を足し、発酵促進剤を二握りほど加え、さらに種菌として買ってきたボカシ肥をひとつまみほどまぶしておいた。それに加えてLicの提案通りに、この春までジャンガリアンハムスターのことりさんが愛用していたペットヒーターを埋め込んでみることにした。ここ最近寒い夜が続くので、少しでも発酵の助けになればということで。
無事、自家製ボカシ肥は出来上がるのだろうか。いやいやなんとしてでも完成させねば。
庭でプラグトレイ第二弾用に、土をフルイにかけていると、みこりんがさっそくやってきて「つちちょうだい」と言う。そうくると思っていたので、あらかじめ用意しておいた“土”を渡してやった。だがしかし、これはフルイにかけたあとの土だったため、みこりんの愛して止まないさらさらのサラ粉にはほど遠く、しきりと私の手元に出来上がりつつある上等な粉々の山にちょっかいを出そうとする。でもそのうち、みこりんはサラ粉よりも、もっといいものに気がついたようだ。
バーミキュライトとピートの混合土をフルイ始めたので、例のキンキラした破片が無数に散らばりだしたのである。みこりんはキラキラしたものに、ことのほか弱い。ものすごく欲しい表情でこちらを見ている。でも、私の作業が大事なものだということも理解しているので、手出しできないでいるのだった。
「ちょびっとだけだからね」と約束させて、みこりんにその土を小さなスコップですくわせてやった。さっそく混ぜ混ぜして水を入れたり、練ったり、お菓子作ってみたり、遊び始めたのだが、そのうち「もっとほしい。もっときらきらほしい」と主張し始める。いったんタガが外れると、欲望は再現なく広がって行ってしまのは衆知の通り。ここはびしっと我慢することを覚えさせて……と、やってたらいつの間にかみこりんの姿が見えなくなっていた。最近、みこりんは自分の主張が通らないと、ささっとそれまでの行動を切り上げて、別のことを始めてしまう傾向が見られるようだ。
さて、土の方はすっかりプラグトレイにまんべんなく詰め込まれたようである。キッチンペーパーをかけて、ジョウロで水をざぁざぁとかければ出来上がり……ってなんかヘンだ。水がぜんぜん吸い込んでいないような?
土表面が、まるで油のように水の侵入を拒んでいる。時間を少々置いたくらいではまったくダメっぽい。仕方がないので、いったん土を全部別の容器に出し、別の種蒔き用の土を適度に混ぜ込み、その上で水を加えて混ぜ合わせ、水分を吸収させてからプラグトレイに戻してやった。やはり種蒔き用の土は、少々高くてもいいのを選ばないと作業が面倒なだけのようだ。
夜、昨年余った種を、プラグトレイに播いてみた。去年はゴールデンウイークに入ってから播いたが、それでも気温が上がらず発芽率はとても悪かった。今年はまだ部屋にファンヒータがある。気温は相変わらず高くはない。発芽するまで夜はファンヒーターで温めてやろう。プラグトレイなので120ポット分といえども、そうたいして場所をとるわけでなし。
プラグトレイ第一弾のほうは、ほとんどが発芽を終え、そろそろ本葉が見え隠れしつつある。こちらは順調のようだ。
明日は晴れますように。
2001.4.22(Sun)
はたして発酵は進むのか
日曜日にあるまじき早起きに成功した朝、まずは自家製ボカシ肥の塩梅をチェックしてみることにする。トロ箱を覆った布を取った瞬間、むっとする熱気と臭気が顔面を直撃していた。もうもうと湯気が上がっている。これまでにない反応だ。青カビは、まだ少しうっすらと表面に生えているが、特に脅威とは感じられないほどのものだった。その上から買ってきたボカシ肥をさらに振りかけ、よく混ぜ込んでおく。埋め込んでおいたペットヒーター周辺がもっとも高温になっているようだが、それ以外の場所でも40度以上にはなっていそうだ。とりあえず発酵は進んでいるような気がする。
かなり入念に混ぜてから、再び布で蓋をした。……気がつけば、糠漬けのような匂いがサンルームに充満していた。はたしてこれがいつ醤油のような匂いに変わるかがポイントだ。このまま青カビ軍が勝ち、腐敗してしまうのか、それとも発酵が勝ち、無事、ボカシ肥と生まれ変わることができるのか。今が一番危うい状況かもしれない。
再会
今日は広島まで行って戻ってこなければならない。それが早起きの理由だった。岐阜から広島までの道のりは、普段利用しない区間というのもあるが、感覚的に“とてつもなく”遠いイメージがあった。とても日帰りなどできはしないだろう…と思っていたのだが、じつは新幹線『のぞみ号』を使えば片道3時間強で行けてしまうことが判明し、おおいに驚いたものである(『のぞみ』を使うのは名古屋−広島間)。片道3時間強といえば、岐阜−東京区間とほぼ同じ。それを考えれば、どうってことはあるまい。
事前に指定席を取ってあったので、余分なストレス(割り込みを警戒しつつの順番待ちとか、決死の席取りとか…)とは無縁に、ゆったりとシートに背を預け、谷甲州の航空宇宙軍史シリーズ『巡洋艦サラマンダー』を読みつつ、一路広島へ。
はっと気がついたときには広島まであと数分という距離だった。すっかり寝入っていたらしい。京都に着いた記憶はないから、名古屋を出てすぐに睡魔にやられてしまったようだ。それが証拠に開いたまま持っていた本は、わずか10ページほどしか進んでいなかった。
ほどなく広島駅到着。本をデイパックに仕舞い込む。
広島は暑かった。じっとしてても汗がにじむ。
12時45分。待ち合わせの時刻まで、まだ1時間弱もある。市電で最寄りの駅まで行き、そこからは徒歩で指定された集合場所に向かった。街なかだというのに、やけに人通りが少ない。クルマ通りも同じく少なかった。いや、クルマ社会の名古屋や岐阜が多すぎるのだろう。きっとそうに違いない。
なんてことを漠然と思いつつ、招待状に同封されていた地図を改めて確認する。どうやら目的地に着いたようだ。高く高く空を目指す屋根には十字の印。この教会で、今日、結婚式をぶちかますのは、大学時代のサークルの後輩(♂)である。ヤツが、いったいどんな彼女をゲットしたのか、その答えは一時間後に判明する。
表玄関前の広場では、数人のシスターが竹箒片手にお掃除の真っ最中だった。なんとなく異国な雰囲気が漂っている。ここでさらっとシスターなどと書いてしまったが、じつはこの教会、プロテスタントなのであった。ゆえに、シスターとは呼ばないのが正しい(んだと思う)。ではなんて呼ぶのが正解かといえば、困ったことにわからない。でもそれじゃ不便なので、ここでは“教会のお姉さん”と記述することにしよう。制服(というかなんというか、教会でよく見かけるあのお揃いの衣装−ただしフードはない)姿が、なかなか可愛らしいことを特に強調しておく。
さて、ここまで歩いてきても時間までかなり余ってしまったので、教会の向かいにある川縁で、腹ごしらえすることにした。駅で買ってきた“広島菜”のおむすびなぞ頬張りつつ、しばらくぼんやりとたたずんでいたところ、なにやら背後が騒がしくなってきた。先ほど教会のお姉さん達が掃除していた玄関前の広場では、正装した大勢の人垣が出来ており、その中心には純白のウエディングドレスを身に纏った女性が(男性は普通着ないが)立っていたのである。一瞬時間を間違ったのかと思いかけたが、腕時計を確認するまでもなく、集合時間までには30分ほど早い。おそらく1つ前の組の結婚式が終わったところなのだろう。
しばらくそれを眺めていたのだが、なぜか一向に解散する気配がない。そのうち時計の針は午後1時まであと10分!を指してしまった。それにしても他の参加者はどうしたのだろう。先ほどから観察していたが、誰も到着していないように見えたが……。とりあえず教会の中に入ってみることにする。玄関前で華やいでいる集団の脇をすり抜け、正面横のドアをくぐると、そこにはホテルなどでおなじみの案内看板が立っていたのだった(何時から○○様結婚式とか書いてあるやつ)。思わず安心してしまったのは言うまでもない。どうやらここは結婚式をメインターゲットとした教会らしい。
受け付け嬢(教会のお姉さんはすべからく同じ衣装である。しかも皆、美形だ。)に集合場所を確認し、二階へと向かう。応接セットが並ぶ広間には、それらしく正装した人たちが散見されるも、同じ年格好の連中がいないのがやはり気になる。ほんとうにこの場所で正しいのだろうか。集団違いってことは……と、やや心配になってきたので、招待されてるはずの後輩にケータイで連絡をとってみることにした。が、呼び出し音は虚しく繰り返されるのみ。式の開始まであと5分。いったいどうなっておるのだ。
ケータイを切ろうとしたとき、階段を上がってくる人影に気がついた。その顔には見覚えがある。同じく招待されている後輩だった。十数年ぶりに会ったわけだが、まるっきり雰囲気が変わってないことに驚く。まぁ多少頬がふっくらしたような感じはあるものの、ヤツはヤツのままだった。同じコトを私も言われたので、そういうものなのかもしれないが。
残りの後輩達二名は、まさに時間ぎりぎりに到着した。いまだSF研時間(本来の時間にプラスして多めに見積もることを言う。たとえば5時集合と言えば、SF研時間では7時とか8時になることはざらであった)を遵守しているところなど、やはりこの二人も変わっていないようだ。
それにしても本日の主役であるところの二人、まだ二人でいることに慣れきっていない感じが初々しかった。まぁしかしそんなことよりも、彼氏がSFモノであることを了解してくれているのが素晴らしい。きっと面白い家庭になるにちがいあるまい。
…久しぶりにあの佳き時代を思い出すことができた一日であった。
2001.4.23(Mon)
クワ入れ
素晴らしい天気故、本日休業。さっそく庭で草共と戯れてみたりして。それにしてもちょっと見ないうちに、一面雑草に覆い尽くされつつあった。虫達のためにとわざと抜かずに置いておく必要は、もうなくなったようだ。
午前中はそうやって草むしりに明け暮れ、さて午後である。今日やらずにいつやるのか、というほど絶好調な天気に気力も充実、市民農園の整備に出向くことにする。前回は見ただけだったが、今回は実際に耕すのである。そのために苦土石灰も買ったし、堆肥も買った、市販のボカシ肥も用意した(自家製ボカシ肥は、結局間に合わず…)。
クルマで約15分、フロントガラス越しに見える空の青さはまるで初夏の雰囲気である。市民農園到着。今日が平日ということもあり、他に人影はなかった。
タオルを後頭部に垂らし、麦わら帽を装着。吹き出す汗がうっとうしいので上着を脱ぎ捨て、クルマを降りる。熱した土の匂いが辺り一面に充満していた。
広大な田園地帯の、ささやかな一角が、市民農園として供されている部分である。ちょうど農道を挟んで左右に新旧市民農園が展開される格好になっていて、新しい方ではやっと半分ほどの区画で畝が出来上がったばかりといった具合で、土の色も生々しかった。うちが借りた区画は、今日が始めてのクワ入れだ。
トランクを開け、まずは長靴に履き替える。積んできたクワとシャベル、堆肥などの資材を降ろし、割り当て区画まで2往復。畑の土は、このところの晴天続きで、とてつもなく乾燥しているように見えた。実際、少々踏んだくらいではびくともしない。手強そうだ。とりあえず手順通り、苦土石灰をばらまきにかかる。30平米なので、約4.5キロ分。狭いようで意外に広い30平米。4.5キロ分の石灰など、全然足りないような気がしてしまう。この上に堆肥を50リットル分。やはりまったく太刀打ちできてないような感じに心許ないが、やりすぎはかえって害になるだけなのでここはぐっと我慢して、と。
この状態で一度耕しておくことにする。石灰と堆肥を、土とよく混ぜ合わすように……って土の塊が頑丈すぎてさっぱり混ざったような気がしない。まるで石のように硬く、クワを振り下ろしても嫌な音をたててはじき返されてしまう。乾ききった高地の痩せた大地みたいだと思ったが、とにかく作業を進めなくては始まらない。無駄に体力を消費しないように、昨年会得した省力フォームでクワをふるい続けるのだった。
2時間後、どうにか一通り耕し終えることができた。はやくも脇腹やら胸の筋肉がいい感じにひきつっている。余力があれば畝も作っておこうと思っていたが、とてもそんな体力は残っていない。とりあえず真ん中に一本だけ溝を掘り、その右側にボカシ肥を3kg投入した。だいたい1平米あたり300グラムで十分な計算なので、最初はこんなものでいいだろうと思う。これを土に混ぜ込んだら今日の作業は終了にしよう。
それにしても喉が渇く。日頃愛用している水筒では全然足りない。十数年ぶりに2リットルペットボトルOKの水筒が必要らしい。
世界一シリーズとかいろいろ
農園からの帰り道、ホームセンターに立ち寄ってみる。ミニトマトの苗でも見てみようかと思ったのだが、そこで私は驚くべき状況に遭遇したのであった。
世界一大きなトマト、世界一大きなキュウリ、世界一大きなカボチャ、世界一……まるで国華園のカタログを見ているようだった。“世界一シリーズ”と名札には書かれてあった。いつかどこかが売り出すだろうとは思っていたが、まさかここまで完璧に国華園カタログのラインナップが揃ってしまうと、さすがに壮観である。どこの業者が企画したのかと手に取ってみたが、詳しく記述されていなかった。き、気になる……
その隣では、レモンキュウリだとか、ホオズキトマトだとか、白いナスとかピンクのナスとか、黒いトマトとか、ロシアのトマトとかドイツのトマトとか、これまた国華園カタログで見たことあるようなヤツがずらっと勢揃いしていたのだった。こちらの名札には“世界の野菜シリーズ”とある。さきほどの世界一シリーズと同じ業者のような気もするが、やはり詳しいことはわからない。とても気になる……
種を買ったらけっこうするヤツでも、苗1本になると、200円程度で買える。国華園のカタログではぐぐっと我慢していやつを、ついつい手にとってしまっていた。白いナスとホオズキトマト、そしてドイツのトマト“ジャーマン”…特にホオズキトマトはカタログを見たときから妙に気に入ってた野菜(果物?)なので、ラッキーだった。果たしてどんな味がするのだろうか。みこりんもきっと不思議がってくれることだろう。
あとは普通に黄色いミニトマト“イエローピコ”と、黄玉西瓜&プリンスメロンの接ぎ木苗1本ずつ。
あぁしかし、接ぎ木苗はともかく、あとのはみんなナス科である。この変わった野菜は庭植えにしたいし、またしても植え場所に悩んでしまいそう。
2001.4.24(Tue)
そこに居たもの
朝、みこりんをチャイルドシートに装着している時のこと。突然、「いぬがいるよ」と指さすみこりん。あまりの唐突さに一瞬みこりんが幻でも見たんじゃないかと思ってしまう。なにしろその小さな指先が指し示す方向は、我が家の庭、しかも『完璧な防壁』の内部なのだから。そんなところに“犬”?まだ猫とかならあり得なくはないが……と思いつつも、じっとそちらを見つめるみこりんの表情があんまり真剣だったので、私もつい息を詰めて目を凝らしてみるのだった。
だが犬はどこにも見あたらない。犬どころか、それに類する動物の姿はなかった。やはりみこりんの錯覚かなと思いつつも、もう一度、今度はみこりんの目線の高さを再現して見やってみると……「いた!」。たしかに茶色の毛皮をまとった何かの生き物が座ってる。思わず背筋が総毛立つのを感じた。こんな至近距離に見知らぬ獣の存在を探知したのだ。しかも『完璧な防壁』の中に。
毛の荒さから判断して猫ではなさそうだ。どちらかというと、ダックスフント系な柔らかなロング気味の毛皮だ。するとやはり犬なのだろうか。それにしてはサイズが少々小さいのが気になるが。座ってる肩の高さから判断するに、おそらくシェトランドシープドッグなどよりも小さい。もしや子犬か?もっとよく観察しようと、“犬”のほうへとにじり寄る。いつのまにか心にも余裕が生まれてきたようで、さっきまでの警戒感はほとんどない。
距離にして約50cmまで接近。やっとそいつの正体が判明した。わかった瞬間、思わず大声で笑ってしまいそうになったがそれではみこりんが面白くないだろうから、ここはぐぐっとこらえて正体を伏せたまま保育園へと向かう。みこりんはまだそれが“犬”だと思いこんでいる。種明かしは、今夜戻ってからにしよう。
*
すっかり日も暮れてしまったころ、家へと帰り着く。みこりんは昼間保育園で遊んでるうちに、庭の“犬”の存在をころっと忘れてしまってたらしい。正体の確認はやってないそうである。では、みこりんにも見せてやるとしよう。“犬”の本当の姿を。
みこりんを横抱きにして、そろぉっと“犬”のいるあたりに顔をつきだしてやる。ガレージから庭へと上がる扉のそばに、そいつは座ってるのだ。扉の向こうでみこりんは何を見ただろう。「いた?」と聞いてみると、小さくこくりと頷くのが見えた。「何がいたの?」と問うてみる。みこりんの答えはこうだった。
「サンタさん…」
ちっちゃな声で恥ずかしそうに、みこりんは言った。
そこにいたのは“森のこびと”の置物だった。そう、そのこびとさんは、茶色の洋服を着ていたのだ。その肩口から少し下辺りが、車中のみこりんからは見えていた。私が見たときも、長い耳の垂れた“犬”だと誤認してしまったほどに、その後ろ姿は“犬”っぽかった。…いや、そう脳が勝手に解釈したのだ。一部から全体を推測する際のパターンマッチングの過程において、事実とは異なる結果へと導かれてしまったらしい。しかもそれがみこりんと私とで同じ結果だったというのが、なにやら愉快である。もっとも私の場合は、みこりんの“犬”だという声を聞いているので誘導されてしまった感はあるものの、即座に否定できないほどにそいつに姿は“犬”っぽかった。
見えているものが真実とは限らない。日常に潜む、ちょっと不思議な現象に遭遇できた一日は、こうして終わったのであった。
2001.4.25(Wed)
便利なプラグトレイ
なんという寒さだ。4月も終わろうかという季節とは思えない。
夜にはファンヒータが欠かせず、いまだに毛布をひっかぶって丸まって眠る。いつからこんな風になってしまったんだろう。去年もなかなか寒さが抜けなかったような気がする。野菜の種が発芽しなくて往生した。だが今年はプラグトレイのおかげで夜間部屋に取り込むことができるようになった。200近い苗も、プラグトレイならばお手軽にほいほいと移動できるし場所もとらない。その甲斐あってか昨年は発芽までに1ヶ月以上を要してしまった西瓜やら黄色いトマトやらが、もう発芽している。
100穴パックで128円という安さも魅力だし、培養土の少なさも財布に優しい設計だし、1粒1粒丁寧に蒔くにも適しているし、根鉢が回ったらすっぽり抜いてそのまま定植すればいい便利さも素晴らしい。唯一の弱点は、カボチャなどの大きな種にはちょっと不向きな点だが、それをカバーしようとすると利点の多くが失われてしまうので許容しよう。あとはこのプラグトレイに適した苗収納用ラックを自作すれば、さらに理想に近づくことだろう。来年の課題である。
2001.4.26(Thr)
やるなぁテムザック
大規模災害を実況中継する報道ヘリなどからの映像を見ていると、航空機からの動画配信なんて簡単そうに思えてしまうが、じつはこれがかなり曲者である。
TV局のように大出力の電波を扱う免許を持ってない場合(新しく取るのもなかなか面倒らしい)、データ送信に使える回線はとてもとても細くて弱いものしか選択肢がないのが現実だと思われる。これは、消防や自衛隊なども例外ではなく、阪神淡路大震災のときに自衛隊ヘリからは動画を送る手段がなく、報道ヘリの映像ではじめて惨状が知れ渡ったことは記憶に新しい。
テムザックIVからの映像が滑らかにすいすい動くような時代になれば、こんな悩みなど一掃できるのだが、なかなか先が見えてこないのがなんともまどろっこしい。
ところでさっきのテムザックのプレスリリース一覧を見てたら、こんなもの(横からみた図)が登場していた。テムザックでは“金魚型遠隔操作ロボット”と書いてあったのだが、その異様に丸い形態と、その眠そうな目から、どうしてもタヌキを連想してしまう。なぜにこんなに丸いのか。その謎は発注元の説明で解消した。これはどうやら「ハイテク金魚ちょうちん」らしい。そうか、チョウチンか…。たしかに、似てる…かな?いや、やっぱり眠そうな目と、その周囲のぶっとい輪郭(?)がちょっと雰囲気違うかなぁ。あぁでも中身がどうなってるのかありありと想像できるところがいいなぁ。
2001.4.27(Fri)
みこりんの習熟度
3月ごろまではPCで『打モモ』をやるのがみこりんの日課だった。といってもこれはタイピング練習用ソフトだから、“やる”といっても自分も名前くらいしか読めないみこりんなので、映像を見てるだけで満足してたようである。デタラメにキー操作しても、そこそこ動くところがよかったらしい。でも、ESCキーとかEnterキー、スペースキー、基本的なマウス操作(クリック、ドラッグ)は、これで覚えたみたい。その成果は4月に入ってから別の幼児向けソフトをやるようになって発揮されてきたのであった。
そして先週あたりからJUST SYSTEMが販売している『ももんがクラブ』の体験版CD-ROMに、みこりんはハマってる。これも幼児向けソフトだ。パッケージ片手に「これやりたい!きどうして。きどう。」と言うコトバもサマになってきた。以前やってたソフトが実行前に再起動を要するものだったので、「再起動してるから待っててね」と言ってたのを覚えてしまったらしい。
ももんがクラブのは特に再起動は要らないため、「実行」というコトバが適切なのだが、みこりんが「きどう」というのが面白いのでそのままにしてる。そのうち訂正してやらねば…と思いつつ。
さて、この『ももんがクラブ』ではパズルなどもあって、ドラッグ&ドロップの操作が不可欠だった。果たしてみこりんにできるかな〜と見てたら、それがどうしたといわんばかりに、あっさりとやってのけたので少々驚く。まぁドラッグ操作ができてたみこりんだから、ちょっとコツをつかめば楽勝だったのだろうが、お絵かきするのと、パズルのピースを移動させるのとでは、かなり操作感が違うような。幼児の適応力侮り難し。この分だと、ダブルクリックなぞあっというまにマスターしてしまうだろう。
さらに意外だったのがマウスカーソルを見失った時に、自然とマウスをしゃくるようにくぃくぃっと振ってカーソルのアタリをつける技も習得していたことである。もはや完璧にマウスとマウスカーソルとの連携が身に付いているようだ。もはや「マウスを上にやって」と言っても、マウス本体を持ち上げたりはしないだろう。実際、『ももんがクラブ』のナビゲーション用メニュー操作では、一部緻密なマウス操作が要求される(かなり小さなボタンで左右にスクロールさせる)部分があって、さすがにみこりんもこれには手を焼いていたようなのだが、私の口頭による指示だけで無事にメニュー操作ができるようになった。でもマウスカーソルのどこでもいいわけじゃなく、指先形状のカーソルの人差し指の先端だけが小さな三角ボタンに入ってなければならないので、それがまだみこりんには納得できないようなのだが。メニュー設計悪すぎ。もっとボタンを大きくしとかないと。
さて、あとは本格的に文字の読み方を教えてやらねば。コトバが読めるようになれば、プログラミングもできるようになるに違いあるまい。
2001.4.28(Sat)
はじめての動物病院
ここ最近、にゃんち君の食欲が落ちているので、動物病院へ連れて行くことにした。以前は猫缶ならば食べ残しということはなかったというのに、今ではすっかり見向きもしない。乾燥フードならば少しは食べてくれるが、それさえも一日35グラムを2/3ほどだ。昨夜は大半が残っていた。
にゃんち君をキャリングケースに入れていると、さっそくみこりんが反応しはじめた。こういうアイテムには目がないようだ。動物病院というのもおおいに気になるらしい。赤ちゃんだったころには一緒に連れて行ったことはあるのだが、さすがに0歳ごろの記憶はないのだろう。
病院に着いてみると、先客が3組ほどあった。繁盛しているようだ。建物外装もよりキレイになり、駐車場もいつのまにか整備されていた。
待っていたのは犬ばかり。Licもみこりんも犬は苦手。少し離れて待つことにする。
約一時間後に、ようやく名前を呼ばれた。診察券の名前は、“にゃんち君”ではなく、拾った当時につけた仮の名前が記されているので、なにやら妙な感じだ。修正してもらったほうがいいだろうか…なんて悩みつつ、診察室へ。
にゃんち君は耳を伏せることなく、従順に診察されていた。仔猫のときに診察されたことを覚えてるんだろうか。
血液検査の結果、膵臓と腎臓の機能に異常が見られることが判明。猫にとって腎臓をやられるのはかなりまずいらしく、まずはこちらから治療していくことになった。いわゆる低タンパクの餌による食事療法だ。…それで高タンパクな猫缶を食べなくなっていたのかも。
さて、帰宅後、専用餌の一日摂取量30グラム、その半分15グラムをさっそく計量してみたところ、あまりの少なさにショックを受ける。片手にほんのちょびっと乗っかる程度。これならジャンガリアンハムスターのことりさんが食べる量と大差ないなぁ。高性能な餌は量が少なくてもOKと知識では知っていても、実際に体験するまでそのすごさはわからないものらしい。
ところでみこりんだが、さっそく先ほどの動物病院でのようすを遊びに取り入れていた。猫用キャリングケースの代わりに、自分のおもちゃ箱をひっくり返して、そこにクマのぬいぐるみを収めてる。そしてなにやら診察台の上でごそごそごそ。いつものお医者さんごっことは、少々勝手が違うようだ。今回、注射器は登場したけど、聴診器は出てこなかったものなぁ。なんにしても面白い体験だったことは間違いなさそうだけれど。
蜂の巣そして、テントウムシ
テントウムシが欲しいとみこりんが言うので、一緒に庭を探してみる。さっきプラムの木の上に1匹いたのは覚えてるが、テントウムシならすぐにも見つかりそうな気がして、雑草の中とか落ち葉の下とか探ってみたものの、これが意外に見つからない。テントウムシに限らず、バッタとかそういうありきたりの虫さえいなようだった。代わりにカナヘビ君はあちこちで目に付いたが。
さっきテントウムシを見かけたプラムの木へと戻ってみると、すでに手を伸ばしても届かない高みへと移動したあとで、ゲットすること叶わず。この季節にこれほど虫がいないというのもなんだか妙な感じだ。私が小学生くらいの頃には、レンゲ草と共に無数のバッタの赤ちゃんが群れてたような気がするが…。季節が一ヶ月くらいずれてるような気もしないではない。
ところでみこりんはプラムの木の下で、素晴らしいモノを見つけていた。蜂の巣だ。去年、枝垂れ桜の枝にフタモンアシナガバチが巣を構築していたものの、途中で放棄され、そのままになってたやつだと思われる。いつのまにか落下していたらしい。みこりんはそれを大事そうに手に包み込み、たたたっと駆けていくと、西側の玉葱が植わってところで「ぽぃっ」。捨てたのかと一瞬思ったが、それがみこりん流の“移動”のようであった。そこに蜂の巣が落ちていることが、みこりんを満足させるらしい。
蜂の巣をしかるべき場所に移動させたあとも、テントウムシを諦めきれないみこりんと、近くを散歩がてらさらなる捜索をしてみたのだが、やはり発見できず。本当にこの辺りにはまだ虫達が本格的に活動を始めていないらしい。そういえばモンシロチョウも少なかった。庭の白菜“ポチ”やキャベツの花に乱舞してるのは、そのほとんどがアブや蜂だ。
散歩から戻ってみると、Licがウッドデッキにブラシをかけ終わったあとだった。ペンキ塗りの下準備である。しかし天気予報によれば明日は夜遅くから雨らしい。早起きせねば。
2001.4.29(Sun)
ペンキ塗り
珍しく目覚ましに頼ることなく7時に目覚める。カーテンの隙間から差し込む光で、今朝が絶好のペンキ塗り日和であることを確信した。さっそく作業開始である。
今回塗り直すのは、ウッドデッキのサンルームよりも外側部分だ。雨風をもろにうけて、すっかりペンキ(本当はウッドデッキに使うような木製塗料のことはペンキとは呼ばないのが正解みたいだけど)は剥がれ、部分的に板が反り返りつつある。本当は年に一度は塗り直さねばならないらしいのだが、昨年さぼってしまったので、よけい状況が悪くなっているのだろう。いずれサンルーム内側もやらないといけないのだが、とにかく外側だけは今日、片づけてしまわねば。
サービスで付けてもらっていながら死蔵していたペンキ缶を、厳かに開封。たぶん油性…でも薄める必要はなさそうだった。でも刷毛が大きすぎて開口部に入らない。何か別の容器に移さねばならないが、こんな時に限って、イチゴパックだとかそういう容器類をゴミに出したあとだったりする。散々探し回って、ようやく庭の片隅で忘れられていたプラスティック容器を発見。キレイに洗ってからペンキを注ぎ、塗り始めるのだった。
木目に沿って刷毛を動かしてゆくのだが、防虫防腐の効果もある塗料なので、十分に木に染みこませるように気を遣う。特に継ぎ目部分には、たっぷりと刷毛に含ませ、たらーりたらりと垂らすような感じにやる。一枚ずつ板を塗り上げてゆくのは、じつに単調な作業ではあるが、意外にこれが楽しかったりする。塗装という行為は、モデラーだった昔を思い出させるからかもしれない。美しく仕上がってゆくのは、じつに気持ちがいいものだ。そうやって塗っていると、起き出してきたみこりんが興味深そうに見守ってくれていた。
半分ほど仕上げたところで、朝飯のためLicと交代する。この時点ですでにペンキは半分よりもだいぶ減っていた。ふるい塗料がほとんど剥がれていて吸収量が多かったというのもあるだろうし、隙間にたっぷり流し込んでたのも影響してそうな感じ。はたして足りるだろうか…
空腹を満たした後、みこりんとポットにカボチャの種など播いていたら、Licがペンキの残量が心許ないとの報告があったので買いに出る。ペンキ缶は無印だったため色番号とかがまったく不明なのだが、ホームセンターには油性の屋外木製品用は3種類の色しかなかったので、それほど悩むことなく選ぶことが出来た。空模様がいよいよ怪しくなってきたので急いで帰宅。さっそく隅っこで試し塗り。まったく同じとはいかないだろうが、それほど外してもいないだろう…との予想は、だいたい当たっていた。ほとんど見分けはつかない。塗装再開。
ペンキを温存しながら塗った箇所に二度塗りを施し、ラティスの支柱にも色を乗せる。ここにきて、みこりんが塗りたいと強固に主張し始めた。どうやら先ほどホームセンターで買い足してきた真新しい刷毛が気に入ったらしい。こういう経験も悪くないだろうと思ったので、無難なところでやらせてみることにした。
見よう見まねで、なかなかそれっぽい手つきになっている。この分なら内側を塗り直すときには、みこりん用の刷毛を買っておいてもいいかなと思う。家族総出のペンキ塗りが、ようやく一段落したころ、まさにそのタイミングを見計らっていたかのように、空からぽつりとやってきた。撤収。
午後は一日水槽掃除。それは明くる日の早朝まで続いた…
2001.4.30(Mon)
這いだしてきたもの
夕方、ウッドデッキで日光浴させていたプラグトレイを取り込もうとしたところ、小さな苗の上に、何かが乗っかっているのに気がついた。大きさはゴマ粒よりもちょっと大きいくらい。色は葉っぱとまるっきり同じ。まるで周囲の色彩に己の体色を合わせられるかのような…。そいつはバッタだった。赤ちゃんバッタだ。小さくてもちゃんと目もあり触角もあり、立派なバッタ体型をしている。おそらく孵化したばかりなのだろう。こんな小さなバッタの赤ちゃんを見たのは、ずいぶん久しぶりだ。小学生以来のことかもしれない。
さっそくみこりんを呼んでくる。あれが見えるかな、と指さしてみると、みこりんにもそれが何かすぐにわかったようで、「とって!」とお願いされてしまった。虫かごに入れたいのだろう。でもちょっとサイズが小さすぎだ。そういう説明をしているうちにもみこりんはさらにもう1匹見つけていた。プラグトレイには、大根やら白菜やらカブやらの苗が、ようやく本葉をつけ始めた状態で育っていて、バッタの赤ちゃんにとっては最高の御馳走なのだろう。注意深く葉っぱを裏返したりして探してみると、いるわいるわ。5〜6匹はすぐに見つかった。
それにしてもどうやってこのウッドデッキの上までたどり着いたのだろう。庭にはまだまだ雑草も多く、食べるものには事欠かないはずなのに。よほどおいしい匂いでも発しているのだろうか。まだペンキ塗り立ての有機溶剤系の匂いが立ちこめてるというのに、それをうち破るほどの美味なる香りが漂ってるのかな。
赤ちゃんバッタはじつに可愛らしいのだが、でも小さいとはいえバッタはバッタ、苗にとってはいずれ甚大な被害が出そうな予感。……でも、ま、いいか。丸坊主にでもされない限りは大目に見ておいてやろう。バッタはみこりんのお気に入りの虫の1つでもあるし。
しかしようやくバッタが土から這い出してくる季節とは。やっぱり1ヶ月ほどずれてるような気がしてしょうがない。
折り紙とあやとり
折り紙にハマってるみこりん。さきほどから鶴の折り方を何度も聞いてくる。いちおう折り方の本を開いているのだが、その説明文(とか図解とか)を理解するには、まだ少々早かったようだ。でもあいにく私は水槽掃除の真っ最中で、なかなかフォローできずにいたら、だんだん自分で作るのが飽きてきたらしく、とうとう作りかけの鶴を投げ出してしまっていた。
やっと水槽掃除も終わり、戻ってみると、今度は私に折り紙を折ってと迫ってきた。自分で折れなかったので、代わりにいろいろ折ってもらおうということのようだ。一緒に折ろうと言っても、頑として拒否する。なかなかみこりんも頑固モノである。
ハムスターとかテーブルとか折ってみたのだが、コレが結構指先の鍛錬には良さそうだった。最近、こういう細かな作業をやってないので、よけいそう感じたのかも知れないけれど。
この日みこりんは、あやとりもいろいろ披露して見せてくれた。着々と上達しているようである。