2006.6.1(Thr)
地獄と天国
「じごく回りと、天国回りって知ってる?」
ふいに、みこりんにそう聞かれて、しばし記憶の検索を実施中。
地獄回りに、天国回り……、遥か昔、どこかで聞いたような気もするが、…だめだ、ぜんぜん思い出せない。
「それって何の時に使う言葉?」と聞いてみれば、鉄棒の技の名前であるらしい。これでかなり記憶の絞込みが出来るはずと思ったが、やはり何も思い出せなかった。
みこりんによれば、鉄棒の上に両足の裏を付け、膝をかがめて両手で鉄棒を掴む、そしてぐるんぐるんとその体勢のまま回転する技なのだという。ちなみに前方回転が“天国回り”、後方回転が“地獄回り”と言うらしい。
頭の中で、みこりんがその技を繰り出す姿をイメージしてみる。くるんくるんと。
古い記憶の中に、それと似た光景はあった。そうか、あの技には名前がついていたのか。
この他にも、片足掛けで回転する技や、通常の前回りを足をつかないで連続でやる技についても、みこりんは説明してくれた。どの技にも名前があった。その名前には、やはりまったく覚えがなかったのだけれど、技そのものは子供の頃に見たことがあった。
昔からそんな名前がついていたのか、近年になって命名されたのかはわからないが、子供の鉄棒遊びは、昔からほとんど変わってなさそうだ。
変わらないものがあれば、変わってゆくものもあり。もしかすると、みこりんの世代には、私の子供時代からは想像もできないような進歩を遂げた遊びもあるのかもしれない。滑り台を使った画期的な遊びとか、めずらしいかくれんぼとか、独創的な鬼ごっことか。また、いろいろとみこりんに教えてもらうとしよう。
2006.6.2(Fri)
数字の不思議
おもにみこりんが算数の九九を練習していたのは、風呂場でのこと。壁には雑誌付録の“九九シート”が貼られ(風呂場で使えるようにプラスティック製)、同じく雑誌付録の“九九マシーン”でランダムに問題を出し、それに答え。その甲斐あってか、九九の暗誦速度は、クラスで一番らしい。
保育園な頃から、みこりんは数字に強い興味を示していた。和減乗除の問題に答えるのが趣味みたいなところがあり、特に余りのある割り算には何か感じるものがあったようで、問題と答えを繰り返しては満足そうな表情を浮かべていた。
そして今、学校の算数では、3桁の数字を習っているところらしい。通常、九九で唱えるのは最大でも9×9の81。今宵みこりんはもっと大きな数の掛け算を所望した。
では、「11×11は?」
しばし熟考のみこりん。視線は空中を泳ぎ、何かをイメージしているかのよう。
やがて、みこりんは答える。「121?」あまり自信はなさそうだが…
「正解」
驚くみこりん。へー、というような表情。
では、「12×12は?」
みこりん考え中。
しばらく悩んだあと、「124?」と言った。惜しい。
「128?」「122?」ぶぶー。
「144でした」みこりん残念そう。どうやって計算するのかと言うので、タイルの壁に指で、12×12の筆算を書いてやった。筆算はみこりんも習っていたが、足し算と引き算しかまだやってないようだ。掛け算の筆算も、似たような手順だからと言ってみたものの、各桁に分解して考えるところとか、10の位がなぜ「12×1」でよいのか謎なところがあるらしい。正確には10の位は「(12×1)×10」と計算するのだが、その目に見えない「×10」の部分が、みこりんにはまだなじめないようす。
それではと、「(12×10)+(12×2)」と考えることも出来るよ、と教えてやったら、しばらく頭の中でそれぞれ計算しているもよう。「12×10=120」「12×2=24」「だから答えは…、144?」
「正解」
みこりんは神秘を見たような表情をしていた。おそらく「12×12=12×(10+2)=(12×10)+(12×2)」の式の変換過程を、おぼろげながらに垣間見てしまったのではなかろうか。
数字に対するセンスはわりといいのかもしれない。
2006.6.3(Sat)
銀色のカギ
平日、みこりんは学校の授業が終わると、構内に開設されている学童保育(共働き世帯の子供を対象にした児童教室)で夕方まで過ごす。そこで宿題をやったり、友達と遊んだりしているわけなのだが、たまには学童保育に行かずに集団下校して家で過ごしたい時もあるらしい。
学童保育に来ている子供の数は、約60人ほど。中には騒いで他の子の邪魔をするのもいたりして、そういうのがみこりん的に許せないようだ。
そんな折、来週の火曜日、ある事情により、みこりんは集団下校し、一人で留守番してもよいことになった。喜びを隠しきれないみこりん。というのも、そのためには家のカギを、みこりん用にも作るということを意味していたから。みこりんはカギが大好きなのだ。自分専用のカギで玄関を開け、部屋で過ごすのが、なんだかお姉さんっぽくてよいのかもしれない。
昨日の夜から、どこでカギを作ってもらうのか、何かにつけて気にしていたみこりん。今朝も、そのことが気になって仕方ない様子だったので、さくっと午前中、カギを作りに出かけた。
向かった先は、スーパー内に店を出しているカギ屋さん。以前Licが靴の修理をしてもらったところなので、みこりんにも覚えがあったようだ。
店のお姉さんに私のカギを渡して、待つこと10分。やがて、ぴかぴかの真新しいカギの出来上がり。
両手で包み込むようにして銀色のカギを受け取ったみこりんの表情は、4月の頃よりもしっかりしてきた印象がある。部屋替えを行って、夜、一人で眠るようになってから、みこりんは急速に強くなってきた感じだ。環境が子供に与える影響というのは、想像以上にあるのかもしれない。
張替え作業
以前から、網戸の修復をしなくてはなぁ…、と思いつつ、網の張替え作業がとても大変そうな気がして、なかなか手をつけられずにいたのだが、本格的な夏を目前に控えて、夜でも安心の網戸生活をエンジョイすべく、本日、ホームセンターにて材料を買いそろえてくることに成功した。
網戸の網交換に必要なものは、交換用の網、取り付け用のゴムバンド、ゴムバンド固定用のローラー、そしてカッターだ。この季節は網交換のシーズンらしく、専用のコーナーが店内に設けられていたので、ほとんど迷うことなく用意することができたのは幸いである。
まず、みこりん部屋の網戸から作業開始。この部屋にはエアコンが設置されていないので、網戸の修復は最優先事項なのであった。
網戸を外し、リビングまで移動。そのまま床に置き、経年劣化してぼろぼろになった網を外す。網戸の外周に沿って固定されているゴムバンドを、ぴゅるるるっと溝から取り出せば網は外れる。わかってしまえば超簡単な網戸の構造。
網の屑を掃除機できれいに吸い取ったら、新しい網を網戸のフレームに沿って展開し、先ほどゴムバンドがはまっていた溝に、新しいゴムバンドで網を固定していけばOK。専用のローラーを使って、ごりごりっと力を込めて押せば、魔法のようにぴったりとゴムバンドが網を噛み込んで、固定されてゆくのである。
結構簡単かもしれない…、と思っていたら、なんだか網が斜めになってきたような。ゴムバンドをちょっと戻して、網を張り直し。…む、また網がずれた。ちょっと戻して、張り直し。…むむ、また…。やや苦戦中の私に、Licが鋭い指摘を行った。「まず、ゴムバンドで網の四隅を仮止めしておけばいいんちゃうん?」
咄嗟にイメージできなかった私は、模範演技を見せてもらうことに。
さくさくっとゴムバンドで網を仮止めしてゆくLic。おぉぉ、なるほど。そうか、そうやればいいのか。
ローラーで押し込んでいくとゴムバンドが伸びて仮止め部分にたるみが生じてくるのだけれど、とりあえずそれは気にせず仮止め位置まで固定すればよいらしい。そうしたらたるんだ仮止め箇所を外し、次の仮止め部分までたるみを取りつつローラーで押し。あとはこの繰り返しだ。
ぐるっと枠に沿ってゴムバンドを押し込むことができれば、あとはカッターではみ出た網を切断すればおしまい。これも溝に沿って刃を滑らせれば、どうということのない作業だった。ゴムバンドによる網の固定力は、想像以上のものがある。しかもゴムバンドを押し込むと同時に、網にもテンションがかかってピンと自動的にたるみがとれてゆくのだ。事前の予想では、網をピンときれいに張るのが難しそうに思えたのだが、ほとんど何も考えなくても大丈夫だった。怖いほどに合理的な網戸の構造。これ最初に思いついた人、天才。
一度やり方がわかってしまうと、網戸の張替え作業はとても気持ちのよいものに変わった。続いて2階の廊下と階段の網戸も張替え。作業時間は大幅に短縮されていた。なぜもっと早くこれをやっていなかったのだろうとすら思えてくる。
網を2巻しか買ってきてなかったので、今日のところはこれでおしまい。今年は虫を気にせず、窓を開放することができそうである。
2006.6.4(Sun)
本のタイトル
トイレの友として積んであった本の表紙に、みこりんが惹かれている。「これ、なんていう本?」と聞くので「なんて読むのでしょう」と漢字で書かれたタイトルを指差してみたところ…。
「…げんだいまほう?」
せ、正解。
習ってないはずの漢字なのに、みこりんがさらっと読んでしまったことにやや衝撃を受けつつ。…でも何故読めたのだろう。たしかに『現代魔法』で正解なんだけど。
雰囲気、なのかな。数字だけでなく、文字についてもセンスがよいのかもしれない。
新しいモニタ
Licの使っている2台のPCのうち、片方のモニタが寿命を迎えつつあった。およそ10年モノの14インチCRTだ。もはや修理するという選択肢があろうはずもなく、新しいモニタを買いに出かけた。
家電量販店のPCコーナーにて、ずらりと並んだ液晶モニタをチェックする。高性能なものは、値段もそれなりに高い。とはいえ、3万5千円も出せば、そこそこの品は買えそうだった。が、この2万5千円のヤツも、値段の割りにはよさげな感じ。
メーカーは…、GREEN HOUSE。ずいぶん昔、マウスか何かでこの会社の名前を見たような記憶があった。
それにしても17インチ、1280×1024、応答速度8msで2万5千円って、大丈夫なのか…。一抹の不安がよぎる。しかし現物の画質は、それほど悪くはない印象だ。隣に展示してあるSONYのが酷すぎたというのもあるかもしれないが、うーん、どうしたもんかな。
Licが「液晶も消耗品やからね」と言う。それもそうだね。メーカー保障3年ついてれば十分な気もしてきた。
というわけで購入。
買ってかえって、さっそく開封。14インチのCRTと比較すると、17インチ液晶モニタの画面はかなり大きく感じる。ちなみに私のPCには、今、15インチの液晶モニタが接続されていた。
……、Licに聞いてみる。「この新しいの、自分のと交換してもよい?」
こうして私のPCに新しい17インチ液晶モニタが接続されることになった。Licの壊れたCRTの代わりには、私の使ってた15インチ液晶モニタをどうぞ。
交換作業開始。
みこりんが、わたわたとその光景を見守っている。何かを心配しているようだったのだが、この時にはそれが何なのかわからず。
新しい17インチ液晶モニタは、スピーカー内蔵だった。2万5千円でスピーカー内蔵…。どう考えても、今使ってるスピーカーよりいい音が出るとは思えなかったが、スピーカーの占めている場所が空くという利点の方が私にとっては勝っていた。
スピーカーをどかして、液晶モニタを置いてみる。…お、おぉぉ、なんだかすっきりした感じ。
続いてLicの方。壊れた14インチCRTモニタを撤去して、空いた場所に15インチ液晶モニタを置いてみた。
なんか、すごくちっちゃい。CRTのでかさが如実にわかる瞬間である。CRTは横幅よりも奥行きの方があるので、占めていた空間は膨大だった。そこに薄っぺらい液晶モニタが鎮座するのだから、がらがらなのは自明の理。
これはけっこういいかもしれない。
さて、みこりんが何を心配していたのかやっとわかった。みこりんはモニタを、コンピュータ本体だと思っていたらしい。
Licの壊れたCRTがつながってたPCには、ブラウザにみこりんのお気に入りが多数登録されていたのだ。そのCRTモニタが壊れて、代わりに私の液晶モニタがくっついたものだから、自分のお気に入りはなくなってしまったのだと思ったようだ。
私のPCに新しい液晶モニタが付いたので、みこりんは「おとーさん、もう使い方わかったの?」と不思議そうにしていたのが印象的。モニタをコンピュータ本体だと思っていたみこりんなので、“モニタが新しくなった”=“新しいコンピュータがやってきた”というわけだ。
コンピュータ本体はこの箱の方で、モニタはただ画面を表示するだけなんだよ、ということをできるだけわかりやすく説明してみたのだが、うまく伝わったかどうか…。まぁいずれもっと詳しくPCを分解して教えてやるとしよう。
2006.6.5(Mon)
えすえふ
来月のエレクトーン発表会で、みこりんの演奏する曲が決まったらしい。LicがWebを漁って曲データを発見、さっそく再生してくれているのだが…。
超ウルトライントロクイズに出題されても即答できるほど、私にとっては耳なじみな旋律がスピーカーから流れ出てきていて驚く。うそ、みこりん、これやるの?
その曲の名は、『ツァラトゥストラはかく語りき』だ。みこりんが持ってる楽譜では『ツァラトゥストラはこう言った』になってたが、まぁとにかく、あれだ、映画『2001年宇宙の旅』に使われていたあの有名な曲である。
この曲なら私のPCの中にも入っていたな、と思い出し、再生してみる。学生時代(今から20年くらい昔)に、たまたま街のレコード屋で“映画音楽に使われてるクラシック集”というCDを見つけたので買っておいたやつだ。
がしかし、やはり液晶モニタ内蔵のスピーカーは、しょぼかった。低音と高音がすぱっと抜けて、中間のしおしおな音しか出てこない。なんというか、あの昔懐かしい終戦を告げる玉音放送みたいな雰囲気がぷんぷんしている。
みこりんも先生による模範演奏でメロディは覚えていたらしく、口真似してくれているのだが、以前に比べるとだいぶ音程がしっかりしてきた感じ。
この曲が映画『2001年宇宙の旅』でも使われた曲なんだよと教えてみたところ、みこりんが「それってどんな映画?」と聞くので「…、えすえふ、かな」と非常に大雑把な説明を試みてみた。案の定みこりんには謎の言葉だったようで、「えすえふって?」とさらに追及の手が伸びる。
「んー、……『スターウォーズ』みたいなやつ、かな」「…、ふーん」
一応、伝わったらしい。なんとなくものすごく間違った説明のような気がしないではないのだが、…いつか実物の映画を見せてみようか。開始5分で、みこりん寝そうな予感はするけど。
ちなみにみこりんは『ツァラトゥストラはかく語りき』よりも、映画『スターウォーズ』の曲の方が好きだそうである。そういうことならば、やはり買っておかねばなるまい。エピソードIIIのサントラを。
2006.6.6(Tue)
抜歯
みこりん待望の、“家のカギを持って集団下校”の日がやってきた。カギは落とさないようにランドセルのポケットの中にしまって、元気に登校。
しかし、みこりんには内緒にしていたが、今日は“抜歯”の日でもあった。はたしてみこりんは抜歯の恐怖に耐えられるであろうか。とても心配だ。
夕方、帰宅してみると、ちょうどみこりんがLicに連れられて歯科に向かうところだった。抜歯が待っているとは知らないみこりん。集団下校がうれしかったのか、にこにこしている。
一時間後。
がちゃりと玄関ドアが開き、みこりん帰宅。どことなく“どよーん”とした表情だったが、想像していたほどひどくはないような。「どうだった?」と聞いてみると、痛くはなかったらしい。抜歯の何が怖いかって、私はあの抜歯前に打つ麻酔注射が痛すぎると思っているのだが、最近では麻酔注射をする前に、歯茎を麻痺(?)させる薬剤を塗布してくれるのだとか。ほほぅ、便利な世の中になったものよのぅ。
でも、その薬剤がとてもとても苦かったのだとみこりんは顔をしかめてみせてくれた。歯を抜いたあたりから、今でも何か苦いものが出てると言うので、口をあーんしてもらって中を覗いてみたところ…、ぽっかりと穴が開いていた。うわ、めちゃ痛そう。歯茎内部が赤黒く染まっている。ひどい出血はなさそうだが、しばらくは血が出ても仕方ないかな。
まだ麻酔が効いてるようで、みこりんの口はやや半開き。初めての麻酔の感触が珍しいのか、しきりと抜歯した痕を舌先で触ってみている。あんまり触ってるとあとで痛くなるよと言ったのだが、どうしても気になるようだ。
就寝時間が近づいてくる頃、徐々に痛みがやってきたようで、みこりんやや不安げな表情。一応、痛み止めはもらってきていたが、みこりんによればまだ薬を使うほどではないらしい。
みこりんがベッドに入るのを見届け、灯りを消そうとしたところ、「つけておいて」と言われた。暗くなると不安で痛みが倍増するのかもしれない。そのままにして、みこりんの部屋をあとにする。
しばらくして様子を見に行ったところ、うつぶせになってみこりんは寝ていた。なんだか痛そうな寝方だなと思ったが、無理にひっくり返すと起きるかもしれないので、そのままに。
まぁしかし、抜歯が怖い体験にならずに済んでよかった。あとは横から生えてきてる永久歯が、無事に正常な位置まで降りてきてくれるか、だが、こちらの方はかなり時間がかかりそう。
2006.6.7(Wed)
抜歯翌日
6時半起床。みこりんは抜歯のあとがまだ痛むらしい。昨日の今日なので、無理もない。
朝食を食べるのも一苦労である。右側を抜いてるので、左側で噛み噛み。でもだんだん右の方に寄ってきて、抜いた穴にご飯粒が入ったり。
給食の時のことをみこりんが心配している様子だったので、先生に伝えるべく連絡帳に状況を書いてやることにした。最近は昔ほど給食の時に、「残すな」とか「好き嫌いしない」とか言わなくなったようなので、それほど気にすることもないと思ったのだが、念のため。いや、私の子供時代は給食を残すなんてことは、あり得ないことだったのだ。ちょっとでも残そうものなら、食べきるまで延々と食べさせられ…。まさに地獄。体調の悪い時もあるのに、もともと小食な私はいつも不安に苛まれたものである。
連絡帳に書いて、ついでに判子も押して。これでみこりんも安心したらしく、ほっとしたような表情になった。いつものように元気良く登校していくみこりん。
夜中に大出血とか、発熱とかもなく、いまのところ経過は良さそうなのでやや安心。
2006.6.8(Thr)
『カンフィー・リストレスト一体型マウスパッド(ELECOM製)』
昔はペンだこ。今はマウスだこ。
右手首に出来たマウスだこが、近頃無性に痛くてたまらず、買ってきたのが『カンフィー・リストレスト一体型マウスパッド(ELECOM製)』だ。
以前、パームレストとリストレストをLicが夜なべして作ってくれていたのだが、ぷにぷにだったゲルはすっかり乾燥しきってしまい、もはやその役目を終えていた。しかも、よいマウスパッドに恵まれず、今ではデスクの上で直接マウスを転がす日々だった。
ところがこの『カンフィー・リストレスト一体型マウスパッド(ELECOM製)』を使うようになってから、今までの痛みが嘘のように快適な日々を送っている。これはいい、最高だ。
特にリストレストに使われている低反発ポリウレタンが秀逸。長時間手首を押し当てていても、やさしく受け止めてくれるのでまったく痛みがない。
マウスパッドの方も表面を覆った布によって、ちょうどいい具合にボールが転がり、イライラ感がまったくなし(光学式のマウスでもこの素材は特に問題ないようだ)。裏側の滑り止め素材もよい出来で、デスクに貼りつき微動だにせず。素晴らしすぎる。
手首があまりに快適なので、ついつい長時間同じような姿勢を保ってしまい、今度は背中と首が変に凝ってしまう有様である。やはり適度な休憩は必要らしい。
2006.6.9(Fri)
怖い話
虫とか、闇とか、奇怪な動作をする何か、などに弱いみこりんは、わりと怖がりなのだと思う。でも、そんなみこりんが学校の図書室で借りて読んでる本は、いわゆる“学校の怪談”系な怖い本が多いらしい。
怖いもの見たさというやつかな、とも思ったのだが、みこりんによれば、映画やTVの怖いやつ(つまり実写ということだろう)は本当にあったことだから怖いけど、本の話は本当にあったことじゃないから怖くないんだそうな。
純粋に創作物として本を楽しむ術を、心得ているようだ。でも実写映像にはめちゃくちゃ弱い。みこりんの目には、今でも実写映像はすべて真実として映っているということなのだろうか…。
それはともかく、どんなに“怖いお話”でも、それが創作物ゆえに怖くないというのはなかなか興味深い。怖くないけど“怪談”はお話として面白い、ということなのだろう。それってすごくオトナびた感覚のような気もするが、実写系にはとんと弱いあたりの落差が激しすぎてなかなか微笑ましい。
ところでいまどきの“学校の怪談”系な本には、どんなお話が載っているのだろう。私がみこりんくらいな頃にも、学級文庫にやっぱり怖い系な本は置いてあったが、当時は心霊写真本が流行っていたような。あと『恐怖新聞』などの心霊漫画とか。
みこりんが語ってくれたところによれば、“口裂け女”や“人面犬”といったキーワードは健在らしい。90年代の“人面犬”はともかく、1979年に大流行した“口裂け女”の会話がみこりんとできるとは、少々驚き。
みこりんはフィクションとして“口裂け女”を面白がっているのだが、当時小学生だった私等の世代は、まさにリアルタイムで恐怖した子もいるのではなかろうか。今のようにインターネットもない時代、子供達の噂話で瞬時に日本中に伝播した“口裂け女”。出所不明だっただけに、不気味なリアルさがあったような気がする。校内放送で先生がわざわざ「“口裂け女”はいません。怖がらないように」なんて言うものだから、よけい信憑性が高まった感もありやなしや…。懐かしい思い出だ。
そんなことをみこりんに語ってきかせていると、「ほかにはどんなのがいるの?」ときた。ならば教えてやらねばなるまい、“ぴょんぴょんばばぁ”のことを。
じつは私は“ぴょんぴょんばばぁ”だけは、ちょっと怖いのだ。今でも夜、真っ暗な道をクルマで走ってると、バックミラーが気になって仕方がない。もしかすると、いるんじゃないか、と。ひょっとして“ぴょんぴょんばばぁ”が、ものすごい勢いで追いかけてきてるんじゃないかと…
でもみこりんは、“ぴょんぴょんばばぁ”も“口裂け女”と同じく面白がってくれた。ある意味うらやましいかも。
2006.6.10(Sat)
『たまかっぷ』
先週に引き続き、網戸の張替えを行うため、ホームセンターに出撃。今回は網戸だけではなく、障子の貼替えもする予定なので、資材を念入りに選ぶ。みこりんも同乗してきていたのだが、まだ眠いらしく、クルマで留守番…、の予定が暑かったみたいで途中で合流。無理もない。今日は夏のようなお天気だ。
網戸と障子の張替え資材をゲットしたあとは、みこりんお待ちかねのスーパーへ移動。買い物だけならばわざわざこうして隣の市までやってくる必要はなかったのだが、ここにはみこりんの待ち焦がれていたアレが置いてあるのだ。
地元のスーパーにはなくて、ここには置いてあるもの。それは、『たまごっちカップ』(略して、たまかっぷ)だった。ムシキングやラブ&ベリーのように、カードで対戦するたまごっちのゲームマシンだ。みこりんのたまごっちに対する情熱は、今でも健在だった。
『たまかっぷ』の前には、行列があった。女の子率高し。
1回100円で2ゲームできるらしい。みこりんに何回やりたいのか聞いてみたところ、「5回は多い?多いかなぁ?」と悩んでいる様子。ふむ…、「じゃ2回ね」と200円握らせておく。
ところがみこりん、なかなか行列に並ぼうとしなかった。「ん?」と思ったら、見られてると恥ずかしいらしい。はいはい。というわけで、私は食品売り場へ買い物に。
そろそろいいかなーと、レジでチンしてもらって『たまかっぷ』方面に戻ってみたところ、みこりんは近くにディスプレイしてあるオモチャなどを見ている様子。もう終わったのかな?と思ったら、まだだという。見られてると恥ずかしいけど、一人で並ぶのもちょっと勇気がいる…、といったところだろうか。
近くの休憩椅子に座り見守ることに。みこりんはようやく行列の最後尾に並んだ。女の子達は、ちゃんと100円分終わると、次の子に代わっていた。そのまま列の最後尾に並びなおす子もいて、人気の高さを物語っている。
ほどなくして、みこりんの順番が回ってきた。はじめての『たまかっぷ』、あこがれていた『たまかっぷ』に、いよいよ100円玉を投入…
ややあって、急にみこりんが私の方に駆けてきた。「あれ?」
困っているようだ。みこりんとマシンのところに戻ってみると、画面にはカード挿入の指示が出ていた。はじめての『たまかっぷ』なので、みこりんはカードを持っていない。だからみこりんはカードを使わない設定で進めようとしたらしい。にもかかわらず、カードを求められてしまったようで。うーん…。時間制限があるみたいだから、このまま待つと自動的に次のステップに進めそうだが…、などと考えていたら、後ろに並んでいた女の子が「はい」と言ってみこりんにカードを1枚貸してくれた。
女の子の機転によって、みこりんは無事、はじめての『たまかっぷ』を終えることが出来た。ありがとう、ありがとう。みこりんはゲットした自分のカードを手に、満足そうだ(ゲームが終わるとカードが1枚手に入る)。ちなみにカードを貸してくれた女の子は、分厚いカードフォルダを持参していた。その姿に数ヶ月後のみこりんを見た気がした。
2回目の『たまかっぷ』が終わると、みこりんの手には2枚のカードが残ることになる。まだカードフォルダが必要なレベルではなかったが、みこりん的にはカタチから揃えたい気持ちもあるようで、しばらく文房具売り場を彷徨ってみたりして。
でも気に入ったものはなかったらしく、帰路につく。
帰りのクルマの中で、カードを見ながらみこりんが「読経…」がどうとかつぶやいているのが妙に気になった。なにやら妖しげな。カードにそう書いてあるとみこりんは主張しているのだが…
赤信号待ちを見計らってひょいとカードを覗いてみれば、「…どきょう」、たしかに書いてあるな。
カードにはそれぞれステータス増減値が刻印されており、その項目の1つに“どきょう”というのがあって…、「わかった、度胸か!」。
みこりんは今日、新しい言葉を覚えた。
障子貼り
午後、まっさきに網戸の修復。先週コツはつかんだので、ちゃっちゃと終わる。
続いて4月までみこりんの部屋だった和室の、障子の貼り替え。こっちは前回やったのがかなり前のことなので、障子戸を窓枠から外すところで早くもつまづく。というかなんで素直に外れないかな…。
結局、畳を上げるはめになってしまった。畳の厚さが想定外の仕様なのか、もともと建て付けが悪いのか、気になるところだ。
ウッドデッキに外した障子戸を立てかけ、みこりんと二人で障子剥がしをぺとぺと塗って、しばし待ち、一気に剥がす!そして残った糊を、激しく雑巾で拭き取る!うぉぉぉぉ!
みこりんはがんばっていた。でも、その非力な手にこの作業はちょっと酷だったか。開始15分ほどで、みこりん撤退。
それでもどうにか糊を剥がし終え、乾燥待ち。さきほどからLicが和室の隅で何かを構築しているようだが…、いったい何をやっているのか。気になる…
ちらと覗いてみれば、「な、なんじゃぁこりゃぁ!」
もともとこの部屋に置いてあったテレビデオ(TVとビデオが合体したマシン)に、うねうねと接続されているのは、どこから発掘してきたのかセガ・ドリームキャストに、ニンテンドー64。その存在すら忘れかけるほどの太古の遺品(ゲームマシン)が、今、まさに蘇らんとしていた。
Licが独身時代に愛用していたAVセレクタが大活躍である。このセレクタには4台まで接続可能なので、まだ余裕はあった。となると、やはりアレも繋ぎたくなる。置き場所はLicによって着々と整備されてきているので、問題なし。
2階の物置部屋の、さらに押入れの中で昏々と眠り続ける、3DO。最後に電源を入れてから、もう何年が経っただろう。起動するのかどうか、そのあたりからしてもう不安。
みこりんはなんだか変わったものが次々と現れてくるので、興味津々の様子。自ら引き出しの奥を探り、そこに隠れていたものを見つけ出していた。セガ・サターンか。懐かしい。でも、そのソフトはドリームキャストでも再生できたような気がするので(できなかったような気もしつつ)、そのまま眠らせておこう。
しかし、いったいなぜ古代のゲームマシンを復活させているのか。私にもよくわからない。案外、部屋が片付いたから、だったりして…
接続も終わったところで、いよいよソフトの起動開始。だが、みこりんがもっとも遊びたがっていたニンテンドー64の『ぴかちゅう元気でちゅう』は、起動せず。みこりんがっかり。マシン本体は生きているようなので、ROMカートリッジが壊れている模様。
みこりんにも楽しく遊べそうなものといえば、『スペースチャンネル5』。ドリームキャストで起動させてみたところ、無事、オープニングが始まった。このゲームは相手の踊りを記憶して、同じ踊りで返さなければならない。記憶力と、音楽的センスが問われる遊びだ。
最初はぜんぜん覚えられないみこりんだったが、子供の若々しい脳の適応力は素晴らしく、ものの10分もすれば、そこそこ踊り返せるようになっていた。
なんてことをやっているうちに、障子戸は、ほどよく乾燥終了。さっそく部屋に取り込んで、障子紙を貼ることにした。前回は糊を刷毛で塗ったのだが、今回は専用のチューブ糊を使う。これならベタつきも少ないんじゃないかな、と期待して。
私が塗り、Licが塗り、そしてみこりんも塗ってくれた。うん、やはりなんというか塗りやすい感じ。その上に、巻紙をくるくる〜っと…。
前回はこのあたりでかなり苦戦した記憶があるのだが、今回はあっさりと障子紙は枠にくっついてくれた。しかし、罠はこの先にあり。
枠からはみ出した紙を、カッターで切るところ。刃は新品にもかかわらず、糊で濡れた障子紙は、容易には切れてくれず、ちょっと切っては刃が繊維に引っかかり、ずるずるっと破れ。破れた紙を枠に貼り直しつつ、またちょっと切っては、ずるずるっと。んー、何か根本的に間違ってるような予感。
そういえば紙や糊を買ったコーナーに、カッターも置いてあったことを思い出す。もしかしてあれか。あのカッターは、普通のカッターとは違うのかもしれない。
でも今はこのカッターを使い続けるしかない。放っておいたらはみ出した糊で、余分な紙まで枠にくっついてしまう。
ちょびっとづつ切り進み(切る、というよりは破ってるような)、どうにか2枚、仕上げ完了。
明日、もう一度ホームセンターに行ってみよう。何かわかるかもしれない。
2006.6.11(Sun)
『たまかっぷ』2日目
外は雨。音もなく細い雨が降っている。
座敷に新聞紙を敷き詰め、外した障子戸から障子紙を剥がした。うちは紙媒体の新聞は取っていないのだけれど、たまに見本が郵便受けに入っているので、こうして便利に使わせてもらっている。
さて、木枠だけになった障子戸を壁に立てかけ、乾燥させている間に、足りなくなった糊でも買ってこよう。みこりんも瞳をきらりんと輝かせて、助手席に乗った。もちろん『たまかっぷ』狙いだ。だから今日も隣の市まで足を伸ばす。
昨日と同じくみこりんには200円玉を握らせて、私は食品売り場へ買い物に。
しばらくして『たまかっぷ』の所に戻ってみると、みこりんはやはり行列には並んでいなかった。…、一人で行列に並ぶのが怖いんだろうか。私が近くの休憩椅子に座ると、みこりんはようやく行列の最後尾に並んだ。
『たまかっぷ』に用意されているゲームは、どれも制限時間があるようなので、適度に行列は進み、いよいよみこりんの番がやってきた。…のだが、みこりん何か思案中。そして私の方に駆けてきた。
また問題が発生したのだろうか。そう思っていると、みこりんはやや遠慮がちに、こんなことを言った。「カードだけ買ってもいい?」
『たまかっぷ』では、ゲームをするモードと、カードの販売を行うモードの2種類が用意されている(いずれも1回100円)。ゲームをするには、カードは必須ではなかったが、あったほうがより楽しい。みこりんの手持ちはまだ2枚。というわけで、まずはこれを増やしておきたいらしい。
ゲームをやったら必ず1枚手に入るのに、わざわざカードだけ買う必要があるのかな?と思ったりもするのだが、これには理由があった。カードにはキャラクターとアイテムの2種類があり、みこりんが欲しいのはキャラクターカードらしい。ゲームのあとに出てくるカードの種類がランダムなのに対して、カード販売モードでは種類を指定できるというのだ。
「買っておいで」と言ってやると、みこりんは喜んでマシンに戻り、ボタンをぽちっと押している。お目当てのカードは出ただろうか。
……、なにやらみこりんの表情が曇っている。気になったのでそばに寄ってみると、「おすボタンまちがえた」とみこりんは言った。間違ってアイテムカードのボタンを押したようだ。ありゃまぁ。
でもすぐに立ち直り、列の最後に並びなおすみこりん。次、キャラクターカードが出たら問題なし、というところだろう。
はたして2回目、キャラクターカードは出た。しかもわりとみこりんのお気に入りキャラ系。
くじ運は、けっこういいみこりんであった。
ネコソファ
午後、補充した糊で、無事、障子紙は貼り終わった。あとは枠に沿って切るだけだが、今日は秘密兵器がある。
『障子紙専用カッター』だ。普通のカッターと違うところは、その刃先。日本刀の切っ先のように、丸くゆるやかなカーブを描いている。なるほど、これなら刃が紙と接する部分はなめらかな線になる。刃先が鋭角な通常のカッターが、点で引っかくようになるのに対して、こちらはあくまでも柔らかくソフトに滑るようにして切ってゆく。
実際に切ってみると、その違いは明らかだった。昨日あれほど苦労したのが、まるで嘘のように、さらさらと切れてゆく。
切れ味の点でやや不安なところもあったけれど、昨日とは比較にならない短時間で作業終了。やはり専用工具だけのことはある。
浮いた時間で、にゃんちくんのケージ掃除。抜け毛で真っ白になってしまった、にゃんちくん専用のソファも取り替えてやる。季節が季節なので、ホームセンターにはアルミ板とか保冷剤入りとか涼しそうなブツも売っていたが、にゃんちくんのケージにはいずれもちょっと大きすぎた。そこでいわゆる普通のネコ用ソファを買って来たのだが…(屋根はついてないので、今使ってる冬用よりは涼しいはず)。
ネコは用心深いという。だから新しいソファを、にゃんちくんが気に入ってくれるかとても心配だった。できるだけさりげなく、そっと廊下に置いて様子をうかがう。
階段を駆け下りたり、上ったり、途中の窓枠に飛び乗って外の景色を眺めてみたり。ひとしきり遊び終えたにゃんちくんが、私のそばにやってきて、体をこすりつけて甘えている。私はケージの無数の枠を掃除するのに手一杯で、遊べない。
遊んでもらえないとわかったのか、にゃんちくんが離れてゆく。そして向かった先は、新しいソファを置いた場所。
すべるようにソファに近づいてゆくにゃんちくん。緊張の一瞬である。
思わず手が止まった。にゃんちくんは、まるでそれがずっと以前から自分のものであるかのように、あまりに自然にソファの中に収まっていた。特に警戒する様子もなく、匂いをかぐこともなく、するっと入って丸まっている。
気に入ってくれたようだ。
あるいは…、ネコというものは、こういう形状をしたものを見ると、入らずにはいられない生き物なのかもしれない。たとえば爪研ぎ板に乗ると、何も教えてないのに爪を研ぐのと同じような感覚で。
ケージ掃除は思いのほか時間がかかった。途中、夕食をはさみ、みこりんが眠る時間までせっせと雑巾で拭き拭き。その甲斐あって、ケージは見違えるように美しくなった。
新しいソファをケージの2階部分に装着し、にゃんちくんに入り心地を確認してもらったところ、「なかなかよいにゃ」との返事が返ってきた。SSサイズにして正解だった。これ以上大きかったら、2階部分に置けなかっただろう。以前のものにくらべると、ややサイズダウンしてはいるのだけれど、にゃんちくんは小柄なので大丈夫っぽい。
丸まったまま、仰向けになって長い尻尾を抱え込み、ぺしぺしと目を細めて舐めている。ものすごいくつろぎようだ。
にゃんちくんが選り好みの強いネコじゃなくて、よかった。
2006.6.12(Mon)
プール開き
小学校でプール解禁。みこりんも、おにゅうの水着セットを持って、いさんで登校していった。
昼間の陽射しは、夏かと思うほどの激しさがあった。さぞやプールも気持ちよかったことだろう。
でも、みこりんによれば「めちゃつめたかった」らしい。とはいえ、プール好きなみこりんのこと、それが不満というほどのことでもないようだ。
しかも今日はいきなり大プールだったという。さすが中学年。
ただ、大プールだと背伸びしてないと顔が沈んでしまい、かといって小プールでは浅すぎて思い切り泳げない。微妙な年頃の小学3年生なのであった。
明日もプールがある。そこで、みこりんは櫛を持っていくことにしたようだ。他の女の子は既に今日持ってきていたらしい。ちょっと対抗心、みたいな?
3年生からは、着替えも専用の更衣室が使えるようになったと言っていた。男の子はそれでもすっぽんぽんで廊下を駆け回ったりしてるそうだが、女の子はそんな男の子と部屋が分かれてみんな安心とか。そういうお年頃なのであった。
2006.6.13(Tue)
こっくりさん
学校の図書室にあるという“怖い本”が、いかなるものか興味があったので、みこりんに今度借りてくるよう言っておいたところ、さっそく今日、持ち帰ってきてくれていた。
ハードカバーだった。適度に厚い。奥付を見ると、90年代の出版だとわかった。“学校の階段怪談シリーズ”とタイトル脇に小さく書かれており、みこりんはこれと似たのがまだたくさんあるのだと話してくれた。
ぱらぱらとページをめくってみる。投稿作品を載せてあるような“雰囲気”を醸し出す構成になっていた。ふむふむ、こっくりさんか、なにもかもみな懐かしい…
みこりんが「こっくりさんて、なに?」と聞いてきた。どうやるのかは本を読んだので知っているようだが、それがなんなのか、どうして十円玉が動くのか、というあたりが未知の領域になってるらしい。
「こっくりさんとは、“狐狗狸”とも書き、おもに動物の霊が呼び出しに応じて十円玉を動かしているのだよ」などともっともらしい説明をしてみたところ、「動物にも“れい”っておるのー?」と不思議がっていたが、なんとなく基本原理(のようなもの)は理解できたみたい。まぁ、子供時代のちょっと変わった遊びだ。とはいえ、はまっちゃうと実際に精神に失調きたすおそれもあるようなので(霊の仕業なんかじゃなくて)、深入りしずぎは禁物だが。
私が小学生だった70年代、こっくりさんは学校でも大流行した時期がある。休み時間になると、女子が教室のそこここで数名ずつ集まって「こっくりさんこっくりさん…」もしくは「えんじぇるさんえんじぇるさん…」と唱えていたものだ。私もテスト時間中に余った時間を利用して、シャーペンを握りしめ“ひとりこっくりさん”に挑戦してみたりも…
幸い、投稿記事が書けるような奇怪な現象が起こったためしはなかったけれど。これも学校から“こっくりさん禁止令”が出て、かえって子供たちにこっくりさんに対する信憑性を増してしまった感もありやなしや。
ちなみに、みこりんの教室(というか学校)では、こっくりさん遊びはまったく流行ってはいないらしい。もちろん、みこりんもやったことはないそうだ。すっかり過去の遊びになってしまったのかもしれない。
それに、ほら、本当に十円玉が触ってもいないのに動いたりしたら、怖いし…
2006.6.14(Wed)
夏に長袖、冬に半袖
90年代、浮かれていた日本がバブル崩壊でがっくりと膝をついた頃、私の勤務する会社でも突如として経費削減が叫ばれ始めた。もっともわかりやすい例でいうと、“エアコンを勝手に使うの禁止”になったことが挙げられる。
たぶんこの工場内の業務用エアコンの数だけでも数百はあるだろうから、この制度は結構効いているのかもしれない。そのせいか、近頃では室温が30度を超えていても、エアコン作動の許可が出なくなった。おそらくエアコン作動の可否判定に使われる室温計が、比較的涼しい場所に置いてあるのだろう。
もっとも、たとえエアコン作動の許可が出たとしても、設定温度は厳しく28度になっているため、冷えすぎて寒いなんてこともない。しかし、設定温度が低すぎないか調べられるようになったのは最近のことなので、うちの会社はまだまだ予断を許さない状況なのかもしれない(忙しいばかりで儲けは少ない...orz)。
思えばバブルな頃が異常だったのだ。なにしろエアコンの設定温度は限界ギリギリの18度とかになっていて、夏だというのにまるで冬のように長袖作業服の下にセーターを着込んでいなければならないほどだった(冬は冬で、暖房が暑すぎ、半袖に…。まさに季節逆転現象。)
冷房に弱い私にとっては、日々が苦痛であった。偏頭痛はするは、胃腸の具合はおかしくなるは、部屋から一歩でも出ようものなら太陽に炙られた外気温との落差が激しすぎて発汗機能が変になるは、etc...
18度はさすがにおかしいだろうと、24度に設定温度を上げておいたら、いつのまにかまた18度に戻ってるし。みんな寒くないのかと思ったが、みんなして長袖着てたりするので(夏用の半袖作業服があるのに)、根本的に何かが変だと感じていた。
とはいえ、現在でもクールビズとやらがニュースになるぐらいなので、“根本的に変かもしれない事象”はあちらこちらで継続しているのかもしれない。
というか、この手のノーネクタイ運動とか半袖ファッションは、ずぅっと以前、私が高校生くらいな頃から手を変え品を変え現在まで、延々と何十年もやってるような。たぶん“省エネ”という単語が産まれた時代から続いてるんだと思うのだが、いったい何がエアコンの設定温度をそこまで下げさせるのか。
計り知れない謎だ…
2006.6.15(Thr)
生卵かけご飯の作り方
みこりんが生卵かけご飯にするというので、茶碗にあつあつご飯を盛り、そのてっぺんを箸でちょいと凹ませて、生卵をコンコンと割り、ぱかっと開いて卵投入。このようにして茶碗に直接卵を割り入れるのが普通なのだと、ずっと思っていたのだが、どうやらこれにも地域性(?)があるらしい。
Licは、まず別の皿にいったん卵を割り入れ、醤油を加えた後、箸でよくかき混ぜ、とろとろになったやつを茶碗のご飯にかけるのだという。
Lic式の利点は、卵に何か異常があっても事前に発見できるところ。まさにさきほどみこりんの茶碗に割り入れた卵には、赤っぽい異物が入っていて、Licのと交換したばかりだ。たしかに事前確認は重要かもしれない。
加えて卵単独で混ぜるため、いい感じにトロトロになるところだろうか。わたしのやり方だと、あまり混ぜられないため卵白がでろーんと塊になってて、ちょっと食感がいまいちな感じ。このせいで、小さい頃はわざわざ卵黄だけをよりわけて、ご飯にかけていたものだ。習慣とは恐ろしい。わかっていながら同じことを続けてしまうとは。
ところでみこりんは卵かけご飯を、箸ではなく、スプーンで食べる癖がある。わりとお上品なところのあるみこりんであった。
2006.6.16(Fri)
『アバラ』
ちょっとまえに『アバラ』(作:弐瓶 勉)を買ってみたので、その感想など。
この本との最初の出会いは、地元の本屋さんの新刊コーナー。平積みになっていたのだが、黒々とした表紙が、かなり異彩を放っていた。新刊コーナーは立ち読み禁止区域なので、その時は手に取らず。帰宅してから、さっそくWebにて情報収集。結局、今回もAmazonにて手配することにした(地元の本屋さんにもPCは置いてあったが、レジ内にあるので客は使えない。立ち読み禁止にするなら、検索手段を用意しておかないと、どんどん客を逃がすことになるのでは?)。
届いた本のページを開き、折込の絵を見て、「あぁ、なるほど、ギーガーか」と思い、はじまりを見て「80年代のサイバーパンク・コミックっぽい」印象を受けた。いずれも私にとっては、とても懐かしい思い出があるので、悪くはない。むしろ楽しみ。
ちなみにギーガー(H.R.Giger)の画集は、2冊持っている。貧乏な学生時代には買えず、働き始めてから買ったものだ。画集はいずれもでかすぎて本棚におさまらず、今も本棚の上に寝かせて置いてある。
アクションシーンは実写でいうと雨宮慶太のいいとこどりしたような具合で、空間をダイナミックに活かして動くため、各コマは静止絵なのに緊張感がピーンと張り詰めて心地よい。絵の描き込みは、大友克洋や士郎正宗に比べると、ちょっと雑な感じは受けたが、その荒削りなところがこの人の持ち味かもしれない。
ストーリーは、やや読者を置いてけぼりにする感ありだが、そこは想像力でカバーするというのが、この本の楽しみ方なのだろう。まったくぜんぜん謎、というわけでもないし。“雰囲気”を味わうには、このくらいが丁度良いのではなかろうか。
とはいえ、読者を選びそうな本ではある。
今回は買って正解だった。たぶん次作が出ても買うだろう。
2006.6.17(Sat)
虫いろいろ
神棚の榊が干乾びつつあったので、新しいのを買いに行くことにした。先週替えたばかりだというのに、このところの好天続きで、いつのまにか水が涸れていたのが原因だ。
みこりんも一緒に行くという。もちろん『たまかっぷ』狙いに決まっていた。
玄関を出ようとした時、足元の虫かごにふと目が留まった。…、何かいる。覗き込んでみたところ、モンシロチョウがぱたぱたと羽ばたいているのがわかった。
この虫かごには、みこりんが卵から育てていたアオムシが入っていたはず。しかし、それはずっと以前のこと。みこりんにアオムシがどうなったか聞いても、「わかんない」と困ったように答えていたので、てっきり死んだものと思っていたのだが…
同じ時期に卵をとってきたお友達のアオムシは、先月のうちにすっかりチョウになって飛んで行ったという。みこりんのだけが半月も遅れるなんてことは、あり得るのだろうか。
でも確かにこれはモンシロチョウだった。体表の毛並みは美しく、羽の鱗粉も鮮やかで、少しもくたびれた様子がない。どう見ても、今朝羽化したばかりとしか思えなかった。
みこりんにモンシロチョウを見せてみると、なんだか複雑そうな表情をしていた。なにかあり得ないものを見た、ような雰囲気にも感じられた。
もしかするとこのチョウは、ずっと以前からサナギになっていたのだろうか。サナギのままおよそ1ヶ月の時を経て、今、ようやく成虫へと姿を変えた…?謎すぎる。
*
スーパーにて。『たまかっぷ』の行列に並んだみこりんを、休憩椅子から見ていると、すぐ脇にあるサービスカウンターのところで、みこりんよりちょっと小さいくらいの女の子が、何かを発見したらしい。カウンター内の店員さんに一生懸命教えてあげようとしているのだが…
聞き間違いかと思ったが、女の子は確かに「カブトムシがいるよ」と言っていた。カウンターの下にいるらしい。カブトムシが?オモチャか何かだろうか。
店員さんも半信半疑な様子で、女の子の指差す場所を覗き込んでいる。やがて「あ!」という驚きの声が。ま、まさか。
店員さんの手につままれて出てきたのは、まさにカブトムシだった。しかも生きている。6本の脚をわしわしと動かしていた。
そんなことより、私の目はその頭部にくぎ付けになっていた。カブトムシには、“ツノ”が3本あったのだ。
店員さんはツノが3本のカブトムシを手に、昆虫売り場へと足早に駆けていった。
外国産カブトムシが帰化してしまう理由の1つに、売り場からの脱走というのも少なからずあるのかもしれない。なんてこった…
*
帰宅後、モンシロチョウはみこりんが見守る中、自然へと帰してやったのだった。
タイル磨き
午後、風呂場の掃除。
何年か前に、壁のタイルが5枚ほど剥がれたのを接着剤で修復した際、ガムテープで動かないように留めた。もちろんガムテープなので、くっついたらなかなか剥がれない。テープ剥がしを買ってこなくてはなぁ…、と思ったまま、幾歳月。
まさに光陰矢のごとし。
このままガムテープが風呂場と一体化するやに思われた今日、ようやくテープ剥がしを買ってくることに成功した。超強力タイプ、ガムテープでもお任せ、と書いてある。じつに頼もしい。
ガムテープ表面にはビニールコーティングが施されているため、端から少しずつ薬剤を染み込ませる方法をとった。少し剥がしてはシュッと一吹き。慎重に慎重に…
おぉぉ、見よ!二度と永久に剥がれることはないと思われた頑固なガムテープが、まるで魔法のようにめくれていくではないか。テープ剥がし恐るべし。ラベルに偽りなし、だ。
気持ちよいほどガムテープは、キレイに剥がれていった。わずかな痕跡さえも残ってはいない。しかしこんなに強力な薬剤が、手についても大丈夫なんだろうか。ラベルには“大丈夫です”と書いてあったが…。薬剤でべたべたな両手を、にぎにぎと動かしてみる。なんか皮膚がくっつくような感触があった。
そんなことをしていると、Licがやってきて、薬品臭がものすごいことになっていると言った。そう言われてみれば、この臭い、思いっきり石油系な感じだ。
家中の窓を開放し、急速換気。爽やかな風が、異臭を運び去ってゆく。
ついでにタイルの掃除を言いつけられたので、がしがしと洗う。ちょっと前にLicが掃除したばかりなので、さほど汚れているわけではなかったのだが、Licの手の届かない辺りが少し気になるところ。
あまり気合入れてやらんでもよい、と言われたのだが、気が付いたときには四方の壁をつるつるに磨き上げてしまっていた。シャワーの湯気がもうもうと立ち込め、なんだか息が苦しい…。薬品臭と洗剤の匂い、それに湯気にあてられ、なんだか頭がぼぅっとする。全身から汗が噴出し、それでいてなぜか両腕は総毛だっていた。
朝から妙に鳥肌が立つな、とは思っていたのだが…。これはいったい何のサインなのか。
タイル掃除を終え、頭からシャワーを浴びて汗を洗い流し、さっぱりしてから布団に倒れ込む。んー、布団の柔らかさが心地よい。
*
ひとねむりしたあと、みこりんとガレージの隅にたまった落ち葉の掃除など。
外はいつのまにか小雨。そして吹き荒れる風。妙な天気だ。
みこりんがほうきで落ち葉を集め、ちりとりに入れる係り。それを私が菜園2号まで運んでいって土に混ぜ。
みこりんのお手伝いはずいぶん役に立つようになった。落ち葉の下から這い出してくるワラジムシがちょっと怖いようだったが、逃げ出すほどではなく。ほどなくして落ち葉掃除終了。
日暮れ近く、予定通り義妹夫婦が到着した。遠路はるばるようこそ。
にゃんちくんが警戒して耳をぺたっと寝かせ、うぅぅぅと唸っていたが、2時間もしたら普通に体をすりすりさせて甘えていたらしい。“怖い”が“好き”になるきっかけって何なのか、にゃんちくんに聞いてみたいところだ。
みこりんはみこりんで、日付が明日に変わる頃まで遊んでもらっていたが、やがて眠さに耐え切れず無念そうに自室へと引き上げていった。
おそらくみこりん、明日の朝は超早起きな予感。
2006.6.18(Sun)
庭にて
お昼過ぎまで爆睡。猛烈に体がだるい。眠い…
夢うつつに、ガレージからクルマが発進してゆく音を聞いた。
「あぁ、義妹夫婦が出かけていったのだな」と推測しつつも、なぜか「夕方になったらまた戻ってくるだろう」と思い込んでいて、そのまま安心して眠り続け…
ふいに、ぱちっと目が覚めた。夕方になっても戻ってはこないと、急に気が付いたのだった。一泊二日なんだから、戻ってくるはずがなかった。ふ、不覚 orz...
そよそよと風が通り抜けてゆく階段を下り、リビングへ。窓の外が真っ白に見える。光が溢れていた。
目を細めて、庭に出る。光の中に、一面の緑が視界の下半分を覆っていた。
つい最近、草引きしたような気もするが、もはや土の表面はほとんど見えず。おどろくべき植物の生長力だ。
ラジコンカーで遊んでいたみこりんが、ちょろちょろとやってきて、一面の緑の中に、ただ1点、透き通るように美しく輝く薄紅色の物体を発見。あれは何かと問うので、スイートピーの花だと教えてやった。
さっそく花壇の奥に分け入ってゆくみこりん。薄紅色の花を、つんつんと触ってみて、何事か確認している様子。どうやらスイートピーは壁際のネットに絡みつくことに失敗し、地表をのたくっているらしい。花は1つきり。もしかすると気付かないうちに、もっと咲いていたかもしれない。隣で旺盛に茂っているシュウメイギクに、スイートピーは徐々に飲み込まれつつあった。
盛大に枝葉を広げている枝垂れ桜とプラムの木。去年よりも倍くらいでかくなったような気が。
みこりんが重なり合う葉っぱを見上げて、プラムの実を探していた。毎年たくさんの花を咲かせるものの、無事に大きくなる果実は少ない。風で落ちたり、鳥に食べられたり。ざっと見た限り、残っている実は1つだけのような気がする。これも夏になり、甘く熟してゆく過程で虫に食べられてしまうかもしれない。
ちょっと残念そうなみこりん。
菜園1号のトマトが、いつのまにか花を咲かせていた。いや、花どころかピンポン玉サイズの実まで出来ている。みこりんも「やったー!」なんて喜んでいるが、近頃みこりんあまりトマトを食べなくなった。微妙な酸味が苦手になったらしい。保育園な頃は、でっかいトマトを丸齧りしていたものだが…。成長と共に、味の好みも変わってゆくのかもしれない。
みこりんが思わずかじりついてしまうような、すごいトマトを育ててみよう。オレンジ色のやら黄色いのやら、変わった形のやら。今年は間に合わなかったけれど、来年はきっと…
2006.6.19(Mon)
Chinese Defence Today
すべてを読破するには少々ページ数が多いけれど、兵器開発の遍歴がわかってなかなか興味深い。たとえば60年代〜70年代はソ連やフランス等から兵器を購入し、その技術をコピー品を造ることで得、80年代、中国オリジナルな兵器の開発へと移行。しかし西側諸国との格差は埋めがたく、開発に苦慮、頓挫するものもあり(西側の共産圏への輸出規制も痛かったようだ)。
そして90年代、崩壊したソ連に代わり、“ロシア”との急速な結びつき。ロシアの高性能兵器を次々と購入、実戦配備…。
ロシア製といって侮ることなかれ。ハイテク兵器はアメリカだけのものではない。
2006.6.20(Tue)
床の上にいたもの
近頃はすっかり日も長くなり、午後7時といってもまだまだ明るい。
Licが仕事で遅くなるとのことで、先にみこりんと晩御飯を食べていたところ…。ふいにみこりが足元を指差して言った。「なんかおる!」
またクモでも出たのかと思ったが、どうも様子がおかしい。床の上をかさかさと歩いているのは、クモにしては妙に細かった。蟻?のようで、ちょっと違う。
体長にして5ミリほど。椅子に座ったままでは、細部を確認することままならず。それでも、頭部がやけにとんがってることだけはわかった。「な、なにやつ!?」
床に顔を近づけ、じぃぃぃっと観察。全身が黒、というか濃い褐色で、4本足で立っている、らしい。……、4本?
あとの2本はどうした、と思った瞬間、わかった。こいつはカマキリだと。頭部がとんがったように見えていたのは、前足のカマを構えていたからだ。カマキリ独特のポーズだった。
カマキリだとわかったとたん、さっきまで怖がっていたみこりんが、「うそ!」と興味津々で覗き込んでいた。小さいもの好きなみこりんの血が騒ぐのだろう。
5ミリ…、こんなに小さいのに、ちゃんとカマキリの姿をしているのが驚異的。みこりんも目の前のこれが、確かにカマキリであることを確認したもよう。触りたいらしいが、あまりにも繊細な体のつくりに、躊躇しているようだ。たしかにこれは触ったとたんに潰れてしまいそう。
とはいえ、このままにしておくと、いつのまにか踏んでしまいそうであぶなかしい。ここはひとつ、蟻を捕まえるときの要領で…
手のひらをカマキリの進行方向に置き、自然に乗っかってくるのを待つ。ちょいちょいと、背後から追ってみると、ぴょこんとうまい具合に飛び乗ってくれた。よしよし。
手のひらに乗せたまま、庭に持っていこうとしたのだが、小さなカマキリは意外に活動的だった。あっと思った時には、手のひらから消えていた。落ちたのだ。
一度見逃したら二度と見つからないのでは…。そんなことを心配をしつつ、落ちたあたりを探して見ると、椅子の背もたれにつかまっているのを無事発見することができた。
今度は落とさないように慎重に慎重に。右手と左手で交互にカマキリをつかまらせつつ、網戸を開け、そろりとウッドデッキにおろす…。ダメじゃん。こんなところに置いたら、洗濯物を干すときに絶対踏む。
みたびカマキリを手に乗せると、今が旬のチコリの花につかまらせてやった。ここなら獲物も見つけることができるだろう。
元気でな、カマキリ。
ところで、カマキリといえば、卵からいっせいにどわどわっと生まれてくるはず。はたして部屋に迷い込んだのは、あの1匹だけだったのだろうか。みこりんも同じようなことを思ったらしく、しばらく床の上を一緒に探して見たりして。
しかし、カマキリはもう見つかることはなかった。
2006.6.21(Wed)
風呂場にいたもの
風呂場から、ピピピと呼び出し音あり。みこりんだ。またナメクジでも見つけたかと思い、さっそく出動。
みこりんは風呂場の片隅を指差してした。「なんかおる」とのこと。ふむふむ?
じっと指差す先を凝視してみたが…、「なにもいないように見える」
「おるよ、小さいの。ちょっと黒っぽい」みこりんが特徴を説明してくれた。
「うーん…」だんだん目の焦点が合わなくなってくる。黒っぽいもの?浴槽の光では弱すぎて、その陰に潜む“小さなもの”の姿は一向に現れてくる気配がない。あるいは、私の視力がそこまで落ちてしまったか、だ。みこりんにはちゃんと見えているのであろう。「ほら、そこに」と何度も指差して見せてくれている。
正体が不明なものに触れてみるのは、かなり危険を伴う行為だが…、このままでは埒があかないので、そっと指先を伸ばしてみた。このへんかな?つんつんと。
「を!」
いた。動いて初めてその存在に気が付いた。それにしても小さい。体色は薄いグレー、迷彩模様のように茶色と黒の薄いラインも入っているようだ。5ミリあるかないか。よくこんな小さいものに気が付いたものだ。
「クモ…、かな?」「ちがうよ、たぶんゲジゲジ!」みこりんがかなり自信たっぷりに言った。この小さいのがゲジゲジ?…でも、そう言われてみれば、こいつの脚はクモなんかよりも、だんぜん多いように見える。
ためしに白い紙きれの上に誘導してみた。くっきりと明らかになるその姿。間違いない。こいつはゲジゲジの子供だ。みこりん正解。
紙の上から落とさないように気をつけながら、小窓を開け、外にぽい。
みこりんは他にもいるんじゃないかと風呂場の中を慎重に見回していた。たしかに1匹だけというのも考えにくい。どこかで大量発生してるような気もするが…。
しばらく二人で探してみたけれど、それ以上何かを発見することはできなかった。どこか外にいたやつが、たまたま迷い込んできたのだろう。
梅雨真っ只中のこの季節。明日はどんな生物が現れるのか。我々の調査は続く。
2006.6.22(Thr)
事件
「ところで、あの事件どうなったの?」とみこりんが言った。
事件、か。ここのところいやな事件ばかりで、みこりんがどの事件のことを言ってるのか、咄嗟に判断できないところが悩ましい。
子供が焼き殺された事件?それとも子供が首を絞められて殺された事件?あるいは子供が落ちて死んだ事件?もしかして北朝鮮の弾道ミサイル?
どれも違っていた。みこりんは“刺された事件”のことが知りたかったらしい。地元で起きた傷害事件だ。
あの事件のことは、あれ以降、学校から特に報告はない。解決したのか、まだ捜査中なのか、あるいは事件そのものがなかったことになったのか。わからない。
みこりんにとってはどこか遠くで起きた事件よりも、身近で発生した事件の方が心配なのは無理もあるまい。
どうなったのかわからないんだよ、と答えると、みこりんはやや不安げに「そう」と言った。通学路付近では、今も不審者情報は絶えない。どこで事件が起きてもおかしくはない状況に、変わりはなかった。
2006.6.23(Fri)
仮想敵国
韓国大統領に盧武鉉が就いてからというもの、反日反米親北朝鮮な言動を事あるごとに取り続け、どんどん妙な方向にいってるなとは思ったが、どうやらこの大統領はまじでやばいな。
とりあえず、この記事を貼っておく。
『日本が挑発できぬ防衛力必要=竹島問題で強調−韓国大統領』
【ソウル22日時事】韓国の盧武鉉大統領は22日、青瓦台(大統領官邸)で開いた海洋警察庁関係者との昼食会で、竹島(韓国名・独島)の領有権や日本との排他的経済水域(EEZ)境界画定問題に関連して「相手が挑発した時に『利益より損害が大きい』と考えるような防衛的対応能力を備えることが重要だ」と強調した。「われわれは少なくとも、日本が挑発できない程度の国防力は持っている」とも述べた。
盧大統領の意図は、海洋警察関係者に任務の忠実な遂行を促す点にあったとみられる。ただ、日韓関係が冷え込んでいる最中に、両国が対立する問題に関し、相手側の威圧的行動を想定したような大統領発言は、波紋を呼ぶことも予想される。
(時事通信) - 6月22日19時1分更新
韓国は日本に対して武力行使も辞さず、と言っているようなものだ(いや、中国や北朝鮮が日本に対してこういうことをいっても別に驚きはしないが、まがりなりにも民主主義を標榜している韓国が、日本に対してこんなことをダイレクトに言っちゃダメでしょう)。反日思想これに極まる。この大統領なら、本気で北朝鮮の核開発及び弾道ミサイル開発を歓迎してもおかしくはあるまい。統一の暁には、それらの軍事力を韓国も得ることになるのだから。実際、テポドン2号をいち早く人工衛星打ち上げ用だとして、北朝鮮の擁護に回ってるし(韓国内では“【社説】世界中が「ミサイル」だと言うのに、「人工衛星」と言い張る韓国政府”というような主張もあるようなので、盧武鉉だけが異常なのかもしれんが)。
韓国における世論がこの大統領と同一ベクトルを有しているのだとしたら、こんな野蛮な国とは正直、付き合えないな。
2006.6.24(Sat)
睡蓮鉢と玉
みこりんと一緒にホームセンターの園芸コーナーを散策。夏も近づくこの季節、すでに収穫可能な状態で売られている大きな野菜の鉢植えなどもあり。巨大シシトウ“ユニコーン”が、普通に売られていてちょっとびっくり。30cm超えの大きな実をつけるシシトウといえば、かなりマニア向けな気もするのだが…。売れてるんだろうか。
睡蓮鉢のところで、みこりんが興味ある物体を見つけたようだ。じっとしゃがみこんだまま動かない。
みこりんが興味津々で選んでいるのは、玉だった。睡蓮鉢に浮かべるように作られた、陶器で出来た大小さまざまな玉だ。ずぅっと以前から、いつかはこれに惹かれるんじゃないかな、と思ってはいたが、小学3年生にしてようやくその時が訪れたようだ。
涼しげな和の模様が描かれた玉を、みこりんは3つ手に乗せていた。1玉150円ほど。まぁそのくらいなら、いいかな。睡蓮鉢に一緒に浮かばせるように、ホテイアオイも2株ほど足して、購入。
私は花苗を少々選んで買ってみた。ミニサイズの花を咲かせる新型の日々草とか、夏らしくポーチュラカとか、燃えるように咲くケイトウとか。
*
帰宅後、さっそく睡蓮鉢の掃除。これはみこりんにすべて任せた。どうやってこびりついた苔を落とすかなと思って見ていると、使い古しの歯ブラシを持ち出してきてしゃこしゃことやっていた。なかなか手馴れたものだ。
みこりんが睡蓮鉢をキレイにしている間に、私は庭の方でちょっと草引き。
おそるべき生命力で復活を遂げたドクダミが、一面に白い花を咲かせている。その合い間に葉を茂らせているのは、わざと抜かなかったミント達。2種類の植物が、渾然一体となって、不思議な調和をみせていた。このミントの葉が濃緑色というあたりポイント高いかもしれない。
この領域はしばらく残しておこう。
その他の部分で気になるところを整理して、と。
みこりんの睡蓮鉢が仕上がったようだ。台座にセットし、ホースで水をなみなみと注ぐ。
驚くほど水が澄んで見える。投入予定の植物がホテイアオイだけなので、土を入れていないのが影響してそう。それにみこりんによって、苔がきれいに剥がされているし。
ホテイアオイを浮かべ、みこりんの買ってきた玉も浮かべ。
なかなか涼しげでよい。だがしかし、1つ重大なことを忘れていた。Licに指摘されてはじめて思い出したのだが…、睡蓮鉢に水を張ってそのままにしていると、いつのまにかボウフラが沸く。ボウフラはやがて蚊になり、吸血を始める。そうならないためには、ボウフラを食べる生物を睡蓮鉢に住まわせておかねばならない。
グッピーを泳がせておく、というのも捨て難いが、みこりん的にはメダカが一番らしい。明日さっそくメダカを買ってこなくては。
睡蓮鉢の置き場所が、少々みこりんにはアクセスに難がある所だったので、ちょいとウッドデッキの上まで移動。ここならすぐそばまで近づけるので、みこりんも観察しやすいだろう。
あとは買ってきた花苗を、テラコッタにさくさくと植え込んで今日の作業終了。
ためしにLicに寄せ植えの評価を聞いてみたところ、「10点」と速答された。もちろん100点満点中の10点だ。どうやらケイトウがダメだったらしい。私もニワトリのトサカみたいなタイプのケイトウはちょっと苦手。だから、今回チョイスしてきたケイトウは燃え盛る炎みたいなフサゲイトウ。これなら大丈夫と思ったのだが…。
みこりんが気に入ってるみたいなので、いいかな。
『ロード・オブ・ザ・リング』
風呂上り、地上波で『ロード・オブ・ザ・リング』が始まったので、見てみることに。
みこりんが「こわいやつ?」と心配していたため、ものすごく大雑把に「ファイナルファンタジーみたいなやつ」と答えてみたところ、ちょっと興味が出てきたらしい。じっと見入っている様子。
魔法使いとホビットの背の高さが倍くらい違うことに関して、みこりんは「魔法使い、すごく大きいねぇ」と感想を漏らしていたのが印象的。私の視点では「ホビットが小さい」と表現するところだが、みこりんは逆に魔法使いの背が高いことに着目している。子供独特の視点かもしれない。
さらに登場人物が主に日本語を話していることに関して、みこりんは「どうして?」と思ったらしい。たしかに風景はどうみても日本とは思えないし、外観からして異質である。そんな彼等がなぜ日本語を話せるのか。
“実写映像は本当のこと”だと思っているらしいみこりんにとっては、たしかにこれは謎であろう。「もともとは違う言語で話しているのだけれど、放送するとき日本語に“吹き替え”てるんだよ」という説明はちょっと難しかったようだ。
明日は日曜日なので、少々夜更かししてもいいかな、というわけで、みこりんも最後まで見る予定だったのだが…。エルフが出てきたあたりで、いつのまにかすぅすぅと寝息をたてていることに気が付いた。
またDVDでも借りてきてやらねばなるまい。
2006.6.25(Sun)
睡蓮鉢とメダカ
来週、エレクトーンの発表会があるので、今日はそのリハーサル。みこりんを音楽教室まで送っていった帰り道、メダカを買っていくことにした。
ホームセンターで普通に売ってるヒメダカを10匹。私がみこりんくらいの子供だった頃は、そのへんの小川にいけば日本固有のメダカが溢れるほどいて、逆にこのヒメダカの方が入手困難だった。なにしろ“野生”のヒメダカは近所には生息していなかったから。図鑑でヒメダカを見ては「このピンクっぽいの飼いたいなぁ」などと思ったものだ。
それがいまでは日本固有のメダカは絶滅危惧種。ヒメダカはホームセンターで1匹24円だ。なんとまぁ…
帰宅後、袋詰のまましばらく睡蓮鉢に浮かべておき、温度をあわせ。
頃合を見計らって、開封。そろりと睡蓮鉢にヒメダカを投入。
新しい環境に驚いたかヒメダカは、しばらく水底でじっと動かない。数えてみると13匹ほど入っていたようだ。まぁ1匹24円だしなぁ…
しばらくその状態が続いた。ヒメダカはまだ動かない。少し時間が必要か。そう思って、そろりと睡蓮鉢から後退してみたところ、私の影が水面から消えるのを待っていたかのように、ヒメダカ達はさっと動き、あっというまにホテイアオイの根っこの下に隠れてしまった。うん、元気そうだ。
*
リハーサルから戻ってきたみこりんが、さっそく睡蓮鉢を覗いている。
「このメダカ白いね」と、みこりんが言った。「ヒメダカだからねぇ」
「全部オス?」と言うので、「いろいろ混じってると思う」と答えると、「ふえるといいな」と、みこりんは言った。
ホテイアオイにくっついてきた浮草や貝とかもいるし、そのうち殖えるんじゃないかな。うっかり水をからっからに乾燥させたりしなければ、だが。
気をつけよう。
2006.6.26(Mon)
首と目玉と
近頃、ちょっと座り仕事を続けていると、じわじわと後頭部から首にかけて、“何か”が乗っかってるんじゃないかと思うくらい、痛みがある。いや、痛みというよりは、筋肉の張りというか、頚椎の中身が外に出てきそうというか、一言では容易に説明が難しい状態になるのだ。首が絞まって息苦しく、いまにもぐぼっと首が折れて頭部が転がり落ちてきそうな感覚。
首がそうなってくると、次は目玉にも異変が飛び火する。
目玉が奥の方からぎゅぅぅぅっと押されてるような、気色悪さだ。気を緩めると、そのまま目玉がぽろんと飛び出してきそうな予感が…
「目玉が出そう」と、みこりんに言ってみたところ、ちっこい手でまぶたの上から押さえてくれた。手のひらの温もりが、なんだか心地よい。この症状には冷やすよりも、暖める方が効くのかもしれない。
首の方にはとりあえず冷湿布を貼っておく。貼る場所が上すぎたりすると、皮膚に湿布薬がぎゅんぎゅん沁みて、とっても痛いことになるので、位置あわせは慎重に慎重に。
“首が痛み”、“首が絞まり”、“目玉が飛び出そう”。この3種のうち、“首が絞まる”という症状は、単独でも現れるときがある。首の絞まるような服は着ていないのに、見えざる手でぎゅっと締め上げられてるような不気味さ。布団で仰向けに寝ていると、なぜか首のあたりに紐が巻きつけられたかのような違和感。
これはたぶん中学生くらいの時から続いている。
高校生くらいの時、クラスメイトの一人に、突然「最近、寝ようとすると、首を締め付けられるような感じにならない?」と言われたときには、ちょっとドキッとした。な、なぜわかったんだ。っていうか、君もそうなん?これってよくある症状なんかな?
Licはそんなのなったことはないと言う。たぶん、みこりんも。
…、ただの肩こりなのかな。
2006.6.27(Tue)
国産検索エンジン
“国産検索エンジンはなぜ必要なのか?--経産省担当者に聞く”
純粋に新しいソフトウェアの研究ができるのであれば、数十億程度の税金は安いものだ。…が、経産省(旧通産省)が主導するというあたりで、皆、Σとか第5世代とか思い出しちゃうんじゃないだろうか。私もとても心配だ。
ソフトウェアの研究してるつもりが、いつのまにかドンガラ作っておーしまい、とか。異様に閉鎖的なシロモノになってしまって誰も使えないとか。今回はオープンソースにするそうなので、少しはましになるかもしれないけれど…。
だいたいにおいて、日本ではソフトウェア・エンジニアって冷遇されてるし。いつもハードウェアのおまけみたいな感じで、しかも目に見える“モノ”じゃないから、スケジュールおかまいなしの仕様変更につぐ仕様変更、とか、すぐ修正できるような印象をハード屋さんに持たせてしまうからか、ハードのバグをいつもソフトで尻拭いとか。ソフト開発は個人の才能にものすごく左右されるのに、そういうスキルパラメータを考慮せず、単に頭数だけ揃えるものだから、ますますデスマーチになってしまったり。etc....
まともにうまくいったプロジェクトの方が珍しいかもしれない。ソフト開発の才能に秀でた人は、往々にして管理職には向いてなかったりして、結局、上の方がソフトのことをハンパにしか理解してない人ばかりが占め、永遠に意思疎通は困難になり状況はまったく改善されず。むしろ悪化したり。たぶんこの状況は容易には変わらないのではなかろうか。
ところで国産検索エンジンといえば、Hyper Estraierというのがある。情報処理推進機構(IPA)による2004年度第2回未踏ソフトウェア創造事業の支援を受けて開発されたもので、作者は平林幹雄氏(参考記事『Hyper Estraier──APIが公開された検索エンジン』)。
中央のサーバにデータを蓄えるのではなく、P2Pで情報を共有するあたりがかなり刺激的。官(独立行政法人だけど)主導のIPAによる未踏ソフトウェア創造事業は、私的には結構評価している。
経産省のプロジェクトも、こういった感じに優れた才能をがんがんバックアップするようなものになればよいのだが。大企業のサロンみたいになったら、たぶんおしまい。
2006.6.28(Wed)
匂い
ほの暗い廊下で、にゃんちくんがじっと私を見つめている。
真ん丸な、薄いブルーのつぶらな瞳。そのちょっと上にある、狭い猫の額をつんつんしてやろうと、指を伸ばしてみた。
いつもなら目を細めて恍惚の表情をしてくれるはず、だったのだが…
鼻先まであと5cmくらいの距離で、突如、にゃんちくんの体に緊張が奔った。
「ん?」ぴたりと指を静止させる。にゃんちくんが無言で何かを訴えかけているような。
さっきまで真ん丸に見開いていた大きな目が、しおしおと薄目状態になっている。そんな表情になりながらも、にゃんちくんは動かない。
この先、にゃんちくんがどうなってしまうのか気になったので、すこーしだけ指を近づけてみた。
すると、その指から逃れるように、にゃんちくんのヒゲが、ぶわっと体表に沿って倒れていく。まるでウニの刺のような動きだ。
そしてそのままにゃんちくんは固まってしまった。
あぁ、そういえば…。思い出した。
ちょっと前に、みこりんと二人でミカンを食べた。ミカンといってもアメリカ産の、皮がぶあつくて、剥くときに爪の間に詰まって痛くなったりするヤツだ(世間ではオレンジと呼ばれているかな)。
手をよく洗ったつもりだったのだが、ネコの嗅覚はさすがに鋭敏だ。
ネコ族は柑橘系な匂いに弱いらしい。たまにぜんぜん意に介さない豪胆なネコもいるみたいだけれど、にゃんちくんはかなり繊細なタイプ。固形の入浴剤など、開封の音を聞いただけでダッシュで逃げる。
そっと指を引っ込めると、「た、たすかったにゃ」とでもいう感じに口をもごもごさせて安堵していた。
*
風呂上り、にゃんちくんが同じようにこちらを見ていたので、そっと鼻先に手を伸ばしてみた。「ふんふん」少し緊張したように鼻をぴくぴくさせて匂いを確認中。
今度は大丈夫だったらしい。指先を満喫するにゃんちくんであった。
2006.6.29(Thr)
犬と犬
夜毎みこりんに読み聞かせている本は、本屋さんでみこりんが選ぶことになっているので、ディズニーものがほとんどだ。ちなみに今読んでいるのは『ミッキー・ドナルド・グーフィーの三銃士』。
題名にあるとおりミッキー、ドナルド、グーフィー、そしてプルートといったいつもの面々が登場するのだが、ふと気になったのでみこりんに聞いてみた。
「グーフィーとプルートは同じ犬なのに、どうしてプルートはミッキーのペットなのかな?」
グーフィーはちゃんと人語を話すのに、プルートはいわゆる普通の犬として描かれているのは何故か。“同じ犬”なのに。
みこりんはちょっと考えていた。
時刻はそろそろ22時になろうかという頃だ。
眠い顔をしてみこりんは、「わからん」と言った。
そうだね、とーさんもわからん。
というわけで、昨日の続きから読み始め。
音読は脳にいいらしいが、私のくたびれた脳にも効いているのだろうか。近頃めっきり記憶力が落ちてきたような気がするが…(いや、それは単に歳のせい)。
1小節読み、「おーしまい」で読み終わり。そろそろこの本もエンディングが近い。また来週にでも本屋さんで新しい本を買ってこなくては。
ところで、みこりんは夜、部屋のドアを開けたままにして眠る。閉めてしまうと、怖いらしい。私などは開いてる方が、暗い廊下から何かが覗き込みそうな気がして、ドアはきっちり閉めるタイプなのだが、みこりんが想像する怖いシチュエーションというのは私とは逆のようだ。
みこりんがベッドに横になったのを確認して、そっと部屋をあとにする。
さきほどのグーフィーとプルートの謎を、少々ネットで調べてみた。
わりと定番な謎らしい。
回答もいたってシンプルに、「グーフィーは“擬人化”された犬なので、人語を話す。それに対してプルートはただの犬だから、動物扱い。」とあった。なるほど、そもそも“同じ犬”ではなかったようだ。そういわれてみれば、擬人化された鳥と、そうでない野生の鳥なんかもいたような気がしてきた。“擬人化”がポイントか。
日本産のお話で、似たような例がなかったかなーと考えてみる。…、すごく記憶の薄いところでちらちらと反応するものあり。でもそれが何だったか思い出せず、悶々と。しばらく悩みそう。
2006.6.30(Fri)
水泳の時間
帰宅後、冷えた茶をごきゅごきゅと飲み干し、ひと息ついていると、みこりんが嬉々として一枚の紙を見せてくれた。
…ん!金色のシールが貼ってあるようだが!?
紙に手を添え、シールの貼ってある箇所を読んでみたところ…。
『25m泳げること』と書いてあった。そこに金色の●シール。
それってつまり…、おぉぉ、ついに25m泳げるようになったのか。今週のはじめ頃には、まだ15mがやっとみたいな感じだったのに。おそるべき進歩だ。
何泳ぎで25mクリアしたのか気になったので聞いてみたところ、普通の“ばた足”とのこと。そういえば、まだクロールも平泳ぎも習っていないんだった。
ちなみに『25m泳げること』の次のレベルは、『50m泳げること』とある。ここをクリアできれば、去年みこりんと泳ぎに行った公園のプールの遊泳権(子供だけでプールに入れる権利)が手に入るらしい。
みこりんは一人であのプールに入るのは怖いと言っているが(たしかにちょっと深い)、案外、秋頃にはもう平気で華麗な泳ぎを披露してくれているかもしれず。子供の成長は、あっというまだ。