2001.12.1(Sat)
噛んでも噛んでも残る物
午前中、保育園にて餅を食う。つきたてほやほやの餅だ。餅には目がなかったみこりんだが、今回は少し様子が違っていた。早々に餅に興味を失い、園庭での遊びに夢中なようす。
なぜなのか?そう問う私に、みこりんは答える。柔らかい餅じゃないから食べられない、と。
つきたての餅だが、つき加減が悪かったり、寒さで固まるのが早かったり、そういう諸々の要因が重なって、みこりんの皿に乗った餅は少し固かったんだろうか。
みこりんは肉などの噛み切りにくいものには、とても弱い。もう何十分でも口の中で噛み噛みしてたりする。餅もそれの部類に入りつつあるのかもしれない。なにしろとろけるまで煮込んだ肉でも、飲み込めないといって噛み続けるみこりんだ。食感がイヤなのだろう。
みこりんのこの現象について、私には少々他人事ではない記憶がある。小さい頃、たぶんみこりんよりもちょっと大きいくらいの年長さんか小学校低学年の頃のことだ。
椎茸、肉、ネギ、モヤシ、春菊、餅、固ゆでホウレンソウ……それらに類するもの全般に、私は弱かった。噛んでも噛んでも異物感が残って、飲み込めなかったのである。薬の錠剤なんかもそうだった。固形のままでは飲み下せず、苦いのを承知で噛み砕いて粉々にして飲んだ。
喉や口の中が異様に敏感だったのだろう。だから歯磨きの時にも苦労したものだ。
みこりんはしかし、歯磨きはぜんぜん平気だし、口の中もさほど敏感そうには見えない。病院で喉を診てもらう時でも、動じることなくあの金属のヘラみたいなのをつっこまれてる。私にはとうてい真似のできない芸当である。
だから、私の子供時代の現象と、今のみこりんの現象とは、似ているようで微妙に違うのかもしれない。あるいはまだそこまでの症状に発展していない過渡期という可能性もある。みこりんが歯医者苦手な子供になりませんようにと、今は祈るしかない。
裁断マシーンと化す
春、夏、秋、そして初冬と、ほぼ一年を通して庭から抜き去られた雑草や旬を過ぎた植物達、そして剪定屑、それらは裏庭の一カ所にうずたかく積み上げられ、朽ちるに任せていた。しかし、丸のまま積んであるので、なかなか分解せずに、残っている。やはりここは細かく裁断して、土に還すのを手伝ってやったほうがいいだろう。そのほうが雑草堆肥になって利用価値も出てくるし、なにより広く場所をとっている雑草置き場を、整理しなければ見栄えが悪い。
というわけで、雑草堆肥を作る場所を整備することにした。これが終われば生ゴミ堆肥置き場もついでに作ろうとか思っている。
とりあえずハサミで刻むことから始めよう。
ものすごい量だった。およそ畳1.5枚分の広さに、腰の高さくらいまで積み上げられた枯れた植物。乾燥して水分を半ば失い、木質化しつつあるのもあり。ハサミを持つ手がだんだん痺れてきた。握る動作を繰り返し繰り返しやっていると、長時間歩いたときに膝が笑いだすのと同じような感覚が襲ってくる。
油の切れかかったハサミのたてる、小鳥のさえずりみたいな音が静かな空気に響いている。いつのまにか日は傾き、気温が急速に下がってきた。意識朦朧、ただひたすらにハサミを握る。
夕方、枯れ草と剪定屑の山は、体積をほぼ1/5ほどに減らし、ぎゅっと縮めてこじんまりと固められていた。これならばちょこっと土に埋めておけばすぐに分解されてゆくだろう。来春からの雑草達も、その上から同じように刻んで乗っけていけば、同様に堆肥と化してゆくにちがいない。これまで太めの茎などは、焚き火用に乾燥させてとっておいたのだが、消費量より発生量のほうが圧倒的で、たまる一方となっていた。こうして刻めば茎でもなんでもすぐに土へと還るだろう。
あとはちょいと木枠で囲めば見栄えも良い。
雑草堆肥置き場を何で囲むべきかホームセンターで物色したが、いまひとつピンとくるものがない。やはりこの秋に伐採したハリエンジュや桜の幹や枝で、天然物の柵を作るのがよさそうだ。思惑通り、来年からは堆肥を買わずに済むかどうか、今が勝負の時である。
2001.12.2(Sun)
新しき剪定バサミ
バジル、赤オクラ、紫蘇…。真夏には盛大に枝葉を茂らせ涼しげであった植物達。しかし今はもう、ただ枯れるのを待つばかりの姿でちょこっと斜めに立っている。すかすかの葉っぱが、もの悲しい。
だから思い切って整理することにした。
まず抜いて、それからハサミで細かく裁断。昨日から酷使しまくりの右手はすっかり筋肉痛で、力もほとんど入らない。でもそこを無理して握っていると、ふいにハサミのバネが“ぽろん”と落ちた。……金属疲労だ。バネはもはや戻らず。
バネなしで、今日一日の裁断作業を続ける気力もパワーも残っていない。バネの部品は注文すれば入手できそうだったが、欲しいのは今だ。買おう。新しいハサミを。
ホームセンター到着。剪定バサミのコーナーにてしばし悩む。500円程度の安いものから、5000円ほどのしっかりしたものまで幅広い。じっくり刃先を見比べてみると、なんとなく安いものは噛み合わせがちゃんとしていないような気がする。かといっていきなり高価なハサミというのもなんだし……。でもなんとかとハサミは使いようっていうし……
何度も手に取り、意味もなく重さを確かめてみたりして。
で、ついに決めた。2500円ほどのスチール製、昔ながらのタイプである。いかにも切れそうな刃先と、滑らかな握りが頼もしい。
家に帰り着くなり、庭へと直行。さっそく切れ味を確かめる。
「ほ、ほぉ…」
さくっといったよさくっと。でもあんまり固くて太い物はまだ駄目だ。もっと馴染んでからにしよう。幸い今日のは草物ばかりだから、それほど心配もいらないが、ゴールドクレストの枯れ枝を、つい切断したくなって困った。やはりよい刃物を手に入れると、つい切れ味を確かめたくなってしまうのは本能みたいなものか。
新しい剪定バサミのおかげで作業は思いのほかはかどり、菜園1号に残っていたトマトの裁断にもとりかかることができた。トマトの実は、まだたわわに残っていて、じわじわっと赤く色づいてるのも混じっていた。でも青いままのトマトは、もう色づくこともないだろう。ちょっともったいないけれど、すべて撤去だ。
みこりんが興味深そうに見学に来ていたので、きれいそうな実を拾ってくれるように頼んでみた。こういう実モノを集めるのが大好きなみこりんなので、思惑通りすぐにお手伝いしてくれた。でも、集めた青いトマトはいつのまにかその姿を消していたのだった。いったいどこにいったのか。………庭の方でみこりんが乗り物で遊んでいるのが見えた。その座席をかぱっと開けて得意気な表情のみこりん。座席の下の物入れに、ぎっしりと詰まっていたのは、青いトマトだった。やはりそういうことになったか。小さいころからみこりんは、獲物をそこに隠しておく習慣があるのだ。
だが、まぁいい。青い実は、以前ソテーにして食べたことがあるが、どうしても食べたいと思うほどには美味くはなかった、ような気がする。ぬか漬けとか漬け物系にすれば、また違った感想になったかもしれないけれど、残念ながら我が家にはまだ漬け物壺はない。
トマトをすっかり撤去し終わると、庭もだいぶすっきりと片づいた感じになった。これで夏の名残も、ほぼ消え去った。あとはもう霜が降りようが雪が降ろうが、大丈夫。
そして夜、エンドウ豆の種をまくのを忘れたことに気がつくのだった。手遅れ、かもしれない。
はろますたー
最近Licは“HELLO MASTER+”にハマっている。どんなものかというと、ハロを交配進化させて、対戦させ、順位を競うというものだ。いわゆるウェブアプリケーションである。
交配相手を選んで、交配実行。そして対戦。ランキング発表。このシンプルさがいいようだ。そしてハロというキャラクターを選んだあたりも注目したい。これがスライムだったり馬だったりしても、あんまり変化が期待できないのだが、ハロならばロボット物ということでかなり無茶な改造も通ってしまう。そういう発展性が飽きさせない秘密かもしれない。
こつこつと交配を重ねていたLicだが、ついにこの日、トップに立った。……負けてはおれん。
2001.12.3(Mon)
タキイの新カタログ
タキイの花ガイド2002年春号が届く。
いきなり目を引いたのが“レオントポディウム・アルピナムミグノン”だった。説明を読むと、これは「エーデルワイス」の名で知られた種類の選抜品種らしい。白い花弁……と見えたものは、じつは綿毛で白く覆われた葉っぱのようだ。花は小さな黄色。そのコントラストがなかなかに面白い。背丈も10cmほどと可愛いサイズなので、花壇の縁取りにもよさそうだ。でも2株で1800円。まぁまぁの値段である。いちおう買い物カゴに入れておこう(もちろん頭の中の)。
あと興味を引かれたのは、レモン型した黄色いトマト。じつに変わっている。“ワンダーライト”という品種だった。これはぜひとも欲しい。値段は……と見ると、1組2600円なんて書いてある。珍しいトマト苗4品種各2株、計8株で1組なのだった。ちょっと高い。しかも苗だし。種から育てるのが私は好きなので、苗物だといまひとつつまらない。……“ワンダーライト”か。どこかで種売ってないか調べてみるとしよう。
2001.12.4(Tue)
ジャイロか
“Gingerは電動スクーターだった 正式名称は「Segway」”(ZDNet JAPAN 2001.12.3)
体を動かさずとも操縦できるようになってれば二重丸だったのに。脳波あるいは筋電流を検出してだな……
しかし直立を維持するために結構エネルギーを食いそうなものだが、消費電力はどんなものか気になるところ。
雨の日、合羽着なくても大丈夫なようにできたら三重丸あげよう。
2001.12.5(Wed)
“炎”
今夜のメニューはトンカツにアスパラに甘海老殻の出汁を加えたおみそ汁。そのほとんどをみこりんが調理してくれたのだという。だからアスパラは1cm刻みになってるし、みそ汁の具であるところの豆腐は非常に細かく砕けているわけだ。小さいのが好きなみこりんらしい。
ところでお料理好きなみこりんにも、弱点がある。それは、“炎”が怖いこと。ガスレンジが使えないのである。火を使いはじめると、半径1m以内には近寄れないらしい。
野生の血が、まだ炎を畏れさせるのだろうか。
もっともっと焚き火をして、もっともっと炎に親しんでもらわねば。そう心に誓った夜であった。
“彼氏”の謎
夜も更け明かりを落としたリビングで、Licがパズルにはまっている。GNOMEに入ってた“Gnotravex”というGNOME版魔方陣ゲームである。パズル好きなLicにはたまらなく魅力的なものらしい。6×6の盤面でも解決しそうな勢いである。
そのとき背後になにか気配を感じたので振り返ると、寝ていたはずのみこりんが立っていた。ヨーグルトが食べたいという。たっぷり晩ご飯を食べたとか言っていたのに、もうお腹が空いたのだろうか。すっかり目が覚めたらしいみこりんと一緒に、私も夜食をおいしくいただく。
どういう話の流れだったか、みこりんのクラスの先生の話題になった。今週からクラス替えがあり、みこりんは保育園でもっとも可愛い先生の受け持つクラスへと移ったのだ。なんという幸運。で、その先生の右手の薬指にキラリと銀の指輪が光っていたのを先週発見していた私は、そのことをみこりんに聞いてみたのである。
「先生の指輪は彼氏にもらったのだろうか?」そう言う私に、みこりんは即答した。「かれしーー?そんなんおらん」
ま、まじですか?自信たっぷりなみこりんに、そっと確認してみることに。
「“彼氏”って何?」
「わからん」
指輪の謎は、しばらく解けそうもない。
2001.12.6(Thr)
エラーコードじゃわからん
機械の故障とかモノが壊れるとかいう症状は、なぜか伝染する…というのがこれまでの私の経験則である。今回もまた、その法則が適用されようとしているらしい。
ビデオデッキの録画予約時に、このところエラーが頻発するようになった。そして炊飯器の蓋の閉まりが悪くなった。いずれも致命的といってよい不具合である。
購入からすでに10年ほどが経過している炊飯器はともかく、わずか4年ほどのビデオデッキに早くも故障の気配とは。なんと軟弱な。
ところでその軟弱ビデオデッキのエラー発生時には、前面パネル表示器にエラーコードが表示されるのだが、これがまたわかりにくいことこのうえない。“F05”とだけしか出てこないのだ。“F05”ではわからん、もっと具体的に症状を述べたまえ。いちいちマニュアルを参照させるつもりなのか。押入の奥深くに眠るそれを引っ張り出して来いと、そういうことなのか。
Licは言う。「TVにつながっているのだから、ビデオ出力でTV画面に詳細なエラー内容を表示すればよいのに」と。もともと機器設定やタイマー設定はビデオ出力によってTV画面で行うようになっているのだ。たしかに一理ある。
でも私は、ちっこいサーマルプリンタかドットプリンタで、カタカタ言わしながら詳細なエラー内容をプリントアウトしてくれるというのも捨てがたいのだ。漢字でなくてもよい、半角カタカナのほうが風情がある。いや、オプション指定でビットパターンがパンチャーで打ち出されてきても面白いな。そのために値段が1000円ほど高くなっても、そういうオプションが用意されているビデオデッキがあったら買ってしまうことだろう。
2001.12.7(Fri)
おやすみ前の絵本
このところ帰りが遅かったので、みこりんはすでに眠ってしまっていることが多かった。しかし今夜は運がいい。いつもより少しだけ早く帰ることが出来たので、みこりんはしっかり目を覚ましていてくれた。
久しぶりに絵本を読んでやりながら眠りにつく。イエス・キリスト生誕をモチーフにした絵本だった。といっても別に信仰してるわけではないのだが。
読み終わった後、みこりんはすぐに眠ってしまった。私の“オリジナルお話”の出番はなかなか来ない。もっとゆったり時間のあるときじゃないと、みこりんも眠いのだろうか。それがちょこっと寂しい今日この頃。
2001.12.8(Sat)
むかしの同窓会
最後に高校の同窓会が開かれたのが、十数年前のことになる。いわゆる国立理系クラスだったため、みんな全国へと散ってしまっていてなかなか集まれないという事情もあったのだろう。十年も経てば、記憶の奥底へと沈んでしまい、二度と浮上してきそうにない場面は増えてゆく一方である。入れ替わりに、みこりんの記憶やらLicの記憶やらがその上に積み重なってゆく。それが自然なのかもしれないが、脳の外部記憶装置が欲しいと思うことは、たまにある。……記憶力が衰えてきた証拠かもしれないが。
その数少ない同窓会の記憶を呼び覚ます時、もっとも鮮明に記憶されている状況の1つにこんなのがある。理系クラスだったので、野郎ども30余名に対して女子の数は10人ほどしかいなかったのだが、その中でもわりと可愛い系な娘と、“たまたま”話す機会が出来た時のことだ。
その娘は急に深刻そうな表情で私に言った。進学した学部が、どうも合ってないような気がする、ということらしい。当時の私はその時、えらく困惑していた。どう答えていいかわからなかったのだ。高校時代、それほど親しくしていたわけでもないのに、いきなりそんな相談されても……とか愚かしくも思っていたような気がする。まったくもって経験値が不足していた。そんな絶好のチャンスをみすみす逃すとは。
昔の話だ。
で、今日はLicが同窓会とかで郷里に帰っていった。お供はみこりん。私が留守番と知ったみこりんが、どうして一緒に行かないのかと問う。「無人にしたらお化けとかが入ってくると困るから」と答える私に、みこりんの口からおよそ似つかわしくない言葉が出てきたではないか。「おばけはつかまえて〜そして“ころす”の?」
そ、そんな言葉どこで覚えてきたんじゃみこりん。と、のけぞりつつも、訂正してやる。
「お化けはねぇ、もう死んでるから死なないんだよ。お化けは“浄化”してあげないとね。」
みこりんの瞳をまっすぐに見ながらとくとくと語ってやった。が、みこりんの表情からは、めぼしい反応が現れない。どうも理解不能な文脈と単語があったらしい。それがどこなのかはおおよそ想像はつくのだが、私もそれをどう言い換えていいものやら悩んでいるうちに、結局いい案を思いつくことが出来なかったのであった。つ、次こそは、必ず…
突破
みこりん達を駅まで送っていき、静かになった部屋の中でくつろいでいると、窓の向こうをあり得ない姿が横切っていくのが見えた。“猫”である。『完璧な防壁』はどうしたのだ。突破されたのか?いったいどこから!
あやうく大急ぎで飛び出しそうになって、踏みとどまる。ここは泳がせておいて侵入経路を突き止めることのほうが重要だ。
そぉ〜っとガラス戸を開け、ウッドデッキに忍び出る。四つ足で、まるで自分が獣になったような感じに気配を殺しながら、通り過ぎてゆく猫を注意深く目で追いかける。
デッキの端まで行った猫は、そこでいったん座り込み、じっと空を眺めていた。こちらにはまだ気づいていないようだ。雉虎のまだ若い猫だった。このあたりには、このタイプの猫がやたらと多い。
猫が突然立ち上がり、こちらへと引き返して来た。距離にして約2m、……1m、まだ気づかれていない。正面に来た。息を殺す。
「!」
しまった、目が合ってしまった。猫は猛ダッシュで反転180度、西側の方へと逃げてゆく。だがそちらの守りは完璧だった。猫は高さ2mのネットにはばまれ脱出できず。私はゆっくりと近づいていった。こうなっては仕方あるまい。我が庭に侵入してきたことを死ぬほど後悔させてやらねば、また入ってくるだろう。
猫は野生とは思えない動きの鈍さだった。どうも飼い猫っぽい。…ゆるさん。まだ猫を放し飼いにしている人がいるとは。とっつかまえて厳重抗議だ。
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注:私も猫を飼っているので猫は大好きである。だが、放し飼いの猫の糞害と植物への加害は断じて容認できない。トイレを躾ているから大丈夫などと開き直ってはいけない。猫はふかふかの土があったら掘り返したくなるのだ。
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だがそんな気配を察知したのか猫は急に方向を変え、裏口からの脱出を試みにかかった。むろんそちらにもネットが立ちはだかっているのでそうやすやすとは逃げられない。それでもネットに爪を立てて、必死でよじ登っていくのが見える。なるほど、こうやって侵入したのか。裏口のネットの高さは2mに足りない。1.8mといったところ。しかもこちら側には支柱を固定する柵がないので、どうしてもネットがたわむ。どうやらそこが弱点だったようだ。
猫は脱走していった。
私は『完璧な防壁』の改修プランを迅速に脳内シミュレーションし、わりといけそうな感触を得たのでさっそくホームセンターへと向かった。やってやる、やってやるぞ。
ところが改修に必要なネットの在庫が足りなかった。1週間おあずけである。
2001.12.9(Sun)
寝過ごした朝
これは夢だ。そう思った瞬間、目が覚めていた。
なんだか現実感のないあやふやな状態だった。じつはずっと前から目覚めていたのではないかと思うのだが、よく覚えていない。
倒れ伏した目覚まし時計を起こしてやる。
「もう…昼、か」
思わず口をついて出る言葉。ひさしぶりに昼過ぎまで寝てしまったようだ。
静かだった。家の中にみこりんの雰囲気がないだけで、おそるべき静寂に包まれる。
起きあがり、リビングへと向かった。
お日様の色が、なんと弱々しいことか。ひどく傾斜した太陽光は、もはや庭の半分も照らしてはくれなかった。遠くで聞こえるカラスの声も、ものがなしい。
つい昔を思い出してしまいそうになるが、今日はそんな暇はない。さっそく作業に取りかかろう。大掃除の始まりだ。
2001.12.10(Mon)
気になるクルマ
ぜひ運転してみたいのが、マセラティ・ブーメラン(スーパーカーブームな時代、お祭りの夜店で売ってたブロマイドでこのクルマの存在を知った)、デ・トマソ・マングスタ(むかーしプラモデルで作って気に入った)。はたしてこれらのモデルが入ってるかどうかが気になるところ。時間が出来たら調べてみよう。
2001.12.11(Tue)
遅すぎた登場
その昔、まだパソコン通信にずっぽりとはまっていた頃のことだ。夜な夜なチャット(NIFTYでは“RTC”すなわちリアルタイム会議という名称だったので、我々の間では通称“あーるてぃ”と呼ばれていたが)をするのが当時の習慣であった。
ところでチャットでは、もちろん話し言葉を使用する。そして私は関西系な言語を幼少のころより操っていたので、話し言葉となるともろにそれが出てくるのだが、そんなときに困ったのが日本語変換だった(……わかりやすい例を挙げてみようと思ったのに、なぜかすぐに浮かんでこない。じつはひょっとしてあんまり困ってなかったのでは……)。
もともと単文節変換派だったので、いわゆるかしこい変換機能など(“なつはあつい”が“夏は暑い”に一発で出るような機能)は要らなかった。でも、かしこい話し言葉変換(しかも関西系)の機能は欲しかった。
やっとその夢が叶ったのはいいけれど、今はもうチャットにははまってないので全然困ってないのだった。タイミング悪し。
2001.12.12(Wed)
眠るときの癖
足先をちょっとだけ相手に触れるようにして眠るのはみこりんの癖である。添い寝していた赤ちゃんの頃から、4歳の今に至ってもずっと健在だ。この足先の感触で、独りではないことを確認しているのだと私もLicも、そう思っている。
ところで最近、この足先センサに加えて、手先センサも動員しているような気がしている。これは足よりも、手のほうに重きを置くようになってきた証拠なのではなかろうか。やがて足先センサが使われなくなるように思えて、なんだか寂しいような気になってくる。できることならみこりんの足先センサは、ずっと健在であってほしい。
じつはLicもたまーに足先センサを駆使していることがあるのは、内緒だ。
2001.12.13(Thr)
“スヌーピーランド”
みこりんが“スヌーピーランド”と呼んでいるのは、じつはUSJのことだった。Licと二人で行って来たらしいのだが、みこりんにはまだUSJを楽しむには早すぎたようだ。唯一印象に残ったのは、スヌーピー・スタジオのみ、だったのだろう。年少組さんのみこりんには、いたって普通な反応といえる。
ところでUSJにはネズミーランドにあるようなパレード系なものがないとか。血肉をまとっていないターミネータが、ただひたすら行進してゆくというのがあったら、ちょっとは見てみたいかなという気もする。もちろん着ぐるみではなく、すべて二足歩行ロボットで行うのだ。あの先行者のテクノロジーを借り受ければ、たやすいことにちがいない。
でも昼間だとかなり間抜けな行進になりそうな…
2001.12.14(Fri)
脳内シミュレーション
仕事で行き詰まった時は、以前から夢の中で解決することが多かった。夢の中ならば、なぜか“すっ”と解決策が浮かんできて、それまでの悩み事が馬鹿らしく思えるほどにあっけなく、さくさくと進んでしまうのであった。
その解決策というのは、夢の中だけのものではなくて、現実世界でもちゃんと通用することが多かったりする。なんとも奇妙なことだが、まぁ深くは考えまい。
もちろん、いつもそれが正しいとは限らないのが夢の世界らしい。今回は、どうやら“外れ”だったようだ。夢の中では問題解決、万事OK、視界クリア、オールグリーン!な気分爽快な自分を堪能させてもらったが、目覚めてみると、やはり問題は解決していないのだった。
現実世界で、もう少し悩む時間が必要らしい。
2001.12.15(Sat)
背後に寄り添うモノ
ミゾレ混じりの雨が降る、凍てつく土曜日の午後。
糊で紙をくっつけて何か工作していたらしいみこりんが、その出来栄えを披露してくれるのだという。
得意気に胸の前で広げて………
突然みこりんの動きが止まった。まるでゼンマイが切れた玩具のように、いまにも動き出しそうな不自然な姿勢のままで。
どうしたのだみこりん。まさか……、寝てしまったのか?過去、椅子に座ったまま寝てしまった前歴はあるけれど、こうして立ったまま、しかも何かの動作の途中でっていうのはなかったような。
みこりん?と、その瞳を見つめていると、怯えの光が宿っているのがわかった。やがてその小さな唇が、囁くようにひそやかな言葉を、やっとこさ繰り出すことに成功したようだ。曰く…
「うしろになんかいる……」
どうやらみこりんは金縛り状態にあるらしい。動くに動けないのだろう。
だがしかし、いったいみこりんの背後に何がいるというのだ。じっと目を凝らす。じっと、じ〜っと穴が開くほど見つめてみる。
あぁ!そういうことかと気がつくまでに、たっぷり15秒かかった。
なるほど、たしかにみこりんの後ろには、そいつがいた。無数の触手のような長いもので、みこりんの後頭部から肩、背中にかけてざわざわと触れている。
私は大袈裟に驚いてみせた。みこりんがさっきよりも不安気な表情になる。
あんまり驚かせてトラウマになってもいかん。そろそろ種明かしをしてやらねばなるまい。
みこりんにそっとこちらへ来るように指示してやる。気付かれないように、そっとそぉっ〜と。
十分安全圏に離脱するまでに、たいそう時間がかかったが、やっとみこりんにも余裕が出てきたようだ。そこですかさず後ろを見てみるように言ってやった。
ゆるやかに背後を振り向くみこりん。そこにあったのは……
室内に取り込んでいた鉢植え、ステビアの鉢植えだった。ステビアの長く伸びた茎が、こんもりといい感じに茂っていて、その葉っぱがみこりんに接触していたのである。
みこりんはそのまま倒れ伏したのであった。
2001.12.16(Sun)
『ディープスペース・ナイン奪還作戦 パート1』
夕方、なにげなくSkyPerfecTV!を流していると、スーパーチャンネルでスタートレック・ディープスペースナイン(DS9)が今まさに始まろうとしていることに気付いたのだった。
話数を確認すると……ひゃくにじゅう〜きゅう!?な、なんてこった。先々月の10月7〜8日にかけて一挙放送された第5シーズンが124話までだった。その後、第6シーズンが始まるまで間があったので、ついうっかり忘れていたようだ。ふ、不覚。
第5シーズンのラストが“ディープスペース・ナイン撤退の日”。第6シーズンからは、いよいよ物語も佳境に入り、ドラマティックな展開が期待されていたというのに、すでに4話分も見逃してしまっているとは。だが、ツキに完全に見放されたわけではないらしい。今日の129話は、『ディープスペース・ナイン奪還作戦 パート1』。そう、パート1なのだ。前後編の前編である。しかも奪還作戦が始まる回だ。これがもし今週も見逃し、来週になってパート2であることに気付いたりした日には、悔やんでも悔やみきれなかったことだろう。そんなフラストレーションのたまることにならなかっただけでもめっけもの。
さっそくビデオをセットして、と。鑑賞開始。
おぉ、なんて濃いんだ。時間の進み方がやけに遅く感じられる。いよいよ連邦の大艦隊が進攻を始める。無数の戦艦が3次元的に配置されて発進する図というのに、私はとてつもなく弱い。こ、これや、これが見たかったんや、と思わず拳をふるふると固く握りしめたりなんかして。で、いいところで to be continued. そこで区切るか、そこで続くかと、しばらくのたうち回る。
前編良かった場合、後編トーンダウンしてしまう例が過去には多かったような気がするので、ちょっと心配だが、次回を楽しみに待つとしよう。
2001.12.17(Mon)
眼前にあったモノ
夜もしんしんと更けてゆき、そろそろ時計の針が明日へとさしかかっていたときのことだ。リビングで寝ていたみこりんが、ふいに起きあがったのだった。さっきからにゃんちくんが、寝ているみこりんの腕にじゃれついていたのでイヤな予感がしていたのだが、とうとう起こしてしまったらしい。
毛布にくるまって“ぼぅっ”としているみこりん。でも、目の前に何がいるのか気がついたとき、その小さな体全体が上下に5cmはブレたように感じた。みこりんの眼前15cmあたりには、にゃんちくんがやはり毛布に乗っかって、ぬくぬくとうずくまっていたのだった。
大泣きのみこりん。近頃、みこりんはにゃんちくんが怖い。以前は「だっこする〜」なんて日々もあったというのに、さっぱりである。赤ちゃんの時代に逆戻りしたかのよう。
にゃんちくんをケージに片づけ、みこりんが落ち着いたところで聞いてみた。どうしてにゃんちくんが怖いのか、と。
するとみこりんは、困ったような顔をして答えてくれた。「にゃんちくんのおひげ、ちくちくしていたい」さらにこうも言った。「にゃんちくんにかまれるから」
もちろん、じゃれて軽く噛んでいるつもりのにゃんちくんである。でも、とんがった歯が恐怖心を抱かせるようだ。
いつかは慣れてくれるだろうと思いつつも、ちょっとばかり不安になってくる今日この頃であった。
2001.12.18(Tue)
“Christmas Eve”
この時期になると毎年のように蘇ってくる歌の1つに、山下達郎の“Christmas Eve”がある。私の記憶によれば、この歌は1986年よりも以前に聞いたことがあるはずだった。そう、私がまだ中学生くらいの頃のことだ。その当時、友達から借りたレコードに“Christmas Eve”が入っていて、中学生ながら妙に気に入っていたような気がするのだ。
ところがここ数年、音楽系のチャンネル、スペースシャワーTVで“懐かし邦楽”として流れてくるときには、いつも1986年リリースとなっていて、そのたびに私は頭を悩ませていたのだ。記憶が間違っているのではないかと、もしかしたら私の憶えている中学時代は、じつは想像の産物なのではあるまいかという恐怖感に、囚われてしまいそうになるのだった。
調べなくてはなるまい。そう思いつつ、1分もすればすっかりそんなこと忘れて日々の忙しさに流されていたのだが、今夜はたまたま憶えていたのでサーチエンジンにキーワードを入力してみた。
私の疑問をすぱっと解決してくれるページは、造作もなく見つかった。
初リリースは1983年6月8日、アルバム『Melodies』に収録。問題の1986年には、7インチアナログレコードとしてシングルカットされている。だがシングルカットはこれが初めてではない。1983年のアルバムリリース後の12月にすでにシングルカットされているのだった。ただしその時には限定ピクチャーレコードだったらしい。
まぁそういうことらしい。だがここで新たな疑問が1つ。なぜ6月リリースのアルバムに、“Christmas Eve”なのだ。これが山下達郎マジックなのか。
2001.12.19(Wed)
衛星電話
衛星電話をいじってみた感想など。
小型航空機用の衛星電話 Aero-Mは、静止衛星のインマルサットを利用している。なのでアンテナは常に一定方向を向いていなければならない。高速に移動する航空機でこれを実現するには現在位置を知っておく必要があるので、GPSも利用している。つまり、“空”が開かれた場所でなければ使えないのである。
寒空の下、衛星電話一式を並べてバラック状態で結線し、いざスイッチオン。初期化には時間がかかる。5分ほどかけて各種衛星を捉え、アンテナ位置が自動調整され、起動終了。
まずは音声通話から確認してみた。
意外に明瞭な音声が返ってくる。若干、ピアノエコーみたいな金属的な雰囲気が漂ってはいるものの、普通の携帯電話よりも聞き取りやすい(cdma one は使ったことがないのでソレとの比較はできないが)。
続いてデータ通信機能の確認。この衛星電話にはモデムが内蔵されていて、2400bpsの速度で通信が可能だ。2400bpsといえば、今時の56kとか64kとか、1.2Mとか8Mとかに比べると哀しいくらいに見劣りするが、ぜんぜんデータ通信できないよりはずっといい。2400bpsならば動画は無理でも、ちょっと我慢すれば静止画程度は送ることが可能だ。文字データ(あるいは更新周期の遅い計測機器からのデータ)とかならば十分使える。
ところがである。モデムは認識しているのに、モデムからの応答が返ってこない。事前にもらっていた設定手順通りにやっているのだが…。なにか設定が違うようである。さてさて。
2001.12.20(Thr)
年賀状の時間
毎年、この時期になると年賀状をどうするか、というのが我が家の課題となることが多い。ネタに使えそうな“みこりんのナイスな写真”が決まっていれば、さして悩む必要もないのだが、今年は使えそうな写真はすべてデジカメによる撮影なのだった。
早めに依頼しておけば、そういうデジタルデータ経由の年賀状作成もできたのだが、最低でも10日はかかるらしい。今年中に投函することすらあぶなげな状況だ。
だいたい12月は過ぎ去るのが早すぎる。気がつけばもう20日だ。もういーくつねーるとお正月である。恐ろしい。2001年がこうもあっけなく終わってしまうとは…。まぁそんな感慨は大晦日にでもたっぷりするとして、当面の課題である年賀状をどうするか、ということの解を、我が家では自力作成で乗り切ることにした。そう、カラープリンタを新規導入するのである。
ふっるーいタイプのカラープリンタならばLicが嫁入り道具の1つとして持参してきていたが、昨今のカラープリンタ低価格化を見れば、改めてこの旧型の眠りを覚ますこともあるまい。買おうではないか。新型を。
2001.12.21(Fri)
衛星電話パート2
水曜日にデータ通信を試みるも失敗に終わっていた衛星電話は、結局のところ事前に入手していた設定手順書に誤りがあったことが昨日には判明していた。衛星電話から発信して、携帯電話を経由したコンピュータ同士のデータ通信は、途中でデータの欠落もなく、正常に行えることが確認できた。だが、航空機用としてはこれでは不十分である。アンテナの上を常に回転するヘリコプタのメインローターが、どのように影響するのか、それを見極める必要がある。
私はこれまで空を飛んだことがない。エンジンを切った飛行機械には、何度か乗ったことはある。航空機の博物館に行けば、乗ることは出来る。そんな私が、ついに今日、エンジンをぶんぶん回した飛行機械に、乗った。といっても、浮かんではいない。やはりこういうことは段階を経て、徐々に徐々にでないとうまくいかないに決まってる。
振動がすごい。変な座り方をしてたら、一気に酔ってしまいそうな雰囲気に、やや緊張しつつも、データ通信の確認を始めたら、いつのまにかそんな心配は消えていた。
機内の衛星電話から発信して、同じく機内に持ち込んだ携帯電話を接続したPCで着信する。電波ははるか衛星軌道から日本の端っこの中継局に降り、そこからぐるっと回り込んで機内の携帯電話へと到達。えらくまわりくどい経路をたどっているが、電話をかけたPCと受けたPCは、距離にして数十cmしか離れていない。だからあんまり衛星電話のありがたみが伝わってこないが、今日の確認試験も無事に終了した。
2001.12.22(Sat)
改修『完璧な防壁』
庭への猫の侵入を遮断すべく、『完璧な防壁』の改修に着手したのがお昼前のことだ。
今週はいつになく猫の糞害がひどかった。おそらく侵入ルートを確立した猫がいるのだろう。北側か、東側か、あるいはその両方からか。今回の改修は、その両方をやる。
ネットは35メートルの巻きで買ってきてある。だから展開するだけならば、さして手間はかからない。支柱をフェンスに立て、それに沿わすように張ればよいのだ。ここで下手に継ぎ接ぎしようとすると、うまくいかないことは一番最初に『完璧な防壁』を構築したときに骨身にしみている。ネットがたるまないように、かなりの張力を必要とするが、途中にそういう不連続箇所があると、変にゆがんで美しく仕上がらないのだ。だから、できるだけ切断箇所は少ないほうがいい。
北側の既存のネットは、下段だけを残して上段は撤去した。垂れてきている部分をいじるよりも、リセットしてしまったほうが作業ははかどる。しかも今回は高さを増さねばならない。1段目の下側を土に埋めて侵入経路を確実に断っている関係から、この北側は2段では高さが足りないのだ。
まず東側のフェンスに沿って、ネットを展開する空間を確保する作業から始める。プラムや桜の枝を、少々剪定し、夏からずっとそのままだったモロヘイヤを撤去した。結局、このモロヘイヤは一度しか食卓には上らなかったが、一株あれば十分一家の食卓をまかなえそうだ。なにしろ背が高い。2m以上ある。こぼれ種の様子から見て、来年の夏にはおそろしい事になりそうな予感もするが、まぁその時はその時だ。食べて食べて食べまくろう。
支柱を針金で固定する。おっとそのまえに、支柱で縫うようにネットの端っこを固定しておこう。こうすればいちいちネットを1目1目、ヒモでくくる必要がない。
北側まで一気に一段目を張った。楽勝だ。ピンと張る。美しく、見苦しくないように。
この調子で二段目といこう。こちらは北側の方もぐるっと回り込んで、家の壁に接続、侵入路を遮断する。ちょうど雨樋が立っているので、固定するのも簡単だ。高さにして2m以上を確保。下段との隙間が30cm〜50cm。この間もネットで埋めよう。
作業はさくさく進んでいるような気がしていたが、いつのまにか日は西に傾き、辺りは急速に輪郭がぼやけつつあった。まったく、冬の日は沈むのが早すぎる。大急ぎでネットを張り終え、最低限の固定を施し、暖かな家の中へと撤退する。Licもみこりんも、雑草刈ったり、剪定枝を運んでくれたり、お手伝いしてくれた。また明日続きをしよう。
菜園2号でひっそりと育っていたニンジンを2つ、みこりんが収穫してくれていた。かなりの大物だ。ニンジン作り2年目にして、ようやくまともに食べられそうな予感。夏に種をまいたやつだから、約4ヶ月土の中にいたことになる。たっぷりエネルギーを蓄えてそうだ。
夜、猛烈な頭痛に襲われた。どうやら冷えすぎたらしい。
手先のしびれは、22時を過ぎても残っていたのだった。
2001.12.23(Sun)
改修完了『完璧な防壁』
前日に引き続き、『完璧な防壁』改修作業を行う。ネットは張り終えているので、あとは上下を繋ぐのと、下段の下側に通した支柱を、フェンスに固定するだけである。こうしておけば、下側から猫がくぐってくる心配はない。
みこりんが保育園から戻って、しばらく私の作業を観察していたが、やがてどこかへと消えていった。一緒に庭で遊ばないのか?そう思いつつ、最後の仕上げにとりかかる。
よし完成。『完璧な防壁』の改修作業は終了した。
あとは昨日剪定した枝やら茎葉やらを、例によって細かく裁断するのみ。ひたすらに握力勝負のこの作業は、一人でやるには寂しすぎる。みこりんを呼びに行った。一緒にちょきちょきしよう。
最初不審そうな顔つきだったが、山と積まれた剪定屑に興味を惹かれたのか、みこりんがハサミを手にしてやってくる。でも、みこりんのハサミはいわゆる普通の文房具ハサミ。ちょっと太い茎には歯が立たない。そこで、柔らかそうな雑草とかを選んでやっていたのだが、みこりんはアジサイの剪定屑が面白いことに気がついたようだ。
アジサイの剪定屑には花殻が残っているので変化があるうえ、茎が柔らかいので、みこりんのハサミでも楽勝で切れるのだ。ちょっきんとハサミを入れると、ぴょーんと飛んで私のガーデニング用エプロンの上に落ちる。それがみこりんのツボにはまったらしい。嬌声を上げながら、何度も何度も切りくずを私の方に飛ばしてくる。よしよしその調子。みこりんの裁断スピードは、自然とヒートアップしていったのだった。
みこりんの手伝いもあり、ほどなくして山のようにあった剪定屑は、平らになって地面に還った。ふかふかだ。……ふと、庭に巣くっていたヒキガエルのことが気になった。
「みこりん、ヒキガエルさんどこいったんやろね?」
そう問いかける私に、みこりんは言った。
「うっどでっきのしたにかえっていったよ」
即答だった。まるで見てきたかのように。
「そ、そうか…。ならばいいのだが」
私はそうあってほしいと、心から思ったのだった。どうか猫にやられていませんように。
2001.12.24(Mon)
夜明けの作業
EPSONとCanon、どっちが好きかと問われれば、Canonを選ぶというのが私の習性である。したがって、昨日買ってきたプリンタも、当然のようにCanon製だ。しかも2万円。なんたる安さ。昨今のプリンタは、ここまで価格破壊が進んでいたのか。おそるべし……。専用紙に印刷したら普通の写真と“ぱっと見”区別がつかないではないか。
プリンタの準備は出来た。あとは年賀状用の素材を選ぶとしよう。今年デジカメで撮り貯めた、みこりんやらお魚やら植物やらの画像の中から、これはと思うものを抜き出してゆく。真夜中過ぎのスタートだった。間に合うだろうか。
案外素材に使えそうなものは少なかった。でもまぁこれでそれほど悩むことなくメインの画像が決められる。あとは周辺に散りばめる飾りを少々抽出して、と。
冬の朝は遅い。夏だったらとっくに窓の外が白々と明るくなってる時間帯。睡魔に取り憑かれて眠り込んでしまっていたLicを起こす。画像データの本格的な加工は、日頃仕事でPhotoshopを使ってるLicにやってもらったほうがいい。
着々と出来上がってゆくのを見守るうちにも、私の頭は猛烈に眠気を訴え始めていた。もはや立っていられることもできないほどに、朦朧としはじめてくる。い、いかん……この機を逃したら…眠れなくなってしまいそうだ。
Licにすべてを託し、私は布団へと倒れ込んでいった。ブラックアウト。記憶はそこでぷつりと途絶える。
目覚めると、お昼過ぎ。年賀状用の画像データは、すっかり完成していた。
今年は、どうやら間に合ったようだ。
2001.12.25(Tue)
ごますり器と変身アイテム
おそらく目覚めたみこりんは、枕元に置かれたプレゼントに気付いた頃だろう。やがて、階段を下りてくる軽やかな、音。リビングのドアを、そろっと開けて入ってきたみこりんは、小さな体全体で抱え込むように、箱を3つも運んできていた。
そう、今年もやはりプレゼントは3つもある。双方の実家のサンタクロースから1つずつ、そして我が家のサンタクロースから1つ。中身はみこりんのリクエスト通りのブツが入っているはずだ。じじばばが間違えて買ってきていなければ…だが。
箱に貼り付けられた手紙をひととおり読み終えたみこりんが、いざ開封にかかった。中から出てきたのは……まぎれもなくみこりんが欲しがっていたブツだった。家ではほとんどTVを見ないのに、なぜか“おじゃ魔女どれみ”にハマっているみこりんは、あのごますり器のようなくるくる回すやつをお願いしていたのだった。田舎のばばは最後までこの商品名を正確に覚えられなかったのだが、その特徴的な機能故か、間違わずに済んだらしい。
ご機嫌なみこりんであったが、3個もあるのは父母そしてみこりん用なのではないか?というLicの指摘に、しばし考え込んだ風だったが、やがて小さい方の箱を持ってLicのところにやってきた。あげるつもりらしい。中身はこれも“おじゃ魔女どれみ”関連のグッズである。虚をつかれたLicは、それを受け取らざるを得なかった。そして私には、最後の箱から出てきたシルバニア・ファミリー用の小物がやってきそうな気配。すかさず丁重に辞退する。
朝は、ここで終了。今日は平日だ。遊ぶのは帰ってきてから。
その夜、みこりんは飽きることなくごますり器を回し、晩ご飯においしく魔法をかけてくれた。そして右手にはLicにあげたはずの変身アイテムが巻かれている。Licの腕には短すぎて使えなかったので、みこりんのもとへと戻っていったのだという。それが奏でる電子音は、まるで夏の夜にじぃじぃと鳴く虫のような具合で、しかも音程が微妙にズレてるような感じだった。ずっと聞いてると無性に笑いの衝動に取り憑かれそうだったが、みこりんは全然平気らしい。……ちょこっと不安。
2001.12.26(Wed)
タイヤに轢かれても大丈夫な理由
夕食前のひととき、みこりんと話していると、なんのはずみか交通事故の話題になった。クルマのタイヤに轢かれたら大変なことになるねぇなんて言っていたら、みこりんが得意気に教えてくれた。
「おさかなは、ひかれてもだいじょうぶなんよ〜」
リビングの水槽を指さしながら、みこりんはそう言った。水槽の中ではチョウチョウウオが乱舞している。
な、なぜだ。なぜ魚は大丈夫なのだ。悩む私に、さらっと答えるみこりん。
「だって、もうぺっちゃんこになってるから」
……………………な、なるほど。
2001.12.27(Thr)
寒い夜
Licが古本屋で買ってきたらしいコミックが、コタツの上に積まれていたので少々手に取ってみたりして……
ふむふむ。『日帰りクエスト』か。1巻、2巻……気がついたら、最後の7巻まで読み切ってしまっていた。今夜は早く寝るつもりだったのに。
寒い。石油ファンヒーターは設定温度、室温ともに20度を示しているというのに、膝から下が妙にすぅすぅ冷気がよぎる。部屋の中に取り込んでいるステビアの鉢植えも、すっかり茶色くひからびてしまった。どうあがいても地上部は枯れる運命にあるらしい。ならば早めに刈り込んでおくのが吉。春になれば、また新芽が伸びてくる。そうなってからでは手遅れだ。
今年はまだ本格的に雪が降っていない。暖冬……なのかひょっとして。
2001.12.28(Fri)
架空の設定
12月のお約束、『赤穂浪士』を題材としたドラマを見る。
時代劇をこよなく愛するLicも、やはり聞き耳をたてているようす。なぜ聞き耳なのかといえば、時代劇よりも優先順位の高い作業を同時進行しているかららしい(本を読んでいるようだ)。
いよいよ討ち入り前夜。当日本番その時よりも、やはり前夜という時間は何であっても一番いい時間帯だなぁ…と思いつつ。
その時、Licが言った。
「この赤穂浪士の人たちが、その後、新撰組に入るんやね」
………え?
今年もあと3日か。
2001.12.29(Sat)
大掃除小掃除
目覚めると、すでに午後3時。寝たのが夜明けとはいえ、ちょっと寝過ぎたようだ。急いで起きあがる。
階下では、Licが年末の大掃除に着手し始めていた。私も遅れを取り戻すべく、作業に加わる。大掃除とはいっても、どっちかというと我が家の場合は、捨てるモノと捨てないモノとの仕分け作業が主な作業になる。日頃、忙しさにかまけて積んだままになっている書類&書籍の数々が、いつのまにやらテーブルをはじめあらゆる平らな部分を覆い尽くそうとしているのだった。
しかし年々、捨てられないモノは増えてゆく。でも収納場所は有限だ。こういう最適化問題はLicが得意とする分野である。なにか良い案を考えてくれるに違いない。
2001.12.30(Sun)
お正月飾りなど
正月飾りといえば、しめ縄か鏡餅だが、やはりこういうものには地方色というかいろいろな様式があるのだなぁと、人混みでごったがえすスーパーの正月飾り売り場で改めて思う。たとえばしめ縄のデザインは、私の育った四国は愛媛の一地方では、鳥居型や円形が多かったような気がする。ところが今現在居住している東海は岐阜の一地方では、前方後円墳のような形状のものが多い…ような気がする。
やはりなんとなくしっくり来ないような気がしつつ、他にはないのかと棚を彷徨っていくと、端っこのほうにあった。円形のものが。でもなんかちっこくてちゃちっぽい。あの威風堂々とした面構えで、何者をも通さずといった感じの昔ながらのヤツの迫力には遠く及ばない。でも一応手に取ってみると、セロファンの包みに“関西用”と刻印が。………最近はこういうのが流行っているのだろうか、関西では…(一店舗だけで判断するのは無理があるけど)
結局、郷に入っては郷に従えで、前方後円墳型のを1つ購入。あと、クルマとみこりんの三輪車用にちっちゃなタイプを1つずつ。
裏白にダイダイ、生け花用の花などを買い、お節料理の食材を買い込めば、今年の用はほとんど終わりだ。明日はゆったりと大晦日を過ごそう。
外は雪。うっすらと積もって、雪は止んだ。寒い夜だ。
しめ縄を飾り、神棚のお供え物を一新して、鏡餅をででんと並べる。いつもこうありたいものだなぁ…とか思いつつ、座敷を出るころ、奇妙な鈍痛に気付いた。む、頭が痛い。鈍痛は徐々にキリでねじ込んでくるような激痛に変わってくる。背中から首筋の関節が、ぎりぎりときしみをあげているようなだるさと痛みに覆われてきて、私は降参した。寝よう。
風邪だ、きっと。
2001.12.31(Mon)
花をいける
大晦日だというのに、やっぱりどうも体がだるい。遊びにさそってくれるみこりんには悪いけれども、やはり布団に戻った方がいいようだ。
寝室の空気は、異様な冷気に充ちていた。ちょっと無人にしただけでこれか。大雪警報は伊達ではないらしい。そろっと氷のように固まった布団に潜り込む。体中の熱という熱が奪われるような気がして、ぐぐっと背中を丸めた。
夕方。なんとなく頭が軽くなったような気がしたので、起きあがる。買い物から戻ってきたみこりんが、さっきまで時々寝室をのぞきにきていたのだが、飽きてしまったのか気配がない。寂しい。階段を下りて、あたたかなリビングへと向かう。
お節料理作りに余念のないLicのそばで、みこりんが遊んでいた。昨日買ってやった小麦粘土で、キリンとかを作っているらしい。私も飛行機を作ってやったら、負けじとみこりんはロケットを形作ってくれた。ちゃんと炎まで再現してある。なかなか芸が細かい。
Licに言われて庭の菜園2号から、ほどよく育った大根を掘ってきた。ニラもついでに一握りちぎる。今夜は鍋だ。ニラはお節の材料に。ニラは雪やら霜にやられてすっかり茶色い部分が多くなっていた。来年はしっかりビニールで覆ってやらねば。
例年はLicが正月用の花を生けるのだが、今年は私がやってみることにした。松、竹、そして万両に雪柳。淡いピンクの金魚草がポイントだ。ふむふむと形状を考えつつ、まず松をぶすっと剣山に、刺す。松ヤニで指がべったべたになってしまった。次に、竹………と、ここで横からLicの手が伸び、竹は剣山の元へとまっしぐら。そ、そうきたか。ならばと雪柳を右後方へと刺せば、Licも同じく雪柳を左側面へと配置する。金魚草はここじゃと松に寄り添うように立て、最後に万両を両断すると、前方と後方を飾ってお正月の生け花は完成した。
来年もよい年でありますように。