2003.10.1(Wed)

ワーム

 ここ数日メールチェックしてなかったことに気づいたので、今夜久しぶりに実行してみた。すると、日頃はまったく受信件数のない、植物のページ用に作ってあるメールアドレス宛に、妙に大量に着信しているのに気が付いた。いったい何事かと、受信メールを見てみれば、なんのことはない、すべて“ワーム”らしい。Microsoftからのアップデート情報に偽装したやつとか、リターンメールを詐称したやつとか、バリエーションは様々だが、どれもこれも添付ファイル付きの一見して怪しいやつ。
 使用している鶴亀メールは、指定した拡張子の添付ファイルを削除してくれる機能があるので、こういう時にも安心だ。もっとも、HTMLメールは見ないけど(見るとしてもテキストエディタで開いて確認するだけ)。

 しかし謎なのは、なぜに植物ページ用のメールアドレス宛だけなのか、ということだ。たまたまこのページを訪れた人が、ワームに感染してしまったんだろうけれど、ここ数ヶ月更新してないページで、しかも花の写真しか載せてないのに、訪れてくれる人もいるのだなぁと、妙なところが気になった出来事である。


2003.10.2(Thr)

 文庫版の『百鬼夜行抄』(今市子)の最新刊を、真夜中、読んだ。隣ではみこりんが、すぅすぅと心地よさそうな寝息をたてている。起こさないように、枕元の“にょろにょろ型スタンド”の淡い光での鑑賞だ。このスタンドはワット数の低い白熱電球が中に入っており、色彩がどことなくセピアっぽくなるので、こういう雰囲気の作品には妙にマッチするような気がする。

 この作品は、ずるずるどろどろした気色悪さがない代わりに、すぅっと血の気が引いてゆく感じにぞくぞくっとする怖さがあるので、たいへんお気に入りなのである。今回も、昼間なのに急に薄暗く感じる部屋の中とか、ノイズにまみれて消えそうな電話の声とか、ツボを押さえた描写がにくい。それでいて“もののけ”がコミカルに描かれている部分もあり、怖いのとほのぼのしたのが絶妙のバランスを保っているところも、素晴らしい。

 今回は、特に“人間の死”というあたりについて、ちょいと考えるところのあるお話しが多かったような気がする。死んだ人間と、残された人間の関係とか、深く考え始めると、眠れなくなりそうなテーマもあり、秋の夜更かしにはぴったりかもしれない。


2003.10.3(Fri)

ミッション

 みこりんの寝たあとの、週末の夜は『FINAL FANTASY XI』タイム。Licと二人で、とあるミッションをクリアすべく敵の本拠地に潜入している。二人だけのパーティなので、あまり強い敵だと返り討ちにあってしまうため、注意深く進んでゆかねばならない。そんな緊張感の中、倒すべき敵が出現するのをひたすら待った。

 やがて1匹目登場。すかさず倒す。二人して叩けば、ほぼ問題なく倒せるレベルのようだ。ミッションは、この敵を20体倒せばOKというもの。残り19体。しかし、続きがなかなか出てこない。

 そうこうするうち、リンクシェル(同じリンクシェルに属している者同士は、専用のチャット空間が与えられる))の仲間が一人、お手伝いに来てくれることになった。かなりの高レベルである。到着するなり、そこいらの敵を倒しまくる。まさに瞬殺であった。その甲斐あってか、目標の20体に徐々に近づき、ついにクリア。めでたくミッション・コンプリートとなったのである。

 週末ぼちぼちとしかやれないので、なかなかレベルは上がらないが、急ぐ旅でもなし、のんびりとやろう(某ゲームのように、いきなりサービス停止なんてことになったら、目も当てられないが…、まさかそれはなかろう、と)。


2003.10.4(Sat)

秋の菜園

 借りている市民農園にて、雑草抜き。夏の野菜で残っているのはトマトとナス、そしてスイカだけだが、トマトはほぼ全滅状態に近く、ナスもほとんど生長していない。スイカにいたっては、消滅してしまったらしい。というわけで、秋・冬野菜のために、畝もついでに整理することにした。

 まず雑草をぶっちぶっちと抜いてゆく。雑草の海のように思われたが、数そのものはたいしたものではなかったようで、根元から抜いていると、やがて畑の表面は整ってきた。畝の上にマルチをしていたのが幸いしたようである。でも、1本の雑草がそれぞれでっかく生長しているため、抜いた雑草は山となり、畑の一角を占拠した状態だ。冬に向けてこのまま乾燥させ、頃合いを見計らって焼いてしまうのがいいかもしれない。

 1時間作業して小休止。みこりんとLicを音楽教室まで迎えに行き、戻ってきたら雑草抜き再開。みこりんは雑草の山を見ると、冒険者の血が騒いだのか、さっそく登ってみたりしている。高さ50cmあまり。おちたら危なそうだったが、こういうのは何事も経験が大事だとも思っているので、好きにさせておいた。

 畝の上に、カタツムリが1匹這っていたのでみこりんに見せてやろうとたくらんでいたのだが、見つけた時に確保してなかったため、再発見できず。かわりに殻だけのカタツムリを3匹ほど、みこりんの手のひらに乗っけてやった。入り口に膜を張ってしまっているため、出てきそうにない。殻だけだとさほど面白いものでもないので、すぐにみこりんは飽きてしまったようだ。残念。我が家の庭ではカタツムリはまったくいないので、こういう機会にでも触れさせておこうと思ったのに。

 帰り際、用水路を覗いてみる。だいぶ水量が減って、流れもゆるやかになってしまっている。田圃も稲刈りを終えたところが目立ってきた。もう魚もいなくなったかな、と思っていたら、小さい影を数匹発見。みこりんは魚獲りしたそうだったが、あいにく今日はタモ網を持ってきていない。いや、たとえ持ってきていたにしても、網の目から抜け落ちてしまいそうなほどに小さい魚は、獲るのも難しいだろう。この魚が来年の春、もう少し大きくなった頃、またこの用水路で魚獲りでもしてみよう。

 ところで、秋野菜、もしかしたらすっかり出遅れているような。今年は自家製大根無理かな。


2003.10.5(Sun)

お片づけ

 午前中、にゃんちくんの餌などを買いに出ていたのだが、帰り道、とてつもない睡魔に襲われたので、家にたどりつくなり布団に倒れ伏した。そのまま熟睡モードへ。次に意識を取り戻したのは、すっかり夕暮れになってからのことである。

 来週はみこりんの運動会のため、実家から母がやってくることになっている。そのためには、荷物でいっぱいの座敷を片づけねばならない。限られた日数の中で、休日は今日しかないので、大物は今日のうちにやってしまわねば。
 この夏、結局一度も使うことなくそのままになっていたキャンプ道具一式を、二階の物置部屋へと移動させる。なんだかこれを片づけてしまうと、夏の名残が完全に消え去ってしまうようで、ちょっと寂しかったのだが、それはそれ、これはこれだ。また来年使う日が来るまで、静かに休ませてやろう。

 あとは細々したものを整理して、とりあえず完了。じつはまだ雛人形の箱が出たままになっているのだが、これはまぁ金曜の夜にでも押入に片づけてしまえばよいだろう。こうしてたまにお客さんが来るとなると、部屋の中がきれいに片づくのも、また一興。これが毎月だったらかなりきついけど…


2003.10.6(Mon)

TVを消して

 近頃TVの類をほとんど見なくなった。もともと我が家では新聞をとっていないので、Webのニュースサイトは貴重な情報源であったのだが、こちらのほうもすっかり御無沙汰である(仕事がらみの技術情報は毎朝メールチェックしてるけど)。ゆえに、めっきり世の動向には疎くなってしまった。
 ちょっと前までならば、夜のニュースを見なければ落ち着いて寝られないほどだったのに、えらい変わり様である。仕事が妙に忙しくてそれどころではないというのも、もちろん理由の1つには挙げられるのだが、それだけがすべてではなさそうだ。なんだか心寒くなるような事件が続いて、うんざりしたというのもありそうな…

 まぁ、こういう生活も慣れてしまえばどうってことはないらしい。秋の夜長、TVを消して、まったりと『FINAL FANTASY XI』に浸るというのが、今はとにかく至福のひとときである。


2003.10.7(Tue)

走行距離

 今日から週末まで朝8時半出勤である。つまり、家を朝8時には出ていないと間に合わない。普段10時出勤の我が家においては、驚異的な早起きが課せられたというわけである。8時に家を出ようと思ったら、何時に起きればよいか。余裕を見て、昨夜は午前7時に目覚ましをセットしておいたのだが…

 結局、完全に布団から起き出せたのは、午前7時半。いちおう目覚ましの音は認識できていたものの、30分近く布団の中で眠気と闘っていたことになる。我が家は皆、朝はとことん弱いらしい。が、その中にあって、みこりんだけは比較的すんなりと起き出してきた。さすがに若いだけあって、目覚めはいいようだ。

 さて、8時半出勤となると、いつものように先にみこりんを保育園に送っていくということができない。保育開始がちょうど8時半くらいからになっているので、出発時刻である8時では、まだ保育園に先生が到着していないのだ。そこでまず、Licが私を仕事場までクルマで送っていき、その後みこりんを乗せたまま引き返し、保育園へ、そして最後にLicが再度仕事場に向かうという手順となる。通常より1往復分多くなるので、運転するLicの一日の走行距離は、約90kmあまりに達するのである(普段で約60kmほど)。

 こうして数字に表してみると、Licがクルマをもう1台買おうというのも、実感としてわかるような気がする。やはりもう1台必要か。そろそろ中古車屋巡りでもすべきかも。


2003.10.8(Wed)

BB

 実家がついにブロードバンドな環境になったとメールが入っていたのが、先週末のこと。さっそく、WindowsUpdateしておくようにと返信しておいたのだが、その後、音沙汰がない。おそらくネットにつないでないのだろう。常時接続環境になったというのに、もったいない。

 固定料金だからいくら使っても大丈夫というような話を電話でしてみたのだが、返ってきた答えは「でも電気代はかかるのでしょう?」というものだった。まぁ、たしかにそれはそうなのだが、なにか前提が違ってるような気がしないでもない。感覚が麻痺しているのは、もしかしたら私の方かもしれないが。


2003.10.9(Thr)

世論誘導

 “住基ネットの侵入テスト、「まだ公式発表はなし」と長野県

 一部メディアが“反住基ネットな雰囲気”を煽りたいがために、“侵入成功”と報じたことについての続報。なにやら原発問題の『絶対安全 vs 絶対危険』の対立構造を彷彿とさせる。なにごとにも“絶対”などないという視点から物事を見られなくするのは、とても危険である。住基ネットについては冷静な議論でセキュリティ対策を考えねばならないのに、感情的な『国民総背番号制』への反対から、反住基ネットに結びついた結果、話がおかしな方向に向いてしまっている。

 ふと思い出すのは、消費税導入の頃、某メディアは社説やら投稿欄を駆使して反消費税キャンペーンとも呼ぶべき雰囲気を形成したことがある。が、現在はどうか。民主党が年金改革に消費税を用いることについて、好意的な論調で述べているではないか。以前あれほど反消費税を唱えていたその口は、いったいどこに封印したのやら。じつに便利な口を持っているものだ。
 住基ネットも、ただの“イデオロギー闘争”のダシに使われているとしか、私には思えない。

 で結局、長野県は独自のローカル住基ネットもどきを構築する構想だとか。なんやそら。自分の構築するシステムは“完璧”だとでもいうのか。ならばその技術を現状の住基ネットに振り向ければ“完璧”になるんじゃないのか。そういう提案をする方が、よほど建設的だと思うが。


2003.10.10(Fri)

キン

 新聞をチェックしていない日が続いていたので、あやうく知らないまま過ごすところだった。日本原産の最後のトキが死んだ。ケージ内でいきなり飛び上がって、頭部挫傷が死因だとか。内臓そのものは健康だったというから、なんとも可哀想でならない。大空を羽ばたいていた子供時代の夢でも見ていたのだろうか。

 死亡した体組織はすべて凍結保存されるという。学術的標本としての価値だけでなく、遠い将来、遺伝子操作の技術が一線を越えた時、日本原産のトキは再度復活するのかもしれない。


2003.10.11(Sat)

マラソン・コンサート

 明日の運動会に備えて、双方の実家から、ばぁばがそれぞれ我が家へとやってきた。みこりん、大はしゃぎである。
 午後、地場産業のお祭りの一環で、みこりんの通う系列の音楽教室が主催するマラソンコンサートが行われるので、出かけた。今年は、みこりんもこれにエントリーしているのだ。みこりん初のソロである。

 マラソンコンサートとは、その名の通り、生徒達が途切れることなく一人ずつ順番にエレクトーンを弾いていくという催しである。総勢150名近くがエントリーしており、みこりんは20番手付近で待機だ。待ち行列の中に、みこりんを送り出し、私はステージ脇でシャッターチャンスを逃さないように、待った。

 ステージ上には3台のエレクトーンが並んでおり、常時3人が座り、そのうちの一人が演奏するという趣向になっていた。一人の演奏が終われば、新たな一人が追加されるという仕組みである。徐々に待ち行列中のみこりんの位置が、先頭に近づいてきた。そっとみこりんの表情を眺めてみたが、平然と構えているように見える。みこりんが緊張したときに見せる、あの妙なカタチの口にはなっていなかった。

 いよいよみこりんが、一台のエレクトーンの前へとやってきた。やはり、みこりんの表情は穏やかなものである。なんだかとっても余裕ありそうな感じ。たしかにここ数週間というもの、みこりんは選んだ曲の練習に余念がなかった。最初はつまづいたり、妙な音階になったり、リズムが狂ったりもしていたが、昨夜聞いた段階では、すらすらと楽譜なしで弾きこなしていたように思える。
 ついに、みこりんの名前が先生によってコールされた。緊張の一瞬である。ステージ脇の私と、みこりんの目があった。ところがみこりん、なかなか弾き始めない。どうしたみこりん。練習の成果を、思う存分発揮するがよい。……さらに2秒の空白。私は、みこりんに向かって大きく頷いてやった。

 こちらからだとみこりんの指の動きは見えなかったが、音を聞く限り、練習の成果は存分に発揮されていたように思える。弾き終えたみこりんは、少し笑顔を見せてステージから降りていった。さすがに少しは緊張していたのかもしれない。
 春頃には、まだまだ譜面通りに弾くことさへままならなかったというのに、わずか半年で目を見張る成長である。この時期の子供の吸収力というのは、恐るべきものがあるようだ。


2003.10.12(Sun)

最後の運動会

 運動会当日。朝方、霧雨が降ったり止んだりという微妙な天気だったが、決行らしい。本降りにならないことを願いつつ、テント内に居場所の確保。テント1つが我々の地域に与えられていたのだが、4家族分ほどですでに満席状態にあり、少々焦る。1家族でテントの1/4を占有してたり、テーブルを持ち込んでいたりと、思わず目が点になるような状況もあったのだが、隅っこにとりあえずシートを敷けたのでよしとしよう。

 この保育園では年長組さんが、毎年、縄跳びと鉄棒の逆上がりと補助輪なしの自転車乗りを競技のそこここで披露してくれるのだが、みこりんはどれも無難にこなしているように見えた。今年のお正月頃、まだ縄跳びが上手に出来ずに、一緒に練習したことを思わず懐かしく想起する。本格的な逆上がりだって、春頃にはまだ出来ていなかったはずなのに、もはや楽々とこなしているのだ。この時期の子供の一日は、もしかするとオトナの1週間分に匹敵する充実具合なのかもしれぬ。そのすべてを余さず記録すべく、ビデオカメラから目が離せない。

 騎馬戦(といっても肩車するだけだが)にみこりんと共に出場。2回戦とも、みこりんは敵の帽子をゲットすることに成功したが、同様に2回とも自分の帽子を敵に奪われてしまった。1回目は背後から音もなく接近してきた敵に、ささっと持っていかれ、2回目はいつのまにか帽子を落としたのに気づかず、先に敵に拾われてしまったのだ。じつにもったいない。

 午後からは保護者参加競技が2つ。クラス対抗と地区対抗、いずれも私が参加した方のチームは初戦敗退。みこりんには「なんでー?」と言われてしまったが、いずれも人数が他のチームよりも少なかったのが原因のような…?綱引きとか、物奪い競争とか、人数に依存する競技ばかりだっただけに、これは痛い。

 みこりんは、午後もずっと園児席で観戦していたようである。本当は親と一緒に居てもいいのだけれど、みこりんはそうはしなかった。そろそろ親よりも、お友達と一緒の方がよくなってきたのかもしれない。なにやら少々寂しくもあり、頼もしくもあり。みこりんが親に甘えたい時期に、たっぷり甘えさせてやることができただろうかと、考えたりもし。過ぎてしまった時を巻き戻すことは不可能なだけに、不安もある。

 最後の競技は、恒例の年長組さんによるリレーである。一周およそ50メートルほどのコースを、4チームに分かれて競うのだが、チーム分けが男女それぞれ2チームということになっていた。なんとなく男の子チーム有利な予感。体格にさほど顕著な差は現れていないものの、運動能力というか混戦でのコース取りの優位性みたいなのがあるのでは。
 いよいよみこりんがスタートラインに並ぶ。一番走者ということは聞いていたので、ビデオカメラで追っかける準備は万端。合図と共に駆け出したみこりんを、液晶ビューで捉え続ける。肉眼よりも解像度が悪いのが難点だが、ズームできるので顔の雰囲気とかはよくわかるかも。
 真剣な目で走っているみこりんだが、どうやら混戦にちょっと弱いらしい。つい踏み込みを躊躇って、遅れをとっているようだ。走りそのものが決定的に遅いわけではないので、ちょっと惜しい。みこりんの場合、体格がちょっと小柄なのが影響してるのかもしれなかった。
 で、結局、2回戦とも男の子チームの優勝。来年はぜひ男女混成チームにした方が…、ってもう保育園の運動会にも来る機会はないかもしれないけど。

 すべてのプログラムを終え、撤収。さくさくっとテントを片づけ、待ちかまえていたトラックへと積み込んだ。相変わらず、みんなトラック持ってるのがすごい。去年の我が家のように、普通のクルマにぎゅうぎゅうと詰め込む光景は見られない。トラックありがデフォルトな地域で、役員が当たったら大変なことになる。

 帰宅後、みこりんと風呂でさっぱりと砂埃を洗い流したあとは、お昼寝…、と行きたいところだったが、みこりんは二人のばぁばと遊ぶのが忙しいようで、底なしのエネルギーを発揮中。こうしてみこりんの保育園最後の運動会は終了した。


2003.10.13(Mon)

一人帰り

 運動会も終わり、連休も今日限りということで、ばぁばの一人が帰ることになった。休みの間中、みこりんはばぁば達にくっついていたのだが、いざ一緒に行くかと問われると、首を縦には振らないのである。まだまだ遠くまで親と離れて行くのは、不安があるらしい。

 子供用雑誌の付録にくっついてきた日本地図で、みこりんは二人のばぁばの家が、どのくらい自分の家から離れているかを、おぼろげながら悟っているのだ。距離の概念が今ほどしっかりしていなかった時期には、本当に一緒に行ってしまいそうな時もあって、逆に困ったりもしたものだが、それも今では懐かしい思い出になった。

 今夜みこりんは残ったばぁばに、思う存分じゃれついていたが、明日には帰ってしまうのだ。その時、みこりんはやはり泣くだろうか。もう泣かないような気もするのだが、ちょっと心配。


2003.10.14(Tue)

さらに一人帰り

 二人目のばぁばが帰った時、みこりんは泣いたのだという。だから、というわけでもあるまいが、みこりんは“田麩”を買ってもらっていた。桜色した田麩は、ほのぼのと甘く、いつもはお茶碗1杯か多くても2杯しか食べないみこりんが、今夜は軽く4杯平らげたようである。おそるべき田麩の威力。

 私がみこりんくらいだった頃も、同じように桜色した田麩が好きだった記憶がある。でも、実家はそういう色のついたものを極力排除しようとする傾向が強かったため、滅多に口にはできなかったのだが、かえってそれが好奇心を刺激していたような。こっそり冷蔵庫を開けてみては、なんでもないのに田麩を頬張ってみたりしたことを思い出す。

 ただ当時から不思議だったのが、なぜ冷蔵庫に隠すようにしてこっそりと田麩があったのかということだった。冷蔵庫に入っているからには、何か料理に使うはずだが、夕食にそのようなものが出てきた記憶が、ない。かといって今夜のみこりんにしてやったように“ふりかけ”代わりに食卓に出てきたことも、ない。
 いったいあの田麩は、何に使われていたのだろう。開封されて輪ゴムできっちり留められた田麩の袋は、気が付くと冷蔵庫から消えていた。つまり、私がこっそりつまみ食いする以外に、誰かが食べていたはずなのは間違いないのだが…。

 この謎は、両親の記憶が薄れてしまう前に、一度確かめておかねばなるまいと思っていることの1つである。


2003.10.15(Wed)

安眠の地

 二人のお客さんが帰ったあとも、座敷には布団が2組置かれてあった。夜、私を迎えに来てそのまま寝入ってしまうことの多いみこりんを、一時的に寝かしておくのに便利というのもあり、ついそのままにしてあったのだ。

 今夜は、一人で寝るというみこりんのために、座敷の布団が活躍していた。襖を完全に閉めてしまうとダメらしいのだが、私やLicの雰囲気が察知できれば安心するようで、みこりんはやがてすぅすぅと寝息を立て始めた。
 本当は朝までそうやって一人で寝る練習をさせればよいのだろうけれど、私の方が逆に不安でみこりんと一緒でなければダメっぽい。夜中に鼻血を出しはしないか、お腹が痛くなってたりはしないか、と心配事が後から後から湧いてくる。で結局、私も一緒に座敷で寝ることになる。Licもそんな二人の間に挟まるようにして布団に潜り込んでくるので、きつきつである。

 でも、リビングから近いという利便性もあり、ついついこの場所で寝るのにはまってしまいそうだ。しばらくはここが安眠の地となりそうである。


2003.10.16(Thr)

落ちていた物

 野山で木の実が色付き始めるこの季節、私には今でも忘れられない“苦い”記憶がある。あれはそう、まだ小学校低学年の頃だったかと思う。一人で学校から帰っていると、道端で落ち葉に混じって、きらりと輝くルビーのような玉を発見したのだ。
 思わず拾い上げた私は、手の上に乗せてじっくりと観察してみた。色はオレンジ色とも朱色ともつかない半透明なもので、雰囲気的にはイクラに近かったが、色彩は均一でどこか宝石を思わせるものがあった。指先でつまんでみると、少し弾力がある。でも、ザクロの実のようなあやうさはなく、木の実というより、今で言うところのグミみたいな感じで、子供心に“お菓子ではあるまいか”という感触を得ていた(もちろん当時はグミなどなかったけど)。

 落ちているものをむやみに拾って食べてはいけない。多くの子供達と同じように、私もそう教えられていたし、自分でも「もしこれが毒だったら…」という思いもあった。けれど、その艶やかな色彩と弾力の魅力の前には、そのような常識はどこかへ吹っ飛んでしまったのだった。

 おそるおそる口に入れ、舌触りを確かめてみる私。ゼリーのようでいかにも美味しそう。次の瞬間、私は意を決して奥歯で噛んでみることにしたのである。

 ぷちっ

 直後、口いっぱいに広がる悶絶の苦さ。正確に言うと、苦いというより、とても嫌な味だった。咄嗟に、これを食べたら死ぬ、とまで思ったほどだ。
 ぺっと吐き出しても、口の中には嫌な感触がまだ残っていた。家に帰り着くまで、何度も何度も唾を吐き出したものの、結局、数時間、その嫌な味はなくならなかったような気がする。このことは、その当時、親にも話していない。きっと叱られると思ったせいもあるが、早く忘れたかったというのもある。

 あれは結局何だったのか。今でもわからない。種のようなものがなかったので、木の実ではなかっただろうと思うのだが、人工物だとすると、あれほどの嫌な味をした意味がわからなくなる。薬にしては色が妙だし…、お菓子では絶対にあり得ない。とにかく食用のものではあるまい。今に至っても、あれほどまずい味は体験したことがないのだ。

 みこりんにも伝えておかねば。この世には美しい色とカタチをしたものでも、とんでもなくまずいものもあるのだと。


2003.10.17(Fri)

頭痛

 午後からひどく頭が痛み、悪寒までしてくるので、帰宅するなり布団にくるまって眠った。来週早々には二泊三日の出張が待っているので、ここで寝込んでしまうような事態になるわけにはいかなかった。
 しばらくそうやって布団の中にいると、みこりんもいつもより2時間も早く布団の中に潜り込んできたのだった。まだまだ一人で眠るのは心細いようである。誰かが居ると、こうして早寝ができるらしい。

 頭痛はなかなか消えなかった。もうこんな頭いらない、と思うほどに。脳みそ取り出して、揉んでみたくなるほどの鈍痛がずきずきと響き渡る。あぁ願わくば、風邪などではありませんように。明日すっきりと目覚めることができますように。


2003.10.18(Sat)

寝る一日

 頭痛は消えていた。でも念入りにお昼頃まで体を休める。その傍らで、みこりんがブロック遊びに興じていた。

 近頃は設計図を見なくても、家とかの一部を作れるようになってきたみこりん。得意技は、ヒンジ部品を使った可動部分の装着である。この技を使うと、家のバルコニーが上下に移動したり、クルマの屋根が開閉式になったりする。
 どうもみこりんは、その部品を使った箇所だけを壊さずにとっておいて、何度も再利用しているらしかった。よっぽど気に入ったようである。

 私にも何か作って欲しいというので、余った部品を適当にくっつけて空飛ぶクルマなどを作ってみる。みこりんの作った可動式屋根を持つクルマと、空中でしばし遊ぶが、徐々に眠気が襲ってきたので再度布団に潜り込み、いつのまにやら意識は遠のき、みこりんの声も聞こえなくなった。

 次に目覚めた時は、すっかり夜も更け、みこりん寝る準備万端である。なんだか一日があっというまに過ぎたような気がして、ちょっともったいなかったかな…と、思った瞬間であった。


2003.10.19(Sun)

暗がりの公園にて

 みこりんと公園に行く約束をしておいてから、ちょいと一緒に昼寝。予定では15時頃に目覚めるつもりだったが、いざ目を覚ましてみると、すっかり夕方。時計の針は17時を回り、窓の外は徐々に闇に覆われつつあった。でもみこりんは公園に行くのを楽しみにしているし、約束は約束なので、みこりんと手をつないで、家を出た。今日は団地の中心部にある方の公園が目的地である。

 10分ほど歩いて公園到着。遊具の付近には先客がいて、みこりんの足がしばらく公園入り口で止まってしまう。人見知りは減ったとはいえ、ぜんぜん知らない子達の方へ近づくのは警戒しているようだ。それでも徐々に歩みを進めて、ようやく遊具に到着。まず、鉄棒を披露してみせてくれた。次にブランコ。1分ほどこいだところで、同じ保育園に通う男の子二人組が登場し、ブランコを奪われてしまった。ヘンなカタチに口をゆがめて、みこりんが私の元へと戻ってきた。かなり不本意っぽい。
 どうやら保育園では「かわってー」と言われたら、「いいよ」と言って代わるのが慣わしらしい。でも、この男の子二人組は、自分達が「かわって」と言われても代わる気はないようだ。じつに勝手なものである。1歳くらいの女の子が、ブランコに近寄って、ちょっと空いた隙にブランコ遊びを始めると、戻ってきた男の子達が強引に奪い取ろうとするので、ここで教育的指導。男の子達は、いずこかへと去っていった。よそのオトナに叱られ慣れていないような感じ。というか実の親にもあまり叱られてないんじゃないのか、という雰囲気。

 ブランコが1つ余ったので、みこりん、再度ブランコに乗ってゆーらゆら。でも夕闇はどんどん周囲を覆いつつあり、街灯の明かりがぼんやりとだだっぴろい公園の一角を照らしている。みこりんが滑り台へと移動した。5往復ほどしたところで、すっかりみこりんの表情が読みとれないほどの闇に包まれていることを知る。遠くで子供の泣き声が聞こえた。ふいに、みこりんが滑り台を降り、たたたたたっと公園入り口方面へと向かった。唐突な動きに、いったい何事かと後を追う。

 「どしたの、みこりん?」
 「かえる」
 みこりんは、ぽつりとそう言った。

 怖くなったのだろうか。次回はぜひ明るいうちに公園に連れてきてやろう。そう思った日曜日の夜。


2003.10.20(Mon)

初日

 二泊三日の出張初日、昼間の仕事を終え、予約したほてるへと向かう。新宿御苑駅から徒歩五分らしいのだが、無事にたどり着けるだろうか。地図があっても迷子になる時があるほど、方向感覚には疎いからちょっと心配。
 新宿御苑から正反対の方向へと歩き、やがて広い道路と突き当たる。地図によれば、この筋にあるはずだった。右か、左か。ちょっと迷ってから、右側に曲がる。辺りはすっかり夜の闇に包まれていて、ネオンもほとんどないため視界はとても悪い。ホテルの名前を再度確認してから、注意深く進んでいった。

 気づいたときには、地図に示された目印を通り過ぎたあとだった。行き過ぎたか、と不安になったが、ぐるりと周囲を見回してみて、ちょいと路地に入り込んだところで、目的の看板を発見していた。通りに面しているとばかり思っていただけに、ちょっと焦る。あやうく遭難してしまうところだった。

 近くの弁当屋で晩ご飯を買い込み、フロントへ。誰もいなかった。一匹の猫が、台の上で丸くなり、じっとこちらを見つめている。金色の瞳をした、緑色の猫だった。しばし猫と見つめ合っていると、奥からやや疲れた感じのフロント係が顔を出す。紙片に必要事項を書き込み、現金支払い。その間も、猫はじっとこちらから視線を外さなかった。鍵を受け取り、いよいよフロントから離れるという段になって、ようやく大きな欠伸を1つ。猫は心地よさそうにその目を閉じた。

 一泊6900円の部屋は、思ったほどにはひどくはなかった。幸いなことに、小型の冷蔵庫まで完備してある。さっそく買い込んできた清涼飲料水を冷蔵庫にしまい込み、ベッドに大きく寝ころんだ。
 いつのまにかうとうとしていたらしい。気が付いたときには午後九時を過ぎていた。とっとと風呂に入り、本格的に寝る準備を始める。

 ぼーっとTVをつけたまま眠くなるのを待っていたが、自分でもいつ寝入ったのかわからないうちに意識を失っていたらしい。ぼそぼそと聞こえてくるTVの音で、ふっと我に返ったときには、すでに真夜中を少し回っていた。TV画面では、なにやらガンダムっぽいメカが登場している。ちょっとだけ興味を惹かれて、TVの方を見ていたような気もするのだが、意識は半ば眠りつつあったようで、その内容はほとんど覚えてはいない。
 時折、窓の外からパトカーのサイレンの音が聞こえてきたようにも記憶しているが、本格的な眠りに入ってしまったようで記憶はここで途切れる。

 みこりんは今頃どうしているだろう。そんなことばかり考えていた夜であった。


2003.10.21(Tue)

LD

 集合時間より二時間以上も早く到着してしまったので、目の前にあったデパートで時間をつぶすことにした。時間潰しになりそうなのは、DVDコーナーと書籍コーナー。まずはDVDコーナーへと向かう。

 『2001年宇宙の旅』とか『DUNE』とか、けっこうそそられるものが並んでいたが、ここで買い物をしてしまっては出費がかさむばかり。ぐぐっと我慢して見てるだけにしておく。
 こうやって眺めていると、私がLDで保有しているタイトルが、結構DVDになっていることがわかる。このままLDで保有し続けるか、DVDに買い換えるか、悩むところだ。LDを自前でDVDに変換するというのも考えたが、120分を超えるものは、1枚に収まりきらないので、できれば避けたい。とはいえLDも大きなジャケットが魅力的という強みはある。たぶん捨てることはなさそうな。

 一番いいのは中身だけハードディスクに吸い上げて、デジタルデータとして保存しておくことだろう。DVDというメディアだって、いつ新しいものにとってかわられるかわかったもんじゃないし。そのためには、巨大な記憶媒体が必要になってくるのだが、既存PCへのHDDの増設という手段よりも、最近気になっているのは家庭向けNASである。2〜3万で手にはいるし、容量もそれに見合った大容量、消費電力もPCと比較にはならないほど低い。そろそろ買い時かもしれん。

 なんてことを考えていると、時間はあっというまに過ぎていて、書籍コーナーでぶらつく余裕がほとんどなくなってしまっていた。が、まぁいい。気になった本は、あとでオンライン書店に注文しておけばいい。わざわざここで荷物を増やすこともあるまい。


2003.10.22(Wed)

おみやげ

 出張に出かける前日、みこりんは「おみやげは、チョコがいい」と言っていた。もしもチョコがなかったら、「ヒヨコみたいなかたちのんがいい」とのこと。以前買って帰ったことのある“ひよこ”のことだろう。よく覚えているものだ。

 東京駅にて、まずはチョコを物色。ずらっと並んだみやげもの屋さんを、1軒1軒チェックしていっていると、やがてピンク色した板チョコが目に留まった。が、これはなんとなくみこりんの抱いている“チョコ”のイメージとは違ってそうな気がしたので、パス。みこりんは、もっと可愛らしいチョコを欲しているに違いない。

 物色再開。数分後、私はめでたく目的のブツに行き当たっていた。
 キティちゃんの絵柄の小さな丸い缶の中に、さくさくチョコが5つほど入った菓子があったのだ。これならば缶だけでもOKであろう。おまけに値段も380円と懐に優しい設定になっている。これだ、これしかない。私は迷うことなく、そいつを1個購入していた。

 列車を乗り継ぎ、懐かしい我が家へと帰り着いたのは23時過ぎのこと。みこりんはすでに熟睡中。明日目覚めたみこりんが、おみやげをすぐに見つけられるよう、リビングのテーブルの上に、そっとキティちゃん柄の缶を置いた。
 あぁ、それにしてもやはり我が家は落ち着く。慣れた枕に慣れた布団。丸まっていると、すぐに睡魔は訪れて、夢の中。これで明日が休暇だったら言うことなしだが、残念ながらそこまで甘くはないのであった。


2003.10.23(Thr)

おみやげその後

 朝7時、みこりんがまず起床。私はその雰囲気を寝ぼけた頭で感じつつ、微睡みの中にいた。ころんと起きあがったみこりんが、私の耳元で「おみやげは?」と問いかけるので、「どこだったかなー」なんてわざとはぐらかしてみると、ささっと布団から起き出したみこりんは、一直線にリビングへと向かっていった。おそるべき幼児の勘である。

 やがて「あったー!」といううれしそうな声が届いてくる。さっそく寝室へと持ってきて、蓋を開けているらしい音。中に入っているものがチョコだということに、なかなか気づいてはもらえなかったが、キティちゃん柄の缶はみこりんの気をおおいに惹いているようだ。どうやら今回のおみやげは成功だったらしい。

 ところで夜、Licがぽつりと言った。「わたしへのおみやげは?」
 ………し、しまった。すっかり忘れてたよ。


2003.10.24(Fri)

レベル上げ

 平日の夜は『FINAL FANTASY XI』でパーティ組むのも時間的に難しいので、Licとのレベル差はなかなか埋まらない。幸い、Licは今、レベル上げよりもスキル上げに熱中しているらしいので、回復不可能なまでに引き離されたわけではないのが救いである。そんなわけで貴重な週末の夜ともなれば、ここぞとレベル上げに励むのであった(Licと同じレベル帯にしておけば、一緒に冒険できるし、一緒にミッションもこなせるので何かと都合が良いのである)。

 1回のレベル上げパーティは、だいたい3〜4時間かかるのが普通だ(状況によってはもっと短かったり、エンドレスだったりもするけど)。それを今夜は2回連続でこなした。終わる頃には、外はうっすら夜明けの雰囲気。眠い頭も、妙に冴えてくるころである。
 その甲斐あって、ようやくLicに追いつくところまで迫ることが出来た。これでしばらくは安心だ。しかし、いつLicがスキル上げに飽きて、レベル上げを再開するやもしれず、油断できないのだけれど。できれば今年中には、Licと一緒にレベル50を突破したいものである。ゲーム的には、このレベル50というのが最初の区切りで、これ以上にレベルを上げるには特別なクエストをこなさねばならないようになっているのだ。当然それは一人では実行できない。だが二人なら…。ちょっとは希望があるんじゃないかな、という望みも少しあり。


2003.10.25(Sat)

リトルワールドへ

 明け方まで『FINAL FANTASY XI』のレベル上げに励んでいたので、とても眠い。が、今日はリトルワールドへお出かけする日。例によって入場料を会社と労組が負担してくれるため、これに行かない手はない。この日を心待ちにしていたみこりんは、朝早くから起き出して、自分のポシェットにハンカチやらティッシュやらを詰め込んで準備している様子。私も、そろそろと布団から這い出しにかかる。ところがLicの様子がおかしい。額に手をあてるとなんだか熱っぽいような…

 Licの体調も心配だが、道順をLicに依存しきっていたので、行けるかどうかもあやしくなってきた。みこりんは異変を察知して泣きそうな顔してるし、どうにかせねば。とりあえず地図を調べよう。行き方さへわかれば、みこりんと二人でもなんとかなる、はず。
 Webでリトルワールド付近の地図を表示させてみて、だいたいのアタリをつけた。あとは看板を見落とさないように注意していけば、きっと大丈夫、のはず。

 予定よりも1時間ほど遅れての出発となった。午後からはみこりんの音楽教室があるため、お昼には戻ってこなくてはならない。それまでに広い園内を回りきることができるだろうか。じっくり見学してたら一日あっても足りないことは経験済みなので、ちょっと不安。

 幸い、道路上に看板が適切に配置されていたお陰で、方向音痴な私がただの一度も迷うことなくたどり着くことができた。滑り出しは順調である。駐車場からしばらく歩いて、入場ゲート前へ。ここで会社関係者から入場券と、みこりん用にお菓子の詰め合わせを手渡され、いざ出発。…ところが、入場券をもぎってもらって中に入ったところで、重大な忘れ物に気が付いたのだった。財布だ。財布をクルマに置き忘れてきてしまった。
 財布がなければ、空腹を満たすこともできず、年賀状用のみこりんの着せ替え写真を撮ることさへままならぬ。急いで引き返すことにした。もぎりのお姉さんに事情を話すと、すんなりと通してくれた。最悪の場合、もう一度入場券をゲットしなければならないかと思っていたのだが、ここらへんは結構柔軟に対応してもらえるらしい。

 駐車場まで戻り、財布をしっかりポケットに収納してから、再び入場ゲートへと。ところがこんどはその目前で、またしても忘れ物に気づいたのである。デジカメだ。さっきまで手に持っていたのに、財布を取るとき車内に置いてきてしまったらしい。またしても駐車場まで逆戻り。こうして貴重な時間は刻々と過ぎてゆくのであった。

 ようやく再入場を果たす。もぎりのお姉さんは私の顔を覚えていてくれたらしく、顔パスである。ほっと安心。
 あとは巡回コースに沿って歩くだけ。ところどころ、着せ替えのある場所で、みこりんに着せ替えの意志確認を行いつつ、秋の散歩をのどかに楽しむ。

 みこりんの身長が足らずに着ることのできなかった衣装もあったのだが、結局、4カ所ほどで着せ替えを楽しんだみこりんである。年賀状のネタにすべく、にっこりほほえんでいるところを狙ってみたのだが、どうもみこりんの表情が固い。ポーズは取ってくれるのだが、表情がいまいちのような気もしつつ、かといってあんまり時間をかけていては音楽教室に間に合わなくなってしまうので適度に急いで、コースを巡る。時間的余裕がないのが、みこりんにも伝わってしまっているのがいけないのかもしれない。
 それでも、みこりんがやりたいと言うものは極力やらせてやるようにした。中でも興味深かったのが、リャマへの餌やりである。昨年まではそばに寄るのさへ怖がっていたみこりんだったが、今年は自ら餌やりを志願したのである。さっそく100円払ってニンジンスティックを購入した。1本手に持たせて、抱っこしたまま近づいてみると…。ぬぅっと巨大なリャマの顔が近づいてきたら、やっぱり恐怖心がむくむくっとわき起こってしまったらしい。どうしてもその口元へ、ニンジンスティックを持っていくことが出来ない。みこりんは、オトナのリャマに混じって1頭だけいた子供のリャマに餌をやりたかったらしいのだが、どうしたってオトナの迫力に負けてしまって近寄ることができないのだった。
 どうもあの大きな舌が怖いらしい。まるで別の生物であるかのようにうねる舌。餌をやろうと思うと、その舌と極限まで接近せねばならない。それがみこりんにとって、耐え難い恐怖となっているようだ。結局、私がみこりんの小さな手をカバーするようにすっぽり上から握りしめてやって、どうにか1本手渡すことに成功した。顔面ひきつらせつつだったが、ここまで接近できただけでもよしとしよう。

 さて、そんなことをやってるうちに時間は刻々と過ぎてゆき、残り10分というところになってしまった。まだ巡回コースは半分しか過ぎていない。歩きではどうやっても時間までにたどり着くのは不可能だ。というわけで、巡回バスを利用することにした。みこりんは当初からこの巡回バスに興味津々だったので、すんなりと乗り込んでくれた。残りのルートにある着せ替えは、また来年だ。
 ところでこの巡回バスは、徒歩の2〜3倍というゆったりとした速度で進む。バスに乗ったはいいが、ほんとうに大丈夫なのか?という不安がちらり。

 終着駅に着いたのが、時間ぴったりの午後1時。予定どおりだ。音楽教室に遅れるのではないか、という心配は杞憂に終わった。帰り道、みこりん爆睡。それでもお菓子の詰め合わせ袋をしっかと握りしめているあたりが、子供らしい。
 ちょっと慌ただしかったけれど、久々にみこりんと自然の中を散歩できて、心が和んだ。また秋も深まる頃には、近所の山にでもどんぐり拾いに出かけよう。そんなことを思った土曜日のことである。


2003.10.26(Sun)

同じように歳をとる

 みこりんと湯船につかっていると、こんな話を聞かせてくれた。みこりんが結婚したい男の子は、3人もいるのだという。な、なんてこった…。と、しばらく衝撃を受けている私。でもここでへこんでいてはいけない。

 平静を装いつつ、結婚できるのは一人だけだよー、と言う私に、みこりんはさらに続ける。「それならじゅんばんに3にんとけっこんするー」
 な、なぜゆえに。そんなに、その3人の男の子達のことが気に入っているのか。それではと、その中で誰か一人を選んでごらんと言うと、みこりんは唸って考え込んだ末に、ようやく一人に絞り込むことができたらしい。気になったので、なぜその子にしたのか聞いてみると、誕生月が同じだからという。怪訝そうな私の表情を察知したのか、みこりんが詳細を語り始めてくれた。

 もしも私とLicが歳をとって死んでしまったら、みこりんは一人ぼっちになってしまう。それがみこりんには耐えられないらしい。そこで、同じように歳をとってくれる子と結婚すれば、ひとりぼっちにはならない、というのがみこりんの考えであった。
 たしかに一理ある。もっとも、男の平均寿命と女のそれとが違うということにまでは、まだみこりんは気づいていないのだけど(当たり前)。

 それにしても、みこりんくがそんな先のことまで心配して“結婚”について考えているという事実に、ちょっとショックを受けた。同い年の男の子は、どうなんだろう。たぶん、なんも考えてなさそうな気がする(私の幼児時代のことを思い出しても、そんな気配は微塵もなかったような)。では、他の女の子はどうなんだろうか。やはりみこりんのように、結婚について考えたりしてるのかな…。Licにも聞いてみよう。


2003.10.27(Mon)

食欲の秋

 にゃんちくんの一日の食事量は、専用のキャットフード(療養食)の説明欄が言うことには35グラムが適正ということになっている。実際、これまでにゃんちくんは35グラムを、ほどほどに食べ、時には少し残す程度で推移してきた。ところがここ最近、異変が起きている。

 食器の底が抜けるのではないかと思うほど、ぴかぴかに舐め上げられているうえ、もっとよこせと、そばを通るたびに「うにゃーぅ」と要求されるのである。そこで試しに40グラムに増量してみたところ、これまたきれいに平らげてある。これでもまだ足りないらしい。そこで、近頃では50グラムにまで増やしてやっているのだが、翌朝には食器がぴかぴかになっているのだった。おそるべき食欲。
 にゃんちくんにはもっと欲しいみたいな顔つきで見つめられるのだけれど、さすがにこれ以上となると、“肥満”の2文字が脳裏をよぎるため控えているのだった。

 しかしこの急激な食欲増進が、何かの病気のサインとかだったらえらいことである。一度獣医さんに相談したほうがいいかなと思う今日この頃。


2003.10.28(Tue)

書籍の重み

 私の所属する部署が、引っ越しすることになった。直線距離にして約2km離れた場所に、今年新しい建物ができたので、そこに移動するのである。
 引っ越しといえば、荷物の梱包作業が付き物だが、年々積み重なってゆく技術系雑誌&書籍の束が、まさに重圧としてのしかかる。過去十数年にわたって蓄積した結果は、段ボールにして10箱分以上。じつに重い。本棚から机のところまで移動させるだけで、腰をいわしてしまいそうである。

 近頃では技術雑誌のPDFサービスなんかもあるので、そういうのを利用できれば紙媒体のものは捨ててしまえるのだが、不景気の折り、そんな予算がつくはずもなく、結局すべて持っていくことにした。それにしても、と思う。10年以上も昔の技術系雑誌の記事が役に立つのか、という疑問は当然湧いてくるわけなのだが、これがまた役に立ちそうに思えるからいやらしい。捨てたら二度と入手不可能なものばかりのため、捨てるという踏ん切りが付かないのである。つまり、入手可能でさへあれば、必要な時にまた買ってしまえるため、こんな重い思いをして大事に抱え込んでおく必要はないのだ。
 ぜひとも技術系雑誌出版社には、過去の資産のライブラリ化をお願いしたいところである。いまどきはPDF化してハードディスクに保存してればOKなのだから、場所もとらないし、重宝されると思うのだが、いかがだろうか。と、こんな場所でこっそり囁いたところでどうにもならんか。


2003.10.29(Wed)

ホテルにて

 前泊出張のため、仕事を終えたあと、最寄りの駅から電車に乗った。名古屋で“のぞみ”に乗り換え、品川へ。完成したばかりの駅は、たしかに美しい。けど、なんとなく狭いような、妙な圧迫感がある。山手線の乗り換えホームが一番遠いのも、私的には痛かった。でもまぁ東京駅から向かうよりは、ずいぶんと渋谷も近くなったので大助かりである。

 夜の渋谷着。盛り場はこれからが本番といったところだが、明日は早いので寄り道せずに、とっととホテルへと向かう。地図を見ながら、ぽてぽてと歩いていたのだが、地図上ではえらく太い道に見えるのに、実際には2m幅もなかったりして、けっこうとまどう。あやうく迷子になってしまうところであった。

 どうにかこうにかホテル着。ツインに一人で泊まりだ。部屋が広いので、ゆったり気分を味わいつつ、のんびりと久しぶりにニュースなぞ見る。時が過ぎるのが妙に遅く感じる夜、日付をまたがっても一向に睡魔が訪れないことに徐々に焦りを覚えてきた。このまま眠れなかったらどうしよう。いっそ夜の街にでも出かけてみるか、なんて思ったりもしつつ、あえて毛布にくるまり目を閉じた。TVは付けっぱなしにしておいたのだが、近頃はTVのない生活を送っていたので、どうもこれが影響してるのかもしれないと思い出す。そこで、ぷちっとリモコンでスイッチをオフにした。

 静寂。仄暗い灯りが、視界にかすかな部屋の輪郭を映し出す。おやすみ、みこりん。そんな言葉をつぶやいて、目を閉じた。眠れそうだ。


2003.10.30(Thr)

出張後

 仕事がいつ終わるか定かではなかったので、帰りの新幹線は指定を取ってはいなかった。東京駅にたどり着いてから、改めて行列に並んでみたのだが、結局、ゲットできたのは1時間半後のやつだった。金曜の夜でもないのに、なんとしたことか。

 とりあえず、腹ごしらえをしてから、みこりんのおみやげを物色する。今回は特にお願いされたものはなかったのだが、“ひよこ”というのもなんだか芸がないような気がして、迷っていたところ、前回買って帰った“キティちゃん缶”が、じつはシリーズになっていたことに気付いたのであった。全部で4種類ほどある。これならば、みこりんにも満足してもらえるだろうことは間違いない。さっそくゴーフル缶を購入。あいかわらず1缶380円なので、懐に優しい。缶自体も直径10cmほどなので、鞄にも優しい。

 あとは時間まで文庫本を読んで過ごした。『順列都市 下巻』、途中の経過はまぁこのさいおいておいて、ラストシーンは、妙に気に入ってしまった。“今を生きる”って感じで、なかなかよいのではないかな。


2003.10.31(Fri)

引っ越し

 午前8時30分、職場の引っ越しが始まった。普段10時出社の私にしてみれば、おそるべき早朝である。ひどく眠い。
 梱包作業そのものは、みんな前日までに完了しているので、あとはこの荷物の山を引っ越し業者がトラックへと搬出してゆくのを、ただ静かに見守るだけだ。

 引っ越し業者は、さすが引っ越しのプロといった感じで様々なアイテムを使用していた。段差のあるドア付近を台車が転がっていきやすいように、金属製の大きな平たい板でカバーしていたり、段ボールの積み方が、互い違いになるようにして一回の運搬で運べる量を増やしていたり(互い違いにしないと、バランスがとれないので量が稼げない)、段ボールに詰め込めない不定形物体を運搬する用の折り畳み式カーゴとか、なかなか見ていて飽きないものである。

 さて、私の所属する職場では、研究開発中のソフトウェアを、お客さんにデモする部屋(デモルーム)というものを持っている。この部屋も一緒に引っ越すことになるので、ここにずらりと並べられた各種機器類も、一緒に移動だ。オフィスの分が終わった後は、デモルームで荷物を折り畳み式カーゴに詰め込み、搬出、となる。
 午前中までには運び出しが完了しそうに思えたのだが、お昼まであと1時間というところで、動きがぴたりと止まってしまった。いったいどうしたのか。玄関に横付けされている巨大なトラックまで様子を見に行ってみると、人影がない。荷物は積み込み途中で止まったままだ。ま、まさか、もうお弁当の時間なのか?

 結局、2時間あまりの長いお昼休みが明けて、ようやく運搬再開。直線距離にして2km〜3kmを、トラックはさらに1時間以上かけて往復し、荷物を降ろす。そろそろ夕方という時刻、やっとこさ新しいオフィスに段ボール達が届いたのであった。
 今度の建物は新築である。新築特有のニオイがまだ残っただだっぴろい部屋の片隅に、ちょこんと机と椅子が並んでいるさまは、なんだか離れ小島に島流しにあったような気分もちょっとあり、微妙な感じ。でもまぁ場所が広くなったので、せせこましくなくてよい。どれだけ広いかというと、ちょっとした学校のグランド程度はある。机から部屋の入り口までダッシュしても、10秒以上かかりそうな具合だ。

 なにはともあれ、ファイルサーバを復活させねばならない。これがなくては皆の仕事が停滞してしまうので、最優先だ。事前に取得しておいたIPアドレスを設定し、その他のネットワーク設定も行って、再起動。自分のPCからアクセスを試み、正常に稼動していることを確認。これでとりあえず今日の仕事は終わりである。あとの段ボールは、来週ゆっくりと開封してゆくこととしよう。


Profile

about

Written by U.

Home

Since 1997.11.14

Index

2009年

  • 7月
  • 8月
  • 9月
  • 10月
  • 11月
  • 12月

2008年

2007年

2006年

2005年

2004年

  • 7月
  • 8月
  • 9月
  • 10月
  • 11月
  • 12月

2003年

2002年

2001年

2000年

1999年

1998年

1997年

  • 1月
  • 2月
  • 3月
  • 4月
  • 5月
  • 6月

RSS feed

RSS1.0RSS

[VALID RSS!]

お勧め

『メイン☆ストリート』(アーティスト:May’n)

『付喪堂骨董店〈5〉―“不思議”取り扱います』(著:御堂 彰彦)

オンライン書店 boople.com(ブープル)

ユーブック

賛同企画

中国によるチベット人殺害と武力弾圧に抗議する!
チベットにおける中国の武力弾圧に反対します

中国製品不買運動

2月22日は竹島の日。竹島は日本固有の領土である。韓国の侵略を許さない。

提供:natsuka.net

gooホーム PROJECT

国際サンゴ礁年2008
国際サンゴ礁年2008

田中律子のTalk&Life