2000.12.1(Fri)

コタツ園芸の季節到来

 タキイ種苗株式会社から『タキイの花ガイド2001年春号』、同じく株式会社サカタのタネから『2001年 春の家庭園芸[花のカタログ]』が届いた。今日から12月、そろそろコタツ園芸のシーズン突入なのだなぁとしみじみ思う。

 昨年、サカタのタネから発表された“ゴッホのひまわり”は秀逸なセレクトだったと思う。実際育ててみて、その適度なラフさ加減の花弁の縮れ具合とか、八重と一重の中間くらいな咲き方に、どうしていままでこのタイプの向日葵が日本では表舞台に出てこなかったのかと思ったほどだ。
 で、今年、そのシリーズはさらに発展していたのであった。届いたカタログの向日葵のところには、こんなふうに載っていた。

  • ゴッホのひまわり
     花型が半八重咲を中心に、一重から八重咲きまで出現し、ゴッホが描いたひまわりのイメージにぴったりの品種。花径20cm内外。
  • モネのひまわり
     今までのひまわりにない、とてもエレガントな花型の品種。花色もレモンイエローで花径12〜15cm。花粉が出ないので切り花に最適。
  • ゴーギャンのひまわり
     外側の花弁が不規則に伸び、中心の花も花期が永く花径15〜18cmの特長的な黄花の品種。

 まさに画家シリーズと呼ばせていただこう。個人的にはゴーギャンのひまわりにかなり惹かれている。もちろんゴッホのひまわりが一番好きなことに変わりはない。けれど、一風変わった花好きの血が、ゴーギャンのひまわりを見て少々ざわついてしまうのだった。ひゅんひゅんと不規則に吹き出す細い花弁が、まるで線香花火のようで、これもまた“夏”には似合いそうだ。いずれの種も一袋(約10粒)315円。きっと買ってしまうだろう。

 タキイのカタログで目に付いたのは、“アテモヤ・ジェフナー”(1本6000円)とか“ジャボチカバ・バードウッド”(1本20000円)などのトロピカル・フルーツだ。その存在すら知らなかったような奇妙な果実たち。ぜひ一度育ててみたいものだが、なにしろ値段が値段だけに、悩ましいところである。それらは基本的に低温には弱いため、冬場の管理も慎重にしないと年を越せない可能性もあるし。それにしても『輸入果実は極端に早どりされたものであり、追熟しても本来の味のかけらもなく美味しくないのが現状です』と書かれると、本来の味をどうしても味わってしまいたくなるじゃないか。まずは練習ってことで、『パパイヤ・サンライズ』(1本3200円)あたりに挑戦してみようかな。

 ところでこれらの園芸カタログは、ちょっとした図鑑の代わりになるほど画像も豊富なのだから、せめて学名くらいは載せておいてくれればといつも思う。『日本花卉』のカタログには部分的に学名が記載されているので、見たことのない様な植物でも属名が分かって重宝しているのだが。はたして『サカタのタネ』と『タキイ種苗』が学名記載に踏み込むのはいつの日か。


2000.12.2(Sat)

花餅作り

 恒例の花餅づくりのため、家族揃って保育園に行く(ちなみに、昨年の様子はこんな感じだった)。
 花餅とは、木の枝に紅白の餅を“花”のようにくっつけたものをいう。今年は庭の花桃の枝を切って持参した。
 去年はまず餅つきをやってから、それから花餅作りという段取りだったが、今年はいきなり花餅作りから始まっていた。するとこの紅白の餅は、いつ準備したものなのだろうという疑問が…。朝早く、先生達がつきあげたものかもしれない。

 みこりんと餅を半分こして、順番に枝を飾っていった。さすがに去年よりはずいぶんと手先も器用になったみこりんである。小振りな枝は、瞬く間に色彩豊かな花餅となった。滞りなく餅つきも開始され、つきたての餅を堪能する。餅好きなみこりんはもちろん、餅のそれほど得意ではない私でも、出来立ての餅は食が進む。きな粉餅、あんころ餅、ゴマ餅などなど、各種入り乱れての餅づくしであったが、中でも私の興味を惹いたのが“大根おろし餅”。大根おろしに醤油をかけて、そいつに餅をまぶしてあるのだ。焼いて海苔でも巻いた餅ならまだしも、つきたて白餅が大根おろしに埋もれているのを突然見せられたときには、かなりの違和感があった。一瞬、食べるのを躊躇してしまったが、口に入れてしまえばそんなことは関係ない。癖になりそうな味だった。

 ところで去年の花餅は、じつはまだ部屋に飾ってある。今年作ってきたのと合わせて2本、リビングに花餅が咲き乱れ。これから毎年、1つずつ増えていきそうな気配だ。

キーボードと戯れる

 みこりんが私の使ってるマウスを指さしては「これのちっちゃいのがいるー」「これがほしぃー」と何度も言っている。でも“マウス”っていう単語をまだ知らないので、知りうる代名詞をあらん限り駆使しているようす。そこで“マウス”という言葉を教えてやった。即座に憶えたみこりんは、さっきまでの代名詞の代わりに、ちゃんと「マウス」って言えるようになった。
 でも今夜はマウスじゃなくて、キーボードを触らせてみようと思う。
 日本語IMEをONにしておき、まずはみこりんもよく知っているアルファベットの“M”から。それを押させておいて、つづけて“I”を入力。画面のエディタには、めでたく“み”の文字が現れた。それを指さし、「み!」とうれしげなみこりんである。知ってる文字が登場するのは、格別にうれしいようだ。
 それを何度か繰り返しているうちに、ローマ字入力よりも、みこりんには“ひらがな”入力のほうがいいんじゃないかと、いまさらながらに思いついた。いまはまず“ひらがな”を憶えることのほうが重要だろう。幸い、このPCには日本語106キーボードを付けてあるので、キートップには“ひらがな”がふってある。これならみこりんにも理解しやすいに違いない。入力モードを“ひらがな”に変更し、“み”を探して打つように言ってみた。じっと手元を見やったみこりんだったが、速攻で“み”を打つことに成功した。さきほどまで“M”を打ってたので、隣が“み”なことには気づいていたのかもしれない。

 エディタのフォントを36ポイントほどに設定し、みこりんにも見やすくしてやってから、さらに名前を構成する“ひらがな”を、何度か連続で打たせてみた。でも、みこりんにはリピート速度が速すぎたようで、何文字か同じのが連続で入ってしまう。そこでリピートを最低にまで落としてやると、そこそこいい感じに打ち込めるようになった。
 自分の名前を入力するのが楽しくて仕方がないとでもいうように、何度も何度もみこりんはそれを繰り返してくれた。すっかりマスターしたようなので、別の文字列にも挑戦だ。ここは「おとうさん」で行ってみよう。こういうのは身近な単語に限る。手本を示してやると、みこりんはその中で知ってる文字を指さしてくれた。名前以外にも知っているのがあるとは驚きだ。これは何の文字?と聞いてみたところ、それはそれはうれしげに教えてくれた。
 その文字とは、“ん”だったのだが、みこりんの文字盤では“か”って憶えるようになってたはず。どこをどうまちがったら“う○”になってしまうんだろうなぁ…

カメラに親しむ

 去年ぐらいからカメラに妙な執着を見せていたみこりんだったが、いまではかなり操作も上手になってきた。レンズ側から覗くなんてこともないし、ちゃんとファインダーから対象物を捉えている。
 ところで先週、庭の植物の写真をデジカメで撮ってる私を倣って、みこりんもまたカメラを構えてついてきていた。そうすること自体は始めてでもなかったので、好きなようにさせていたのだが、今夜みこりんが撮った写真が現像から上がってきたのを何気なく見ていて、我が目を疑った。思わず椅子からずり落ちそうになった。なんとそこには……

 ばっちり構図も決まった植物写真があった。しかも私のあとをトレースしていたのが如実に分かるように、紫蘭->プリムラ->ビオラ->シクラメン->水仙&コブシ->花桃へと遷移していたのだ。使ったカメラがマクロ機能のないコンパクトカメラだったので、小さなプリムラとかビオラはピンボケになってしまっていたけれど、オートフォーカスが有効な距離のやつは、かなり“まとも”な写真になっている。自分が撮ったとしても、さして違和感がないくらいのやつまで混じっていた。
 さらには、私が撮っていなかった門扉脇のマリーゴールドとか、花桃の足元に群生するムスカリなんかの写真もあって、独自性まで見せていた。お、恐るべしみこりん。銀塩カメラじゃなくて、撮ってその場で結果が見えるデジカメを持たせると、もっと上達するような気もする。まだみこりんには過去の時系列が明確じゃないみたいだから、どんな時に撮ったやつがプリントのそれと合致するのかわからないだろうし。
 なかなか面白い展開になりそうだ。


2000.12.3(Sun)

猫避けの新手法

 何もなければおそらく一生立ち寄ることもなかったはずのホームセンターに、起きて早々に出かけた。なぜそんなところに出向いたかといえば、少しばかり派手なイベントが(形容が矛盾してるような…)あったからだ。そのイベントのことはまたいずれ書くかもしれないので、ここでは多くは語らずにおく。それよりも、敷地面積にして日頃利用しているホームセンターの数倍という規模であれば、なにはともあれ園芸コーナーをチェックせねばなるまい。

 定番のパンジー、ビオラは当然だが、その他のポット苗もやたらと数が多いのが目に付いた。おまけに、その種類も豊富だ。日頃利用している店だと、この時期、人気商品に追われて姿を消してしまうような季節はずれの宿根草なんかもまだまだ健在で、しかも値段が安い。いつか買おうと心に決めつつも、なかなかその値段の前に踏ん切りがつかなかった“チョコレートコスモス”も、1ポットが198円だったりする。ここで買わずにいつ買うのか。見るだけのつもりだったのに、いつのまにか手にしたカゴにはポット苗が1つ2つ3つ4つ……まだまだ増える。
 Licのリクエストなども取り入れつつ、結局この日の購入リストは以下のようになった。

  • チョコレートコスモス ×1 @198
  • カタナンケ ×1 @150
  • バコパ ライラックスミスト ×1 @198
  • 宿根まつむし草(スカビオサ・ブルー)×1 @398
  • ツルソバ ×1 @98
  • パンジー“ブルーフロスト” ×1 @98
  • 冬知らず ×3 @150
  • スイート・アリッサム ×4 @78

 今年はパンジーは買うまいと決めていたのに、なぜ入っているのか?その理由は言葉を駆使するよりも、見ていただくのが何倍も早いに決まっているのだが、あいにく画像を準備する時間がなかった。なので今日の所は「絵画のようだったから」とだけ書いておこう。いずれ画像込みで、その魅力をあますところなくお伝えしたいと思う。

 苗の他には激安だった樽プランタを購入した。なんと定価の半額とくれば見逃してはおけない。レタスなんかのちょっとした葉っぱものを栽培するのに丁度いいかなと思ったので、直径31cmのものを1つ選んだ。これで780円。
 そうやって樽プランタを物色してたら、みこりんが目を輝かせて「これっ!」と指さしている。そのちっちゃな指先の示す先には、これまたちっこいミニ樽プランタがあった。直径16cm、オモチャのバケツくらいの大きさだ。「これがほしい!」としっかと抱きかかえてこちらを見上げる。みこりんにとって“樽プランタ”は、特別なアイテムなのだ。

 じつは樽プランタは、すでに我が家にも3つほどある。大中小と3つセットになってたやつだ。そのうち“中”と“小”は、本来の役目を全うしているのだが、“大”だけはいまだに空っぽのまま置いてある。といっても放置しているわけではない。“石運び用”として立派に役立ってくれているのだ。
 みこりんは、この樽プランタで石運びをするのが大のお気に入りなのだった。でも、だいぶ大きいため、自分一人では運べないのが悩みの種。いつも自力で運ぼうとしては挫折して、悔しそうに私に助けを求めたものだった。そんなみこりんにとって、ミニサイズの樽プランタが願ってもない“宝物”に見えたことは想像に難くない。私としても、庭仕事のお手伝いをしてくれるのならばおおいに結構ということになる。だから買ってやることにした。これは1つ398円だった。

 それらを買い込み、家路につく。初冬の夕暮れは早い。今日中にポット苗を植えてしまうには、時間との勝負になりそうだ。

 *

 ところで今日はどうしてもやっておくべき庭仕事が1つ、別にあった。それは、猫避けネットの新たな展開である。最近、花壇の植物が減ってきて剥き出しの土の面積が増えたために、またしても野良猫どもが勝手にブツを残していくようになっていたのだ。このままではせっかくの“いい土”が根こそぎ廃棄物と化してしまう。とうてい看過できる状況ではなかった。
 菜園は最初からネットで囲っていて無事だったが、問題は通常の花壇のほうだ。ここを同じようにネットで囲うのは“おおごと”だった。庭の縁にそってぐるりと広がる花壇をすべてネットで囲うには、支柱もネットも不足している。おまけに美観がたいへん損なわれることが予想された。何かいい方法はないか……昨夜寝ずに考えた甲斐あって、美観を保ちつつ敷設コスト&労力を最小限におさえる夢のような方法を1つ、思いついていたのだった。

 私はこの素晴らしいアイディアをLicに話して聞かせた。これでもう我が家は猫害からは永遠におさらばできるのだ。……熱く語り終えた私に向かって、Licがぽつりと言った。「その方法は私がむかーーーしに提案したやつじゃん」

 な…なんと…。その当時の私は、その案を却下したらしいのだ。信じられぬ。なんと愚かな決定を下したことか。…誤りは速やかに修正されねばならない。私よりもおそらくよく理解できているであろうLicと二人で、さっそく我々は作業に取り掛かった。

 このアイディアのポイントは、個別に花壇を囲うのではなく、庭を完全に外部から封鎖してしまうことにある。といっても、家の外周にそってネットを張っていったのでは、門柱よりも高い位置までネットが必要になるため、あまり現実的ではない(門柱の上には猫が飛び乗ることができる)。だからまず、猫が絶対に粗相をしない部分を遮断対象から除外するのだ。我が家の場合は、玄関前の西側スペースと、北側がそれに相当した(西側は花木が多く、土もそれほどほぐれていなくて、これまで一度も害を受けたことがなかったし、北側はまだほとんど手つかず状態のため実害が少ないのだ)。残る東と南の、いわゆる花壇の本命部分だけを遮断すれば、目的は達成される。

 遮断には、花壇に通じる通路部分−もっとも狭い箇所を2箇所選び、そこをネットで塞ぐだけでいい。遮断した領域の外周には、3年前から猫の入り込みそうな箇所にはネットを張ってあったのもずいぶん役に立った。
 今日のところは暫定版ということで、ネットを洗濯ばさみで仮止めしただけだが、いずれ日曜大工でラティスフェンスを可動式のドアに改造して、ちゃんと塞ぐ予定だ。西側の方は葡萄棚を作りつけてもいい。いきなりドアが出現するよりは、そのほうがよほど自然っぽく見えるだろう。
 この冬、コタツ園芸だけでなく、いろいろと外回りも忙しくなりそうだ。

 ポット苗は、結局、日暮れてから30分後に無事植え込みがすべて完了した。


2000.12.4(Mon)

寒暖の落差

 起きたらすぐ朝陽を浴びるとよく眠れる…とは言うものの、忙しさにかまけてつい忘れてしまう平日の朝。でも今朝はじつにタイミング良く、窓から差し込むまばゆい光線に誘われて、一気にカーテンを“ずばっ”と開け放つことができた。

 おぉ、眼底を透過して脳の奥までくすぐられるようだ。まぶしくて、それほど長くは目を開けていられなかったのだけど、体内時計はばっちり修正されたような気がする。

 こうして幸先良く始まった今日だったが、夕方、日没を過ぎてからは急速に冷気が押し寄せてきた。例年この時期、初雪が降るのだが、今年はもしかすると今日なのかもしれない…とさえ思えるような冷え込みだった。だから今夜、ストーブを蘇らせた。

 それにしてもこれだけ明々と燃しているというのに、ちっとも暖かくならないとは……。
 真夜中、ふと誘われるように庭に出てみると、隅の方でこそっと置き去りになっている鉢植えに気づく。チリーアヤメの植わった樽プランタだ。

 今夜はもう雪の心配はなさそうだ。でも霜に弱いチリーアヤメは軒下に保護してやろう。今年はうまく咲かせることが出来なかったが、来年こそは、きっと咲いてくれますように。


2000.12.5(Tue)

ダイエットに挑戦

 Licの持ち帰ってきたチラシ(?)には、“痩せるメニュー”と表題が掲げられていた。説明によれば、“オリジナル・マヴィニット法”と言うらしい。Licはこれを実践して、ダイエットに挑戦するのだという。なんでも、2週間この通りの食事を続ければ、10kg痩せることも可能とか。
 10kg…まったく不可能な数字ではない。3年前ほど前に、ひどい胃腸風邪に見舞われたおり、1週間ほどまともな食事が出来なかったことがある。その時は体重が一気に10kgほど減少した。もともと適正体重に近い体型だったため、10kgのオモリがなくなったあとは、まるで体中の脂肪が燃やし尽くされたような感じで、じつに爽快な気分を味わったものだ。その後、10kgが完全に戻ることなく推移しているのは幸運かもしれない。

 さて、Licが果たしてダイエットに成功するかどうかはともかく、この食事メニューには特徴的な食品があるようだ。まず“ゆで卵”、毎日必ず1食には含まれている。次にグレープフルーツとコーヒー、これも同様に毎日登場だ。あとは野菜類がメインで、肉や魚は1週間で5食分しかない。量は無制限で、組み合わせが大事らしいのだが、科学的根拠は書かれていなかった。もっとも、こんな感じのメニューを続けたら、たしかに今より太ることはないだろうとは思う。むしろ、痩せる方向に行くだろう。総カロリーが減少するのだから、まぁ当然といえば当然なんだけど。問題は、このメニューを2週間で止めたあとのことになる。

 説明書きによれば、体組織が変化して余分な栄養を欲しがらなくなるらしい。馬鹿食いしてたら、どんどん食が太くなり、食わずにいたら食がますます細くなるという原理に近いものがあったりして。
 ぜひともLicにはダイエットを完遂してもらいたい。


2000.12.6(Wed)

ニューフェイス

 我が家に新しいハムスターがやってた。ドワーフハムスターの“サファイアブルー”と呼ばれる種類だ。オスなのかメスなのかは、まだはっきりと確認できていない。毛並みは、その名のとおりに淡いブルーの入ったライトグレーで、子供らしい初々しさが全身からにじみ出ていた。

 名前はみこりんがつけてくれたらしい。その名も、“ことり”。“ことりさん”だ。
 私だったら、昔飼ってた同じ種類のハムスターからとって“まり2号”になるところだが、“ことりさん”の前には太刀打ちできそうにない。なんとシュールで愛らしい名前だろうか。みこりんのネーミングセンスが、私に似なくて本当によかった。ちなみに“ことり”というのは、“ことりん”を略したものらしい。その響きからして、みこりんは自分の名前をうまくアレンジしたのではないかと思われるのだが、真相はわからない。

 “ことりさん”の新居は、以前チャッピーが使っていたプラケになった。広葉樹のチップを敷き詰めた中に、うちに来たとき入れられていた紙ケースごと収まっている。時々、外に出てきては二本足でちょこんと座り、じっと遠くを見つめる仕草をかましてくれるので、家族揃ってすっかり“ことりさん”の虜である。
 長生きしてくれますように。

可愛い基準

 小さくて可愛いロボットが好きだと言っていたみこりんだったが、先日の日曜日、店仕舞いセールで私が買ってきたプラモデルの“ロボット”を妙に気にしているらしい。プラモデルなので組み立てないとロボットにはならないのだけど、みこりんはたぶん、箱の中にはパッケージの絵のとおりの“完成品”が入ってるんだと思ってる。
 でも何故だろう。このプラモデルは“RGM-79(G)ジムスナイパー”HGシリーズ(900円也)なのだ。小さくはあるけれど、可愛くはないような…。もしやみこりんには、こういうタイプのロボットが“可愛い”という分類になるんだろうか。赤子のころから、ガチャポンのちっちゃなロボット(マグネロボ・シリーズとかガンダム・シリーズとか)に親しんできた成果、なのかもしれない。じつに良い傾向だ。次のステップとしては、やはりプラモデル製作過程に参加させてやろうと思う。


2000.12.7(Thr)

禁断の書

 爆弾で思い出したけど、中学の頃、“ニトログリセリン”の合成方法が載った化学書が部室に転がっていたっけ。吹奏楽部の部室にそんなものがあったとしたら、かなり違和感ありありに違いないが、私が所属していたのは科学部だった。もちろん化学も守備範囲にしていたので、そういう類の書物があってもおかしくはないのだけれど、古めかしい装丁と、いまにもバラバラに分解してしまいそうな脆さとが、他の化学書の中でも際立つ存在だったのを憶えている。

 だからページを繰るのにも奇妙なスリルがあって、中に書かれた化学実験の数々も異様にインパクトがあった。開けてはならない禁断の書を紐解いているような気になってくるのだ。
 そんな中に、そのページはあった。“ニトログリセリン”…中学生ぐらいの年頃には、その名前はかなりショッキングなものだった。そのページを丸ごとノートに書き写してしまうほどに。なぜかあのときは、このページは書き写しておかねば自分の前から無くなってしまうと思ったらしい。こんなところに“ニトログリセリン”の合成方法が載っているなんて何かの間違いに違いなく、もし先生に見つかったらこの本は隠されてしまうだろう…そんなことを考えていたような気もする。

 “ニトログリセリン”の合成方法を自分のノートに一字一句間違いなく写し終えた私は、きっと作ってみようと思ったはずである。たしか必要な薬品類も、それほど“突飛”なものはなく、部室(というか学校の理科準備室)にあるものでなんとかなりそうだったし…。
 結局、合成に至ったかのかどうか、私の記憶は曖昧だ。

 ただ、今でも気になることがある。それは、“ニトログリセリン”の合成方法が普通に記載されうるべきことなのかどうなのか、ということだ。もちろんそういう危険物取り扱いの資格を持った人が入手するのはOKにしても、ごく普通の中学生が手にしてもいい書物だったのかどうかというのが、20余年の歳月を経た今も、記憶を疼かせる。
 あの本が今でも部室にひっそりと残されていそうな気がして、仕方がないのである。


2000.12.8(Fri)

きゅうり or 試験管

 ことりさんにも、水分補給用に“きゅうり”を入れてやっていた。でも、なんだかあまり食べていないような気がする。…もしかするとことりさんは水飲み器が欲しいと思っているのかも!?というわけで、Licが水飲み器を探し出して来てくれた。昔、買ったままどこかにしまい込んでいたものだ。

 水飲み器は、試験管を逆さにして、その先にガラス管を挿したゴムを詰めたような形状をしているため、そのままだと何にも取っ掛かりが無い。金網ケージだと、専用のアダプタで付けることができたが、ことりさんが暮らしているような“つるつる”のプラケには別の手が必要だった。
 用意したのは輪ゴムと針金。針金を輪ゴムで水飲み器に固定して、それをプラケの縁にひっかけることで、無事、ことりさんにも水が飲める状態になったのだった。

 さっそくことりさんが「何?」と寄ってくる。意外によく見えているらしい。そして、おもむろに二本の後ろ脚で立ち上がったかと思うと、黒いゴムの部分にかぶりついたのだった。水よりも、興味を優先することりさん。なかなか好奇心旺盛である。そうやって遊ぶことりさんを、にゃんちくんがただひたすらじぃぃぃぃぃっと、光線でも発するかと思うほどに集中して見つめている。猫的には、ねずみがちょろちょろしている状況というのは、かなり抑えがたい衝動を引き起こしているものと思われるのだが、にゃんちくんはどこまでもお淑やかであった。手を出すこともなく、静かに静かに見守るのみ。うまく共存してくれそうである。


2000.12.9(Sat)

謎の生命体

 例年なら初雪が降ってもおかしくない季節だけれど、今年はまだその気配はない。とはいうものの、夜ともなれば結構な冷え込みで、サンルームに避難させた鉢植えの葉っぱにも、なんだか生気がなくなってきつつあるような気配。昨年の経験から、枯死はしないものの、かなりヤバイことになってしまうものが数株あることがわかっている。だから今回は早めに手を打つことにした。

 “パキスタキス・ルテア”、彼がもっとも寒がりだ。でも、暖かな部屋の中で越冬させてやるには、鉢が少々汚れ過ぎ。まずこの泥を落としてやってと…。洗面台にて、ぬるま湯をかけつつブラシでがしがし。本体の株元を覆い尽くすように広がったスミレの群生も、なんだか気になる。雑草も混じってるようだし、まずはこいつを抜いてから…。
 そうやって手でブチブチしていると、突然指先に針で突き刺されたような鋭い痛みが走った!

 あまりの不意打ちに、一瞬思考が止まっていた。それでも反射的に洗面台へと手を振って、何ものかを払い落とす動作は実行終了。ようやく虫に噛まれたらしいことがわかったころには、指先の痛みはハンパじゃない激痛へと変わっていた。しかも痛みは大きくなるばかり。毒が回っているのだと理解はできても、肝心の傷口が確認できずに苦悶すること数十秒。ようやく右手の薬指、第二関節手前付近に横一文字の血の滲みを発見、ただちに毒を吸い出しにかかった。

 ムカデかとも思ったが、さきほどの血の滲み具合はなんだか妙だ。左右から噛まれたというより、針状の鋭利なもので挿し貫かれたといった感じに思える。相手がムカデならば、傷口に1対の牙痕があるはずだった。でもそれがない。それどころか傷口らしきものがはっきりと見つからない。ただ皮下にまっすぐ横に走る内出血の痕、それだけが傷の証明である。
 それにこの痛み。まるで指先がそのまま千切れてしまうかと思うほどの猛烈な痛みだ。肺活量のすべてを使って、毒を吸う。吸う。吸う。ひたすらに吸う。

 異変を察知したらしいみこりんが、怪訝そうに寄って来た。何をしているのかと問うので、簡潔に答えておいてから、まだ例の“虫”(本当に虫なのかは未確認)がいるはずなので離れているように言いつけておいた。
 そうだ、虫…、ヤツはどこにいるのだろう。洗面台には落ちていなかった。するとまだ鉢に隠れているのか?生い茂るスミレに隠されて、まったく土が見えない状態では確認のしようもない。でも今はこの痛みをなんとかするのが先決だった。痛みがこれ以上増加しないあたりまで、吸い出し動作を止めるわけにはいかない。

 しばらくして、心持ち痛みが落ち着いてきたような気がした。少し心に余裕ができたので、指先の傷をもっとよく観察してみたのだが、やはり噛み痕のようなものは見あたらなかった。本当に虫にやられたのだろうか…それとも…
 怖い考えになってしまいそうなのを振り払うように、とりあえず毒消しのために庭から朝顔の葉っぱを採ってきた(この毒の成分に朝顔が有効かは不明だが、何もしないよりはましなような気がしたので)。ほとんど枯れていた中で、かろうじて小さな葉っぱが2枚だけ残っていたので、それをよく揉み、血の滲んだ上に乗せた。それをみこりんにカットバンで留めてもらう。これで傷口の手当は済んだ。次は毒虫を探し出さねば。

 鉢を外に出し、生い茂るスミレをハサミでざくざく切ってゆく。今にもヤツが「ぴぎゃっ」とか擬音を発しつつ飛び出してきそうだったが、最後までキレイにカットし終えても、何も変化は見られなかった。
 土の表面には何もいなかった。潜ったような形跡もない。ますます怖い考えになってしまう。なんとしてもヤツを見つけださねば。数日前にホームチャンネルでやっていた観葉植物の取り込み手順を思い出す。あのとき園芸家はどうやっていたか…。

 鉢をバケツに入れて、上からホースで水をどばどばと注ぎ入れる。水攻めだ。番組に出ていた園芸家は、こうやって一昼夜水に漬け込んでおくのだと説明していたはずだ。水生昆虫でもないかぎり、必ず土から這い上がってくるはずだった。

 ところがヤツは現れなかった。洗面台のどこかに逃げ込んでいる可能性はますます高まってきたが、鉢にもまだやるべき事が残っている。袋詰めにして殺虫剤噴霧だ。園芸家は家庭用を使うと言ってたけれど、さすがにちょっとキツイような気がしたので園芸用を使用した。これで明日まで封印しておけば、もしヤツが残っていたとしても何らかのアクションは起こすはず。いや、起こして欲しい。もしすでに逃げたあとならば、ヤツは家の中にいることになってしまうのだから…

 *

 夜、傷痕が少し赤く、ぷっくりミミズ腫れになっているのを見た。やはり噛み痕はない。…もし、もしも、ヤツが私の想像しているような生物ではなく、とてつもない生態の生物だとしたら…今頃ヤツは私の指から体内へと侵入しているのかもしれない。突然、皮膚の下で何かが動かないか、気がかりである。

水から腕がにゅっと伸び

 寒い夜は、熱い風呂に限る。狭い湯船に家族揃ってつかりながら、いつものようにみこりんで遊んでみるのだった。
 湯は入浴剤で乳白色に染まっており、手を水面ぎりぎりまで浮上させても見えないほどだ。だから突然水中から手を突き出せば、それが“誰の手”なのかは容易には判断できない。もちろんオトナからすれば判断できないもなにも、家族の誰かの手であることは分かり切っているので面白くも何ともないけれど、相手がみこりんだとこれが実に遊び甲斐が出てくるのだった。

 いちおうみこりんも、その手が家族の誰かのだとは思っている。でも、我々のように“強い確信”はない。そこを突くのである。
 家族の誰の手でもない“手”。それがいったい誰の手なのか、みこりんは確かめようとする。上から順に触っていって、腕の付け根にまで到達すれば、手の持ち主がわかるではないか。みこりんは、そう考えたらしい。じつに確実な方法だ。でも…湯の白濁を利用して、私とLicが手を途中ですり替えてしまうとどうだろうか。手首から先は私、その後ろはLic。みこりんは、果たして思う壺にはまりつつあった。

 腕の付け根はLicにあった。しかし、Licは手をすでに2本持っている。すると湯から突きだしている手は誰のもの?ところがみこりんも伊達に三歳を4ヶ月過ごしてはいないようで、消去法で考えたらしい。かーさんの2本の腕でないとしたら、残りはとーさんの手しかないじゃないか、と。
 自信ありげにみこりんがそう結論する。じゃぁ、と私が言った。「かーさんには腕が3本あるかもしれんよ?」すかさずみこりんが切って返す。「もう、つくとこないやん」腕が3本もつく場所がないのだと、そうみこりんは主張するのだった。何を馬鹿なことを言っておるのかと言わんばかりの自信満々な答えであった。
 そこで私は最後の切り札を使った。

 「みこりん、いままで黙ってたけど、とーさんもかーさんも、腕4本あるんやで」

 愕然とするみこりん!そ、そんな馬鹿な…腕が4本…4本…4…

 はたしてみこりんは、現実と、私の言葉と、どちらを信用するだろうか。しばしの沈黙のあと、みこりんが口を開くのを私は待った。

 「なんでぇ…」

 その小さな唇からこぼれ出た言葉は、このようなものであった。
 まちがっても「てやんでぇ」系な「なんでぇ」と発音してはいけない。語尾が下がるように発声する「なんでぇ」だ。
 「あるわけないやん」と言い切れないところに、みこりんの迷いが感じられる。でも今に理路整然と、腕が4本もあるわけがないことを我々に語ってくれるようになるにちがいないのだった。


2000.12.10(Sun)

爆走する椅子

 朝から外は雨模様。だから今日は大掃除の日になった。
 でも掃除の前に、まず段ボール箱やら本やらを整理するのが先のようだ。特に二階の空き部屋2つが“足の踏み場もない状態”になりつつあるので、ここから手をつけようと思う。

 段ボールを片っ端から折って畳んで裏返し、どどんと積み上げ紐で縛る。徐々に床の空きスペースができてくると、ここぞとみこりんが遊びにやってきた。
 みこりんには何か狙いがあるようだ。黙々と作業をこなす私に、何ごとかお願いしているようなのだが、あいにく今は手が放せない。あとでね、と言いつつ、どうにか段ボールの山を撤去することに成功。みこりんが何をそんなにお願いしていたのかと見やれば、そこには扇風機に囲まれて立ち往生する“キャスター付き椅子”の姿が、あった。

 この椅子に乗りたいらしい。でも、そのためには3台の扇風機が邪魔なのだった。というわけで次は扇風機の分解に取り掛かる。それにしても扇風機の台座(スイッチ類のついてるとこ)と、支柱&モーター部分を最初に分離できるようにした人っていうのは、エラい。我が家のも、3台中、2台までがこの分離型だ。なんか気がついた頃には、ほとんどの扇風機が分離可能になってたような気もするのだけど、あれの特許を保有しているのはどこのメーカーなんだろう…。なんてことを考えつつ扇風機を薄っぺらい箱に収納完了。じつに省スペースである。分離型じゃない扇風機は、片づけるのに場所を食うのが悩みの種だったが、そんな記憶もあと数年もすれば思い出すのも忘れるに違いあるまい。

 さていよいよみこりんの船出が始まった。キャスター付き椅子にその身をゆだね、ちっちゃな両脚で壁を蹴る。作用反作用の法則に従い、みこりんと椅子は発進したのであった。
 まるでビリヤードのボールのように、壁に反射するたび方向を変えるみこりんと椅子。キャスターの激しく回転する摩擦音も勇ましく、みこりんは爆走する。重心がかなり上のほうに位置しているため、見ている側からすれば冷や冷やモノなのだが、みこりんはすっかりこの遊びにはまっているようす。しばらくは止まりそうにない。私は次の作業、“本の仕分け”に取り掛かるのだった。

 *

 二階をどうにか片づけ終えた私は、以前からの懸案事項だったリビングのオーディオ類の掃除をするため、狭い隙間にはまり込んでいた。オーディオラックをちょっと引き出し、背面へと回り込むと、そこにはのたくる無数の細長いモノが…。
 ごっちゃごちゃに絡まりあったケーブル類を整理するには、やはり1本1本確実にやっていくしかない。ついでに接点復活剤でコネクタの洗浄も行いつつ、無秩序だった背面パネルに、流れるような曲線美を描いてゆくのだ。ゆるやかなカーブでケーブルをまとめ、けしてきつく縛ったりはせず、ラフなままに、それでいてちゃんとあるべきところに収まるように。特に電源ラインには気を使う。

 ラックに同居しているゲーム機などの配置もリニューアルして、これまでの雑然とした一角が、見違えるように美しく仕上がっていた。

 みこりんは遊び疲れて爆睡中。
 雨の一日…、じつに絶妙のタイミングの雨であった。


2000.12.11(Mon)

“ぴかぴか”チェック

 今日の弁当箱は、みこりんのを借りていった。と書くと、みこりんのはとてつもないドカ弁かと思われるかも知れないけれど、残念ながらそうではない。女の子仕様の、両手で捧げ持てる程度にごく普通なサイズである(3歳の幼児向けにしては、やや大きめかもしれないが)。
 そんな事情で、帰宅するなりみこりんに弁当箱チェックを受けてしまった。

 保育園では残さずきれいに食べてしまうことを、“ぴかぴかにする”と表現するらしい。だからみこりんもお弁当の日には、毎回“ぴかぴか”にして帰ってくる。今夜“ぴかぴか”チェックを受けるのは私だ。みこりんはLicの真似がしたくてたまらない年頃なんだろう。口調もなんだか似ているような。

 その手には少し大きな弁当箱を、上手にバランスさせて片手に保持し、器用に蓋を取り去るみこりん。もちろん中身は“ぴかぴか”に平らげてあるので、私は余裕たっぷりにみこりんの判定を待つ。ただ一点だけ心配なのは、梅干しの種をどう判断されるかだった。もしかするとみこりんはこれをもって“ぴかぴかではない”と言うかもしれない。

 みこりんは、じっと中を見つめた後、こう告げたのだった。「わぁー、ぴかぴかになっとる!」
 よかった、梅干しの種は除外されたか。いつだったか、もはや食べられない状態まで食べ尽くした“残骸”を、みこりんに残さず食べるように指摘されてしまったことがあったのだが…いったい何を食べろと言われたんだったかもはや思い出せないのだけれど。魚のヒレだったか骨だったかのような気もする…。まぁいずれにしても、みこりんに“ぴかぴか”の手本を見せることが出来てめでたしめでたし。


2000.12.12(Tue)

人間あんま機

 どうしたことか午後の仕事が始まったぐらいから、背中の一部にぴりぴりと“ひきつれ”を感じるようになっていた。最初は意識を向ければそこに痛みがあるなと分かる程度だったのに、夕方にはもはやじっとしていられないほどにきりきりと激しい痛みに変わっていた。

 左の肩胛骨の斜め下付近が特に痛い。寝違えたにしては痛みの出現がのんびりし過ぎのような気もするし、どうにも原因がわからないので気持ち悪い。上体を微妙にくねらせてもっとも痛みの少ない位置を探ろうと儚い努力をしてみたものの、徒労に終わっただけだった。我慢するしかないらしい。幸い、今はデバッグの佳境に入っているので、集中してしまえば大丈夫だろう……なんて思ったけど甘かった。痛みはどんどん酷くなる一方なのだった。

 帰ったら即行みこりんに踏んでもらおう。そう心に決めて家路につく。今夜も元気なみこりんが、帰りのクルマの中で何かと話しかけてくるのだが、振り向くことさえできないのがもどかしい。

 ようやく帰宅。みこりんはさっきのお願いをよく憶えていてくれて、背中を踏むのを忘れなかった。体重10kgちょっと、それに加えて14cmの足底サイズが2本、まるで最上の“あんま機”のように背中全体を揉み込んでくれる。…き、きぼちぃぃ……。癖になりそうな心地よさだ。その甲斐あってか、寝る前にはなんとか痛みは終焉へと向かう。今夜はみこりんに助けられた。今の時期だけに使える“みこりんあんま機”、もっと日頃から活用すべきなのかもしれない。


2000.12.13(Wed)

値段の内訳が知りたいとき

 “NTTがADSL本格化で思い切った価格を提示,しかし……?”(ZDNET NEWS 2000年12月13日より)

 他社が、いちはやくADSL常時接続サービスを始めた時には、サボタージュと解釈するのがもっとも妥当と思われる手口を行使してその普及を遅らせ、その間、着々と自社のADSL対応を進めてきたNTT。めでたく準備完了というところだろうか。

 それにしても認可申請段階とはいえ、4800円の料金設定って、なんだかひどく間抜けに見える。たかだか64kbpsの回線速度しか出ないフレッツISDNが4500円。それに対してフレッツADSLは、下り1.5Mbps/上り512Kbps。下り23.4倍/上り8倍の価格差がたったの300円…

 昔々、やっぱり同じように独占にあぐらをかいてた国民機メーカーが、これとそっくりな状況に陥ってたことを思い出す。たぶん今回も似たような結末を迎えるのだろう。来春、フレッツISDNは半額以下になってるにちがいない。

 で、日本でADSLが普及しはじめたころ、世界のお茶の間ではギガビットのレーザー通信普及期に突入……お約束すぎる展開だ。


2000.12.14(Thr)

ISS(International Space Station)

 ここ数ヶ月というもの、ほとんど一般的なニュースの類は見ていない。だからほんとうにそうなのかは知らないのだが、たしかに周囲でもまったく話題になってないところを見ると、どうやら本当に“報道”されていないのではないかと思いたくもなる。何のことかといえば、ISS−国際宇宙ステーション−に、ようやくP6トラスが取り付けられ全長約73mの太陽電池パドルが展開したこと。さらに、最近までシャトルとプログレスの2機の宇宙機がISSに結合/分離をしていたこと。しかもそれらは、肉眼でも地上からその輝点を見ることが出来るということだ。

 最近のように都会でなくても夜空が薄汚れたところの多い現在では、人工衛星が地上から見えるという事実すら一般常識ではなくなっているのかもしれないなぁ……。まぁずっと前からミールがぐるぐる回ってたわけだから、突然ISSだけ話題にするのも悪い気はするんだけれど。ちょうど日本のロケット開発が一番苦しい時期を迎えている時期だけに、いちおうは建造の進んでいるISSをもっとアッピールしてもいいんじゃないかな。


2000.12.15(Fri)

位置情報確認

 私を迎えに来ているはずのLicとみこりんが乗ったクルマが見えない場合、ケータイで所在を確認するのが最近の習慣になっている。そうすると、大抵はみこりんが出てくれるのだ。
 でも今夜はLicが出た。手短に場所を告げると切れてしまったので、私はインターセプトコースに乗って徒歩で移動を開始する。ところが数分ののち、ケータイに呼び出しが。緊急事態かな?と出てみると、みこりんだった。

 みこりんは私がどこにいるのかをしきりに聞きたがっていた。でもそれを答えるのは少しあとにしよう。まずはみこりんの居場所を聞き出さねば。みこりんに、今どこにいるのか?と聞いてみると、「ここー!」と即答があった。「ここってどこ?」「ここー!」「ここってどのあたり?」「ここー!」「どこにいるの?」「こーこやってばぁ〜」なかなか会話が成立しない。小さい頃みこりんは、電話の向こうにも自分と同じ景色が見えているのだと思っていたフシがあるのだが、もしかして今でもちょっとだけそう思っていたりして。
 だから質問内容を変えてみる。
 「外にはどんな建物があるの?」そうすると、ようやく手がかりになりそうな返答があった。自転車屋さんのそばだという。でもすぐに通り過ぎてしまったようで、次々と新しいポイントが伝えられてくるのだった。歩道を通ってる自転車のお姉ちゃんとか、そういう類の答えも多くあって、今どのあたりまで接近しているのか把握するには結局至らず。焦れてきたみこりんが、私の所在を強く確認しようとしたとき、前方から見慣れたヘッドライトが接近してくるのが見えた。

 時間切れだ。
 しかしみこりんは場所の把握はそれほど下手ではないので(つまり方向音痴じゃない)、いずれ的確な位置情報のやりとりが可能になることだろう。そうなれば迷子も誘拐も大丈夫(かなほんとに)。


2000.12.16(Sat)

青花シランの植え付け

 3週間ほど前に到着していた青花シランを、ようやく今日植え付けることにした。ずっと箱に入れたままだったので、少々新芽が白っぽくなってしまったような気もするが、冬の弱い日差しなのでそれほど心配はいらないだろう。
 植え場所は、いろいろ迷った結果、玄関横のぺニーロイヤルミントが地表を覆いつつあるところに決めた。ハーブ(ややアルカリ好み)とシラン(弱酸性くらいでもOK)、生育環境はかなり違うもの同士だが、もともとこの土壌はハーブ用に手を加えているわけじゃないので、大丈夫のはず。ここから60cm離れた場所ではノーマルなシランと薄ピンクの口紅シランが大増殖中という土地柄ゆえ、シランには合ってるんだと思うし。そんな場所でもすさまじく勢力を拡大中なペニーロイヤルミントが、異様にタフすぎるのだ。そうに違いない。

 で、さっそくネット状に地表を覆ったペニーロイヤルミントをかき分け穴を掘っていると、みこりんが手伝いたいと申し出てくれた。この場合、お手伝いというより泥遊びをやりたそうな雰囲気なのがやや心配だったが、やってもらうことにする。このタフなミント相手ならば少々根っこを切ろうが茎をむしろうが屁でもあるまい。それにしてもペニーロイヤルミントに触ると、じつに爽快な香りが吹き上がってくるのがわかる。これをグランドカバーにしたならば、庭中がこの清涼剤っぽい香りに包まれそう。

 さらさらに乾燥した土だったので、労せず穴は開き、みこりんはバケツに掘り出したサラ粉を満足気に抱えていた。
 では植えよう。
 苗は水苔にくるまれていたので、根っこを折らないようにそいつを剥がし、そぉっと穴の中央に据えてやった。3cmほど伸びた白い芽が、半ばまで埋もれるようなくらいの深さに土をかぶせて植え付け終了。バルブを壁際に向け、来年新しいバルブが伸びる方向をちょこっと広めにしておいたので、いずれこの場所も青花シランで埋め尽くされることだろう。…ペニーロイヤルミントとの激しい生存競争が繰り広げられるかもしれないが、いずれも強者だけに共存してくれるんじゃないかと期待する。

キャッチ&スロー

 みこりんと玄関前でボール投げ遊びをする。互いに1mほど離れて座り、空気の抜けけかてふにふにになってしまったドッジボールで、投げては受け、受けては投げ。
 最初はバウンドさせて投げてやっていたのだけれど、試しにダイレクトに構えた胸のあたり目がけて放ってやったところ、巧い具合にキャッチしてくれることが判明。受けるだけでなく、投げる方にも進歩が見られた。両手を使った横投げをいつの間にか会得していて、しかもそこから繰り出される球は、かなりの高速だった。1mの距離だと、うっかり気を抜いてたら受け損なってしまうほどだ。

 そうやってかなり上手に投げてるな〜と思ってたら、急にみこりんが投げた後、ころんともんどり打って背後に倒れ込むようになった。それも右側に。右投げのみこりんだから、普通、勢い余ったらそのまま左に転がりそうなのに、なぜか右側。……ふ、不自然すぎる。そんなのが何回か続いた後、ようやく私は1つの可能性に思い至っていた。

 たしか去年、こうやってボール遊びしていたとき、私が倒れ込みレシーブをやったのを見て、みこりんはたいそう喜んでくれたはず。もしやその時の真似を、今、やっているのでは…。過去の記憶が時系列に従わずに渾然一体となってるみこりんなので、ありそうな予感。
 次はもうちょっと広い場所でボール投げしてみようかな。

禁断の味

 にゃんちくんが、ついにコタツの味に触れようとしている。これまでコタツ布団の中を知らなかった彼女だが、今夜はいつもより布団の位置がずり下がっていて、その反対方向からだと容易にコタツ内部に接近できる状況だったのだ。
 そのことに最初気づいていなかった私は、うっかりコタツ布団の縁を横切ろうとしたとき、あやうく華奢な脚を踏んでしまうところだった。足裏に奇妙に気持ちよい感触がして、ふっと足元を見下ろすと、そこにはコタツ布団に限界まで寄り添い、カラダ半分、コタツ内部に埋もれたにゃんちくんの姿があった。私と目があったにゃんちくんは、じつに幸福そうな顔で、微笑んでいるように見えた。

 猫にコタツ。我が家のコタツがにゃんちくんのパラダイスと化す日も近いかも知れない。


2000.12.17(Sun)

お気に入りの文字

 みこりんに揺り起こされて目が覚めた。枕元の時計の表示が一瞬冗談かと思ったけれど、どうやらすっかり寝坊してしまったようだ。日の入りまで3時間弱。あっというまに一日が過ぎてゆく…

 着替えて階下へと降りてみると、リビングではみこりんがサンタさんに手紙を書いているところだった。先月くらいから欲しいものは決まってるみたいなのだけど、やはりちょっと心配になったらしい。ちなみに何をリクエストしてるかといえば、“ぽぽちゃん人形の救急車”だ。お医者さんごっこが得意なみこりんならではの要望といえる。
 風の噂では、すでにサンタさんはこの救急車を入手済みとか。でもそれはまだみこりんには秘密だ。

 ところでみこりんは、とうとう自分の名前を構成する文字を、一文字だけ書けるようになった。書き順はデタラメなんだけれど、カタチはかなりイイ線いってて、3歳にしてはまずまずの成果といえる。しかもこの一文字だけが異様に気に入ってしまったらしくて、絵本を読んでいても、TVを見ていても、その文字が出てくると、どんなに一瞬でも小さくても、指摘してくれるのだった。この調子で他の文字にも興味が移ってくれるといいのだけれど。


2000.12.18(Mon)

計算みこりん

 時間のあるときには、極力みこりんと一緒にハムスターの餌やりをするようにしている。動物に、より親しんでもらおうという思いもあるが、それに加えて、“計算”の訓練も兼ねている。
 みこりんが考えなければならないのは、以下のような問題だ。

  1. キュウリ合計4切れを、2匹のハムスターに均等に分けると、それぞれ何個ずつ与えればいいか。
  2. ニンジン合計2切れを、2匹のハムスターに均等に分けると、ぞれぞれ何個ずつ与えればいいか。
  3. ヒマワリの種を片手いっぱい、それぞれ2分割するにはどうすればいいか。etc...

 餌やりにはどれも欠かせない問題なのだが、今はみこりんが自力で問題の存在の認識と、その解法に至るのを見守っている段階だ。去年は言われたとおりのことができればOKだったが、今年はいろいろ悩んでもらおうと思う。


2000.12.19(Tue)

ごるごる

 珍しくみこりんが風邪をひいてしまったらしい。3歳になってからというもの、すっかり風邪とはおさらばした感のあったみこりんだったが、ここ最近の冷え込みが響いたのだろうか(あるいは寝不足という線も…)。
 そんなわけで今日はLicが看病のために家に残った。

 お昼過ぎ、みこりんは苦しんでいないだろうかと思いを馳せていると、Licからメールが届く。様態急変!!…ではなく、「ごるごるの野望があるがどうするか?」というものであった。どうやらみこりんとLicはお買い物の真っ最中らしい。風邪は大丈夫なのか?と一瞬思ったが、咳はひどいが熱はほとんどないというタイプみたいで、みこりんも暇してるのだろう。
 ところで「ごるごるの野望」とは、もちろん『スーパーヒーロー作戦〜ダイダルの野望〜』のことである。今年のクリスマスプレゼントは何がいい?ということで最近私がリクエストしていたものだ。ちなみにLicは『幻想水滸外伝 Vol.1 ハルモニアの剣士』を欲しがっている。

 お買い物のついでにゲームコーナーで、偶然「ごるごる」と遭遇したのであろう。でも、『スーパーヒーロー作戦』の最新作が「ごるごる」なのかどうか不明なので確認したいらしい。ケータイ(Lic)->PC(私)、ケータイ(私)->ケータイ(Lic)という変則的手段で協議した結果、購入を決めた。しかも「ごるごる」と「幻想水滸外伝」の2本立て。たまたまそこにLicの希望する品もあったということだ。

 帰宅後、さっそく「ごるごる」を起動する。導入部分を終えたところでセーブしようとしたら、なんとメモリに空きがない。手持ちのメモリカードすべてでトライしたが、ことごとく玉砕。ん〜PS2からLAN経由でPCの記憶装置に繋がればいいんだけどな…できそうな気はするけど、どうなんだろう。とりあえず「ごるごる」は今やり直している「スパロボF完結編」が終わってからにしたほうがいいようだ(そのほうが集中できる)。


2000.12.20(Wed)

全自動

 職場のWebサイトの面倒を見ることになってはや8ヶ月。忙しさにかまけて更新にも気合が入っていないのが如実にわかる状態なのだが、今月に入り、研究所を統べる親分から、各所属のサイトを最新状態にせよとのお達しがあった。これまでは正規の業務扱いにはなってなかったことから、どうしても中途半端な状況に陥りやすかったのだが、これを機会にひとつ以前から企んでいたことを実行に移すとしよう。そう思い立ったのが2週間前のことだ。

 小規模とはいえ社内イントラネットで公開されるものゆえ、本気で管理しようと思えばかなり時間を食ってしまう。しかもコンテンツは所属の銘々で作成しなければならないが、HTMLを知っているのが私だけでは、その面倒をすべて見なければならなくなる。そんな事情から私が企んだこととは、全自動Webサイト生成ツールの導入であった。

 HTMLを知らなくても必要なデータさえ入力してもらえば、あとはツールが自動でHTMLに変換して吐き出してくれるうえに、“見栄え”と“データ”との完全分離が実現できるため、レイアウト変更の手間も劇的に少なくなる。さらに、データを異なる観点からまとめてしまうのも楽勝だ。人力だと複数ページに散らばった同じデータの整合性をとるのが大変面倒だったのだが、もはやその心配はまったくない。管理する必要はないのだ(多少は必要だけれど)。
 もちろんそのためのツールは自分で作らねばならないが、手間を省くための苦労は厭わずにやる。約10日の開発期間を経て、ほぼ動作するようになった。……ところが。

 不穏な噂を耳にする。ま、まぁいい。このツールはできるだけ汎用的に使えるように設計してある。必要のあるところで使ってもらえば“すべてが無駄だった”なんてことにはなるまい。えぇ、ならすまい。


2000.12.21(Thr)

ミニチュア・ワールド

 襖の開く音で、目が覚めた。でも昨夜の夜更かしがたたって、瞼はくっついたままだ。
 小さな足音が遠ざかっていくのを聞いた。座敷童子でなければ、あれはたぶんみこりんだろう。いったいどうしたのか。そう思うまもなく、階段を降りる気配に、私は跳ね起きていた。みこりんが寝ぼけたまま、ふらふら〜と出て行ってしまったのではと心配したからだった。
 たまにみこりんは起き抜けに、あらぬ方向を目指してしゃきしゃき歩き始めることがある。ロボットのようなぎこちない動きなところが、なかなか怖い。(“ロボットのような”という比喩は、ASIMOとかが一般的になってくると、使えなくなりそうだなぁ…とか思いつつ)

 階段の途中にみこりんはいた。こちらを見上げるその顔を見て、みこりんが正気なのがわかり安心した。寝ぼけているのではなさそうだ。でも普段はみこりん、起きても私かLicが目覚めるまで一人じゃ部屋を出ていかないのに、今朝はまたどうしたのだろう?
 みこりんを抱っこして階段を降り、リビングに入って理由がわかった。みこりんはさっさと私から降りると、小さなテーブルの前に座り込み、じっと魅入っている。そこには、昨日Licの実家から届いたばかりのシルバニアファミリー“赤い屋根の大きなお家”で“ウサギさん親子”がくつろいでいたのであった。

 オモチャ屋さんでシルバニアファミリーがずらっと並んでいるのを、以前からみこりんは興味深そうに見つめていた。オトナが見ても、その精巧なミニチュア世界にはただならぬ雰囲気を感じるものがある。いったん手を出してしまうと、シリーズ全部揃えてしまいかねない危険な香りがぷんぷんだ。それゆえに、みこりんが惹かれているのはわかっていても、これまで手出しは控えてきたのだが…(置き場所の問題というのもあるし)。今年、クリスマスプレゼントは何がいい?という双方のじじばばに、ついにリクエストしてしまったのだった(もちろん、みこりん用のプレゼントとしてだ)。

 家具セットも、なかなか凝った造りである。たとえばお風呂用品だと、ブラシとかスポンジ、シャンプー類なども、しっかり揃っていたりして、一通りウサギさん親子が生活するのに不都合はないようにあつらえられている。いかにもみこりんが好きそうなミニチュアサイズ。でも、これにはまってしまったのはみこりんだけではなかった。夜、みこりんが寝てしまった後で、Licがテーブルの前に陣取って何やら工作の真っ最中。“家の窓”にカーテンをつけているのだ。“床”にはいつのまにやらカーペットまで敷き詰めてあるし、どんどんグレードアップしつつある。

 Licが布細工をやるのなら、私は電飾を施してやろうかと思う。ちょうど“2階の部屋”には小さな間接照明がついていて、それがいかにも光らせ甲斐のある姿なのだ。白色の丸い球になってるので、そこを半透明なものに変更し、中に高輝度LEDでも仕込めば、望みどおりの結果が得られるに違いない。そして各部屋にも照明をつけ、燭台には光ファイバを通してやろう。
 たしかにこいつは遊び甲斐のある世界だ。

ある宝物

 「これこれ」とLicが持ってきたのは、茶色の枝だった。みこりんの保育園カバンに入っていたらしい。枝…かと思えたそれは、すぐ近くで見ると、骨なのだとわかった。鳥の骨だ。手羽と思しきサイズとカタチ。関節部分はかなり風化していて、長らく戸外に放置されていたことを物語っていた。

 保育園の園庭にころがっていたのだろうか。あるいは散歩の途中で道に落ちていたのを拾ってきたのかも知れない。みこりんの宝物は、土くれだったり、石ころだったり、木の実だったり、多彩だが、骨を拾ってきたのは記憶にある限り初めてのように思う。きっと何か思うところがあったのだろう。そういやみこりんは赤ちゃんの頃、鳥の骨が大好きで、ご飯に出てくると必ず最後までちゅーちゅーしゃぶっていた。その吸い威力はかなりのもので、骨がとろけるほどだった。もしかして、その頃の淡い記憶がみこりんを操っているのかもしれない。


2000.12.22(Fri)

化ける

 この時期はプレゼントがよく届く。今日はうちの実家からだった。むろん宛先はみこりんだ。
 届いたのは“キティちゃんのドレッサー”。これまたみこりん好みな“小さい”化粧品セットが付属している。でも、みこりんはこれらを“お薬”だと思っているらしい。“お医者さんごっこ”好きなみこりんらしい反応である。
 いちおう口紅は、用途をわかって唇に塗っているのだけど、あとの小物類は“薬を飲む”遊びの結果、べとべとに。普段、Licがあまり化粧しないため、みこりんには化粧水だとかそういうのがわかっていないのかもしれない。ここはひとつ、Licにいろいろお手本を示してもらわねば。

 正しいお化粧のやり方というのを教えてもらったみこりんは、その後、何度となく化粧水の使い方と、香水の付け方を訊いてくるようになった。新しい世界に、ちょびっと惹かれ始めているのかもしれない。


2000.12.23(Sat)

遅れてきたおたふく様

 水槽の水換えをやってる間中、ずっと動悸があった。心臓が奇妙な圧迫感に包まれている。いまにも“壊れて”しまいそうな不安感に、腹の奥から得体の知れない妄想が這い上ってくるのを感じた。

 午前中、みこりんが「おさんぽいこー」と何度か誘ってきたのを思い出す。その時は、水換えが終わってからということにしたのだが、もしかすると二度とみこりんと散歩できないんじゃないか……そんな不吉な思いが巡る巡る。みこりんが赤ん坊だったころ、時々ふっと悪い予感に苛まれる事があった。目を閉じると、その存在が感じられないほどに希薄だったことから、そういう思いにとらわれたのだと思う。でも、ここ最近、少なくともみこりんが2歳を過ぎてからはそんな“悪夢”とは縁遠くなっていた。みこりんの存在が、日に日に確固たるものとなり、持て余すエネルギーを常に発散しているのがはっきりとわかるようになったからだろう、なんて勝手に思っていたのだが…。ちょっと“変わったこと”があると、この悪夢はすぐにぶり返してしまうようだ。

 じつは今、みこりんは病院にいる。ついさっき、“おたふく風邪”らしいことが発覚したからだった。保育園で“おたふく風邪”が流行始めたのが今月始め頃のこと。手遅れかと思いつつも急遽、予防接種を受けさせたのもその頃だった。すでにその時には、感染してしまっていたらしい。…いや、そう思わせておいて、じつはすごく怖い病気にかかってしまったのではあるまいか…。どんどんどんどん怖い考えになっていく。

 動悸は一向におさまる気配がなかった。なにやら首のあたりもぴりぴり痛いし、さっきから咳き込む回数が多いような……。ひょっとして風邪?とか思い始めたころ、ようやくみこりん帰還。Licに抱かれて熟睡してる。やはり、ただのおたふく風邪だそうな。おたふく風邪と見せかけて、じつは怖い病気とかではなかった。安堵する。これで心配ごとは無くなったはずなのに、でもやっぱり私の動悸は残ったままだ。どうやらほんまもんの風邪かもしれん。


2000.12.24(Sun)

作戦失敗

 みこりんに呼ばれたような気がして目を開けると、朝だった。寝惚けた頭で、しばらくぼぉぉっとみこりんと適当な会話などしていたとき、ふいに今日が12月24日だったことを思い出す。し、しまった、寝過ごした!

 明日が平日のため、みこりんのクリスマスプレゼントは今日枕元に置いておく計画だった。なので昨夜はプレゼントも階段のところまで持ってきていたし、あとはみこりんの気付きやすい位置にさり気なくセッティングするだけだった。しかしながら、何ごとにもアクシデントはつきものらしい。それまでぐっすり寝入っていたみこりんが、もぞもぞと起きる気配を見せたのである。だからちょっとだけ添い寝するつもりで布団に入った……

 どうやらすっかり寝入ってしまったらしい。完全に起動完了してしまっているみこりんを、再び寝かしつけるのはどう考えても不可能だし、その目を盗んでプレゼントを今更ながらに持ち込む技もない。作戦変更だ。みこりんは早くリビングに行きたがっている。このまま部屋を出ると、もろに階段に鎮座しているプレゼントとご対面だ。まずい。なんとかせねば…。しかしここで私が一人で廊下に出るのはいかにも不自然だった。察しのいいみこりんは、きっと勘づくだろう。

 Licもいまだ寝惚けているようで、この事態に気付いていないようだ。でも、なんとか伝えねばなるまい。そのものズバリを指摘できないため、婉曲に表現してみたのだが、一度目、二度目ともに通じなかった。ちょっと遠すぎたかもしれない。そう思い直して、もう少し簡潔に言ってみたところ、なんとか理解してもらえたようだ。危機は去った。こういう場合に備えて、我が家でも暗号表を作成しておくべきだった。もし暗号が使えたら、たとえ賊に捕縛されてしまったとしても、作戦内容をかなり自由にやりとりできるしなぁ。

 それにしても、のどかなクリスマスイブである。窓の向こうは穏やかな日差しが溢れているし、けたたましい騒音もなく…。いつになく早起きの日曜日は、こうして始まったのだった。

カメラマンみこりん

 休日恒例の花壇の植物観察。みこりんもカメラ持参で、すっかり手慣れた感じにシャッターを切っている。いつもは私のあとをトレースするコースをとるみこりんだったが、今日は率先して先へ先へと移動していった。自主的に“撮影対象”を決められるようになったみこりんである。

 まだ玄関前で構図に悩んでいた私のもとに、一巡したみこりんが戻ってきた。じつはこの場所には、珍しく野良猫の“落とし物”があったのだ。すぐ側にガーデンシクラメンが植わっていて、それを撮影するにはどうしても“落とし物”に接近せねばならず、不快な匂いが鼻につく。息を止めてカメラを構える私の横で、みこりんが興味深そうにカメラを花壇に向けていた。
 「ん?」何を撮ってるのかと思えば、みこりんはその“落とし物”を激写しているのだった。それが何か分かった上で、撮っているのだ。すべてを記録すべしと心に誓っているかのように。あぁしかし、そいつは勘弁願いたい。他のものなら、どんなに異様なものでも撮って構わないが、猫のコレがプリントされるなんて想像するだにおぞましい。みこりんに、もう少し美しいものを撮ってごらんと言うと、シャッターを一回切ったあとで、「ぱいなっぷるせーじ、とってくる!」と言い残し、たったか裏庭方面へと消えていった。みこりんはパイナップルセージが大のお気に入りなのだ。危機は去った。

 私はシクラメンをようやくカメラに収めると、次に日本水仙の場所へと移動する。2週間ほどまえから開花しつつあって、少し甘い、爽やかな香りが鼻に心地よい。あぁ、生き返る。
 水仙の花は、道路に向かって咲いているので、こちらの通路側からは正面を捉えるのが難しい。でもなんとかカメラを回り込ませて、ピントを調節していると、みこりんが戻ってきた。私の撮影対象を見て取ると、やや不服そうに口を尖らせる。どうやら水仙はすでに自分が撮影したのだということらしい。ははぁ、それで今日は私より先に撮影して回っていたのか。なんとなく理由はわかる。

 今度の写真は、出来上がったらじっくり鑑賞することにしよう。いずれ写真とはそういうものだと、徐々に理解してくれるにちがいない。

そして夕方、灼熱の大掃除

 やっとみこりんがお昼寝してくれた。今度こそ忘れないようにプレゼントを枕元に設置する。おっと忘れるところだった、メッセージも添えなくては。Licに筆ペンで書いてもらう。

 Licが買い物に出かけ、みこりんはぐっすりお昼寝中。残った私は台所の大掃除にとりかかる。
 長年のステンレスの汚れと格闘すること数十分。流れ落ちる汗が、まるで真夏のように瞼にかかる。すでにセーターは脱ぎ捨て、いまはノースリーブ一枚で作業中だ。それなのに空気は冷えるどころか、ますます暑くなる一方だった。
 暑い!蒸し暑い。季節を間違えてんじゃないのかいったいどうなっておるのだ日本の冬は。朦朧としつつ腕にかかるねっとりとした蒸気に、ようやく気づく。蒸気?

 もうもうと蒸気を吹き上げる食器洗い乾燥機。こやつが原因かっ!ちょうどシーケンスは乾燥モードに入っていて、さらに暑さは増す一方…。中断ボタンで、機能を停止させた。
 これで安心だ。
 作業はさくさくと進む。

 ぴかぴかの台所。おぉ、見違えるようだ。ステンレスのきらめく反射が気持ちよい。希望としては、あとガス台の隣に調味料棚が欲しいところだ。あとは手元のライトも欲しい。年末までになんとか自作してみようかな。
 なんて思ってるとLicが帰還。さらにタイミングよく、みこりんも起きたようだ。ワイヤレスモニタから、みこりんのぐずる声が聞こえてくる。ちょっと泣いて、すぐ収まったので、プレゼントに気付いてくれたかな〜?と期待したのだけれど、すっかり日も暮れて、寝室は真っ暗になってることに思い至る。ふ、不覚。今回の作戦も失敗したのでは…。
 寝室へと急ぐ。

 灯りをつけてやっても、しばらくみこりんは不機嫌だった。夢見が悪かったのだろうか。なかなかプレゼントに気付いてくれないので、さり気なく誘導してやったら、やっとこさ見つけてくれた。そして箱の上に乗ったメッセージを指さし、それを持って戻ってきた。読んで欲しいらしい。文字によく反応するみこりんである。
 Licの書いてくれたメッセージをみこりんに伝えてやる。いかにもサンタクロースが書いてくれたかのように補足しつつ。来年は、末尾に「サンタより」と署名が必要だな。たぶんそのころには、みこりん、ひらがなは読めるようになってる予感。
 そしてようやくプレゼント本体の“箱”に手をかけた。保育園ではこういう箱の中に、サンタさんが入っていたのだとみこりんが教えてくれた。はたしてこの箱には何が入っているだろう。リビングまで箱を持って行き、さっそく開封にかかるみこりん。中身は、リクエスト通り、ぽぽちゃんの救急車セットだ。みこりんの手紙は無事サンタに届いたようである。

 今年のクリスマスケーキもLic手製のブッシュ・ド・ノエル。チョコレートコーティングが、例年とは異なり、ハードタイプになっていた(去年まではチョコレートクリームだった)。でもみこりんはその上に乗ってるメレンゲのサンタと、チョコの看板と、イチゴと葡萄だけ食べて、肝心のケーキ本体には手を出さず。スポンジケーキは苦手なんだろうか。そして私は、いつもなら直前の晩飯を食い過ぎて、ケーキを食べる余力を無くしているところだけれど、今年はうまい具合に腹八分目だ。なかなかに美味であったことを記録して、今日の日記を終わろうと思う。


2000.12.25(Mon)

消えるか固定電話

 なぜ今頃になっての発表なのかというのが、じつに気になるとことである。

 『有線放送網に光ファイバーを敷設100Mbpを月額数千円で

 有線放送でおなじみの“有線ブロードネットワークス(旧大阪有線放送社)”が、自前の有線のネットワーク網に、光ファイバを併設することで実現するらしい。100Mbpsといえば、ADSLが何かの冗談に見えてしまうほどのパフォーマンスだ。むかーしからNTTが、各家庭に光ファイバを敷設して大容量高速ネットワークを実現するとぶちあげてきて、いまだに試験的にしか実現していない“夢の”インフラともいえる。それが“いとも簡単”に実現しそうな気配に、私は違和感を禁じ得ない。

 いやNTTが遅いのは構造的な問題だから、光ファイバが現在にいたるもほんの一部分にしか敷設されていないのは不思議でもなんともないのだが、東京めたりっく通信とかのADSL事業に関連する様々な妨害疑惑を思うとき、他社の光ファイバネットワークについても、同様なことがこれまでもあったんじゃないかということだ。だいたい今回の有線ブロードネットワークスの計画だと、100Mbpsの常時IP接続で、月額5〜6千円になるという。しかもケーブルTVなどと違って、そのカバーする範囲は桁違いに広い。こんな選択肢がある中で、わざわざフレッツADSLとかフレッツISDNだとかを、ユーザーは選ぶだろうか?我が家のように田舎にあっては、もしかすると有線が来ていない可能性もあるので、そういう場合は仕方ないのだが、ADSLにしろ、NTTの光ファイバ網にしろ、まず都会からスタートするのが常だ。その環境で、先の有線の光ファイバ網に太刀打ちできるとは、とうてい思えない。

 まだまだ“やれるのに、有形無形の圧力で実行できない”事例が眠ってるんだろうなぁ。ところで、もし運良く有線の光ファイバのサービス範囲になったとしたら、まっさきに切るのは固定電話だな。通話よりも通信に使ってる時間が圧倒的な我が家の場合、固定電話の役割はほとんどないし。緊急連絡にはケータイで十分だし、田舎のじじばばとの会話には、インターネットフォン等のほうが通話料を気にしなくて済むので便利だし。……と思ったら固定電話が必要なヤツが残ってた。SkyPerfecTV!のペイパービューの承認には、まだ固定電話が欠かせない。あれのオプションで、LAN対応のが出れば万事OKなんだがなぁ。


2000.12.26(Tue)

ライオンの値段

 冬という季節をようやく思い出したかのように、昨夜から雪が降りしきる。といっても朝になっても、せいぜい2cm積もったかどうかというレベルだけれど。

 みこりんがおたふく風邪(の疑いあり)なので、今日は私が留守番だった。たまたまつけてたTVから、従業員の安全教育がどうとかいうのが聞こえてきたので、ちょっとだけ音声レベルを上げてみる。ライオンに襲われたのか。サファリで。ここ最近は一般ニュースにはほとんど触れていなかったが、これは動物ネタということで、キャスターのしゃべりにしばらく耳を傾けていた。

 サファリのボスは、従業員の安全確認ミスということで決着させたいらしい。つまり、自分は悪くはないんだと言いたいのだろう。まぁたしかに、檻の柵を開け放したまま作業してれば噛まれるわなぁ。もっと厳しいマニュアルを作成し、その徹底を図るという彼の主張にも一理ある。だが、管理者としては、それだけじゃ半分以下の仕事しかできてないってことに気付かないから、同じような事故が続くんだろうなぁ。ちなみに過去のサファリ関係の事故を一覧したページはこちら。『サファリパーク従業員の事故事例災害情報センター(Accident & Disaster Information Center)より。

 2つある檻の柵にインタロック装置を取り付けて、常に一方しか開かないように細工してりゃ、マニュアルを守らない従業員がいても、噛まれることはなかったろうに。この人を噛んだライオンはやはり処分されるのだろうが、ライオン一頭分の値段はインタロック装置より安いんだろうか?まさかな…


2000.12.27(Wed)

14匹の…

 毎夜、みこりんを寝かしつける前に読んでやっている絵本の中に、『14匹』シリーズがある。14匹の野ネズミが出てくるお話で、自然豊かな描写と、水彩の柔らかで透明な画がなかなか美しい絵本である。その中でも、みこりんがとりわけ気に入っているのが『14匹のあさごはん』という絵本だった。
 “早起き一番はおじいさん”で始まるこのお話は、朝起きてから、兄弟達が朝食の野いちご摘みに出かけ、お母さんお祖母さんがパン作り、お父さんがスープ作りと、それぞれがおいしそうな朝ご飯を準備する過程を綴ったものだ。

 今年、うちの庭でも木イチゴが実をつけてくれたので、野いちごがどんなものなのかみこりんもよぉく知っている。野いちご摘みの場面になると、きっとその時の味でも思い出しているのだろうか、画を指さしてはいろいろとお話してくれるのだった。特にこの絵本が優れているのは、細かな部分にもドラマが込められている点だ。描かれている画の1つ1つ、隅々にまで、何らかのサブストーリーが隠されている。まるで“だまし画”のようでさえあった。だからただ単にさらっと読み進めるてはもったいない。小さな指に棘を刺したの誰?とか、どんな風に野いちごを採ってるの?とか、いろいろと物語を拡張するのも楽しみの1つ。そんな空想の拡がりの1つに、最近みこりんがお気に入りなモノが1つあった。

 それの正体は野いちごの実を摘んだあとに残った“がく”の部分だ。でも、みこりんにはそれがどうしても“タコ”に見えるらしい。たしかに画的には、小さなタコが鎮座している姿に酷似しているので、みこりんがそう思っても無理はないのだが。で、そのタコはどうしてそこにいるのかと問えば、みこりんはいつもこう答えてくれる。「タコさんは、のいちごたべにきてるの」と。
 確かにタコは陸上でもある程度の距離は平気で移動するらしい。タコが海辺の畑から大根を食っていったとか、そんな話しは実際私もどこかで聴いたような記憶がある。でもそんなことは関係なしに、タコが野いちごを食べに来ているというみこりんのお話は、寝る前の穏やかなひとときにはお似合いだ。この世からすべての心配事が消え去ったかのような錯覚に浸れる。みこりんに絵本を読んでやるという目的の他に、自分もまたこの時間を楽しみにしているのは、そういう理由もあった。

 『14匹』シリーズは、ぜひとも全巻揃えたい逸品である。


2000.12.28(Thr)

脆いもの

 みこりんがうれしげにベルトを持ってきて見せてくれた。自分のだという。そのベルトは、長さ調節自在の、布製のやつだ。幅が大人用の半分くらいで、いかにもちっちゃい。ちなみに色はダークイエローもしくはタン。初めてのベルトに、みこりんはうれしくて仕方ないようすだ。
 ベルトがあるからには、それを通すズボンもある。これまでみこりんはベルトを必要とするズボンは持っていなかった。新しく買って貰ったのは、なんとジーンズだった。いつのまにか子供用ジーンズが穿けるくらいに育ったみこりんである。

 でもやっぱりちょっと大きい。試しに穿かせてみると、なんだかぬいぐるみにジーンズを穿かせてみたような感じに見える。脚は細いが、お腹はぷっくり出ているという幼児体型がそう見せるのか、あるいはポケットなどの部位が大人用とは相似形になっていなくてバランスが妙なのかはわからない。その両方のような気もするけれど、そうしてジーンズ姿になったみこりんを見て、私の脳裏に再生される映像があった。

 映画『ブレードランナー』に出てくるセバスチャンの人造人間達。今のみこりんくらいのサイズなところとか、いかにもぬいぐるみ系な服装とか、そういうイメージのだぶりがあるのがポイントらしい。……いやいや、それだけではないだろう。この映像は、そういう特別なトリガがなくても、いろんな場面で何度となく思い出してきた様な気がする。何がそれほどまでに私の興味を惹いているのかはっきりと理由はわからない。ただ、あの描写があまり楽しいイメージは伴っていないところを見ると、私は怖いのかもしれないと思う。赤ん坊とか、幼児とか。ちょっとしたことですぐ脆く崩れてしまいそうな脆弱さに。


2000.12.29(Fri)

金魚の体操

 今日で仕事納め。夕方からは恒例の茶話会が予定されていたが、今年はとっとと午前中で切り上げることにする。長い冬休みの始まりだ。

 さて、帰宅してみるとリビングに見慣れぬマシンが到着していた。2つの窪みを持つ台のようなものと、それとは別に丸い回転座椅子のような物体、そしてコードにつながったスイッチ1つ。も、もしやこれは……。
 みこりんが得意げに作動させてみてくれた。とたんにうねうねと往復運動を開始する2つの窪み。みこりんのちっこい両脚が、揃えられてそこにちょこんと乗っている。くねくねくねくねくねくね。金魚運動というよりは、からくり機械のよう。そうか、Licが買ったのだな。以前から欲しいとか言ってたことを思い出す。

 ただ寝てマシンを作動させればウエストが夢のように細くなる!そんなうまい話があるとは思えないのだが、私も試しにちょっと両脚をそこに乗せてみることにした。腰の下には付属の回転椅子を敷いてと…。スイッチはタイマー式になっていて、最長15分まで設定できる。とりあえず2〜3分で試そう。ダイヤルをちょろっと回す。始動。

 はじめのうちは、腰がちょっとだけ軽くなったような爽快感があった。座り仕事をしたあとだったので、ちょうどいいマッサージになったものと思われる。でも、そのうち足首が痛くなってきた。力を入れていなければ、すぐに窪みから両脚が外れてしまいそうな不安定さだ。カラダをずらして位置を修正してみても、またすぐに足首が痛くなる。どうやらマシンが徐々に下の方へとずり下がっていってるらしい。ふくらはぎが攣りそうになってきたのでマシンを止めた。滑り止めに難ありのような。

 自発的に筋肉を動かすのでなくても、まったく動かさないよりはたしかにマシなのかもしれない。けれど、やっぱり脚上げ腹筋などよりは、ぜんぜんラクすぎる。ラクということは、ほとんど負荷がかかっていないということだろう。これではたしてウエストが細くなるものなんだろうか。私にはどうも眉唾のように感じられるのだが、かなり昔から売られているということは、それなりに効果はあるってことなんだろうか?消えてしまった“ぶら下がり健康器”よりも?
 まぁいいだろう。それほど高い買い物ではなさそうだし、万に一つもこれで効果が出たならば、素晴らしいことである。その結果がわかるのが、できれば来年中であってほしいものだが。

はまるCM

 SkyPerfecTV!のデジキューブチャンネルでやってるゲームセレクション12月29日版の中で、ゲーマー家族なるコーナーが流れていた。漫然と流していた私の目に、やけに挑発的な女が一人…、女というより、子供といったほうがいいような感じだが、その娘の名前は小倉優子
 どうも狙ってるようにしか見えないのだが、ひょっとするとまったく自然体でアレなのか?だとすると、かなり怖いが…(いったい何が見えるのかは毎時40分ごろの同番組をご覧戴きたい)

 ところでゲームのCMといえば、最近『PS2版 機動戦士ガンダム』のが面白い。雪山遭難のもかなりツボを突かれたが、昨日見たのはそれを上回っていた。ふっとビル上空を見上げるビジネスマン。高空から降下してくるのは……ザクだ。ザクマシンガンで高層ビルを掃射開始。崩れ落ちるビル群。さきほどのビジネスマンが瓦礫からカラダを起こすと、1冊のマニュアルが目に入る。そしてその向こうに横たわるのは、ガンダム……。初代ガンダムにリアルタイムにはまった世代としては、これで燃えなくてどうする!みたいなシチュエーションではないか。…買ってしまいそうな予感。


2000.12.30(Sat)

誤作動

 冬休み初日、ちょっと遅めの起床である。夜間保温のために部屋に待避させていたピーコの鳥篭をサンルームに吊そうとしたとき、とんでもないものを見つけてしまった。菜園1号2号に設置した自動灌水器から、激しく水がほとばしっていたのだ。
 いったいいつから作動していたのか。ノズルの下は、水たまりというより、まるで水路だ。畝が水没するほどに…
 コントローラを止めにいったLicの報告によれば、タイマーは設定されていなかったという。私も設定した覚えはない。かといって手動で作動した場合に表示される累計も出ていなかったらしい。妙な話だ。いたずらで手動操作されたのでもなさそうである。となると考えられる原因は…誤作動ということに。
 コントローラの密閉具合からいって、水滴が侵入というよりは、強烈なノイズなどで電子回路が勝手に作動した可能性が高い。あるいは他の原因かもしれないけれど、こういう誤作動は今日が初めてではないのかもしれない。悩ましい問題だ。こんな寒空に溺れるほどの水では、育つモノも育つまい。水没してしまってた玉葱と聖護院大根、枯れなければいいのだけれど…

氷の不思議

 外に出しっぱなしのみこりんのままごとセットの1つ“キティちゃんのピンクのお皿”に、かなり分厚い氷が張っていた。それに気付いたみこりんが、さっそく氷を取り外し、私のところに持って来てくれた。正午近いというのに、厚さ5mmほどの氷は溶ける気配なく、じつに見事な形状を保っている。

 氷という思わぬアイテムの出現に、みこりんはさっそく遊びを思いついたらしい。日頃ままごと遊びに使っている片手サイズのミニ植木鉢多数を総動員し、玄関前で円陣を組んでしまった。没入したみこりんの独り言から察するに、これは“キティちゃんの保育園”らしい。みこりんは“見えない園児たち”に、せっせと氷と土と水で練った“ごはん”を食べさせている先生なのだった。
 その過程でいつのまにか氷は四散し、徐々に液体へと還っていく。みこりんは新しい氷が、まだどこかにあるのではないかと探しに行き、そして見つけてきた。今度のは厚さ1cm弱と、さっきの倍はある大物だった。やはりみこりん用の赤い小さなバケツに張っていたようだ。

 この機を逃さず私は聞いた。氷はどうして出来たのだろう?と。もちろん答えられるはずもないのだが、考えることは無駄にはなるまい。しかし、やや苦戦するみこりんの様子に、少し質問を変えてみる。氷はどこにあったのだろう?みこりんは答える。お皿とバケツだと。では、そこにはもともと何が入っていたのかな?「おみず!」と即答するみこりん。氷はその水の上にあった?下にあった?「した〜」…そ、そうか?もしや上部はすでに溶け始めていたのかもしれんな。まぁいい。今はこのくらいでよしとしておこう。みこりんも氷が出現したことには少なからず興味を惹かれているようだし。

 夕方、記憶を反芻するように改めてみこりんに聞く。氷はどこから来たのだろう?するとみこりんは自信たっぷりに「おふろばから!」と答えてくれた。冷たい水のある場所だからなんだそうな。今夜はいろんな容器に水を張ってみよう。明日、みこりんはそれを見て、どんな感想を持つだろうか。その次には、みこりんと一緒に氷作りをしようと思う。

小さな大掃除

 大掃除の締めとして、ピーコの鳥篭と、ロボロフスキーのあかねちゃんのケージをキレイにする。ピーコは、この寒いのに水浴びをしたようで、すっきりさっぱり毛繕いなどしているようす。庭から自生していた白菜の葉っぱを千切ってきてセッティング終了。

 あかねちゃんの方は、ケージからプラケへと、引っ越しも兼ねている。見るからに高齢でよれよれのあかねちゃんにとって、この寒さはちょっとでも少ないほうがいいだろうという思いからの移動だ。でも真冬の小屋掃除は注意していないと、命取りになりかねない。温度変化をなくすために、移し替えはすべて部屋の中で済ませ、ペットヒーターには古着を一枚被せてやった。どうやらあかねちゃんの爪が伸びすぎて、つるっつるのペットヒーター表面では滑ってしまってうまく乗っかれない場合があるようだから。一枚布きれがあれば、だいぶ改善されることだろう。

 夕方、心地よさそうにペットヒーター(布付き)の上で横になるあかねちゃんの姿があった。これまでそうしようとすると、つる〜っと滑っていたであろう姿勢だ。みこりんはそれを見て、お布団もかけてあげたいと言ったが、たしかに敷き布団だけでは足りないような気がする。かといって布をもう一枚追加しても、うまい具合に掛けてくれそうにないし、ここは1つ、Licにお願いしてペットソファを縫ってもらうのがよさそうだ。

<everything is ready...>

 今更ながら『グッドラック 戦闘妖精・雪風』を読了。買ってきたのが去年の6月19日のことだから、じつに1年と半年が過ぎ去っていた。といっても読み始めたのは、つい最近のこと…

 じつはあろうことか私はこの前作である『戦闘妖精・雪風』をつまみ読みしかしていなかったのだ。すでに買ってから十数年が経過しているというのに。だから、まずはこちらから読み始めたのが1週間前。
 なぜ今まで『雪風』(もちろん最初のやつ)をちゃんと読んでいないかと言えば、こういう理由からだった。「これはとんでもなく面白いに違いない。面白くないわけがない。ネタ的にはいかにも私好みだし、ネーミングが素晴らしい。こんな本を読んでしまったら、きっと私は燃え尽きるだろう。……ダメだ、読めない。読むのが怖い。読んだ後に待ち受けているであろう満足感と虚脱感、その有様が目に浮かぶ…」そう思いこんで封印したのが学生の頃。若かった私は、そんなことを本気で考えていたらしい。でも途中、誘惑に負けて、ぱらぱらっとページを繰っては、「おおぅっ!」とおののき本を閉じ…そんなことが2回3回4回5回…。

 『雪風』を来世紀まで持ち越すことは、悪である。私は今、かつてない爽快な読後感に満たされている。この本に出会えて良かった。


2000.12.31(Sun)

土の中から

 ゴボウを収穫してくるようLicに言われて、みこりんと二人で東側の菜園へと向かう。ゴボウの葉っぱは今でも鮮やかな黄緑色だった。雪も霜も、ぜんぜん平気な様子。頼もしいことである。
 春に種を播いてから、途中3〜4本収穫したので、現在の残りは5〜6株。太り具合にもよるけれど、だいたい2本もあれば足りるだろうか。手近なものからさっそく掘り起こしにかかる。

 20cmくらい掘ってもまだびくともしないので、掘りたがっているみこりんにはもうしばらく待ってもらって、慎重にスコップを突き立ててゆく。この場所はもともと50cmほどは耕している場所なので、掘り進めるのにさして苦労はないのだけれど、ゴボウに傷をつけないようにしなくては。まるで遺跡の発掘のように、ぎりぎりまでスコップでこそげてゆくのだ(別にこうする必要はまったくないけど、面白いのでいつもこうして掘り上げている)。

 深さ約30cm。そろそろぐらついてきた気配。みこりんにも少し掘らしてやろうと思う。さっきからみこりんは、「だいこん!だいこん、ほる!」と何か勘違いしているようなので、訂正しつつ。

 いよいよ抜く頃合いだ。みこりんもちっちゃな手を添えてくれている。ぐいっと力を込め、いざ抜かん。…ぬぉぉ。さきっぽが地の底に食らいついとる!抜けそうで抜けない末期の虫歯のように、ぐらぐらしつつも決して離れようとしない頑丈さ。みこりんがここではたと気がつき、私の後ろに回り込んだ。そして腰に手をかけ、ひっぱり再開。『おおきなかぶ』だ。

 「ぷちっ」という音とともに、ゴボウは抜けた。最後まで土中でがんばっていた先っちょが、ものの見事に折れている。直径8mmほどの断面なので、まだこの先には10cm以上あったかもしれない。ちょっともったいないような気もしたが、それ以上は追求しないことにする。ゴボウ好きな異形のモノが、地の底に潜んでいたら困るから。先っぽは奴らのものだ。

 こうした収穫した2本のゴボウは、Licの手に渡り、今夜“お節料理”へと姿を変える。

そして来世紀へ

 淡々と夜は更けて、2000年が暮れてゆく。あと1分あまりで新世紀というとき、ワイヤレスモニタがみこりんの異変を告げた。
 駆けつけてみると……うーん、みこりん、食べ過ぎたようだ。たしか去年も似たようなことがあったような。

 20世紀は、こうして終わりを告げたのだった。


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