2007.10.1(Mon)

謎の言葉

 昼休み、みこりんから私のケータイに着信があった。今日は運動会の振り替えで、みこりんは休日。家でお留守番をしているのだ。

 家に掛け直してみると、みこりんが出た。何事かと思っていると、近頃みこりんがはまっているオンラインRPGの“野菜村”で、誰か知らない人から話しかけられて困っているらしい。
 どう困っているかというと、その言葉が日本語ではないらしいという。

 「英語?」と聞いてみると、「英語みたいなのもあるし、日本語をローマ字にしたようなのもあるし…」とのこと。「それでみこりんは何て答えてるの?」との問いかけには「日本語をローマ字に直して打ってる」のだそうな。それで肝心の会話が成立しているのかどうかという点だが、なんとなくだけれど、「通じているような気がする」と言う。
 ふむ…。
 海外在住の日本人で、日本語入力ができないPCから接続してきている可能性もある。でもそれにしては、英語みたいなのが混ざっているというのが、妙だ。片言の日本語が話せる外国人、という線が有力だが…。

 みこりんは、意味不明な会話部分のスクリーンショットを撮ってあるので、帰ってきたら翻訳して欲しいと言った。なかなか抜け目ないみこりんである。私は、一応会話がどうにか成立しているっぽいので、特に不審なことがこれ以上起きないようなら大丈夫と判断して、そのようにみこりんには伝えておいた。

 *

 帰宅後、さっそくそのスクリーンショットを見せてもらった。
 たしかにこれは英語とローマ字の日本語が混ざり合った文だ。ただ、日本語の言い回しとか、単語の使い方がちょっとおかしい。それに、固有名詞が欧米の雰囲気ではない。なんとなくアジア系な予感を感じつつ、さらにスナップショットをめくっていくと、とある一枚に写し込まれた会話の中に、“tyougoku no city”に住んでいると相手が話している場面があった。なるほど、中国か。
 そのことをみこりんにも教えてやると、「へぇー」と少々驚いたような雰囲気。あ、もしかしてオンラインチャットで日本人以外と会話したの、みこりん初めてだったかも。

 ただ、相手が何度も繰り返し話していた言葉の意味が把握しきれず、謎は残ったままなのだが。

 “○○ tyannde, ninnsikisuruka?”

 「認識するか?」という日本語なのではないかと思われるのだが、それが何を意味しているのか…。最初のほうでみこりんが「eigo wakarimasen」と答えるまで、英語で“友達になりませんか?”みたいなことを言われているので、もしかすると「フレンド登録してくれないか?」という意味なのかもしれない。
 それにしても今回は、みこりんが克明に会話のすべてをスナップショット機能で撮っておいてくれたため、あとから会話内容を検証するのにとても役に立った。こういうとっさの機転の利かせ方が、なかなか現代っ子ぽいなと思う今日この頃。


2007.10.2(Tue)

謎の挨拶

 “いつもお世話になっております”というオトナの挨拶常套句を、子供の頃はとても奇妙に感じていた。たとえば電話等で、まったく面識がないのに、“いつも”とはこれいかに。自分はそんな妙な挨拶絶対しないぞ、なんて固く心に誓ったウン十年前。
 気が付けば、いつのまにか条件反射で「いつもお世話になっております」と、外線等で挨拶している自分がいる。

 今夜、みこりんがお風呂に入っている間、私が代わりに“野菜村”でクエストアイテムを落とすモンスターを必殺技で倒す作業をやることになった。この時、みこりんは三人でパーティを組んでおり、その中の一人は最近仲良くしてもらっている女の人だというのは私も知っている。もう一人の女の子キャラは、私の記憶にはない。しかし、みこりんが「これからおとーさんと替わるね」と宣言して入れ替わった以上、やはり挨拶しなくてはなるまい。

 「いつもみこりんがお世話になっております」

 私が名前を知ってる女の人キャラは、「こちらこそ」と、オトナの常套句を返してきた。うん、みこりんが言っていたとおり、この人はオトナに違いあるまい。
 もう一人の子は、「えー、今日が初めてだよ?」と、むかーし私が感じていた通りの疑問を口にした。なんというか、とても懐かしい感じがする。

 案の定、その“お初の子”は、小学5年生なのだとか。普通に会話する分には、子供っぽいところはほとんど出てこないので、さっきのやりとりがなければ相手が小学生とは思えなかったかもしれない。文字だけで進む会話の醍醐味というか、怖さというか。

 やがてみこりんがお風呂から上がったので、交代。クエストアイテムは、あとまだ約190個集めないといけないらしい。野菜村のクエストでは、このように何百個もクエストアイテムを集めるというのが普通にある。私などは、やる前からその数に圧倒されてしまうのだが、みこりん達は特にそういうのは大丈夫らしい。これが若さというものか…


2007.10.3(Wed)

地球は青かった…

月周回衛星「かぐや(SELENE)」が撮影したハイビジョンカメラによる地球の映像

 う、うつくし…

 それにしても、711,036バイトの画像データを普通にサーバへアップロードできるようになったのが感無量。今使ってるレンタルサーバに移る前は、サーバ容量50MBしかなかったから、画像データも削りに削ったものだが、もはやそんな小細工しなくても全然平気なのが素晴らしい。…なんていうのも今時の人には、もはや昔話なのだろうなぁ…

 それはそうと、動画も同時に公開してくれればよかったのに。間欠撮影でもいいから。微妙に大気の動きが見られるだけでも、臨場感が200%アップだったにちがいないのだが。

月周回衛星「かぐや(SELENE)」のハイビジョンカメラ(HDTV)動画撮影成功について

 地球からの距離は約11万kmで、これだけ遠い宇宙からハイビジョン撮影が行われたのは世界初(今まではスペースシャトル及び国際宇宙ステーション(ISS)の軌道からの撮影で、距離は約340km)。地球の昼間の部分には、南アメリカ大陸の西海岸線が映っています。
 この画像は、平成19年9月29日21時46分(日本時間)に「かぐや(SELENE)」から8倍の間欠撮影(8分間を1分に縮めて収録)で撮影され、JAXA臼田宇宙空間観測所にて平成19年9月30日9時40分に受信した動画の一部を静止画像として切り出したものです。

JAXAプレスリリースより


2007.10.4(Thr)

マクロス ゼロ ORIGINAL SOUNDTRACK

マクロス ゼロ ORIGINAL SOUNDTRACK 1 マクロス ゼロ ORIGINAL SOUNDTRACK 2 数年前に、『マクロス・ゼロ』をCSで見て以来、作品中で使われていた音楽が気になって気になって仕方がなかった。そこで中古で出ないかなと延々待ち続けても、一向に現れる気配がなく(Amazonのマーケットプレイスは諸般の事情により購入対象外にしている)、Amazonでも長らく新品の入荷なし状態が続き、手にする機会を逸し続けて幾歳月…。
 もはやこれまでかと思われた頃、先月、Amazonにて『マクロス ゼロ ORIGINAL SOUNDTRACK 2』が入荷しているのに気付く。その時点で、在庫数残りわずか。意を決した私は、カートの中に商品を投入。その間にも、お届け時期は刻々と延びていったらしくて、結局、2〜3週間待ちになってしまった。けれども、何年も待ったあとなので、このくらいは誤差の範囲である。

 『マクロス ゼロ ORIGINAL SOUNDTRACK 1』の方は、@古本市場で、ようやくゲットすることに成功した。

 お気に入りの曲は、『1』の方では2曲目と17曲目のARKAN、16曲目のMAYAN。『2』からは1曲目と15曲目の、日本語詞とmayan語によるYanyanといったところ。全体の雰囲気も独特の世界観を形成しているので、2枚のCD全曲通しで聞くのもよし。ただ、人によっては好き嫌いがかなり明確に分かれそうな曲調かもしれない。

 というわけで、近頃のBGMは ARKAN 2曲と、Yanyanが2曲、こにMAYANを加えて計5曲のヘビーローテーションとなっている。美しい旋律、澄んだ歌声、夜中に聞くには最適だ。思い切って買って良かったと思えるCDは、本当に久しぶり。


2007.10.5(Fri)

絶対音感

 春に4年生になった時から、みこりんが楽しみにしていたのは、運動会が終わった後にやってくる、音楽会だ。これは4年生だけに用意されている行事なので、そういう意味でも、なかなか貴重。私の小学校時代には全校で音楽会が開かれていたものだが、近頃は授業数削減のあおりをくらってこんなことになってしまっていのだろうか。

 担当楽器を決めるのは、オーディション形式なのだという。もちろんみこりんが狙っているのは、ピアノ(エレクトーンは残念ながら学校にはないので)。2曲演奏するため、残りの1曲の方では無難なところでリコーダーと、控えめなところを見せたりもしている。

 ピアノを狙っている方の曲のオーディションはまだ先らしいのだが、リコーダーでいく予定の方の曲で、ひょんなことからみこりんはマーチングキーボードに、なりそうだと教えてくれた。
 こちらの方の曲でピアノを狙っていた子が、ライバルの数の多さにちょっとやる気をそがれたらしく、マーチングキーボードに転向。練習を始めた…のだが、ここでみこりんが、学校に1つしかないその楽器が、なんと音が3つほどずれていることに気が付いたのだった。さすが耳の良いみこりんである。
 先生も今まで気付いてなかったらしくて、他の楽器と念入りに音合わせをしてみて、みこりんの指摘が正しいことが証明されたのだった。マーチングキーボードに転向しようとしてた子はまったく気付いてなかったらしい。で、困ったのは、この楽器が学校に1つしかないことだった。簡単に調律できるのかどうか不明だが、みこりんなら、3音ずれたやつを、さらに3音分を逆方向にずらして正しい音階で弾くことは可能だった(3音どころか、何音ずらした状態でも、みこりんはシャープ、フラットを駆使して弾き分けることが可能)。
 という事情もあって、マーチングキーボード、もしかしたらみこりんがやることになるかも、しれない。


2007.10.6(Sat)

…の季節

 みこりん用の秋物服を買いに、最寄のスーパーに出かけた。途中、川の土手一面が真っ赤に染まっていたので驚く。
 この季節に咲き誇る花といえば、彼岸花。その大群生地帯になっているらしい。人力で植えたのでなければ、見渡す限り彼岸花が増殖するのに、いったいどれくらいの年月がかかっているのか想像も付かない。この場所には石ではなく、今にも崩れそうな古い木で出来た墓がひっそりと残っているほどなので、もしかすると百年単位でここにあったのだとしても、不思議ではなかった。
 あまりに幻想的な光景ゆえ、思わずクルマを停めて写真を撮ろうかと思ってしまったのだが、もしかすると写ってはならないものまで写りこんでしまいそうな予感がしたので止めた。

 スーパー着。
 洋服売り場で、真剣に選んでいるみこりん。この季節、明け方などはすっかり肌寒いため、長袖のパジャマなど見ているようだったが、「これっ」と指差した明るい緑色したカエルのイラストが入ったやつは、残念ながら合うサイズのものがすべて売り切れだった。
 残念。

 *

 そして夜、ヴァナ・ディールの地において、ポケモ…、もとい、「パンクラティオン」でみこりんと対戦。

 友人が撮影してきてくれたとっておきのモンスターを、私(黄金色のロボット)とみこりん(青いお化け)で分け、ガチで勝負したら、あっさりと私のが負けた。
 みこりんが就寝したあと、獣性を上げるべく、ロボを単独で試合にエントリーしまくってみた。付与したドレッドスパイクが威力を発揮し始めるまで、もうちょっとかかりそう(下の写真はロボと鳥の対戦風景。みこりんの青いお化けは、撮り逃してしまった)。

黄金色のロボットと、大鳥の対戦


2007.10.7(Sun)

くすり博物館

 クラスメイトから聞いたとかで、ちょっと前からみこりんが行きたがっていた場所がある。最初は“薬博物館”ということしかわかっておらず、どこにあるのかすら把握できていなかったのだけれど、みこりんはサーチエンジンを駆使してついにその正式名称と場所を探し当てたのだった。

 “内藤記念くすり博物館”が正式名称らしく、場所的にもだいたいすぐに位置関係が脳内にイメージできる程度の近場。
 詳細な位置をGoogleマップにより確認し、頭の中に経路を叩き込んで、出発だ。いちおう念のため、地図を印刷したやつを1枚持ってゆく。これがダメでも、最後の手段としてケータイのGPSを使えば、いくらなんでも辿り着けない、帰ってこられない、何て事にはなるまい(私はかなりの方向音痴なのだ)。

 *

 案の定、一度道を間違えてあらぬ方向へとハンドルを切ってしまっていたが、わりと方向感覚にすぐれたみこりんの指摘により、事なきを得る。みこりんに地図を持たせておけば、生きたカーナビになるかもしれない。

 やがて、1時間もかからずに到着した。製薬会社関連の敷地内らしく、やたらと広大な空間があり、周辺の住宅施設等から遮断されているためか、一種独特な静寂のようなものに包まれていた。しかもあからさまな遊技施設ではないため、30台ほどでいっぱいになりそうな駐車場(大型車両の駐車スペースは別にある)も、余裕の空き状態。
 クルマから降りると、すぐに気が付くのが、かすかな芳香である。前方に見える花壇のようなものに秘密がありそうだ。
 みこりんも興味を持って近づいてゆく。

 バジル、ローズマリー、ラベンダー…、どうやらハーブコーナーのようだ。みこりんもここに植えてある植物が、うちの庭にもあることを思い出しており、親近感を持ったらしい。花壇の奥に入っていってみると、みこりんの身長よりもでかい、どこかで見覚えのあるような緑の葉っぱをもった植物が植え込まれていた。「これは何?」と、葉っぱの陰に体を潜り込ませながら、みこりんが問う。
 「んー、たぶん…、ウコン?」
 株元に、白いラベルが差し込まれていて、その名前を見る限り、これはウコンの仲間であることは間違いないらしい。なるほど、薬草園というわけだね。
 赤い彼岸花や、名も知らぬ薬草の数々を愛でつつ、そろりそろりと博物館内へ入る。

 受付で記帳すると、飴玉が貰えた。のど飴のようだ。さすが“くすり博物館”である。
 巡回コーナーに沿って回り始めた我々の目前に、どどんと飛び込んできたのが、これだ。

白沢(ハクタク)の置物

 白沢と書いて、ハクタクと読む。病魔除けの神獣、ということらしい。これで大きさが横幅50cm以上あるものだから、かなりの迫力である。まるで本物のミイラか何かのように、奇妙なリアリティがあるところがちょっとツボ。角が頭に2本、胴体に4本。目玉が顔面に3つ、胴体両側に3つずつの計9個。四肢が蹄。尻尾が…、蛇?
 モノ的には本物(生物的に本物という意味ではない)なので、それなりに古い品のようだ。色彩のかすれ具合がじつに生々しい。私がハクタクの虜になっていると、みこりんが「はやくいこー」と袖を引っ張る。どうも、みこりんはこのハクタクがかなり怖かったらしい。たしかにこれを真夜中、薄暗いロウソクの灯りで見たら、かなりきそう。

 展示物は、古来から薬の原料となってきた品々(鉱物、昆虫、動物、植物、魚、etc...)や、薬の生成に使われた古い品々、昔の手術道具や、薬売りの荷物等に至るまで、さすが博物館と言うだけのことはあって、かなりの密度で展示されている。その中でも、私が特に感銘を受けたのは、古い計測機器の数々が、ぎゅっとまとめて展示されていたコーナー。薬というのは、ヒトの命に関わるもの。その時代の科学を総動員して、研究が行われていたのだろう。古いモノには何かが宿ると言われるのもうなずけるような、緊張感がそこにはまだ、あった。何百年前にもやはり、今と同じように、科学者、薬師、医師達は、これらの器具を駆使して困難に立ち向かったのか…。現代の最新医療機器も、百年もしたら、ここに収まることになるのかと思うと、なにやらじーんとくる。

 ぐるっと回って展示物が終わると、体験コーナーのようなところがあった。脳年齢測定とか、身長体重体脂肪計とか、握力計とか、いろいろ。片端から試していき、データが紙で吐き出されてくるものは出力し、ゲットする。みこりんの身長が、ついに130cmを超えたようだ。これで遊園地のコースターも、大抵OKになることだろう。

 最後に階段を下り、エントランスに戻ってくると、無料のウコン茶が飲める装置が置いてあったので、ありがたくいただく。初めてウコン茶を飲んだわけだが、意外にあっさりとした爽やか風味だったので驚く。みこりんは熱すぎて、味の方は今ひとつだったようだ。

 くすり博物館、実際に見るまではなんとなくでっかい薬局のようなものをイメージしていたのだけれど、良い意味でそれが崩された感じ。薬の歴史、おそるべし。


2007.10.8(Mon)

雨の一日

 昨夜、博物館にいたハクタクがよっぽど怖かったのか、みこりんは久しぶりに一人で眠りにつけなかった。そこで、添い寝してやっていたのだが、私も一緒に寝入ってしまい、ふと目覚めたのが真夜中。まさに丑三つ刻というやつ。
 二度寝しようかと思ったが、妙に目が冴えてしまったので、もう一度、ハクタクの写真なぞ暗闇で液晶モニタ越しにしげしげと見つめてみる…。

 …んー、じつに生々しくて怖い。このたくさんの目に見つめられると、どんな病魔も退散するであろう。

 そんなことをやっていると、いつのまにか夜明けを迎えてしまった。頭の奥が、ずんと重い。とても眠いはずなのに、眠れない。若かりし頃、徹夜しまくりな日に、こんな風な感じになったような気もするが、もはや記憶が遠すぎてリアルに思い出せず。…あぁ、そういえば、そろそろ学園祭の時期でもある。あの頃の“祭り”な状況を、脳がまだ覚えているのかもしれない。

 *

 ヴァナ・ディールの地において、みこりん、本格的にパーティ・デビューを果たす。
 敵は、ミミズ。こいつは地面からにゅっと顔を出してるだけで、自ら動くことはないため、初心者には都合が良い。弱体魔法“サイレス”で魔法を封じてしまえば、敵はまさに手も足も出ず。
 白魔道士21歳。みこりん念願の蘇生魔法“レイズ”を覚える25歳まで、あと少し。


2007.10.10(Wed)

金と銀との

 近頃みこりんがはまっている、漫画雑誌の『ねこぱんち』。その名の通り、愛くるしい猫達が満載なのだが、その読者応募はがきに、みこりんが猫のイラストなど描き描きしていたので、締め切りになる前にポストに投函すべく、近くのコンビニまで、一緒に出かけた。
 それにしても、ポストやら銀行のATMやらが内蔵されて、近頃のコンビニは本当にかゆいところまで手が届くようになったものだ。

 店内のポストに投函。無事、用を果たしたあとは、それぞれに棚を散策。
 私が、食玩のコアファイター・シリーズにかなり惹かれていたところ、みこりんはその下の段に並べてあったチープなおもちゃに視線が釘付け状態らしい。何にそんなに興味を惹かれておるのかと見てみれば、それは金と銀の容器に入ったスライムであった。

 スライムにしては、珍しい色だ。おそらくみこりんも、そこが気になっているのだろう。金と銀。いったいどんな色になってるのか、私もちょっと興味がわいたので、買ってみる事にする。

 帰宅後、さっそく開封にかかるみこりん。だがしかし、ドラム缶を模した容器は、容易には開かず。
 私が代わりに「ふんっ」と力をこめてみたものの、やはり開かない。値段的に、そんな複雑な構造とは思えないのだが、なぜすっと開かないのか。不思議に思いつつ、みこりんに工具箱からラジオペンチを取ってきてもらった。

 ドラム缶の上部に、わずかなでっぱりがある。そこにラジオペンチを引っ掛けて、ぐっと力を込めたら、ようやく開いた。開いた拍子に、容器が傾き、中身がぽしゃっとこぼれた…、と思ったら、さすがスライム。にょーんと伸びて、また、縮んでいった。
 金色のスライム。中を覗いてみると、プラモデル用の金の塗料っぽく、色素がもわもわっとなっている。手触りは、普通のスライムよりも滑らかだった。より水に近い感じ。でも、粘性(?)は高いようで、少々のことでは切れたりはしそうにない。なにか組成が、普通のスライムとは違うのかもしれない。

 銀色のスライムも、やはり金のスライムと同じような特徴を持っていた。他の物体との親和性が非常に低いようで、まるで水銀がころころと転がるように、このスライムもころころとしていた。

 一度蓋を閉めたら、また、開ける時に苦労しそうだと思ったのか、みこりんは別の容器にスライムを移し替えることにしたようだ。
 色彩的には、とてもスライムっぽくないのだが、みこりんはそういうところも気に入ったのかもしれない。大事そうに小物入れにしまい込んでいた。

 *

 真夜中、にゃんちくんが、スライムの収納された小物入れの様子をじっとうかがっている。
 この小物入れは透明で、中が丸見えなのだ。
 にゃんちくんもスライムが気になるのかと思ったら、どうも狙っているのは別のものらしい。ちょいちょいっと、そっと前脚を伸ばしてじゃれつこうと試みているのだが、小物入れの隙間には猫の手をもってしても付け入る隙なし。
 どうやら、にゃんちくんが惹かれているのは、スライムの隣に鎮座しているガシャポンの小さな玉のようだ。たしかに猫的には、スライムよりはこっちの玉の方が楽しそうに見えるだろうなぁ…、と思う秋の夜の事であった。


2007.10.11(Thr)

月へ

“かぐや搭載ハイゲインアンテナモニタ用カメラにより撮影された月”撮影日時は10月5日15時10分頃、月からの距離は約800km 『かぐや』搭載の、ハイゲインアンテナモニタ用カメラにより撮影された月の映像。月からの距離は約800km。
 着々と接近しつつあるのが、よくわかる。この角度(月の北側高緯度)からの月は、地上の望遠鏡では見えないだけに、クレーターの見え方とか、新鮮でいい感じだ。それにしても…、月って結構でこぼこしてるのぅ、というのも改めて実感する。

 今回のプレスリリース“月周回衛星「かぐや(SELENE)」のリレー衛星(Rstar)の分離及び主衛星搭載カメラによる月撮像について”の本題、リレー衛星(Rstar)も無事に分離された模様。順調そうでなによりだ。

リレー衛星(Rstar)
 世界で初めて月の裏側の重力場を観測するための小型衛星。VRAD衛星とともに電波干渉という手法を利用してより精密に月重力場を観測する。

 それにつけても…、動画はまだなのか。本番までのお楽しみということで、ずっとじらし続けるのだろうか。まちきれなさすぎる。


2007.10.13(Sat)

『おおきくなりません』

 『その向こうの向こう側(5)』(作:渡辺祥智)が出たらしいので、地元の本屋まで買いに行ってみた。
 無事目的の品をゲットしたあと、いつもの巡回コースで見逃している新刊などチェックしていると、文庫本の新刊コーナーで鶴田謙二氏の表紙絵発見。速攻で手に取り、中身チェック。
 ふむふむふむ…。で、そのあと、おもむろに題名と作者など確認。

『おおきくなりません』(著:白倉 由美) 『おおきくなりません』(著:白倉 由美)。……作者名を、今一度見直してみる。
 “白倉 由美”…、めっちゃ懐かしい名前。20年くらい昔、ちょうど私が大学生やってた頃に少女漫画描いてた人のはず。サークルの後輩が何冊か持っていたので、ぱらぱらっと見たことはあったのだが、いつのまにか小説家に転向していたのか。
 というわけで、買い。

 ちなみに、ここで表示している画像は、2002年に講談社から出版された時の表紙絵である。今回、徳間デュアル文庫から出版された方のは、絵柄は同じで背景が白に変わっており、すっきりした感じでよいのだが、残念ながらAmazonには画像がなかった。じつにもったいない。

 帰宅後、まず『その向こうの向こう側』の方を読む。
 この人の作品は、『からっと!(1)』で絵の上手さとストーリーの面白さにはまったわけだが、先に連載の始まった『その向こうの…』の方も、ほんわかとしていてじつに癒される。2作品にストーリー上のつながりはないはずだけれど、一方が2人の女王候補なら、こちらも2人の王位継承者という符合があり、そのあたり、ちょっと気になるところだ。

 『おおきくなりません』の方は、まだ表紙イラストを堪能中。


2007.10.14(Sun)

『月の起源と進化』

 先月だったか、さらにその前だったか、みこりんが学校でもらってきたという一枚の紙に書かれていたのは、地元のホールで開催される科学講演会の案内だった。タイトルは、『月の起源と進化』。
 これにみこりんが行きたいというので、私もくっついていくことにして申し込んでいたわけなのだが、無事、募集枠(定員350名)に入れたことがわかり、入場券を持って帰ってきたのが今月の始めくらいのこと。そして今日が、その講演日である。

 開場12:30、開始13:00なので、12:45には会場に着けるように家を出て、予定通り到着。すでに同目的と思われる親子連れなどが、ちらほらと周囲に見受けられる中、私達もその流れに混ざる。
 エントランスで入場券を渡し、ホールに入った。たしかここには、みこりんが保育園くらいの頃、エレクトーンの発表会で一度来たことがあるはず。微妙に記憶に残っている。みこりんも同様らしい。

 市役所の係の人が、「出来るだけ前に詰めて」と声を掛けていたのだが、こんな機会にわざわざ後ろの方に座るはずもなく、ベストポジションを確保する。でも、あと5分遅かったら演壇から遠い所しか空いてなかったかもしれない。早めに到着して正解だった。

 定刻になり、司会の人が挨拶を述べている。今日の講演者は、水谷仁先生だ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究本部 名誉教授にして、科学雑誌『Newton』編集長。これだけの人が、こんな田舎町によく来てくださったと思う。『Newton』といえば、1981年の創刊。初代編集長は、あの地球物理学者で東京大学名誉教授の、故 竹内均先生である。私も少年時代、この科学雑誌を創刊号から購読していたので、よけい身近に感じる。

 講演内容は、日本人と月の関わりから始まって、月の観測の歴史から、現在判明している科学的データ等の紹介。そして、今まさに月を目指して航行中の探査機『かぐや』のミッションの説明、打ち上げに至るまでの苦労話など、まさに月づくし。中でも、『かぐや』に搭載している月磁場観測装置の取り付けられている長い支柱(打ち上げ時には短く縮んでいる)に関するお話は、個人的にとてもツボであった。この支柱、アメリカ製なのだが、やはり最初からちゃんと動作するはずもなく、しょっぱなからネジが外れていたのでアメリカまで送り返して修理してもらわねばならなかったとか、伸展させるとその長さゆえ、クリーンルーム内では狭すぎて完全な作動確認ができず、結局、そのまま打ち上げざるをえなかったとか、もういろいろ。果たして本番でちゃんと伸びてくれるんだろうか。私もとても心配だ。
 宇宙空間では、地上用の機械駆動装置からは想像できない苦労がある。真空ゆえに、潤滑油は使えない(最近は特殊な宇宙用グリスが存在するとかしないとか…)。温度が低くて固着する可能性がある。etc... 今から十数年前、私が仕事でとある宇宙機器の試作品にたずさわっていた頃にも、いろいろそういう話は聞いていたが、今もあんまり状況は変わってないような感じ。

 最後に質疑応答の時間があった。やはりこれに応募してくるような人は、それなりに宇宙に興味を持ってる人ばかりというわけで、活発に手が挙がっていた。私もプロジェクタの映像の中に『かぐや2』の文字がちらっと見えていたので、それにからめて(存亡の危機にある)『はやぶさ2』の件を聞いてみたい衝動にかられた…。しかしながら、空気が固まったりしたらあれなので、ぐっと我慢。
 逆に、先生の方から聴講者達に「地球から肉眼で月を見たとき、どのくらいの大きさになるでしょうか?」と3択問題を出された。私は先月の中秋の名月をケータイのカメラで撮影しているため、リアルにその大きさを思い出すことができたけれど、みこりんは「100円玉くらいはあるよね?」と、やや不安げである。正解は「次回の満月で確かめてみてください」と言うわけで、実際にみこりんにも確認させてみようと思う。

【参考リンク】


2007.10.16(Tue)

鳴いていたもの

 仕事中、10月にしては奇妙に蒸し暑いな…、と思ってはいたのだが、まさか今、耳に届いてきている窓の外からの音の正体に気付くまでには、やはりちょっと時間が必要だった(ちなみに職場の窓の向こうには、山がある)。

 じーわじわじわじわじわ

 たしかそんな鳴き声だったと思う。季節が一気に夏に逆戻りしたかのような、強烈な錯覚に、頭がくらくらとした。

 セミが…、セミが鳴いておる…。

 今年のオゾンホールは、また格別にでかくなったらしい。大丈夫なのか…、地球…


2007.10.18(Thr)

チャイムを鳴らしたのは…

 時計の針が明日へと切り替わり、さて、そろそろ寝るかと階段へと続く暗い廊下を歩いていた時の事。
 突如静寂を突き破り、「ピンポーン」と鳴るチャイムの音に、私は一瞬、凍り付いていた。

 こ、こんな夜中に、な、なにやつ…!?

 即座に廊下と玄関内外の照明のスイッチを入れ、玄関ドアを、がちゃりと開ける。
 外灯に照らされて、部分的にぼぅっと明るい夜の闇に、人影はなし。冷気が首筋や袖口から侵入してきて、ぞくりとする。

 まさか、ピンポンダッシュか!?
 そう思い始めた時、視界の隅を小さな白い影がよぎっていくのを捉える。
 完全に玄関ドアを開け放ち、外に出た。

 何か、いる。

 門扉の向こう、歩道の上にたたずんでいたのは、白い猫だった。
 うちのにゃんちくんよりも、ちょっと丸顔で、首に赤い首輪をしていた。
 じっとこちらを見つめている。その表情が、あまりに人懐っこそうなので、だんだん猫の顔が、ヒトの顔のように見えてきて、背筋がぞぞぞぞっとしてしまった。

 けれど、たぶんここで猫を呼べば、足元まで擦り寄ってきそうなほど、白猫は「遊んで」光線をばしばしと発していた。
 「あそぼ、あそぼ、遊んでー」と言っているかのように、とてとてと歩道の上を小刻みに歩き、私の目をじっと見ている。

 チャイムを鳴らしたのは、やはりこの猫なのだろう。門扉脇の塀に飛び乗ったかどうかして、その過程でスイッチに脚が触れたに違いない。いや、そうでなくては困る。それ以外に合理的な説明をつけるのは、この状況ではかなり困難だった。

 3分ほど、白猫とお見合いしたあと、「ごめんね、今は遊べないんだよ」と心の中で呟きながら、くるりと背を向け、家の中に戻った。もうパジャマに着替えてしまってるし、寒いし、それに、これに味をしめて明日も明後日も、真夜中にピンポーンなんてやられた日には、怖すぎる。

 家の中では、リビングのクッションの上で、にゃんちくんがすやすやと熟睡中。その姿に「おやすみ」を告げて、今度こそ、私は眠りについたのだった。


2007.10.20(Sat)

白いやつ

 来週、学校の社会見学で時計が必須な係を割り当てられたみこりんは、そろそろちゃんとした時計が欲しくなったらしい。これまでみこりんが使っていた腕時計は、どっちかというとオモチャに属する類のもので、秒の表示がないデジタル時計。しかも今は電池が切れている。
 みこりん的には、どうしても秒の単位まで知りたいため、私やLicが持っている腕時計のような針のついたアナログ時計を切望しているのだった。

 そろそろみこりんにも、ちゃんとした腕時計を買ってやる時期かもしれない。
 というわけで、最寄のスーパーに店子として入っている時計宝飾専門店にお出かけ。

 ショーケースに陳列された腕時計の数々。デジタルとアナログと、それぞれ半々くらいの割合だ。
 みこりんは興味津々で見入っていたが、やがて、アナログタイプの針がたくさんついているやつ(いわゆるクロノグラフ)を指差して言った。「この小さい針って、なんのためについてるの?」
 小さく並んだ3つの文字盤は、いかにもみこりん好みと思われるメカニカルな表情をしている。私は、それらが1秒よりも短い時間を計るために備わっているのだと教えてやった。
 ふむふむと納得したらしいみこりんは、「そんなに短い時間は計れなくてもいいなぁ」と言う。そして、女性向けのおしゃれなアナログタイプのコーナーをひとしきり見て回ったあと、今度はデジタルのごっついやつが並んだ棚に視線を移す。
 なんとなく、G-Shockに惹かれている感じがする。アナログでなくてもいいのかな?と思ってさらにみこりんを観察していると、ひときわ目立つ場所に陳列されていたBaby-Gシリーズに目をつけていた。G-Shockの女の子向けバージョンらしい。

 そのうち、みこりんは同じ時計の前を行ったり来たりするようになった。全体が白を基調とした色彩で統一されており、液晶も、白いバックパネルに銀色の文字表示と、なかなか美しい顔立ちをした腕時計であった。

 「それがいいの?」
 そう問いかける私に、みこりんは深く頷いていた。念のため、もう一度他の棚を見て回らせたが、やはりこの白いヤツがいいらしい。そんな雰囲気を察知したか、店員さんがすすっと接近してきて、「試着してみてください」とおっしゃる。では、遠慮なく。
 その腕時計のバンドは、マジックテープで調節できるタイプだったので、みこりんの細い手首にも問題なくはまった。そしてその上からさらにカチャッとプラスティック製のロック機構が備わったバンドで留める二重構造。重ね着の感覚。
 みこりんは自分の手首に、しっかりとフィットしたその白い腕時計に、すっかり魅了されてしまったようだ。
 それじゃ、これに決定。みこりんにRADOを指名されたらどうしようという不安は、これで解消された。

 型式名、BG-1006WV

 これが、みこりんの選んだ腕時計である(画像)。10気圧防水、秒表示、アラームにストップウォッチと、機能的にも申し分のない品だ。
 帰宅後、さっそく箱から出して自分で腕に装着してみている。一人でもちゃんとつけられるところが、みこりん的にはかなりポイント高いらしい。
 これで社会見学のスケジュール進行もばっちり、かな。


2007.10.21(Sun)

チューリップの植え付け

 秋晴れの、ちょっと肌寒い感じの日曜日。みこりんのお友達がやってきており、ウッドデッキで“お母さんごっこ(いわゆるママゴト)”の準備を始めていた。
 この光景、なんか猛烈に既視感がある…。と思ったら、去年の今頃も、こんな感じでこのお友達にも手伝ってもらいながら、チューリップの球根をテラコッタに植えつけたのだった。
 それにしても、みこりんは普段から見慣れているからなかなか気付かないけど、お友達をこうしてたまに見ると、ぐっと背が伸びて大きくなったなぁという実感がすごく湧く。

 というわけで、さっそくチューリップの球根を子供達に植えてもらうことにした。
 今年買ってきたのは、黄色い花が咲く“ベローナ(Verona)”という品種。これを2袋なので、全部で16個くらい球根がある。大きなテラコッタは、これだけでほぼいっぱいだ。
 みこりんとお友達は、植え付けの深さをラベルに書いてあるとおり、地面から5cmほどの深さに植え込もうとしていたのだが、土の容量に制限のあるテラコッタなので、根っこの領域を多くすべく、なるべく浅植えでお願いする。先端が、ちょうどぎりぎり土表面に隠れるくらいに。

 以上で、チューリップの植え込み終了。再び“お母さんごっこ”に興じ始めた子供達の横で、私は次なる球根のネットを取り出し、西側の花壇を耕し始めた。この領域はここ数年、ほとんど有効活用してなかったので、植えっぱなしでOKな球根植物でも植えておけば、春先から夏にかけてにぎやかになるんじゃないかという魂胆である。

 まず、ラベルにブローディア(Brodiaea)“クインフォビオラ”と書かれた球根を植え込んだ。青い清楚な花が咲くらしいので、花壇の縁取りに。あとで調べたら、この名前、どうやらもう使われていない古い属名らしい。今は、トリテレイア・クインファビオラ(Triteleia 'Queen Fabiola')というのが正式のようだ。ちなみに別名はヒメアガパンサス。

 次に、八重咲フリージア赤花を、これまた花壇の縁に沿って6個ほど植えた。もともとここには野良フリージアが生えているので、仲間を増やしてみたくなったのだ。赤いフリージアの花弁は、寒さに凍える初春、ぱっと景色に色をつけてくれる貴重なパワーの源であった。

 そして最後にブルビネラ・オレンジ(Bulbinella floribunda Dur.et Schinz)の球根を、花壇のど真ん中、一等地に植え込んだ。
 球根植物なのだが、この植物の球根は蘭の太い根っこみたいなのがぶわぶわっとついてるだけなので、一見すると球根には見えない。しかも夏場は掘り上げて貯蔵とか書いてあるし、植えっぱなしではまずいのかも。でも商品ラベルには植えっぱなしシリーズって書いてある。うーん、なかなか悩ましい。いちおうネットで調べた詳しい育て方は熟読しておいた。
 来春、無事に花茎が伸びてくるか、ちょっとどきどき。

 最後に残ったラナンキュラスは、植え込みの前に仕込みが必要のため、来週に回す。
 ウッドデッキでは、子供達が土のお料理作りの真っ最中。そっと眺めていると、「かんせーぃ」と宣言があり、さっそくお客としてお呼ばれされることに。
 皿に並んだ土をこねてつくったハンバーグや団子の出来は、去年よりもはるかに精巧に手の込んだものに仕上がっていた。さすが小学4年生。たぶん、来年の今ごろは、土団子じゃなくて、本物の食材をつかって“お母さんごっこ”やってそうな予感もする。

 土のハンバーグ、土の団子、ハーブ満載のスープ、そして何かのスープ、泥コーヒーを、順にいただき、お開きとなった。
 来年の春、この子達が植えてくれた黄色い幸せのチューリップが、無事開花することを切に願う。


2007.10.22(Mon)

 朝、起きだしてきたみこりんが、私の顔をじっと見上げ「おとーさん、そのままで会社行くの!?へんよっ」と、びしっと指差されてしまった。その指先は、私の顔面、鼻の下付近をポイントしている。
 そこには、ぺっとりとバンドエイドが貼られているのだ。やはり変だろうか。たしかに鼻と唇の間のちょうど真ん中だから、黒く塗ったらちょび髭になってしまう位置。肌色で極力目立たないように考慮されている製品だが、あまり役立っているようには思えない…

 こうなってしまったのには理由がある。理由もなくそんな場所にバンドエイドを貼る趣味があるわけではない。昨夜、風呂で髭剃りをやってた時に、替えたばかりの剃刀があまりに切れ味が良すぎて、つい鼻の下にある小さなホクロの表面を、すぱっとやってしまったのだった。直径1.5ミリ程度の円形に皮膚が削れ、そこから赤い血がぷくりぷくりと湧き出してきて、しばらくティッシュで押さえていたのだけれど、結局、血は止まらず。そのまま布団に入るわけにもいかないので、こうしてバンドエイドを貼って寝たという次第。
 そして朝になり、鏡を見てみると、バンドエイドのガーゼ部分が、ややどす黒く変色しているのがわかった。もう血は止まったのだろうか。でもここで剥がして固まりつつあるはずの傷口が開いても面倒なことになるし…

 みこりんには思いっきり「へんっ」と言われてしまったが、やはりこのまま出勤することにした。どうせ職場には野郎共ばかりしかいないので、特に気にすることもあるまい。

 *

 休憩時間に、何度か鏡を覗いてみたら、どす黒い部分が徐々に広がっていってるような気がして、ちょっと不安になった。もしかして、まだ血、止まってないとか?そういや、ガーゼ部分の下、粘着テープと皮膚の境界に沿って、黒い線のように血の痕がついてるような。

 *

 夜、帰宅。みこりんに「おとーさん、真っ黒になっとるよ」と指摘されてしまうほど、傍目にも目立つらしい。テープの境界線に溜まった血糊も、結構な量になってしまっているようだ。
 このままではいかん。いまにも血がぽたりぽたりと垂れてきそうで傷口がもぞもぞとむずがゆくなってゆく。

 そぉっと慎重にバンドエイドを剥がしてみた。ガーゼはたっぷりと血をすって分厚く固まっていた。そして、傷口は…、まるでついさっき出来たかのように新鮮なままである。瘡蓋ができてた痕跡もない。傷口にくっつきにくいバンドエイドを貼っていたのが裏目に出たか。血が凝結するより先に、ガーゼに吸い取られ、結果、傷口は自己修復機能を働かせることができなかったのだろう。

 というわけで、今度は気合を入れてティッシュで長時間押さえてみた。約3時間くらい。まだうっすら血は滲んでくるが、昨夜のようにみるみる血玉が出来てくるほどではなく、そのままでも布団に血の染みがついたりはしなさそう。
 それにしても、若い頃より少し血の固まり具合が悪くなってきたような…。細胞の活力が弱ってるというのは、じつにありそうで、ちょっと脱力。


2007.10.23(Tue)

制服

 社会見学の日、当日。私は目覚まし時計を通常よりも50分ほど早くセットしていたのだが、なんとアラームが鳴り始めるより先に目覚めていた。
 奇跡だ。雨など降らねばよいが…
 みこりんもいつもなら何度も揺すって起こさないと目を覚まさないと言うのに、今朝は瞬間起動でベッドから起き上がってきた。気合入ってるのが、見ていてもわかる。

 お弁当の中身は、みこりんの希望に沿うよう、その場で指示されるままに食材を使い、弁当箱に詰め込んでいった。最後の仕上げにミネラルウォーターを水筒になみなみと注ぎ込めば準備完了。
 みこりんは買ったばかりの腕時計を忘れず腕に巻いて、颯爽と出かけていったのであった。

 *

 夜、帰宅した私に、みこりんが今日あった出来事を話して聞かせてくれている。それによれば、目的地には、他の学校や幼稚園&保育園等からも複数の団体様が御来場で、見事にかち合ってしまっていたらしい。だから引率の先生同士で、見学ルートの調整やら移動用エレベータの乗る順番なんかをその場で急遽、話し合いによって決めたんだそうな。引率も、なかなか大変である。特にこんな突発事態が起きてしまうと尚のこと。

 その複数の団体様の中に、みこりんがとても興味を持った1つの団体があったという。全員制服で、頭の先からつま先まで、びしっと揃っていたのだという。お弁当まで、全員オレンジジュースとサンドイッチという念の入れよう。どこかの大学の付属小学校の子供達だったらしい。
 これまでみこりんには基本的に制服はなかった。あっても保育園での冬用の上着くらいだ。これとて着用必須という類のものではないため、たいていは私服。小学校でも制服はないので、基本、私服だ。それゆえに、統率のとれた制服姿に、見とれてしまったのではなかろうか。

 以後、みこりんはその制服集団の子供らのことを言う場合には、「いい学校の子」という言い方をするようになった。なにをもって「いい」とするかは、かなり微妙で曖昧な定義である。でも、みこりんにとっては、制服がびしっと揃っててキレイだったので、「いい学校」ということになってるらしい。「みこりんも制服あったらいいのに」と残念がっているので、「中学になったら、制服だよ」と、あまり慰めになってない言葉を一応かけておいてやった。中学まで、あと2年と半年。この時代の子供にとっては、ものすごい時間の量に思えることだろう。

 で、肝心のみこりんのおにゅうの腕時計はというと、ばっちり大活躍だったそうな。めでたし、めでたし。


2007.10.24(Wed)

チョコットランドにて

 ハンゲームに“チョコットランド”という無料のオンラインRPGがあり、これにみこりんがちょこっとはまり中。クラスメイトの女の子が、ハンゲームのアカウントを持ってて、これとか他にも種々雑多なオンラインゲームをやってたりするので、その影響らしい。
 どこのオンラインゲームでもそうだが、今はハロウィン関係のイベントまっさかり。というわけで、みこりんもこのイベントに乗じて需要が増しているお菓子を、フィールドから拾ってきては、欲しい人に売ってあげるという技を覚えたようだ。ちょっと前まで、金欠で装備も貧相なものだったのだが、それなりに充実している感じ。

 お菓子などのアイテムを互いに交換するために、フリーマーケットというわかりやすい名前の部屋を誰かが作ってたりするので、交換目的の人はそこに集まってきやすいわけなのだが、そういうゲーム内通貨取引の現場には、やはり現れるネット詐欺師。

 みこりんが欲しいアイテムを、その人が買ってくれるというので“交換機能”を使って交換をしようとしたのだけれど、相手が「“交換機能”がうまく作動しない」と言ったところから始まった。
 「それじゃぁ、アイテムを地面に置いて」と、みこりんが言う。このゲームでは、アイテムを地面に置くことができる。所有権が消えたアイテムは、誰でも自由に拾うことが可能。しかし、相手は「その方法で詐欺にあったから」と言ってそれを拒否。
 たしかに、先にアイテムを渡したら持ち逃げされる可能性はある。さて、どうするのかな?と見ていると、みこりんは先に自分からゲーム内通貨を渡して、信用してもらうことにしたようだ。んー、大丈夫かなぁ…、と思ってみていると、みこりんが渡したゲーム内通貨を受け取った相手は、何やら挙動不審にたったかたーと移動を開始。追いかけるみこりん。すると……、「あ!」
 相手が一瞬でログアウトしてしまったのだった。この手のゲームでは、退出機能によって瞬時にログアウトすることができる。

 こうして、まんまとゲーム内通貨を持ち逃げされてしまったのであった。
 さっそく通報しなきゃと、通報機能を探したが、このゲームには実装されていないようだ。仕方がないので、普通のハンゲームへの連絡手段を用いて詳細をメールしておいた。メールのカテゴリーに、“詐欺にあった”という項目が用意されているくらいだから、こういう被害はわりと普通に起きているものと推測できる。
 それにしても、こうもあっさり詐欺にひっかかってしまうとは、私も背後で見ていながら少々油断していたようだ。

 ややショックを受けているみこりんに、いい機会だからネットにうずまくオンライン詐欺の手口やら、その他、危険な領域のことを改めて話して聞かせる。みこりんも、ハンゲームやネットマーブルといった運営側からのお知らせで、そういう事例があるということは知っていたようだが、実際に自分が詐欺にあってみて初めて実態がわかったんじゃなかろうか。今回は、勉強代ということで諦めるしかあるまい。


2007.10.26(Fri)

オーディション

 来月に開催される小学校の音楽会では、1クラス2曲を披露することになっている。2曲目のみこりんの担当楽器は、以前、“マーチングキーボードになりそうだ”と書いた通り、マーチングキーボードが割り当てられていた。残るは1曲目の合唱曲のピアノの担当を決めるオーディションのみ。これにエントリーしているのは、みこりんと、もう一人の女の子。果たしてどちらに決まったのだろう。私も気になっていたので、ちょっとみこりんにその後の様子など聞いてみたところ、「落ちた」んだそうな。

 オーディションでは、二人ともイントロ部分のみの演奏だったらしくて、みこりん的には、やや不本意気味。というのも、全曲を通してだったら、「みこりんの方がリズムが一定に弾ける」ということらしい。ピアノに決まった子は、リズムにちょっとムラがあるのだとみこりんは言った。イントロ部分では、指と指の間隔が開いてるところがあって、そこで微妙に失敗したのが痛かった模様。

 まぁ、ピアノに決まった子は、もともとピアノをやってる子なので、足鍵盤もかなりアレンジきかせまくりで弾くらしい。みこりんはエレクトーン専門のため、そのへん、ちょっと分が悪かったかも。ピアノとエレクトーンでは、足鍵盤の役割がまったく違うので互換性はないのだった。

 惜しかったね、みこりん。


2007.10.27(Sat)

手芸の一日

 小雨が降りしきる土曜日の朝。みこりんがLicの手芸セットを持ち出してきて、なにやらちくちくと縫い始めている。
 大きな丸が1つに、小さな小さな丸が2つ。大きな丸い布は、表と裏を縫い合わせたあと、中に綿を詰め込んでいる。ふむふむ?

 やがて大きな丸の両脇に、小さな丸が合体。
 完成したらしい。その形状…、もしかして有名な某ネズミ?いやいや、ごく普通のクマらしい。涼しげな白地に青い模様の入ったクマの…、ぬいぐるみ?
 みこりんはクマを手に取ると、私の右手首の下側の関節部分にあてがってくれた。
 こ、これは…「パームレスト?」
 大きくうなずくみこりん。でも、このままでは手に固定できないような…。するとみこりんは、手芸セットの中から幅広のゴムひもを探し当て、クマに縫いつけ始めたのだった。

 やがて、ゴムひも付け終わり。さっそく試着してみる。
 ほぅほぅ…。ゴムひもが長すぎて、だるんだるんになっていた。みこりん苦笑い。
 でもいいのだ。このゴムひもを途中で縛ってしまえば長さはいかほどにも調節できる。
 輪ゴムでぎゅぅぎゅぅと留めて、完成。立派にパームレストになっている。

 フェルトで、もっといろんなものを作りたいというみこりんのために、灯油を買いに出たついでに、手芸店へと立ち寄ってみた。手芸店にはまったくといっていいほど縁はなかったのだが、昔、Licと来た事があったので、場所はかろうじて覚えていたのだった。

 ずらっと並んだ手芸用品の棚に、しばし圧倒される。何か小さな部品がいっぱい。少年の頃、初めて電子パーツ屋に入った時のような、落ち着かなさと、好奇心が入り混じり、なんとも不思議な感覚である。
 ビーズにボタン、毛糸に紙、なにか用途の不明なこまごまとした部品の数々。まさに異世界であった。そんな中、みこりんは手芸関係の本棚に歩み寄り、フェルトで作るマスコットの本を何冊かぱらぱらと試し読みしている。みこりんはすっかりこの場の雰囲気になじんでいるようだが、私はものすごく浮いてるような気がしてしょうがない。

 でもまぁそのうちに、慣れては来たのだけれど。
 みこりんはまず、本を選んだ。そして、その中に載ってる作りたいものの材料を見て、それを一式そろえることにしたようだ。
 フェルト各種、刺繍糸各種、そして小さな小さなパステル調の色彩をしたボタン一袋。
 針や、普通の糸は、Licの手芸セットに入っているので大丈夫らしい。でも、“ジョイント”なる言葉が説明書に登場しているのだが、はたしてこれはいったい何だろう。おそらく何かをジョイントさせるために使う部品か、あるいは何かをくっつける技の名前か、そんなところだろう。なんとなく必須のものではないような気もしたので、今日のところはこれにて買い物終了。

 帰宅後、手芸モードに入ったみこりんだったが、型紙の使い方がわからず、作業は明日へと持ち越しとなったのであった。


2007.10.28(Sun)

秋晴れの日曜日

秋明菊 ものすごい秋晴れ。起きた瞬間に、早起きしなかったことを後悔してしまうほどの。

 リビングでは、さっそくみこりんがLicに型紙の使い方を教わっていた。なるほど、まず型紙を写し紙に転写してから、線に沿って切り、今度はそいつをフェルトに乗っけて輪郭を写し、そして最後にフェルトをその線に沿って切る、と。なんだかパーツを切り出すだけで、すごい手間が必要なのだね。
 みこりんが作ることにしたマスコットは、ネコの家族だった。親猫1匹に、仔猫が5匹。初めて本格的なフェルトのマスコットに挑戦するにしては、数が多いような気もしたが、作りたいものを作るのがモチベーションを維持する重要なポイントだろうし、やらせてみようと思う。

 みこりんがちくちくと縫っている間、私は昨日できなかった庭の草引きをするべく、庭に出た。
 東側の菜園方面では、忘れ去られたゴーヤの実が1つ2つと、伸びまくった枝の先にぶら下がっていた。最近できたばかりのような青々とした実だった。この分だと、夏の終わりからこれまでに、相当量が、こぼれ種となって落下したことだろう。来年、菜園中から芽吹いてくるゴーヤの様子が目に浮かぶようだ…
 ナスやトマトは、もう抜いても大丈夫っぽいのだが、これにゴーヤが絡み付いているので、もうしばらく放置しておくことにする。いずれ冬になれば、ゴーヤも枯れる。その頃に、きれいさっぱりと菜園を整理しよう。

 菜園のそばで、盛大に咲き誇っている秋明菊の白さが、目に眩しい。

セミの抜け殻 ぶちぶちと草を抜いていると、ふと見つけたセミの抜け殻。たしか先月には、ここにこんなものはなかったはずだが…。そういえば、今月中旬、季節外れなセミの声が聞こえていたことがあった。あの頃、ここでも羽化が行われたのだろうか。面妖な。
 それにしても、今年は庭で見つけたセミの抜け殻はこれで3個目だ。うちの庭的には、いつになく多い。数年前に近所のセミ大繁殖地帯となっていた空き地が整地され家が建ったことも影響してるのだろうか。

 草引きから戻ってみると、みこりんのネコは頭部製作の佳境に入っている模様。でも、今、ちくちくと縫っているのはLicだった。どうやら布用ボンドが切れていたようで、小さいパーツも縫わねばならなくなり、みこりんの手に負えなくなってしまったらしい。
 やはり最初はネコ本体じゃなくて、餌箱とか、爪研ぎ板とか、そのへんの構造が簡単なやつから取り掛かったほうがよかったのかも。果たしてネコの親子が揃うのは、いつの日か。


2007.10.30(Tue)

ヒトの声

 帰宅したら、まず手を洗い、にゃんちくんの餌の準備をするというのが日課である。今夜も、いつもどおりカリカリとレトルトをほどよく調合して、餌入れに盛り付けてやると、にゃんちくんがどこからともなく姿を現し、はぐはぐと食べている。でも、ネコゆえに、ちょろっと食べたらもうおしまい。真夜中頃には全部食べきっているようなので、このくらいのペースがにゃんちくんには合っているのだろう。

 そうやって少しだけ餌を食べ終えたにゃんちくんは、満足げに顔を洗い、そして、私の膝の上に乗ってくる。四足で立ったまま。ぴんと伸ばした尻尾が顎に触れて、こそばゆい。

 背中を撫でてやっていると、突然、「う!」という“声”がしたので驚く。
 そう、まさしく“ヒトの声”かと思ってしまった程に、リアルな「う」であった。

 「今、にゃんちくん、しゃべった??」
 みこりんは少し離れた位置にいたが、声は私のすぐそばで聞こえた。すると、声の主は私の他には、膝の上のにゃんちくんしか該当する生物はいない。
 思わずにゃんちくんの顔を覗き込んでみたが、「にゃ?」という表情で見つめ返されただけであった。

 たぶん、にゃんちくんがしゃっくりかげっぷをしたのだと思うことにする。
 もしそうでなかったら…、ついににゃんちくんの尻尾が二股に分かれる時が来たのかもしれない。


2007.10.31(Wed)

彫刻刀

 小学4年の図画工作では、版画の製作に彫刻刀を使うようになる。そこで、学校経由による購入のお知らせを兼ねた封筒を持って帰ってきたみこりん。商品カタログにもなっている封筒なので、かなりでかい。そこに載っている彫刻刀は、単品を除くとセット品は4つあった。

  • 最高級プラチナ
  • 最高級クリスタルシルバー
  • 最高級クリアブラック
  • 高級アイスブルー

 4品中、3つまでが“最高級”を冠するという、いまひとつ違いのよくわからないラインナップだったが、リストの上にいくほど値段は高くなっている。つまり、“最高級プラチナ”が、もっとも高価なセットだった。とはいえ、それぞれの差額は200円とかそんなものなので、桁違いってことはない。

 みこりんはどれを選ぶのかな?と見ていると、「プラチナがいい!」と即答だった。一瞬の迷いもない。みこりん的には、値段や名称よりも、その色彩に惹かれたようだ。プラチナが収められたケースは、メタリックな色調で、他のものに比べてとびぬけてかっこいいのだった。
 刃物はよく切れるやつのほうがいい。でもたぶん、最高級を冠する3品については、刃先は同質のものを使用しているのだと思われる。値段の違いはケースの材質等、別のところにあるのだろう。だから、私的には最高級ならどれでもいいかなと思っていたので、みこりんがプラチナの色彩が気に入ったのならそれでいいかとあっさり決定。

 それにしても近頃の彫刻刀は、柄の材質が透明グリーンのポリカーボネイトだったり、しかもそこにはきらきらのラメが入っていたり、滑り止め防止のゴムっぽいものまでついているし、刃先にはガード機構が備わっていたり、ケースがことごとくプラスティック製で、飛び出し防止機構が付いていたりと、ものすごくおしゃれに進化したものである。私が小学生の頃使っていた彫刻刀セットといえば、紙製の箱に入れられた木の柄の先端に刃が付いているという、味も素っ気もない無骨なものだったが…。30年も経てば、いろいろと変わるものだ。

 プラチナの彫刻刀で、みこりんはどんな版画を彫ってくるのか。期待して待っていよう。


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